CD-1 TOLERANCE – Anonym(1979 年) VANITY 0004
personnel
synthesizer with electronic echo unit,
piano & voice: Junko Tange
effective guitar: Masami Yoshikawa
dedicated to the Quiet Men from a Tiny Girl
recorded & mixed at Studio Sounds Creation osaka April 1979
engineered by Naoki Oku
assistant engineered by Yoshiteru Mimura
cover photo by Toshimi Kamiya
produced by Yuzuru Agi
Vanity records
502 Soraru-Kiyoka 1-6-8 Shinmachi Nishiku Osaka
phone 06 538 3644
VANITY RECORDS 1979
東京の丹下順子のソロ・ユニット。丹下が奏でるエレクトリック・ピアノ、シンセサイザー、簡素なエレクトロニクス、かぼそく呟くような朗読に加えて、吉川マサミのノイジーなスライド・ギターがゆっくりと渦巻きながら渾然一体となり、モノトーンで抽象音化されたアニムスが立ち現れる。ジャケットは写真集「東京綺譚」を刊行した神谷俊美。
英エクスペリメンタル/ コラージュ音響の大御所、スティーヴン・ステイプルトン(NWW: ナース・ウィズ・ウーンド)は1980年アルバム『To The Quiet Men From A Tiny Girl』のタイトルを本作クレジット文一節から引用。ステイプルトンが影響を受けたア-ティストを網羅した所謂『NWW リスト』にもトレーランスを選出した。
Ⅱ 嘉ノ海幹彦
”TOLERANCE”は電子音楽とエロティシズムの系譜の音楽であり、匿名性のパンクミュージックの香りをほんの少し残す音楽でもある。 まだ言葉は記号ではなく意味するものを持っていた時代の記憶。丹下順子のプロジェクトはそんな痕跡が少しだけ感じられる。
エレクトロニクスは誰にでもどんな時代でもエロティックな響きを与えてくれる。
ポスト構造主義が日本の地霊に受肉するための恩寵なのか。電子音楽の拡張性は体験(深く聴くということ)を通じて聴き手(自分)を変容させる。
”ANONYM”とは匿名の意だが、なにものでもないもののための音楽だ。
Ⅲ Y.Hirayama
狭い地下室の中で響き渡るかのようなジャムは、ゆっくりと、しかし確実にコズミックな音の塊へと変貌していく。奏者のパーソナリティはもちろん、演奏している様子さえ想像がつかない虚ろなサウンドは、虚栄を意味するヴァニティの名に忠実であると同時に、それが有効であった時代の証左となっている。現代のようにポータブルプレイヤーを通した屋外での再生や会話のBGMにあてがうのではなく、閉じられた空間で音楽に没入していく体験のために設計された作品だ。その陰は同時代のナース・ウィズ・ウーンドは勿論のこと、アンディ・ストットにまで伸びている。