Author Archives: kyourecords

remodel 25 tolerance『Dose』

発売日:2020年8月21日
定価:¥2,000(-税別)
品番:remodel 25

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tolerance
Dose

1 Dose 01
2 Dose 02
3 Dose 03
4 Dose 04
5 Dose 05
6 Dose 06

remodel 25
21.Aug 2020 release
2.000yen+tax

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Vanity Recordsより2枚のLPと1枚のソノシートをリリース、レーベルの主宰である阿木譲がヴァニティ作品のフェイヴァリットに挙げ、NWWリストに選出されるなど同時代の作家への影響力も持っていた東京の丹下順子によるプロジェクトtoleranceの未発表音源が初の単独CD化!収録内容は阿木譲の所蔵品から発見されたカセットテープをデジタルリマスタリングしたものであり、「Dose」とのみ記されていたため各曲名は不明。1stアルバム『anonym』と2ndアルバム『divin』の中間の時期にあたる1980年に制作されており、作風も2作の中間といえるものになっている。

<作品概要>
Vanity Recordsより2枚のLPと1枚のソノシートをリリース、レーベルの主宰である阿木譲がヴァニティ作品のフェイヴァリットに挙げ、NWWリストに選出されるなど同時代の作家への影響力も持っていた東京の丹下順子によるプロジェクトtoleranceの未発表音源が初の単独CD化。
収録内容は阿木譲の所蔵品から発見されたカセットテープをデジタルリマスタリングしたものであり、「Dose」とのみ記されていたため各曲名は不明となっている。
制作は1980年でこれは1stアルバム『anonym』と2ndアルバム『divin』の中間の時期にあたる。
1stアルバムの時点では随所で用いられるもののまだ音楽の中心といえるほどには重力を持っていなかった無機的なエレクトロニクス・サウンドが、本作では複数のトラックにおいて明確に前景化しているが、一方でエレクトリック・ピアノやギターと思われる楽器演奏もまだ用いられており、音楽性の上でも正に1stと2ndの中間地点といえるだろう。2つのオリジナルアルバムの間での音楽性の変化が段階的な思考錯誤を経て成し遂げられたことを伺わせる興味深い内容だ。
また、本作において耳を引くのがカセットマスターであることによるザラつき靄がかかったような音質とそれがもたらす効果だ。
その音のくすみや揺れは電子音、楽器音の境界を曖昧にし、丹下順子のリーディングはノイズにまみれより匿名的なものへと還元されていく。
Vanity Recordsは81年からのリリースで“INDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽”という方向性を打ち出すことになるが、本作におけるメディアの特性と音楽性の相互作用の中から生まれてくるアトモスフィアは、既に以降のレーベルのヴィジョンをありありと映し出している。

よろすず

remodel 16 INVIVO『B. B. B.』

発売日:2020年8月21日
定価:¥2,000(-税別)
品番:remodel 16

Amazon  https://amzn.to/2ZK6JmP
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INVIVO
B.B.B.

1 In Vivo / b.b.b.
2 Micoplasm (1983)
3 I.D.50 (Live)
4 M.I.C.
5 Macrolide (C H NO)
6 Bacteroides
7 InVitro
8 Proteus
9 Amoxicillin
10 Klebsiella
11 Micoplasma (1979)
12 Dead World (LC M)

remodel 16
21.Aug 2020 release
2.000yen+tax

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1981年にVanity Recordsよりカセットテープでオリジナルがリリースされた逗子市のタチバナマサオによるINVIVO『B. B. B.』が初の単独CD化!前半6曲は『In Vivo:生体内』、後半6曲は『In Vitro:試験管内』と題が付けられ、他にも個々の曲名などで医療/生物学の用語が用いられている。ごく短いフレーズの反復を基調とした最低限の作曲といった風情のトラックが並ぶが、電子音の他にギターやベース、そして管楽器のサウンドやサンプリングされた音声も用いられており、これらの組み合わせでシンプルな曲群に有機的な感触のバリエーションを持たせている。

<作品概要>
1981年にVanity Recordsよりカセットテープでオリジナルがリリースされた逗子市のタチバナマサオによるINVIVO『B. B. B.』が初の単独CD化。
1978年に設立され、パンク以降の価値観で活動する新たなバンドや、バンド活動を経た音楽家のオルタナティブなアプローチなど、同時代の先鋭的な音楽動向をいくつかの側面から捉えてみせたVanity Recordsであるが、1981年からのリリースでは“INDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽”という方向性が強く打ち出される。
この方向性を宣言したのがロック・マガジン編集部に送られてきた多数のカセットテープから厳選された音源を収録した1980年12月リリースのコンピレーションアルバム『MUSIC』であり、単独の作品としてそのヴィジョンを示してみせたのが1981年3月にLPでリリースされたtolerance『divin』であったが、以降のレーベル作品では時代の先端の音楽動向をよりスピード感を持って伝えるためカセットでのリリースが選択されることとなり、本作もこの文脈と形態で発表された。
本作のオリジナルは単独でのリリースもなされたが、“時代の風景としての騒音群”という意味を込め発表された『ノイズ・ボックス』という6本組のカセット・ボックスの一部としても世に出ている点が興味深い。
INVIVO『B. B. B.』のサウンドは楽器演奏の揺らぎやたどたどしさを多く含んでおりVanity Recordsからリリースされたカセット作品の中では有機的に感じられる一作ではあるが、“時代の風景としての騒音群”という観点は単に録音環境やメディアの変化によって生まれてきた新たなサウンドを指すだけでなく、ヒスノイズというヴェールや反復という構造を纏うことで様々なサウンドが聴き手の意識の中で抽象的または匿名的な響き(更には意識の外にある音としてのノイズ)へと還元されていく様を、つまりはこの類のサウンドが一種のアンビエント・サウンドとなり得るということまでを見通しているように思われる。
Throbbing Gristleの登場以降世界中に波及していった宅録/DIYムーブメントの中でそれぞれに創意工夫を行ったアーティストと、それらに刺激を受けレーベルより示された一つの視点、この結びつきによって生まれる価値と強度をこの機会に是非体感していただきたい。

よろすず

remodel 14 KIIRO RADICAL『DENKI NOISE DANCE』

発売日:2020年8月21日
定価:¥2,000(-税別)
品番:remodel 14

Amazon  https://amzn.to/2BWT2bK
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KIIRO RADICAL
DENKI NOISE DANCE

1 Denki Noise Dance Part 1
2 Denki Noise Dance Part 2
3 Denki Noise Dance Part 3
4 Denki Noise Dance Part 4
5 Denki Noise Dance Part 5
6 Denki Noise Dance Part 6
7 Denki Noise Dance Part 7
8 Denki Noise Dance Part 8
9 Denki Noise Dance Part 9
10 Denki Noise Dance Part 10
11 Denki Noise Dance Part 11
12 Denki Noise Dance Part 12
13 Denki Noise Dance Part 13
14 Denki Noise Dance Part 14
15 Denki Noise Dance Part 15
16 Denki Noise Dance Part 16

remodel 14
21.Aug 2020 release
2.000yen+tax

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1981年にVanity Recordsよりカセットテープでオリジナルがリリースされた鳥取県米子市の持田雅明によるKIIRO RADICAL『DENKI NOISE DANCE』が初の単独CD化!電子楽器のサウンドを中心にカセットへの簡素なダビングで描かれるミニマル・コンポジションはレーベルの主宰である阿木譲に「今の時点では日本のエレクトロニクス・ミュージックの頂点」と絶賛された。無機的な反復音がベースとなった音楽性ではあるが、それに縛られない奔放な音使いが随所に現れ、シンセサイズによる音色の探求精神が大いに感じられる点も聴きどころだ。

<作品概要>
1981年にVanity Recordsよりカセットテープでオリジナルがリリースされた鳥取県米子市の持田雅明によるKIIRO RADICAL『DENKI NOISE DANCE』が初の単独CD化。
1978年に設立され、パンク以降の価値観で活動する新たなバンドや、バンド活動を経た音楽家のオルタナティブなアプローチなど、同時代の先鋭的な音楽動向をいくつかの側面から捉えてみせたVanity Recordsであるが、1981年からのリリースでは“INDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽”という方向性が強く打ち出される。
この方向性を宣言したのがロック・マガジン編集部に送られてきた多数のカセットテープから厳選された音源を収録した1980年12月リリースのコンピレーションアルバム『MUSIC』(KIIRO RADICALの音源も収録)であり、単独の作品としてそのヴィジョンを示してみせたのが1981年3月にLPでリリースされたtolerance『divin』であったが、以降のレーベル作品では時代の先端の音楽動向をよりスピード感を持って伝えるためカセットでのリリースが選択されることとなり、本作もこの文脈と形態で発表された。
本作のオリジナルは単独でのリリースもなされたが、“時代の風景としての騒音群”という意味を込め発表された『ノイズ・ボックス』という6本組のカセット・ボックスの一部としても世に出ている点が興味深い。
KIIRO RADICALの電子楽器のサウンドを中心にカセットへの簡素なダビングで描かれるミニマル・コンポジションは、当時の宅録環境における技術的制限とのシビアな対話から導き出されたものであろうが、“時代の風景としての騒音群”という観点はヒスノイズを纏った無機的な反復音が聴き手の意識の中で抽象的または匿名的な響き(更には意識の外にある音としてのノイズ)へと還元されていく様を、つまりはこの類のサウンドが一種のアンビエント・サウンドとなり得るということを見事に見通しており、このヴィジョンは2010年前後のカセット・リバイバルへも(例えばSenufo Editionsのリリース群などへ)受け継がれている。
Throbbing Gristleの登場以降世界中に波及していった宅録/DIYムーブメントの中でそれぞれに創意工夫を行ったアーティストと、それらに刺激を受けレーベルより示された一つの視点、この結びつきによって生まれる価値と強度をこの機会に是非体感していただきたい。

よろすず

remodel 29 SAB『crystallization』

発売日:2020年7月17日
定価:¥2,500(-税別)
品番:remodel 29

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SAB
crystallization

〉Side A
01. Yume-no-ishi
02. Marble 夢の石

〉Side B
03. Menou
04. Agate 瑪瑙

remodel 29
17.Jul 2020 release
2.500yen+tax

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1978年9月にVanity RecordsよりオリジナルがリリースされたSABの1stアルバム。当時19歳の彼が自身による各種シンセサイザー、エレクトロニクス、ギターの多重録音、更にゲストミュージシャンによるシタールやフルートを加えて作り上げたコズミックかつ瞑想的な音絵巻。現在のニューエイジ・リヴァイヴァルや日本の環境音楽の再発見といった動向の中でも揺るぎない完成度と一層輝かしい価値を感じさせる傑作であると同時に、Vanity Recordsというレーベルのベースとなる思想を伺わせる重要な一作。

<作品概要>
1978年9月にVanity Recordsのカタログナンバー2番としてオリジナルがリリースされたSABの1stアルバム。
当時19歳の彼が自身による各種シンセサイザー、エレクトロニクス、ギターの多重録音、更にゲストミュージシャンによるシタールやフルートを加えて作り上げた一作。
ジャケットにはまりの・るうにいによる土星のパステル画が用いられている(土星は当時ロック・マガジンと交流のあった工作舎のシンボルマークでもある)。
複数の楽器を自在に扱う技術的な達者さもさることながら、シンセサイザーとアコースティック楽器、そして環境音までもを巧みにミックスしコズミックかつ瞑想的な音絵巻を作り上げる音楽的なヴィジョンの確かさとアレンジ能力が何より素晴らしい(この手腕は後にあがた森魚『乗物図鑑』のアレンジでも発揮される)。
同時代の先鋭的な音楽動向をいくつかの側面から捉えてみせたVanity Recordsであるが、その発足当初にはブライアン・イーノが明確なコンセプトをもってリリースしたObscure Recordsの10枚組シリーズ(1975-1978)が強く意識されており、実現はしなかったもののそれに対抗した「十牛図」をコンセプトとしたリリースも構想されていた。
Vanity Recordsの最初のリリースであるDADA『浄』と本作SAB『CRYSTALLIZATION』では海外の音楽動向にリンクする要素と同時に東洋的なモチーフ/サウンドが(それぞれ異なる方法で)用いられており、参照とされる西洋の動向に対しての差別化の意図が感じられる。
現在のニューエイジ・リヴァイヴァルや日本の環境音楽の再発見といった動向の中でも揺るぎない完成度と一層輝かしい価値を感じさせる傑作であると同時に、Vanity Recordsというレーベルのベースとなる思想を伺わせる重要な一作だ。
よろすず

remodel 24 tolerance『divin』

発売日:2020年7月17日
定価:¥2,500(-税別)
品番:remodel 24

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tolerance
divin

A1 Pulse Static (Tranqillia)
A2 1 F Yuragi
A3 Misa (Gig’s Tapes In “C”)
B1 Sound Round
B2 Bokw Wa Zurui Robot (Stolen From Kad)
B3 Sacrifice
B4 Motor Fan
B5 Tiez Rekcuz

remodel 24
17.Jul 2020 release
2.500yen+tax

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1981年3月にVanity Records最後のLP作品としてリリースされたtoleranceの2ndアルバム。CDでの単独リリースは今回が初となる。前作『anonym』で見られたピアノやギターなどを用いたフリーフォームな楽器演奏の側面は後退し、リズムマシンとシンセサイザーをメインとした電子音楽へと大きく歩を進めた作風。NWWリストに選出されるなど同時代の作家に影響を及ぼすだけでなく、Posh Isolationなど現代のエクスペリメンタルに続くサウンドヴィジョンも大いに見出せる傑作であり重要作だ。

<作品概要>
1981年3月にVanity Records最後のLP作品(カタログ番号12番)としてオリジナルがリリースされたtoleranceの2ndアルバム。
1978に設立され、パンク以降の価値観で活動する新たなバンドやバンド活動を経た音楽家のオルタナティブなアプローチなど、同時代の先鋭的な音楽動向をいくつかの側面から捉えてみせたVanity Recordsであるが、1981年からのリリースではINDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽という方向性が強く打ち出される(これに合わせて近い時期にロック・マガジンの編集体制も新しくなっている)。この方向性を宣言したのが1980年12月リリースの2枚組LP『MUSIC』(VANITY0010-11)であり、単独の作品としてそのヴィジョンを示してみせたのが1981年3月リリースの本作『divin』といえるだろう。以降Vanity Recordsはこの方向性を伝える手段としてスピードを重視するためカセットでのリリースを選択し、結果的に本作がレーベル最後のLP作品となった。
前作『anonym』で見られたピアノやギターなどを用いたフリーフォームな楽器演奏の側面は後退し、リズムマシンとシンセサイザーをメインとした電子音楽へと大きく歩を進めた作風。無機的なリズムの反復が骨格となった音楽性ではあるが、それが纏う音響は時に虚ろな、また時には鮮やかな色合いを持ち、前作での楽器演奏において感じられた和声感覚が受け継がれていることを感じさせる。声の扱いもフィルターや変調を通すことでより抽象的なものとなっている。前作においてはまだ朧げな存在であった反復的な要素がくっきりと映し出される一方で、他の要素も(意図的に靄がかけられたような状態ではあるが)存在しており、故に表面的な音楽的装いを変えていながらtoleranceの音楽としてのエレガンスや強度は失われていない。
NWWリストに選出されるなど同時代の作家に影響を及ぼすだけでなく、Posh Isolationなど現代のエクスペリメンタルに続くサウンドヴィジョンも大いに見出せる傑作であり重要作だ。

よろすず

remodel 23 tolerance『anonym』

発売日:2020年7月17日
定価:¥2,500(-税別)
品番:remodel 23

Amazon  https://amzn.to/2TJnzja
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tolerance
anonym

〉SIDE A
01. Two owls
02. I wanna be a homicide
03. osteo-tomy
04. JUIN-Irénée
05. anonym

〉SIDE B
06. Iaughin in the shadows
07. through the glass
08. tecno-room
09. Voyage au bout de la nuit

remodel 23
17.Jul 2020 release
2.500yen+tax

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1979年10月にVanity Recordsのカタログナンバー4番としてオリジナルがリリースされた東京の丹下順子によるプロジェクトtoleranceの1stアルバム。CDでの単独リリースは今回が初となる。クラシカルやパンクを経過したフリーフォームな楽器演奏と時代の先端たるエレクトロニクスが拮抗する音楽性は未だアクチュアルであり美しい。NWWリストに選出されるなど同時代の作家に影響を及ぼすだけでなく、Posh Isolationなど現代のエクスペリメンタルに続くヴィジョンも感じさせる傑作。

<作品概要>
1979年10月にVanity Recordsのカタログナンバー4番としてオリジナルがリリースされた東京の丹下順子によるプロジェクトtoleranceの1stアルバム。ジャケットは写真集「東京綺譚」を刊行した神谷俊美。パンク以降の価値観で活動する新たなバンドや、バンド活動を経た音楽家のオルタナティブなアプローチなど、同時代の先鋭的な音楽動向をいくつかの側面から捉えてみせたVanity Recordsのカタログの中でも、本作はアーティスト自身の音楽的出地から実際のサウンドの立ち位置まで、明確な判断の難しい抽象的な存在の一作といえるだろう。
丹下によるエレクトリック・ピアノ、シンセサイザー、そして声は不穏さとエレガンスを同時に纏い、吉川マサミのエフェクティブなサウンドを発するスライド・ギターはパンク以降の痙攣するような衝動的演奏の残り香を感じさせるものの最早それは朧気で、彼岸ともいうべき遠い地点から響く呻きと化している。時に秒針や心拍を思わせる渇いたエレクトロニクス・サウンドも用いられるが、それは作品全体に無機的なニュアンスを効果的に付すものの中心的といえるほどには重力を持っていない。
クラシカルやパンクを経過したフリーフォームな楽器演奏と、時代の先端たるエレクトロニクスがどれが中心ともいえない塩梅で拮抗し、情緒や空間が漂白されたようなデッドな質感でのみ存在する本作の音楽性は、正に“匿名”を意味するアルバムタイトルに相応しく、故に未だアクチュアルであり美しい。
NWWリストに選出されるなど同時代の作家に影響を及ぼすだけでなく、Posh Isolationなど現代のエクスペリメンタルに続くサウンドヴィジョンも大いに見出せる傑作であり重要作だ。
よろすず

『ロック・マガジン』とVanity Recordsと音楽的背景と当時のことなど 後半
嘉ノ海幹彦(元ロック・マガジン編集/FMDJ)

嘉ノ海幹彦が関わった編集物リスト

■『fashion』について
『fashion』は音楽とは一線を引いた商品の表象としてのポータルマガジンとして発刊された。阿木は『ロック・マガジン』2004号で定期的に本を出すと宣言している。その段階では誌名は「ポップ」と考えられていた。しかし誌名が『fashion』になったのは、「ファッションは生活の中で、時代毎の世界観と宇宙観の反映であり、建築、芸術、モード、産業、そして音楽にいたるまでくまなく反映されるものだ。ファッションはひとつひとつ掘り下げて時代の読み解きを行う」というコンセプトによる。
レイアウトや装丁は阿木が行った。楽しそうに本というオモチャ箱を遊んでいる感じだった。細かい部分でのデザインセンスが光る。

fashion 1 1980/04 特集1960’s
1960年代の精神の系譜を特集。60年代の商品を中心とした生活スタイル、モッズ、消費社会としての文化を掘り下げ時代そのものを再評価することを目的として編集された。当時のモッズシーンについて羽田明子の取材記事が掲載されている。60年代の時代精神は一体何を残したのか。
なお『VANITY Music,Tapes&Demos』の意匠はこの号のブックデザインを踏襲している。

fashion 2 1980/06 特集Plastic
「私は、可塑性である/強靭である/軽量である/断熱性である/曲線的である/電気絶縁性である/重合する/流れる/全てのプラスティック・ピープルよ!「重合」し、「流れ」、「変態」せよ!! 」から始まる巻頭のプラスチック宣言では、性質の可塑性に注目し様々な要素を容体化させるプラスティック・フォースの現われを分子構造から生活用品まで展開している。「変容」を追求したゲーテ形態学との関連で「プラスチックの源流はゲーテである」と語る松岡正剛やプラスティック・ピープル、人口臓器メーカー、美容整形医師などへのインタヴューも掲載した。本誌左下に仕掛けられたパラパラ動画のミスター・スポックがcontinuous photography(連続写真)により服を脱いだり着たりする。

fashion 3 1980/08 特集MACHINE
1968年にニューヨーク近代美術館で開催された「機械(MACHINE)….機械時代の終わりに」展についてのポントゥス・フルテンの翻訳である。レオナルド・ダ・ビンチから大阪万博のペプシ館のE.A.T.(Experiments in Art & Technology)グループまで記載した書物だ。MACHINE=機械というものを中心にそれに纏わる精神技術史といってよい。もちろんマルセル・デュシャンやジャン・ティンゲリーやナム・ジュン・パイクも紹介されている。ジャン・ティンゲリーの音響装置は、フランツ・カフカの『流刑地にて』の殺人機械や後のマイク・ポーリンのサバイバル・リサーチ・ラボラトリーを連想させる。

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■1980-1981の『ロック・マガジン』について

『ロック・マガジン』2003号 1980/01 特集 MUSICA VIVA
戦後電子音楽スタジオが国を上げて開設されるが、特にドイツ、日本、イタリアなどの敗戦国ではすぐに取り掛かり、MUSICA VIVAの作曲家が活躍することになる。電子音楽はミュージックセリエリスムに応用され音の響きを重視した音楽へと変貌する。「耳は聴かない。聴くのは知性だ」とはMUSICA VIVAの作曲家で確率論を音楽に導入したヤニス・クセナキスの言葉だが、音楽を体験するためのヒントを与えてくれる。
さて、ここで少しこの特集号にまつわる当時の状況とこの本の必然性について述べたいと思う。MUSICA VIVA特集が出版された1980年という年は、70年代後半よりニューヨークに端を発したパンク・ムーブメントがイギリスで商業化されセックスピストルズに象徴されるようなロックミュージックに展開している時代であり、もう一方でROUGH TRADEのような反商業主義的な動きの中にあった。後者からはザ・ポップ・グループやスリッツ、キャバレー・ボルテール、スロッビング・グリッスルなどが出現し、日本ではミラーズ、ミスター・カイト、フリクション、SKENなどの東京ロッカーズやSS、アントサリー、イヌ、ウルトラ・ビデなどの関西NO WAVEと呼ばれたグループが活動していた時代でもある。
そしてイギリスのファクトリー・レーベルから出ていたジョイディビジョンのボーカリスト、イアン・カーティスの死によって決定的な相違が80年を境に出現してくる。先に上げたスロッビング・グリッスル達は歌詞を持たないミュージシャンであり、表現主義的なジョイディビジョンの終焉と共にインダストリアル・ミュージックとクラブ・ミュージックが出現してくるのである。言葉を持たない音楽は言葉以上に語りだすのである。


『ロック・マガジン』2005号 1980/05 特集 ROUGH TRADE
自らの手で自らの音楽を作り上げるシステムとしてイギリスの独立レーベルROUGH TRADEと呼応するように、阿木は「ソニック・デザイナーと呼ばれる新しい姿勢を持ったアーティストたち」を記載している。
「RNA ORGANISM」「Normal Brain」「SYMPATHY NERVOUS」をソニック・デザイナーと評している。「総てのハードウエアを自分のものにし、機械を自身の中枢神経の延長線上のシステムととらえ、音をデザインすること」をソニック・デザイナーと定義する。これは、『ロック・マガジン』次号の「日本のハイ・テック・マシーン達」への前哨であり、Vanity Recordsが果たす新たな役割を模索している。


『ロック・マガジン』2006号 1980/07 特集 Alternative Music
「cabaret voltaire」、「the pop group」と同等に「tolelance」、「rna・o」、「sympathy nervous」の名前が表紙に記載されている。「魚の側線のような触覚を持った、テクノ・ポップ以降に現れた日本のハイ・テック・マシーン達」と題してP8-15に8ページにわたってVanity Recordsのミュージシャンが紹介されている。「Mad Tea Party」と「Perfect Mother」をシングルリリースしたミュージシャンも加えて彼らが自らの言葉で自らの創作する音楽について語っている。


『ロック・マガジン』2007号 1980/09 特集 sordide sentimental
2006号と同様に「Throbbing Gristle」、「Joy Division」と「b・g・m」、「normal brain」の名前が表紙に記載されている。
『sordide sentimental』はジャン・ピエール・ターメルにより1978年にフランスで創刊された7inchレコードが添えられている書物だ。『ロック・マガジン』と同様にデザインと言語により音楽を通して時代を読み取るための思想を持つ雑誌であり、既に「Throbbing Gristle」、「Joy Division」などをリリースしていた。『sordide sentimental』と呼応するために急遽特集を組んだ号である。
また1979年設立のmute recordsや1978年設立のfactory recordsのその後展開される様子が羽田明子の取材を交えて掲載されている。「TAPE RECORDED DIALOGUE」とタイトルが付いた記事では、Vanity Recordsのミュージシャン達である「tolelance」、「b・g・m」、「sympathy nervous」、「normal brain」が参加してP82-87に6ページにわたり座談会形式でエレクトロニクス機器と感覚や感性について話している。


『ロック・マガジン』2008号 1980/11 特集 Erik Satie Furniture Music
「家具の音楽」とは元々エリック・サティが「家具のように、そこにあっても日常生活を邪魔しない音楽、意識的に聴かれることのない音楽」をコンセプトとして作曲されたものだ。ジョン・ケージがその考えを引き継ぎ「4分33秒」を作曲しブライアン・イーノが「Ambient Music」へと昇華した。Vanity Recordsの『BGM/Back Ground Music』(1980/09)も「家具の音楽」の系譜に位置される。特集ではサティの音楽を中心にベル・エポック時代の芸術と現代のロックを結び付けようとした。サティはグレゴリオ聖歌に代表される教会旋法を二十世紀に蘇えらせ神秘主義的教会音楽を多く作曲したが、スロッビング・グリッスルやキャバレー・ボルテールなどの音楽も同列に編集し、そしてサティの音楽や思想と1980年代に誕生したオルタナティヴな工業神秘主義音楽などを連続性を持って享受するための準備を行ったのである。


『ロック・マガジン』01号 1981/01 特集 INDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽
2020年に亡くなったジェネシス・P・オリッジが「industrial music for industrial people」として展開したindustrial musicを工業神秘主義音楽と名付けた。紙面ではダンスミュージックと同時に音声詩、ダンス、シャーマニズムなどを同時に掲載。この号では以前からロシア構成主義やドイツ表現主義を生んだ時代の衝動について話を聞きたかった方々へのインタヴューも平行して実施した。ロックではギャバレー・ヴォルテールやバウハウスが登場しアダム&ジ・アンツが「未来派宣言」を歌っていた。生まれたてのロックミュージックに20世紀初頭の未来派の精神が甦る。池田浩士はドイツ文学者でファシズムと大衆文学を研究している。また表現主義やフランツ・カフカを教養小説(人が体験を通して社会=時代の中で内面的に成長していく過程を描く小説)の文脈で読み解く人でもある。松岡正剛は「音楽の呪術的要素」と「第三商品論」を語った。土居美夫はスイスのチューリッヒで1916年に開店したキャバレー・ヴォルテールの店主でありボール紙の司祭フーゴ・バルの研究者である。バルの「時代からの逃走」を翻訳しただけではなくワシリー・カンディンスキーやパウル・クレーの研究者でもあるのだ。イギリスのシェフェールドのバンド、キャバレー・ヴォルテールやバルの音声詩「Gadji beri bimba」をロックにしたトーキングヘッズの「I Zimbra」の感想も聞いた。土居はバルがチューリッヒ・ダダの拠点となったキャバレーボルテールを閉店した後「キリスト教神秘主義」の研究をしていたと資料とともに教えてくれた。黄寅秀はヤンハインツ・ヤーンの『アフリカの魂を求めて』の翻訳者であり在日の韓国人。アフリカでは元々音楽は哲学であり医療でもありシャーマニズムの源泉でもあった。アフリカ人の移住に伴いその土地の音楽と融合し変化し新たな様式を生み出した。世界に広がった音楽そのものの有用性について聞いた。またこの号から版形も紙もレイアウトも全く変わった。阿木が表紙の片隅に、溺れた友人を助けようとして自らも溺死したドイツ表現主義の詩人ゲオルク・ハイム(1887-1912)の詩を余ったインレタを使ってローマ字で記載している。阿木流の編集である。
ここに全文を掲載したい、忘れ去られた幻視者(詩人)の声を。

ぼくらの病気は、ぼくらの仮面である。
ぼくらの病気は、際限のない退屈である。
ぼくらの病気は、怠惰と永劫の不休のエキスのようなものである。
ぼくらの病気は、貧困である。
ぼくらの病気は、ひとつの場所に縛りつけられていることである。
ぼくらの病気は、ひとりではいられないことである。
ぼくらの病気は、いかなる天職ももなたいことであり、もしなにか天職をもっているとすれば、その天職をもっていることである。
ぼくらの病気は、ぼくらにたいする、他人にたいする、知識にたいする、芸術にたいする不信である。
ぼくらの病気は、真剣さの欠如であり、いつわりの陽気さであり、二重の苦悶である。だれかがぼくらに言った、きみたちはそんなにおかしそうに笑っているではないかと。
この笑いがぼくらの地獄の反映であることをその人が知ってくれればいいのに。ボードレールの「賢者はただ身を震わせて笑うばかり」のにがい反対であることを。
ぼくらの病気は、ぼくらがぼくら自身に定めた神にたいする不服従である。
ぼくらの病気は、言いたいことの反対のことを言うことである。ぼくらは、聞き手の表情にあらわれる印象を見つめながら、われとわが身を苦しめざるをえない。
ぼくらの病気は、沈黙の敵になっていることである。
ぼくらの病気は、世界の日の終末に、その腐臭に耐えられぬほどに息苦しい夕ぐれに生きていることである。

興奮、偉大さ、ヒロイズム。以前はこの世界は時おりこれらの神々の影を地平線のあたりに見た。今日ではこれらは劇場の人形にすぎない。戦争はこの世界から出て逝ってしまった。永遠の平和が戦争をあわれに埋葬したのだ。
かつてぼくらは、こんな夢を見た。ぼくらはある名付けようのない、ぼくら自身も知らない罪を犯したのであった。ぼくらはある悪魔的な仕方で処刑されることになっていた。
ぼくらの眼のなかにコルク栓抜きをねじこもうというのであった。しかし、ぼくらにはどうやらまだ逃げだすことができた。
そして、ぼくらは――心に途方もない悲しみをいだきながら――むら雲の陰鬱な区画のなかをかぎりなく通っていく秋の並木道を、かなたへと逃げていくのであった。

この夢はぼくらの象徴ではなかったろうか?
ぼくらの病気。ひょっとするとなにものかがそれを治せるかもしれない。たとえば愛が。しかし、ぼくらはあまりにも重い病気にかかっているので愛でさえもできなくなっていることを、ついには認めざるをえないのであろう。

しかし、なにかがある。それこそぼくらの健康というものだ。三たび「それにもかかわらず敢えてなお」と言うこと、古参兵のように三たび手につばをつけること。
そしてそれから、西風に駆られる雲のように、ぼくらは街路を抜けて遠く、未知なるものへ向かっていくことだ。
「戯画」1911年6月19日 ゲオルク・ハイム 本郷義武訳


『ロック・マガジン』05号 1981/09 特集 SUR-FASCISM
ジョルジュ・バタイユの「コントルアタック」の時代とノイエ・ドイチェ・ヴェレを中心とした最先端の音楽を同紙面に掲載した。パリの「社会学研究所」コレージュ・ド・ソシオロジーとDAFの2拍子と強制収容所の音楽とジョルジュ・バタイユ、知らぜらる快楽主義者ピエール・クロソフスキー、ヴァルター・ベンヤミン、ロジェ・カイヨワなど。それらを「シュル-ファシズム宣言」として掲載した。
シュル-ファシズム(SUR-FASCISM)は、ヨーロッパ全土をパンデミックに席巻しはじめたファシズムに、哲学者であり作家のジョルジュ・バタイユや芸術家のアンドレ・ブルトンをはじめとした知識人や芸術家がファシズムの狂気を超える「狂気の超現実主義的ファシズム」(=シュル・ファシズム)で闘いを挑んだ。「コントルアタック」とは、この生死を賭けた芸術家のレジスタンスの名称のことである。西洋は、かつて経験のした事のない時代に突入した。強制収容所は現実化し、終末を歌わしてはくれない。
シュル-ファシズムと併せて音楽では、デア・プラン、DAF、ディー・クルップス、ヴィルトシャフツヴンダー、マラリア、アブヴェルツ、パレ・シャウンブルク、ディー・レミング、ソラックス・バッハ、ザオ・セフチェック、リーフェンシュタール、タンク・オブ・ダンツィッヒ、サイキックTV、ルイス・アンド・ギルバート、PIL、キリング・ジョークなどを紹介した。

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※ 文中敬称略

最後になりましたが、この文章を書くにあたり、機会を与えて頂いたスタジオワープの中村泰之さん、内容についてのアドバイスと校訂を担当してくださった能勢伊勢雄さんに

『ロック・マガジン』とVanity Recordsと音楽的背景と当時のことなど
嘉ノ海幹彦(元ロック・マガジン編集/FMDJ)

V.A.『VANITY Music, Tapes&Demos』

V.A. 『VANITY DEMOS』

TOLERANCE『TOLERANCE』

『ロック・マガジン』とVanity Recordsと音楽的背景と当時のことなど
嘉ノ海幹彦(元ロック・マガジン編集/FMDJ)

2020年4月14日(故阿木譲の誕生日)に「きょうレコード」からremodelとしてそれぞれのコンセプトにふさわしい意匠を凝らした3BOXがリリースされた。特に『VANITY Music,Tapes&Demos』のCD-BOXは、1980年4月に創刊されたポータル・マガジン『fashion』01号のブックデザインを踏襲しており表象そのものが経年の色彩を纏って音楽作品として甦った。今回リリースされたこれらVanity Recordsの作品群は、世界同時的に発生したインディペンデント・レーベルと呼応し、霊的衝動と呼ぶべき情動の中で生み出された1980年代音楽シーンにおける時代精神の痕跡である。
ここでの時代精神とは、80年代の社会のなかで音楽が告げたオルタナティブな精神のことである。それは多様な表現へと分化していった精神的な生命運動のようなものだ。しかも音楽は時代の「気分」と深く関わり、それゆえに最も影響力が強いものである。
『ロック・マガジン』が行ってきたことは、音楽を通して時代を読み解く行為であり、強い内的要請に基づくものだった。換言すれば、時代精神が『ロック・マガジン』を生み出したということだ。そして今も自分の音楽体験の基本となっている。

それでは未発表音源の響きを聞きながら当時の背景などを記述しよう。

■Vanity Records設立の時代背景と阿木の想い
Vanity Recordsは、1976年の『ロック・マガジン』創刊から2年後の1978年に設立された。CD-BOX(Vanity Demos)に同封されたブックレットには2010年の阿木譲が自分自身の言葉でVanity Records設立を思い立った経緯とインディペンデント・レーベルの功罪について記載している。阿木は独立レーベルを想起するにあたり、イギリスの新興レーベルであったVirgin Recordsでリリースされる音楽に大いに刺激を受けていることが分かった。また阿木は、一部のインディペンデント・レーベルが商業主義的影響を受けオルタナティブな新しい音楽をリリースしなくなったのも同時に見ていた。
阿木はそのことを踏まえレコード産業の思惑に左右されないミュージシャン主体の新しい音楽をリリースするレーベルを作りたいと思い、Vanity Recordsを1978年に設立したのである。当時の『ロック・マガジン』に記載されているが設立には阿木の並々ならぬ想いが溢れている。(拙文Vanity Recordsと『ロック・マガジン』1978-1981参照)
また『ロック・マガジン』誌上でも紹介したが、イギリス、ドイツ、フランス、ベルギー、アメリカなどにおいてVanity Recordsと同様に自由で何の制約も受けない自らの意思で運営できる新興レーベルが同時多発的に誕生するのである。これらの動きにも時代霊が大きく作用しているとしか思えないのである。
またこれら新興レーベルの運営主体はミュージシャンやプロデューサーであり、商業主義から影響を受けないようなディストリビュートの仕組みを含めて設立されている。

ちなみにこの時代に設立された代表的なインディペンデント・レーベルを列挙してみた。
これらのレーベルが1980年代の時代精神を牽引したのだった。
1972年
Virgin Records
Ralph Records
Cramps Records

1975年
Obscure Records
Sky Records

1976年
Industrial Records
Los Angels Free Music Society
Stiff Records

1977年
Beggars Banquet Records

1978年
Vanity Records
Lovely Music
Recommended Records
ZE Records
Fetish Records
Factory Records
sordide sentimental
Small Wonder Records
ROUGH TRADE
Cherry Red Records

1979年
2Tone Records
COME ORGANISATION
United Dairies
Mute Records
4AD
Crass Records
Ata Tak Records

1980年
Zickzack Records
LES DISQUES DU CREPUSCULE

■『ロック・マガジン』とVanity Recordsの1980年代よりの展開
「1980年までは、81年からの80年代音楽を準備する期間だった。だから1980年はまだ70年代なんだよ。」阿木譲は音楽と時代性との関連を話題にしたときに、1970年代というのは71年から80年までのことで1981年からが本当の80年代が始まるのだとよく話していた。
そのとおり1980年は『ロック・マガジン』とVanity Recordsにとって大きな変化があった年だった。
81年に入ると「時代性」に特化した『fashion』も03号まで出版したが休刊とした。04号は特集「スーパーマーケット」の予定だった。
第二期『ロック・マガジン』最後の号である1980年11月発刊の特集エリック・サティ Funiture Musicのlast wordで阿木は要約すると以下のことを書いている。
1.1年前までのロックマガジンのバックナンバーを処分
2.千駄ヶ谷にあった東京事務所を閉じる
3.大阪の編集室を引越す
4.11月5日に『B.G.M』を、12月5日に『ノーマルブレイン』をリリース
5.年内(1980年)にはカセットテープからLP2枚組みの「ノイズ」というタイトルでリリース
※実際は『MUSIC』としてリリースされた
6.11月までにカセットテープの送付を呼びかけ

第三期の『ロック・マガジン』から東京事務所を閉じた関係もあり『遊』の広告は掲載されているが、工作舎とも疎遠になった。『ロック・マガジン』と関係のある出版社はなくなった。もとより音楽他誌には関心がなかったし書店で手に取ることもなかった。当時Throbbing GristleやCabaret Voltaireをまともに紹介しているメディアもなかったからだ。
時代に先駆けて出現しつつある新しい音楽を現前させるという使命感で『ロック・マガジン』は再スタートした。ライターにしても松岡正剛をはじめそれまで掲載されていた個人原稿もなくなっている。
言葉で説明できる世界が大きく変わろうとしていた。70年代から80年代へと。そして『ロック・マガジン』は80年代に音楽で時代を読み解く独自な方向性を色濃くするのである。
『ロック・マガジン』はまず版形がA4からB5サイズになった。特集ごとに内容から細かく紙見本や色見本より選択し編集した。ただ雑誌を作る際に紙質も色も毎号異なる組み合わせは、手仕事に近い作業となり、製版、印刷、裁断、製本に至るまで様々な影響が出た。各工程でそれなりの手間がかかるため業者からは嫌がられたが、今思うと結果的には「オブジェ・マガジン」といっていた雑誌『遊』の初期に近い。そしてこの手作り感のあるデザインはその後『EGO』や『E』へと引き継がれていく。

Vanity Recordsに関しても変化があった。『SYMPATHY NERVOUS/SYMPATHY NERVOUS』、『BGM/Back Ground Music』、『Ready Made/Normal Brain』を連続してリリース。リリース直後からVanity Recordsと『ロック・マガジン』の動きに触発された無名のアーティストの手によるカセットテープが全国から多数編集部に送られてきた。
そのことから『ロック・マガジン』と連動した「動き」となっていたことが分かる。この「動き」を受けてVanity Recordsでは、音に宿る時代の雰囲気をそのまま生かしマスタリングなどの処理を施さないかたちでリリースしようということになった。
音源が多種多様なカセットテープであり、ヒスノイズが内在する音という意味で、最初に付けられたアルバムタイトルは『ノイズ』だった。しかし結局阿木より「『ノイズ』ではなく、ずばり『音楽』にしよう。」ということになり『MUSIC』と名付けられた。時代を先取りしているものが、「音楽」であるという感覚が『ロック・マガジン』にはあったからだ。
「ロックはあらゆる要素を吸収するスポンジだ。」というブライアン・イーノの発言にも裏付けられている。ここでいう「ロック」とは、パンクでもロックンロールでもJAZZでもなく「音楽」のことである。つまり音楽が全ての世界現象(リアル)を水のように溶解し、スポンジのように吸収し保持し現前化(リアリティ)させるということであり、『MUSIC』を出すことで音楽とはまさにプラスティック・フォースを内在化した可塑性芸術であるということを示したかったのである。
そして『MUSIC』は阿木の「1980年末までが1970年代である」と言う考えに基づき1980年の12月にリリースされた。しかし募集の締め切りが過ぎたにも関わらず、その後もカセットテープが無名のミュージシャンから日々編集部宛に郵送され、第三期最初の『ロック・マガジン』01号 1981/01 特集 INDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽の2ヶ月後の『ロック・マガジン』02号1981/03 特集WHITE APOCALYPSE FEMALE では、カセットテープ・ミュージシャンを特集することにした。「騒音仕掛けの箱に吹き込まれた風景」と題したセクションではカセットテープのレイアウトやデザインと共にP80-100まで21Pにわたって阿木と当時編集者であった明橋大二の対話形式により紹介されている。(VANITY Music,Tapes & Demosブックレットに掲載)
Vanity Recordsではそれら様々なミュージシャンを『MUSIC Ⅱ』、『MUSIC Ⅲ』のように連続する作品としてリリースすることも考えたが、LPでのリリースとはならなかった。理由は、時代の変化に追いつくよう、スピードを重視したからだった。
しかし一方でひとつの試みとしてVanity Recordsのリリースとは別にソノシートを利用することを考えた。それまでソノシートは『ロック・マガジン』の特集を強調するための補足的な意味で「おまけ」として添付していた。
カセットテープ・リリースの時に試みたと同様に、『ロック・マガジン』の読者参加でバンドをピックアップした。『ロック・マガジン』のレコードコンサートに参加したり、編集部へ遊びに来たり翻訳を手伝ったりしていた青木寶生の『ほぶらきん』や佐用暁子の今回CDリリースされた『Love Song/System』がこのケースに該当する。『ロック・マガジン』誌編集行為の一環といってもいいだろう。
またこの時期、Vanity RecordsのLPとしては最後の作品となる『TOLERANCE/DIVIN』がリリースされた。
その後もっと簡易にもっと容易にもっと安価にもっとシンプルにリリースできるものとして、後期のVanity Recordsではカセットテープでのリリースという形態をとった。
当時の時代背景としては、都市生活者が遊民になり快適に過ごすためのツールとしてのカセットテープ文化が一般的になりつつあることにあった。既に1979年にソニーより「音楽を持ち歩く」というコンセプトの元にウォークマンが発売され、都市機能の一部を有していた。その後1981年には細川周平の『ウォークマンの修辞学』(朝日出版社 エピステーメー叢書)が出版されている。
遊民(フラヌール)とはヴァルター・ベンヤミンがボードレール論を展開する中で使用している概念である。市民社会が形成される歴史的背景の中で民衆は定住の場所を持たず都市の街路の中で遊民化する。ベンヤミンは遊民のことを次のように説明している。「エドガー・アラン・ポーの<群集の人>はいわば探偵小説のレントゲン写真である。そこにあるのはその備品、すなわち追跡者、群集、ロンドン市内をたえずその中心から離れないようにしながらうろつく見知らぬ老人だけである。この見知らぬ老人が遊民である。」
また1981年にはレコードから、手軽にリリースできるカセットテープへと変化していった。アンダーグラウンド・シーンでは国内外を問わずカセットテープでのリリースが始まっていた。
次にハードウエアについてもカセットテープのダビング機能が付加されたダブルカセットデッキへと技術的進歩は続き、音楽制作とダビングによるリリースを身近なものとした。このような時代へのアプローチ、リリースの速度感覚、デザイン感覚などの綜合が『VANIY TAPES』として結実する。

前述の『ロック・マガジン』02号では「SALARIED MAN CLUB」「KIIRO RADICAL」「DEN SEI KWAN」「INVIVO」「WIRELESS SIGHT」「NISHIMURA ALIMOTI」など多くのカセットテープを送ってきたミュージシャンが紹介されている。Vanity Recordsでは、時代の風景としての騒音群という意味を込めて『ノイズ・ボックス』と名付けられてセットリリースされた。後に『VANIY TAPES』としてリリースされるものである。『ノイズ・ボックス』の中には「私の耳は貝の殻 海の響きをなつかしむ」というジャン・コクトーの言葉がカードにされ同封されていた。
また羽田明子が送ってきたレ・ディスク・ドゥ・クレプスキュールよりリリースされたカセットテープ『From Brussels with Love』が紹介されている。内容はジョン・フォックス、ドゥルッティ・コラム、デア・プランの音楽の他にブライアン・イーノやジャンヌ・モローのインタヴュー(声)も含まれている。

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■V.A.『Vanity Demos』
それではBOXに格納された作品を紐解いていこう。


Vanity 8102『Love Song/System』
『ロック・マガジン』02号 1981/03 特集WHITE APOCALYPSE FEMALEの付録としてリリースされた。『ロック・マガジン』では世紀末特集としてWHITEHOUSE(ウィリアム・ベネットが1979年に設立したCOME ORGANISATIONからリリース)を全面的に紹介。同じく1979年に設立されBAUHAUS LEWIS&GILBERTなどをリリースしていた4ADレーベルを紹介している。また同じく1979年のCrass Recordsも紹介。Nurse with Woundのスティーヴン・ステイプルトン設立のUnited Dairiesも1979年だ。
「SYSTEM」は佐用暁子のバンド。メンバーは沢田弥寿子、大前裕美子、初田知子、芦田哉女の5人。『ロック・マガジン』01号 1981/01のP88-89に紹介されているが、文字通り、パフォーマンス的感性を身体化させているバンドだ。メンバーに翻訳のお願いをした記憶がある。それだけ『ロック・マガジン』との繋がりが強かったバンドといえる。
「SYSTEM」について阿木はアントサリーと違ってパフォーマンスの必然性を持っていないと語っていた。しかし彼女たちは時代のスタイルに合わせてその中で踊っているだけだ。楽しむための音楽、だから「Love Song」。「SYSTEM」は5人の情念的な織物のようだ。歌詞を紹介しておく。

「Love Song」
あなたの血管が動く/空気が動く/ねえ、地球っていつまでもつと思う?
あなたの心臓きこえる/時間がきこえる/ねえ、地球っていつまでもつと思う?
大きく口を開けてみて/私が手を突っ込むわ/あなたの心臓をつかんで/吹き出す夢、リズムの連続
あなたの血管が動く/あわせて私は踊る/あなたの心臓の音/あわせて私は踊る
空気が動く、時間が動く/私が動く、あなたが動く/記録する夢、リズムの反復/ねえ、地球っていつまでもつと思う?

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Vanity 2005『Today’s Thrill/Tolerance』
『ロック・マガジン』2006号 1980/07 特集ATTERNATIVE MUSICの付録としてリリースされた。Toleranceが一番進化した頃の音源であり既にエレクトロニクスの特性を発見していた音楽。歌ではなく声の中の響きと電子音の響きが同じものであると感じさせる。響きのコンクレート(具体)化はエロティシズムへの昇華する。ワクワクする快感とぞくぞくする恐怖は同義語であること理解させる。『ロック・マガジン』では「トレーランスは感性機械だ。論理ではない、運動力学とエロスが合体したものだ。」と表現した。まさしくリゾーム的音楽である。
Tolerance丹下順子が『ロック・マガジン』でのインタヴューにこのように語っていた。
「私にとって音楽ってのは、言葉とか考えだけで言うと、文学ってのは本だけで終わりだけど音っていうのは生活として重要だし、食事をするとか眠るとかと同じレベルで私の中で重要です。」
サイコロの1から6以外の目が次々に出てくるような興奮を憶える。それはToleranceを意味する寛容/受容の差異が生み出す震えるような感覚である。

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『VA/Demos』
今回のBOXセットのために提供された1981年当時に作られた未発表の音源集。この中に痕跡/意味を見出すことを試みる。非常に『ロック・マガジン』的な特徴を持ち無機質な物語の短編集のようなアルバム。工業神秘主義音楽であり、繰り返しの中に時代を逆なでする響きが潜んでいる。
リズムは感性のダンスミュージック。1980年代にこんな音楽を作っていたのかと驚いた。これら工業神秘主義音楽群は時代を予感するイメージを次々と提示してくれる。
収録されたのは、SALARIED MAN CLUB、ONNYK:Anode/Cathode(陽極/陰極、電解槽・電子管)、DEN SEI KWAN(電精館)の3アーティスト。

・SALARIED MAN CLUB
『ロック・マガジン』03号 1981/05特集DANCE – MACHINEの誌面でSALARIED MAN MANIFESTを掲載している。ここでは都市生活者の欲望と情報、消費と変容が記載されている。少し引用してみよう。「人間は、この世界の終わるまで、あらゆる物質を創造し、流通させ、消費する。そして、その回転をますます速めていくだろう。」
これは1981年に書かれたが、やがて自滅するであろう資本主義社会を、自覚的に崩壊させようとする加速主義のファクターを告げた宣言とも読めなくはない。
1.Perspective
遠近(画)法、透視画法、遠近図、遠景の見通し、眺望、前途、将来の見通し
2.Close My Eye
瞳をとじて
3.Intellctual Mirror
知性のすぐれた、理知的な、鏡
4.Epilogu
Epilogue 終章、終曲、または物事の結末 ⇔ プロローグ
・ONNYK
ONNYKこと金野吉晃の音楽は、ブライアン・イーノがプロデュースした「NO NEW YORK」(1978年)にクレジットされているザ・コントーションズのジェイムス・チャンスを彷彿とさせる。ただのファンクだけでなく、パンクとインダストリアルとテクノと即興と時代が加算されている音楽。
『ロック・マガジン』01号 1981/01 特集 INDUSTRIAL MYSTERY MUSIC=工業神秘主義音楽の誌面では、『Music』に参加したミュージシャン達の言葉とイメージをそのまま掲載した。その中で金野吉晃は「Anode/Cathode」名義での「-..Of The Passive Voice Through The Light 光を通しての受動態の・・・・・」について以下の文章を寄せている。
「『我々は《音楽》を聴き得ない、我々が聞くのは《音楽》の影である』とはロナルド・ザースの言葉であるが。我々が粗末な聴覚器を通じて、何の脈略もない空気振動に幻を見る(?)のは勝手であり、許された暴力だ。何も今更こんな事をいう必要もないのだが、この利用価値のない単なる磁束線密度の変化パターンは、磨滅しながらも拡散しつづけ、何の「イメージの裏うち」もないところである時突然に逆転され、回路を断たれる。つまりテープはそこで切れてしまうのだ。《音》は我々を記憶してくれないだろう。「見る」のを見ることはできない。では、「聴く」のを聴くことは・・・・・・?」
5.Talk in the Dark
暗がりでの会話
6.Homage to the Luminous Animal living in a Far an…..
敬意、尊敬  発光動物 遠くに住んでいる
7.My Stygma
汚名、恥辱
・ONNYK SOLO
8.Onnyk self trio
・TOZAWA+ONNYK
9.TOZAWA+ONNYK
・EXCEPT FROM HMN SESSION
10.Homemade Nosie X
・DEN SEI KWAN
11.Last
電精館1979年か1980年の作品。
遠方からイギリス人作曲家コーネリアス・カーデューのピアノ曲「アイルランドおよびその他の作品に関する4つの原則」のアイルランド民謡が幽かに聞えるが、弱い電磁気力でかき消されていく。聴き終わったら痕跡だけが残った。残った音は宇宙の縁にでも張り付くんだろうか。

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DEN SEI KWAN P’ remodel 19
『ロック・マガジン』02号 1981/03の評を受け1981-1982年に作成された。完成度が高くこのままToleranceの次にVanity RecordsLP13枚目の作品としてリリースしたかもしれない。
DOME的で工業神秘主義音楽の系譜の音楽だ。亡霊の聞えるはずのない声のようなリズムに内在する轣轆(車の軋み)。DOME(ドーム)とは天蓋の意味であり、古くからある平行宇宙説で語られる天蓋のことだ。地上界と天界は写し鏡となり結び付いた因縁を持つとされた。しかしながら天蓋に描かれた星辰も地上的な投影でしかない。この地上的な投影から天球儀が生まれて来た。カールハインツ・シュトックハウゼンは晩年最後の来日の際に、究極の音楽は完全な球形の中で平等にあらゆる方向から響く空間で体験することであると語っている。そして作品「リヒト・ビルダー(光=イメージ)」をそのような空間芸術として夢想していたのかも知れない。
DEN SEI KWANの天蓋音響もこのような体験が可能だろう。だからこの音楽には懐かしさや郷愁(ノスタルギア)みたいなものを感じる。前世に遠いどこかの惑星にいて聴いていたような音楽。

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Tolerance DOSE remodel 25
Toleranceは感性機械が奏でる言葉の音響としての織物だ。過去の空虚な亡霊の眠りを伴って、有毛運動の長い響きは幽かに渦巻きのような回転を繰り返す。
このアルバムは機械の中の異世界に誘われる心地よさがある。この時代の文字通りプログレッシヴ・ロックなのだ。
DOSEとは投薬/服用であり受動/能動の関係である。またToleranceは別に依存症薬物が効かなくなる耐性を意味する。まるで人間が存在しなくなった世界(地球)の映画館で上映される映画音楽、または壁紙と化してしまったタブローのようである。

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Tolerance DEMO remodel 26
天蓋に木霊するハルモニアの音楽のようだ。電子音と人間との合体。柔らかな水の中で手で触れられる耳毛細胞を振動させ電流を通して音のパルスを発信し続ける。
当時丹下順子はクラフトワークが好きだった。そして好きな理由は機械と人間との合体だといっていた。自分が機械に同化したサイボーグの内なる器官を感じながらエレクトロニクスと接していたのだろう。
しかしこの後なぜ封印してしまったのだろう。感性機械はもう動かないのだろうか。
否!今も彼女の生活の中で密かな拍動と共に響いているのだろう。
でもこのような音楽を聴いたら、これはこれで美しい。

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KYOU-034 Kassel Jaeger & Jim O’Rourke『in cobalt aura sleeps』

発売日:2020年5月15日
定価:¥2,500(-税別)
品番:KYOU-034

Amazon  https://amzn.to/3a7hxz3
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Kassel Jaeger & Jim O’Rourke
in cobalt aura sleeps

1. in cobalt aura sleeps 1
2. in cobalt aura sleeps 2
3. #0047AB(bonus track)

KYOU-034
15.May 2020 release
2.500yen+tax

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きょうレコーズよりKassel JaegerとJim O’Rourkeの新作が日本限定でCDリリース!CDのみのボーストラックとして3曲目に「#0047AB」を収録。Kassel JaegerはEditions Mego、Shelter Pressなどの先鋭的なレーベルから作品をリリースし、同時にGRM(フランス音楽研究グループ)の芸術監督を務めるなど近年の幅広い活動で注目を集める人物。Jim O’Rourkeとの共演は2017年の『Wakes on Cerulean』以来2度目となり、本作はサウンドにおいてもアートワークにおいてもそちらと共通するものが多いいわば続編のような内容となっている。

<作品概要>
本作『in cobalt aura sleeps』は2020 年5 月にEditions Mego よりLP とデジタル、そしてきょうレコーズよりCD でリリースされる。CD 化は日本のみでありこちらには3 曲目にボーストラックとして「#0047AB」が収録されている。
Kassel Jaeger は1981 年フランス生まれのFrançois J. Bonnet が音源制作やライブなどのアーティスト活動にて用いる名義である。彼は近年Editions Mego、Senufo Editions などの先鋭的なレーベルから単独での作品をリリースし、Stephan Mathieu、Oren Ambarchi、Giuseppe Ielasi など数々の作家とコラボレーションを行うだけでなく、本名名義でGRM(フランス音楽研究グループ)の芸術監督を務めるなど幅広い活動で注目を集めている人物だ。
そんな彼がこの度Jim O’Rourke との共演作『in cobalt aura sleeps』をリリース。この共演は2017 年の『Wakes on Cerulean』以来2 度目となり、本作はサウンドにおいてもアートワークのビジュアルイメージにおいてもそちらと共通するものが多いいわば続編のような内容となっている。
リュック・フェラーリの作品を想起させるような(虫の鳴き声や海鳴りのようなサウンドからなる)音の風景で静かに幕を開け、徐々に空間に広く染み渡るように音の情報量を増していく本作には、『Wakes on Cerulean』にもあった潮の満ち引きのようなゆったりとした変化やうねりがより懐深いかたちで存在し、様々に変質する電子音を中心とした豊かな音響の連なりがまるで聴き手の聴覚を徐々に深く揉み解すように機能する。テクスチャーに対する創意工夫はもちろん、それに溺れず音の集合を何かを物語る作品へと昇華すること、これは実験的もしくは抽象的な電子音楽において決して容易いことではないはずだが、両者の共演作はそれを至極ナチュラルに達成している。
よろすず

remodel 21 V.A.『VANITY Music, Tapes&Demos』

発売日:2020年4月14日
定価:¥13,000(-税別)
品番:remodel 21
仕様:□ポスター
□ブックレット16P
□ヴァニティ ロゴステッカー(大判)
□オリジナルボックス(135×135×37mm)
□CD11 枚組(紙ジャケット)BOX SET
□CD-1,2,11 はオリジナルマスターテープよりデジタルリマスタリング
□CD-3,4,5,6,7,8,9,10 はオリジナルカセットテープよりデジタルリマスタリング
□ジャケットデザインはオリジナルをベースに再制作

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V.A.
VANITY Music,Tapes&Demos

CD-1 Music 1(2 枚組-①)
CD-2 Music 2(2 枚組-②)
CD-3 SALARIED MAN CLUB-Gray Cross
CD-4 KIIRO RADICAL-Denki Noise Dance
CD-5 DENSEI KWAN-Pocket Planetaria
CD-6 INVIVO-B.B.B.
CD-7 WIRELESS SIGHT-Endless Dark Dream
CD-8 NISHIMURA ALIMOTI-Shibou
CD-9 DENSEI KWAN-P’
CD-10 V.A.-Demos
CD-11 SYSTEM-Love Song

remodel 21
14.Apr 2020 release
13.000yen+tax

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2019年10月発売と同時にソールドアウトしたヴァニティ「Musik」(2CD)と「Vanity Tapes」(6CD)待望の再発!!未発表音源2枚と未CD化音源1枚を加えた11枚組CDボックス。

<作品概要>
CD-1,2 V.A.「Music」
全国各地からロックマガジンへ送られてきた100 本以上のカセット・テープの中から選出された13 組を収録した2 枚組コンピレーション。手頃になったシンセサイザーやマルチ・トラック・レコーダーの登場で80 年代中期から世界中のアンダーグラウンド・シーンで活性化するエクスペリメンタルな宅録テープ音楽発生初期のモニュメント作品。テープ・ヒス・ノイズまみれでロウファイな音質を超えた様々なアイデアとDIY スタイルの集積。オリジナルLP リリース時のスペル・ミス、曲名誤記を訂正。

CD-3 SALARIED MAN CLUB「Gray Cross」
ホワイトカラーとしてのアイデンティティを高らかに宣言するサラリーマン3 人組が奏でる頭脳労働インダストリアル・サウンド。京都dee-Bee’s でライヴ活動も行っていた。イーレムのコンピレーション・アルバム『沫』にも参加している。オリジナル・テープ・リリース時の曲名誤記を訂正。

CD-4 KIIRO RADICAL「Denki Noise Dance」
鳥取県米子市の持田雅明による『黄色ラジカル』。繊細で隅々まで計算の行き届いたミニマル電気ノイズの乱舞は阿木から「今の時点では日本のエレクトロニクス・ミュージックの頂点」と絶賛された。『Music』にも5 曲収録されている。

CD-5 DENSEI KWAN「Pocket Planetaria」
福島市の斎藤英嗣による『電精 KWAN』。オリジナル・テープには稲垣足穂めいた ” 因果交流、電燈は少年のズボンの隠しでカチコチなる一箇のビー玉でありま す(ポケット・プラネタリーム概論)” というテキストが添えられていた。電子の精が騒めく箱庭的ノイズ世界。

CD-6 INVIVO「B.B.B.」
逗子市のタチバナマサオによる作品。前半6曲は『In Vivo:生体内』、後半6曲は『In Vitro:試験管内』と生物学用語が付けられた顫動する音のバイオミュータント生成実験の記録。『Music』にも1曲収録されている。

CD-7 WIRELESS SIGHT「Endless Dark Dream」
ミニコミ誌『無線音楽』を発行するワカエ・クニエのプロジェクト。ピアノ、メトロノーム、ラジオ・ノイズだけを使い、静謐でポスト・クラシカルなアンビエント空間をスケッチ。映像と舞踏を絡ませたパフォーマンスも行う。

CD-8 NISHIMURA ALIMOTI「Shibou」
西村有望のソロ名義作『脂肪』ギター/ベース/ドラム/ヴォイスのバンド編成で初期アモン・デュール、メタボリストなどを想起させるプリミティヴで重く引き摺ったオルタナティヴ・サイケデリック・ロックを聞かせる。

CD-9 DENSEI KWAN「P’」(未発表)
阿木譲の所蔵カセットテープから発掘された未発表アルバム。CD-5の作風がより深化し構成力が高まっている。40年近く前の作品とは思えない斬新さ。

CD-10 V.A.「Demos」(未発表)
「Music」と「Tapes」に収録された3アーティスト(SALARIED MAN CLUB、ONNYK:Anode/Cathode、DENSEI KWAN)から新たに提供された当時のデモ音源を編集したコンピレーション。

CD-11 SYSTEM「Love Song」(初CD化)
大阪で短期間活動した女性5人組。ロックマガジン誌1981年36号付録ソノシート(Vanity8102)。オリジナルマスターテープを宇都宮泰がリマスタリング。ライヴではアーント・サリー、ティーネイジ・ジーザス、マラリア!を混合したようなアグレッシヴな楽曲を展開
していた。

remodel 22 TOLERANCE『TOLERANCE』

発売日:2020年4月14日
定価:¥7,000(-税別)
品番:remodel 22
仕様:□ポスター2 種
           □ヴァニティ ロゴステッカー(大判)
           □オリジナルボックス(135×135×22mm)
           □CD5 枚組(紙ジャケット)BOX Set
           □CD-1,2 はオリジナルマスターテープよりデジタルリマスタリング, オリジナルレコードジャケットを再現
           □CD-3,4 はカセットテープよりデジタルリマスタリング
           □CD-5 はソノシート(flexi disc)よりデジタルリマスタリング

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tolerance
tolerance

CD-1 Anonym(79 年)
…「VANITY BOX」リリースCDと同内容
CD-2 Divin(81 年)
…「VANITY BOX」リリースCDと同内容
CD-3 Dose(80 年)
…未発表 初CD 化
CD-4 Demos(不明80 年頃)
…未発表 初CD 化
CD-5 Today’ s Thrill(80 年)
…初CD 化

remodel 22
14.Apr 2020 release
7.000yen+tax

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阿木譲が主宰したヴァニティ・レコードから2枚のLPと1枚のソノシートをリリース、阿木自身がヴァニティ作品のフェヴァリットに挙げ、英エクスペリメンタル音楽の大御所ナース・ウィズ・ウーンドのリスニング・リストにも選出された丹下順子:トレーランス。未発表音源を含む集大成5枚組CDボックス。

<作品概要>
CD-1 Anonym
丹下が奏でるエレクトリック・ピアノ、シンセサイザー、簡素なエレクトロニクス、かぼそく呟くような朗読に加えて、吉川マサミのノイジーなスライド・ギターがゆっくりと渦巻きながら渾然一体となり、モノトーンで抽象音化されたアニムスが立ち現れるデビュー・アルバム。

CD-2 Divin
セカンド・アルバム。タイトルはフランス語で『神』の意味。前作で聞けたギターは後退、ドラムマシーンの躍動感とエレクトロニクスの律動が強調され、無機的で曇った空間にほのかな色彩感が加わり不思議な音響が創出される。T-5 では角谷美知夫(腐っていくテレパシーズ)の『ぼくはズルいロボット』の詩を流用。

CD-3 Dose(未発表)
阿木譲の所蔵品から発見されたカセットテープをデジタルリマスタリング。「Dose」とのみ記されており各曲名は不明。「Anonym」(79 年)と「Divin」(81 年)の中間に位置付けられる音楽性を持ち、1 枚のアルバムとしてほぼ完成している。

CD-4 Demo(未発表)
CD-3と同様、発掘カセットテープからの音源。荒涼としつつ何処か安らぎのある風景が走馬灯のように浮かんでは消える音のラフ・スケッチ。

CD-5 Today’ s Thrill(初CD 化)
ロックマガジン誌1980 年32号付録ソノシート(Vanity2005)として発表されたアルバム未収録曲。ソノシートから宇都宮泰がリマスタリング。

remodel 28 V.A. 『VANITY DEMOS』

発売日:2020年4月14日
定価:¥7,000(-税別)
品番:remodel 28
仕様:□ブックレット8P
□ヴァニティ ロゴステッカー(大判)
□オリジナルボックス(135×135×22mm)
□CD6 枚組(紙ジャケット)BOX SET
□CD-1,2,4,5 はオリジナルカセットテープよりデジタルリマスタリング
□CD-3, はオリジナルマスターテープよりデジタルリマスタリング
□CD-6 はソノシート(flexi disc)よりデジタルリマスタリング

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V.A.
VANITY Demos

CD-1 DENSEI KWAN-P’ /
同時リリースVanity Music,Tapes&Demos(11CD BOX)の CD-9 と同内容
CD-2 V.A.-Demos /
同時リリースVanity Music,Tapes&Demos(11CD BOX)の CD-10 と同内容
CD-3 SYSTEM-Love Song /
同時リリースVanity Music,Tapes&Demos(11CD BOX)の CD-11 と同内容
CD-4 TOLERANCE-Dose /
同時リリースtolerance(5CD BOX)の CD-3 と同内容
CD-5 TOLERANCE-Demos /
同時リリースtolerance(5CD BOX)の CD-4 と同内容
CD-6 TOLERANCE-Today’ s Thrill /
同時リリースtolerance(5CD BOX)の CD-5 と同内容

remodel 28
14.Apr 2020 release
7.000yen+tax

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ヴァニティから作品を発表した5アーティスト:TOLERANCE、DENSEI KWAN、SALARIED MAN CLUB、ONNYK:Anode/Cathode、SYSTEMの未発表音源と初CD化音源を収めた6枚組CDボックス。阿木譲の所蔵カセットテープから発見された作品や今回新たにアーティスト側から提供された楽曲、ロックマガジン誌付録ソノシート曲など貴重な記録作品集。

<作品概要>
CD-1 DENSEI KWAN-P’(未発表)
阿木譲の所蔵カセットテープから発掘された未発表アルバム。40年近く前の作品とは思えない斬新さ。

CD-2 V.A.-Demos(未発表)
「Music」と「Tapes」に収録された3アーティスト(SALARIED MAN CLUB、ONNYK:Anode/Cathode、DENSEI KWAN)から新たに提供された当時のデモ音源を編集したコンピレーション。

CD-3 SYSTEM-Love Song(初CD化)
大阪で短期間活動した女性5人組。ロックマガジン誌1981年36号付録ソノシート(Vanity8102)。オリジナルマスターテープを宇都宮泰がリマスタリング。

CD-4 TOLERANCE-Dose(未発表)
阿木譲の所蔵品から発見されたカセットテープをデジタルリマスタリング。「Dose」とのみ記されており各曲名は不明。「Anonym」(79 年)と「Divin」(81 年)の中間に位置付けられる音楽性を持ち、1 枚のアルバムとしてほぼ完成している。

CD-5 TOLERANCE-Demo(未発表)
CD-4 と同様、発掘カセットテープからの音源。荒涼としつつ何処か安らぎのある風景が走馬灯のように浮かんでは消える音のエスキース。

CD-6 TOLERANCE-Today’ s Thrill(初CD化)
ロックマガジン誌1980 年 32 号付録ソノシート(Vanity2005)となったアルバム未収録曲。ソノシートから宇都宮泰がリマスタリング。

KYOU-033 AUBE『2000-2003(6CD BOX)』

発売日:2019年11月15日
定価:¥6,000(-税別)
品番:KYOU-033

Amazon  https://amzn.to/2mHHK3i
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AUBE / 2000-2003(6CD BOX)

CD-1 2000
CD-2 2001 VOL.Ⅰ
CD-3 2001 VOL.Ⅱ
CD-4 2002 VOL.Ⅰ
CD-5 2002 VOL.Ⅱ
CD-6 2003

KYOU-033
15.Nov 2019 release
6.000yen+tax

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AUBEの活動円熟期と言える2000年代のライヴ演奏を収録した一連の「G.R.O.S.S.」CD-R作品を年代順に再編集して、2017年11月から6枚連続リリースしたCDをボックス化したものが本作である。CD6枚組BOX !!

<作品概要>
この時期のAUBEは初期のノイズ奔流から発展し、厳選したトーンをレイヤー状に丁寧に積み重ねた電子音響へと変化したが、常に一つの演奏において一つの音素材のみを用いるというコンセプトは変わらず貫かれている。
CD-1 2000(KYOU-015)
(1) 2000年10月27日、ベルギー:ブリュッセルでの演奏を収録。
(2) 同年4月5日、カナダ:モントリオール。
CD-2 2001 Vol.1(KYOU-016)
(1) 2001年12月14日、大阪心斎橋のアート・ギャラリーFukugan Plus。
(2) 同年2月26日、大阪難波ベアーズ。
CD-3 2001 Vol.2(KYOU-017)
(1) 2001年6月17日、カナダ:モントリオールにある使われなくなった巨大なサイロ(穀物貯蔵庫)を楽器/音響空間として活用するユニークな試み「サイロフォン」プロジェクトにカールステン・ニコライ:アルヴァ・ノトらと共に招聘された時の演奏。
(2) 同年6月21日、米ミシガンのラジオ局WHFRで行った放送用ライヴ。
CD-4 2002 Vol.1(KYOU-018)
(1) 2002年5月26日、難波ベアーズで毎年開催されるノイズ祭典「Noise May-Day」出演時。
(2) 同年3月29日、心斎橋Fukugan Plus。1980年代初頭にAMDEK社が組み立てキットとして販売したパーカッション・シンセサイザーPCK-100を使用。
CD-5 2002 Vol.2(KYOU-019)
(1) 2002年5月3日、芦屋山村サロン「阪神淡路大震災復興支援チャリティ・コンサート」での演奏。
(2) 同年5月2日 山村サロンでのライヴ前日に京都東山の自宅Studio Meccaで録音したリハーサル音源。
CD-6 2003(KYOU-020)
(1) 2003年4月25日、大阪新世界ブリッジ
(2) 同年5月16日、京都三条カフェ・アンデパンダン
(3) 同年10月12日、京都木屋町club EAST
(東瀬戸悟)

Vanity Recordsと『ロック・マガジン』1978-1981

Vanity Recordsと『ロック・マガジン』1978-1981
                 嘉ノ海幹彦(元ロック・マガジン編集/FMDJ)

『ロック・マガジン』が一番活動的だった1979年から81年にかけて、編集長・阿木譲の元で編集を行ない、生活も共にしながら濃密な時間を過ごした。この体験をもとに、インディーズ・レーベルの先駆けであったVanity Recordsの内実を書いておこう。

■Vanity Records始動
Vanity Recordsは1978-1981年刊行の『ロック・マガジン』と連動していた。というより『ロック・マガジン』の延長線上に存在し多数のアーティスト作品がリリースされた。
そのためリリース作品は『ロック・マガジン』誌面で展開していた音楽状況やコンセプト、思想、時代性が色濃く反映している。
またその時々で最先端のアーチストを選び、旬の作品群だということを強く意識して製作された。
『ロック・マガジン』15号(1978年1月号)のLAST WORDには、2年間暖め続けていたVanity Recordsの活動を開始することと、Vanity Records第一弾『浄/DADA』を1978年6月25日にリリースすることがすでに記載されている。以上の事柄をふまえると1976年の『ロック・マガジン』の創刊から阿木の念頭には既にvanity構想があったことが伺える。
併せて非常に興味を引くのが阿木と工作舎『遊』の松岡正剛との交流が始まったことが書かれていることであり、その後数年に亘り『ロック・マガジン』と『遊』は雑誌や編集を超えて人的交流も盛んに行われることになる。
Vanity Recordsもその例外ではなく、工作舎との関連から『遊』などの出版物を中心にパステル画を数多く描き装丁も手掛けていたまりのるうにいが、VANITY0002『Crystallization/SAB』1978/09のジャケットを描くことになった。
■Vanity Records当初の方針
Vanity Recordsに関して『ロック・マガジン』26号 特集「モダーン・ミュージック」(1979年8月号)に以下の記載がある(抜粋)
《vanity recordsは無名だが才能をもったアーティストにレコード製作という機会を活用し、このレーベルを足場により広範囲に活動できことを目的として発足された。
  Vanity Records方針として
  ①エレクトロニクス・ミュージック
  ②”家具としての音楽”シリーズ(現代音楽)
  ③歌謡曲業界への進出
  ④実験的な新しいヴィジョンを持つ音楽
   (パンク、ニューウエイヴ、フリーミュージック、現代音楽等)
  を追求し、レコード制作を行う。
  現在送られてくるテープによりオーディションを実施中。》
ここで②”家具としての音楽”シリーズ(現代音楽)について、Vanity Records発足当初、構想していたことを記載したい。
阿木は、イギリスの作曲家ブライアン・イーノが明確なコンセプトをもってリリースしたObscure Recordsの10枚組シリーズ(1975-1978)を強く意識していた。Obscureとは、Weblio 英和辞典によると、はっきりしない、ぼんやりした、不明瞭な、あいまいな、(複雑すぎて)あいまいな、解しがたい、人目につかない、へんぴな、世に知られない、(薄)暗いとある。その直後イーノはAMBIENTレーベルとして環境音楽(地図音楽)を展開することになる。
それに対して構想されていたVanity Recordsの”家具としての音楽”シリーズは中国北宋時代の「十牛図」をコンセプトとしていた。「十牛図」とは禅の修業を牧牛にたとえその過程を10の段階に分け「図」と「頌(じゅ)」により表現されたものだ。
「図」は水墨画で表現され「頌」はその絵に添えられた象徴的な言葉である。
戦後、思想家鈴木大拙(1870-1966)はアメリカで東洋思想を紹介しその中で「十牛図」も英訳した。鈴木大拙はアメリカの作曲家ジョン・ケージを始め様々なアーティストに強い影響を与えた。1972年にイギリスのSSWキャット・スティーヴンスが「十牛図」に沿ったアルバム『Catch Bull At Four』(「十牛図」の4枚目「得牛(とくぎゅう)」)を発表しており、阿木も愛聴していたので、「十牛図」のことは既知のことだった。
Vanity Recordsの「十牛図」は、音楽という時代表象と禅的な普遍性をもった10種類の表象(シーニュ/シニフィエ)とを時代精神というニューロンで結び付けたいという思いをもって企画された。
つまり、「十牛図」の「図」と「頌」に「音楽」を加えることにより、音楽という時代表現を通じて考える(公案)ための有用音楽は10枚組みLPとしてリリースが計画されていた。
Vanity Recordsの「家具の音楽」は単なるサウンド・インスタレーションとは全く異なり、問いかける有用性のある家具=道具としてのアンビエント・ミュージックとなるはずだった。しかし残念ながら実現することはなかった。
だが、そのコンセプトは確実に『BGM/Back Ground Music』や『Ready Made/Normal Brain』の作品に引き継がれている。(後述)
また、Vanity Recordsから”雅楽(四天王寺「蘇莫者」)”、”ヒカシュー”、”ノイズ(工藤冬里+大村礼子)”、”ウルトラ・ビデ”のリリース計画があったことを記載しておく。
■『ロック・マガジン』と連動したVanity Records展開
『ロック・マガジン』で告知し、その主旨に賛同する数多くのアーティストによる作品が編集室に送られてきた。
またカセットテープを持参し作品に対する考えを熱く語るアーティストもいた。
Vanity Recordsではアーティストが予め作成してきたテープを、録音スタジオでミキシングとリマスタリングをすることが多かった。
またジャケット・デザインやBOXの中のおまけも含め、装丁は全て阿木が行なった。
レコードのリリース枚数は各作品につき300から500枚のプレスだったと記憶している。
Vanity Recordsとは別に、『ロック・マガジン』1979年10月号~1982年1月号の各号には付録のソノシート(全て片面プレス)が添付されていた。各号の特集に合わせて多種多様なものが合計で12枚作成された。この内容は、Vanity Recordsからのミュージシャンによる未収録曲を含むカット・リリース、コンピュータ合成音響音、二十世紀初頭の音声詩朗読、取材時のインタヴューやライブ音源などである。
※内容の詳細については東瀬戸作成のWEB用補足資料リストを参照。

■『ロック・マガジン』主催Vanity Records関連イベント
『ロック・マガジン』主催の初めて対外的なイベントとして、1979年12月23日「NEW PICNIC TIME」を大阪芸術センターで開催した(協賛・ドイツ文化センター)。Vanity Recordsもミュージシャンによるライヴ、講演、ビデオ・アート、ジャケット・アート展示など、様々なジャンルのアーティストが一同に集合したイベントだった。”ミスター・カイト”(東京ロッカーズ)、”ノイズ(工藤冬里+大村礼子)”、”アーント・サリー”、”TOLERANCE”、”DADA”、”ウルトラ・ビデ”、あがた森魚、SAB、藤本由紀夫、向井千恵、端山貢明、松岡正剛、鋤田正義、ブライアン・イーノのヴィデオアート、グループ・メタモルフォーゼの展示などマルチメディアなイベントだった。
イベント名の「NEW PICNIC TIME」は、新しい時代の新しい遊び場の象徴として、”ペル・ウブ”のアルバム名より拝借した。
■Vanity Records
VANITY0001『浄/DADA』 1978/07
『浄/DADA』はVanity Records第1作目を飾るにふさわしい作品だ。ユーロプログレの系譜にある純粋に宇宙的音響の世界を表現した。初期の『ロック・マガジン』創刊~1977年1月(6号)を象徴している音世界であった。
時代性を排して外的世界の音連れは1曲目から地上の鼓動へと連動する。
天上界からのエーテル力は物質を溶かす働きがある。その意味で『浄/DADA』は1978年時点の天上の音楽ともいえる。
世紀末ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンが目論んだ神秘体験としての音の響きが、電子音楽の衣をまとい”DADA”の音楽として現前する。
VANITY0002の『Crystallization/SAB』では、宇宙に充満するエーテル体は『浄/DADA』とは異なった地球深部の凝縮力(=Crystallization)に向かい、この2作品でセットを形成している。

VANITY0002『Crystallization/SAB』1978/09
アルバムジャケットは、フランスの思想家ロジェ・カイヨワの『石が書く』に掲載された瑪瑙と、まりのるうにいによる工作舎のシンボルマークである土星のパステル画をデザインしたものだ。
土星の輪と瑪瑙の輪が弱い相互作用で存在している。惑星と地球との関係の中に”SAB”の音楽が響く。『Crystallization/SAB』はどこまでも内的でスペキュレーティブな作品だ。
物質が結晶化するにはほんの少しの不純物が必要だが、”SAB”の不純な響きがフランスの詩人シャルル・ボードレールの『コレスポンダンス(霊的交感)』のように「芳香と色彩と音響とが呼応しあい」結晶化する時の音楽を奏でている。
カイヨワは「石の中に宇宙の謎が文書として記録されている」という。まさに結晶化とは凝固する瞬間に受苦を伴いその魂を受肉させる。宇宙からのエーテル体の地上への働きかけに凝縮力があるからだ。
SABは、この作品を発表した後、ライフスタイルも変えインドの神秘思想家バグワン・シュリ・ラジニーシに師事し徐々に音楽活動から遠ざかっていった。
『Crystallization/SAB』は、彼のその後の精神活動を予感させる作品だ。

VANITY0003『アーント・サリー/アーント・サリー』 1979/05
パンクミュージックは時代への直接的キリスト衝動の発露としての音楽だ。それはその時代を生きた人だけが体験できる特権かもしれない。その後は心象風景となり、常に遠ざかっていく。
ただ状況を言語化しその歴史を探索し、その表象を発掘するのが歴史哲学としての役割だ。散歩した街路のショウウインドウの中に、ふらっと入った喫茶店の紅茶の香りに、さっき見かけた黒い犬に、古い雑誌の一枚の写真に、見逃せない痕跡を蜘蛛の糸のように絡めとる。ヒューのボーカルとビッケの引っかくようなギターが時代(いまここ)を逆なでする。
そして”アーント・サリー”は「文学」という鎧を纏い、武装し※ 無謀ではなく賢く果敢に戦場から撤退しながら、蝸牛の足跡のように時代へ痕跡を残した。そんなバンド、”アーント・サリー”の作品は、時代の恩寵としての音楽だ。
僕は通勤の護送列車の中でウォークマンに録音したアーント・サリーを繰り返し聴き時代からの逃走を計画していた。ハーメルンの笛に導かれるように。
”アーント・サリー”は、”INU”、”ウルトラ・ビデ”などと共にライブハウス心斎橋「バハマ」でよく聴いた。心斎橋「バハマ」という名は歴史に記憶されるべきだ。
※「文学的武装」とは、ウジェーヌ・イヨネスコの『禿の女歌手』やブレーズ・サンドラールの『世界の果てまで連れてって 』などを表象のファッションを纏うこと。

VANITY0004『ANONYM/TOLERANCE』1979/10
”TOLERANCE”は電子音楽とエロティシズムの系譜の音楽であり、匿名性のパンクミュージックの香りをほんの少し残す音楽でもある。
まだ言葉は記号ではなく意味するものを持っていた時代の記憶。丹下順子のプロジェクトはそんな痕跡が少しだけ感じられる。
エレクトロニクスは誰にでもどんな時代でもエロティックな響きを与えてくれる。
ポスト構造主義が日本の地霊に受肉するための恩寵なのか。電子音楽の拡張性は体験(深く聴くということ)を通じて聴き手(自分)を変容させる。
”ANONYM”とは匿名の意だが、なにものでもないもののための音楽だ。

VANITY0005『乗物図鑑/あがた森魚』1980/04
阿木から、昔からの知り合いであるあがた森魚から、再起を図るために手を貸してほしいと依頼されているとの話があった。当時のあがた森魚の事情は知らないし聞いてもいない。ただその取っ掛かりとして Vanity Recordsからアルバムをリリースするということだった。タイトルは『乗物図鑑』。
阿木の「コンセプトはテクノ・ポップであり、泣きの曲はなしだよ」、と始まった。
あがた森魚は自分のことを”A児(えいじ)”と名のった。製作期間は一週間。通常、録音からミックスまで一か月間近くを要する作業を、Vanity Recordsでは経費の関係から一日で”完パケ”まで持っていく慣わしだったが、あがた森魚の録音には二日間をかけるという”特別待遇”であった。
今から考えると、それでもたった二日間だった!!
メイン・サポーターである『Crystallization』のSABとは、その時に初めて会った。バグワン・シュリ・ラジニーシに師事していたSABはホーリー・ネームを名乗った。「僕はSABではない。これからはホーリー・ネームで呼んでくれ」と言ったが、みんなSABと呼んだ。当時珍しかったギター・シンセサイザーを持参していた。
サポートメンバーである藤本由紀夫とは大阪北浜の〈三越劇場〉で彼の作品を発表した時に声をかけて知り合った。事前打合せの段階で、あがた森魚と同じく稲垣足穂のファンである藤本由紀夫が足穂と瀬戸内晴美(寂聴)とのNHKラジオでの対談をカセットで保有しており、話の途中で足穂が飛行機の口真似をし始める箇所を編集し、「エアプレイン」(A面・四曲目)のイントロで使用した。足穂の声の後から藤本由紀夫のコルグのシーケンサーが演奏された。
このアルバムの「Rの回答」(B面・三曲目)で向井千恵の胡弓が聞ける。彼女は現在も定期的に即興演奏を中心にライヴ活動をしている。『ロック・マガジン』を通して知り合ったドラムは”飢餓同盟” の安田隆と”ウルトラ・ビデ”のTaiqui、ギターが”コンチネンタル・キッズ”のしのやん(篠田純)と”INU”の北田昌宏、そして『ロック・マガジン』編集の明橋大二がピアノを弾いている。
この録音でプログレ、現代音楽、エレクトロニクス、パンク、即興演奏の違った音楽の方向性を模索する多種多様のミュージシャンが集まったのも1979年を象徴している。
たった一週間でテレックスの「Twist a St.Tropez」は「恋のラジオ・シティ」(A面・一曲目)に、ジョイ・ディヴィジョンの「She’s Lost Control」は「サブマリン」(A面・三曲目)として結実した。「サブマリン」のバック・ボーカルは、ヒュー、向井千恵、竹内敬子。「連続香水瓶」(B面・四曲目)のミニマル・ミュージックはテリー・ライリーを想起させる。
コンセプトがテクノ・ポップだが、最後に録音した「黄昏ワルツ」(B面・二曲目)は、あがた森魚が一人でピアノを弾きながらの”一発録り”だった。
アルバムジャケットには、第2次世界大戦敗戦直後のドイツの写真を引用しデザインしている。敗戦国ドイツの少年が瓦礫の上で敵国アメリカの輸送機に手を振っている写真。まるで現代の少年十字軍だ。

VANITY0006『R.N.A.O Meet P.O.P.O/RNA ORGANISM』1980/05
佐藤薫の初期プロデュース作品。
”RNA ORGANISM”の一番初めの出現は、Vanity Recordsのミュージシャンが多く出演した1979年12月のロックマガジン主催のイベント「NEW PICNIC TIME」の匿名の観客としてだった。
頭髪を緑色に染めた集団。それは佐藤薫率いる時代に拮抗した過激派であり他の観客を刺激した。
当時佐藤薫が主宰(拠点?)していた京都河原町のディスコ「クラブ・モダーン」では、ダンスミュージックとして西アフリカの民族音楽をかけていた。何の加工もせずそのままの音源でリスナー(参加者)は朝まで踊っていた。
その「場所」は僕らが名付けたエスノ(エスノミュージックとテクノとを融合した)ミュージックの実験空間でもあったのだ。当然エスノにはジェイムズ・ブラウンなどのR&B、イヌイットの狩猟の音楽、日本の舞楽なども含まれていた。
イギリスでは”THE POP GROUP”や”THE SLITS”の音楽が新しい原始リズムを刻んでいた。二十世紀初頭ロシアの作曲家イゴーリ・ストラヴィンスキーの”春の祭典”のように…。
佐藤薫は現在も時代精神を反映した個人レーベル「フォノン」で時代の響き(ドローン)を発信し続けている。二十一世紀音楽は「響き」をいかに時代の背景音として捉えるかにかかっている。現在の彼の音楽的冒険はいわば二十一世紀にメタモルフォーズし再登場したパンクミュージックだ。

VANITY0007『SYMPATHY NERVOUS/SYMPATHY NERVOUS』1980/07
新沼好文の『SYMPATHY NERVOUS/SYMPATHY NERVOUS』は、商業主義的音楽集団”Yellow Magic Orchestra”に対する『ロック・マガジン』としての返答だ。
「YMO」の音楽のように時代に迎合した表象ではなく、あくまでも個的に自作の電子楽器UCGシステムやコンピュータを駆使し、夭折したドイツ表現主義詩人ゲオルク・ハイムのアフォリズムに登場する古参兵のように「それにもかかわらず敢えてなお」の精神性で作成された。
『ロック・マガジン』2007号(1980/09)誌上で新沼は、まず自分は音を生産する機械主義者であり、作品を作る行為のことを編集と語っている。また機械を使っている時にエロティシズムを感じることもあるとも。
だからこそ”SYMPATHY NERVOUS”の音楽は、エレクトロニクスでなければならなかったし、リアルな時代の快楽主義者達の音楽であり得たのだ。

VANITY0008『BGM/Back Ground Music』1980/09
白石隆之の作品。まだ高校生だった彼は大阪に来てVanity Records作品の多くをレコーディングしたサウンドクリエイションにおいて1日で録音した。
『ロック・マガジン』では「家具の音楽」を特集していたが、「家具の音楽」とは、元々フランスのベル・エポック時代の作曲家エリック・サティが「家具のように、そこにあっても日常生活を邪魔しない音楽、意識的に聴かれることのない音楽」をコンセプトとしていたものだ。「家具の音楽」の思想はその後ブライアン・イーノによって「Ambient Music」へと昇華させた。
Vanity Recordsの『BGM/Back Ground Music』(1980/09)もこの系譜に位置される。
1980年代以降音楽が新たな展開を見せる前夜に出された「Erik Satie Funiture Music特集」号(1980/11)では、サティの音楽や思想そのものの捉えなおしを行い、工業神秘主義音楽などオルタネイティヴな世界への準備を行ったのである。
その展開としての”Back Ground Music”は、ブルガリアの思想家エリアス・カネッティ『群集と権力』で記述されているアーケードの中の群集、大衆の中に存在する潜在意識、意識下で蠢く醒めた欲望機械のための音楽だ。
群集の複数の足音は、ある瞬間から創発性をおび時代の意味深長なリズムとなり、体内整流音楽へと変化する。『BGM』は突如として身体に現れる創発性の音楽として意識された。
ちなみに同じタイトルの「YMO」の『BGM』は1981年3月にリリースされたが、全く異なる音楽である。
なお現在、白石隆之は80年代に体験した音楽を昇華し今日の音としてリリースを予定しているときく。さてどんな響きを提供してくれるか楽しみだ。

VANITY0009『Ready Made/Normal Brain』1980/10
藤本由紀夫の『Ready Made/Normal Brain』は、”Kraftwerk”の「The Man Machine」の『ロック・マガジン』的回答としての音楽だ。
藤本由紀夫は、”Kraftwerk”の音楽についてエレクトロニクスをピュアに使用していることを評価していた。ピュアでありながら緻密、ジョン・ケージの音楽にも通低する。
1962年10月に来日した際にジョン・ケージが鈴木大拙と交わした会話で、ケージが「先生の講義で忘れられない言葉は、”山は山である。春は春である。”という名句です。私はその時に”音は音である”と霊感のように思ったんです。」と話している。
この大拙の言葉は、十牛図第9の「返本還源」のことを示している。
続けて大拙の「現代音楽というものは、非常に知的なものだということをいう人がおるが」という問いに対して、ケージは「それがあんまり、知的なものにならないように、一生懸命努力しているのです。知的なものじゃつまらない」「音は、ただ音であるようにしたいと」と答えている。(『芸術新潮』1962年11月号より)
『Ready Made/Normal Brain』に関連して『ロック・マガジン』01(1981年01月号)では”Normal Brain”のコンセプトシートを掲載した。
”Normal Brain”の由来は、19世紀イギリスの作家メアリー・シェリーのゴシック小説の『フランケンシュタイン』では若きフランケンシュタイン博士が死者を蘇えらせようとして、Normal BrainとAbnormal Brainとを取り違え「怪物」を生み出してしまった物語だ。藤本由紀夫は1世紀以上を経て、フランケンシュタイン博士が取り違えた「怪物」の脳を”Normal Brain”として蘇えらせた。
また、アルバムタイトルの『Ready Made』はフランスの美術家マルセル・デュシャンが、1917年に男性用小便器に偽のサインを入れ、「Fountain(泉)」というタイトルをつけて公募展に応募し、これは「これはアート作品だ」と言って、本人自らが「レディメイド」と呼んだことからの引用である。
デュシャン・フリークである藤本由紀夫らしい。
デュシャンは、音楽芸術に対しても「音楽的誤植」という概念も打ち出している。
イギリスの作曲家デヴィッド・カニンガムの「Grey Scale (1977)」の「Error System」もデュシャンを強く意識した作品だ。
藤本由紀夫は2015年デヴィッド・カニンガムとロンドンで二人会を開催したり、現在も交流しているそうだが、音楽へのアプローチはお互い影響を与え合っているのだろう。
藤本由紀夫は、”Normal Brain”以降も「音は、ただ音であるようにしたい」と思索し続けている。

VANITY0010-11『2LP MUSIC/V.A.』1980/12
ロシアのセルゲイ・エイゼンシュタイン監督映画『戦艦ポチョムキン』の中で登場する戦艦の叛乱に呼応するオデッサ市民のように、『ロック・マガジン』の呼びかけに多数のミュージシャンが作品を送ってきた。
”MUSIC”は音楽と題された作品だが、時代に対しての蜂起した作品群だ。その蜂起の仕方は13組のアーティストで多種多様であり、ひとつとして同質のものはない。
『ロック・マガジン』では、ジェネシス・P・オリッジが「industrial music for industrial people」として展開したindustrial musicを工業神秘主義音楽と名付けた。80年代の音楽は、この工業神秘主義音楽に代表される実験的でオルタナティヴな方向性へと変わっていく。
ロックでは”Cabaret Voltaire”や”Bauhaus”が登場し”Adam and the Ants”が「未来派宣言」を歌っていた。

VANITY0012『DIVIN/TOLERANCE』1981/03
『DIVIN/TOLERANCE』はVanity Recordsを代表する実験的で新しい時代に対する新たなヴィジョンを感じさせる電子音楽(エレクトロニクス・ミュージック)で、丹下順子による新「工業神秘主義」音楽だ。
フランスのベル・エポック時代にロシアの作曲家ニコライ・オブーホフは十二音技法を開拓した後「クロワ・ソノール」という十字架を模した電子楽器を開発した。時代への強い衝動は微分音階から無限音階を通り越し響きそのもののエーテル化を企てた。
この地下鉱脈のように引き継がれたかすかな電子音は、フランス語で「神」を意味する”DIVIN”という名を冠した作品の中で聴くことができる。
地上界と天上界の間で凝縮と溶解を螺旋状に繰り返すエレクトリックな音響音楽。
『DIVIN/TOLERANCE』はVanity Records最後のLP作品としてふさわしい。
しかし、果たしてわれわれは、響きと音階の構造に初めて気がついた古代ギリシャの哲学者ピタゴラス以降、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが惑星の軌道の中に夢み、ドイツの司祭アタナシウス・キルヒャーが試みた宇宙の神秘と真理の音楽、天界のメロディーを聴くことが出来るだろうか。

VA-S1『Polaroid/Sympathy Nervous』1980
VA-S2『Hide & Seek/Mad Tea Party』1980
VA-S3『You’ll No So Wit/Perfect Mother』1980
声はエレクトロニクスと同化し電子の一部となり、記号と非記号が電極の中を行き来する情念的音楽群だ。彼らの音楽は電子楽器を駆使し実験的でありながら同時にエロスも感じさせるポップ・ミュージックである。
1980年は、『乗物図鑑/あがた森魚』『R.N.A.O Meet P.O.P.O/RNA ORGANISM』『SYMPATHY NERVOUS/SYMPATHY NERVOUS』
『BGM/Back Ground Music』『Ready Made/Normal Brain』『2LP MUSIC/V.A.』が相次いでリリースされVanity Recordsにとってピークの年だった。
この3枚は同年に同時リリースされた。まさに時代がなせる業か。
■『VANIY TAPES』
 VAT-1『Gray Cross/Salaried Man Club』1981
 VAT-2『Denki Noise Dance/Kiiro Radical』1981
 VAT-3『Pocket Plaetaria/Den Sei Kwan』1981
 VAT-4『B.B.B./Invivo』1981
 VAT-5『Endless Dark Dream/Wireless Sight』1981
 VAT-6『Shibou/Nishimura Alimoti』1981
時代の表層のハイブリッド、もはや時代の速度に対応するため、カセットテープという衣装の纏いでリリースされた。
ここでジョン・ケージの”音は音である”という言葉を思い出して欲しい。もはや現前した音源を体験するのみであり、疑問や議論の余地はない。
『VANIY TAPES』の記録は記憶(血液)の中で再生産され、時代と共に常に新しく変質する。
ひとつひとつに深く耳を傾けて見ると、蝸牛官から耳骨を経て時空を超えて過去と未来の「音=響き」が聞えてくるであろう。
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注)『スペクテイター』44号拙文「はみ出し偉人伝・その1」より引用。

※ 文中敬称略

※WEB用補足資料リスト
<ソノシート> 1979〜1981年 ロック・マガジン誌付録 全て片面プレス。

MAX MATHEWS – The Magnetic Field of The Earth(vanity 2001)
 コンピュータ音楽のパイオニアの一人、マックス・マシューズによる地磁気を動きを音化した作品。

BRIAN ENO – The Voice of Brian Eno(vanity 2002)
 1979年8月6日、ニューヨークで阿木譲が行ったインタヴューから抜粋。

あがた森魚 – 恋のラジオシティ(vanity 2003)
 『乗物図鑑』からの先行カット。テレックス『Twist A Saint Tropez』がアレンジの下敷きとなっている。

NORMAL BRAIN – Frottage(vanity 2004)
 アルバム『Lady Maid』収録曲の微妙にピッチが異なる別ヴァージョン。45回転と表示されているが33回転が正しい。

TOLERANCE – Today’s Thrill(vanity 2005)
 2枚のアルバム『Anonym』、『Divin』には未収録の録り下ろし曲。

ほぶらきん – 村のかじや(vanity 2006)
 自主制作シングル『キングホブラ』からの4曲『村のかじや』『魚うり』『ゴースン』『ペリカン・ガール』を収録。

VA – Phonetische Poesie(vanity 8101)
 ロシア立体未来主義のアレクセイ・クルチョーヌィフとカジミール・マレーヴィチ、ハノーファー・ダダのクルト・シュヴィッターズによる音声詩を収録。

システム – Love Song(vanity 8102)
 大阪で活動した女性5人組。アーント・サリー(Phew)とティーネイジ・ジーザス(リディア・ランチ)の間をゆくようなポスト・ノーウェイヴ。

G.LEWIS + B.C.GILBERT + A.M.C. – Cross, Grow, Prayer(vanity 8103)
 グラハム・ルイス、ブルース・ギルバート、アンジェラ・コンウェイの1981年アルバム『ドーム3』からの先行提供音源。

DIE KRUPPS – 6 Jun 1981 At Krefeld Haus Blumenthal(vanity 8104)
 1981年6月6日、独クレーフェルトで行われたデビュー・ライヴから『Stahlwerksynfonie』を収録。

FURIOUS PIG – 3 June 1981 The Venue London(vanity 8105)
 ロンドンで活動した奇妙なヴォイス・パフォーマンス/アカペラ・グループ。1981年6月3日、ヴェニューでのライヴ。

HOLGER CZUKAY ‎– June 3 1981 At His House Köln W.Germany(vanity 8201)
 1981年6月3日、ケルンのホルガー・シューカイ自宅でのインタヴュー・テープから抜粋。

最後になりましたが、この文章を書くにあたり、機会を与えて頂いたスタジオワープの中村泰之さん、内容についてのアドバイスを頂いた東瀬戸悟さん、校訂を担当してくださった能勢伊勢雄さんに感謝します。

remodel 05 V.A. 『VANITY BOX』

発売日:2019年10月21日
定価:¥18,000(-税別)
品番:remodel 05
仕様:□オリジナル マスターテープよりデジタル リマスタリング
           □vanity records 13作品・CD11枚組(紙ジャケット)
           □限定500set ボックスカラー
            (ピンク 250set, イエロー 250set)
           □各CDジャケットはオリジナルレコードジャケットを再現
           □オリジナルボックス(195㎜×140㎜×43㎜)
           □ヴァニティ ロゴステッカー
           □ライナーノーツ

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V.A.
VANITY BOX

CD-1 TOLERANCE/Anonym(79年)
CD-2 TOLERANCE/Divin(81年)
CD-3 NORMAL BRAIN/Lady Maid(80年)
CD-4 SYMPATHY NERVOUS/Sympathy Nervous(80年)
CD-5 ≪7インチ・シングル≫
        ・SYMPATHY NERVOUS/ポラロイド(80年)
        ・マッド・ティー・パーティー/ハイド&シーク(80年)
        ・パーフェクト・マザー/You’ll no so wil (80年)
CD-6 R.N.A.ORGANISM/R.N.A.O. meets P.O.P.O.(80年)
CD-7 BGM/Back Ground Music(80年)
CD-8 あがた森魚/乗物図鑑(80年)
CD-9 AUNT SALLY/Aunt Sally(79年)
CD-10 SAB/Crystallization(78年)
CD-11 DADA/浄(78年)

remodel 05
21.Oct 2019 release
18.000yen+tax

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「VANITY BOX – Vanity Records/musicis up and down」1978年から1981年にかけてヴァニティレコードからリリースされたアルバムと7インチシングルを11枚にコンパイルした集大成的ボックスセット。
すべてオリジナル マスターテープよりデジタル リマスタリング。

<作品概要>
’70年代末日本の自主制作/インディーズ音楽シーン黎明期を語る上において忘れることの出来ないレーベルの一つに大阪の『Vanity』がある。2018 年に死去した『Rock Magazine』誌(以下RM)編集長、阿木譲が1978年に立ち上げたこのレーベルは、英米のパンク運動と様々なインディペンデント・レーベル勃興にいち早く呼応し、RM の編集方針と連動しながらエレクトロニクス・ミュージックとポスト・パンク的エクスペリメンタル・ミュージック、当時のオルタナティヴな最尖端スタイルを展開。1982年活動休止までの4年間に11枚のLP、3枚の7″ シングル、12枚のソノシート、6本のカセットテープを制作した。
RMの付録だったソノシート以外は300~500枚の限定プレスであり、カセットテープは数十本程度のコピーのため、全作品を聴いたことのある人はごくわずかだが、同時代の世界水準に照らし合わせても極めて尖鋭的でユニークな作品が並び、高い評価を得ている。近年はインターネットを通してその存在を知った新しいリスナーも加わって全作品の再発売が望まれていた。

テキスト/ 東瀬戸 悟

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-1

CD-1 TOLERANCE – Anonym(1979 年) VANITY 0004

personnel
synthesizer with electronic echo unit,
piano & voice: Junko Tange
effective guitar: Masami Yoshikawa
dedicated to the Quiet Men from a Tiny Girl
recorded & mixed at Studio Sounds Creation osaka April 1979
engineered by Naoki Oku
assistant engineered by Yoshiteru Mimura
cover photo by Toshimi Kamiya
produced by Yuzuru Agi
Vanity records
502 Soraru-Kiyoka 1-6-8 Shinmachi Nishiku Osaka
phone 06 538 3644
VANITY RECORDS 1979

東京の丹下順子のソロ・ユニット。丹下が奏でるエレクトリック・ピアノ、シンセサイザー、簡素なエレクトロニクス、かぼそく呟くような朗読に加えて、吉川マサミのノイジーなスライド・ギターがゆっくりと渦巻きながら渾然一体となり、モノトーンで抽象音化されたアニムスが立ち現れる。ジャケットは写真集「東京綺譚」を刊行した神谷俊美。
英エクスペリメンタル/ コラージュ音響の大御所、スティーヴン・ステイプルトン(NWW: ナース・ウィズ・ウーンド)は1980年アルバム『To The Quiet Men From A Tiny Girl』のタイトルを本作クレジット文一節から引用。ステイプルトンが影響を受けたア-ティストを網羅した所謂『NWW リスト』にもトレーランスを選出した。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

”TOLERANCE”は電子音楽とエロティシズムの系譜の音楽であり、匿名性のパンクミュージックの香りをほんの少し残す音楽でもある。 まだ言葉は記号ではなく意味するものを持っていた時代の記憶。丹下順子のプロジェクトはそんな痕跡が少しだけ感じられる。
エレクトロニクスは誰にでもどんな時代でもエロティックな響きを与えてくれる。
ポスト構造主義が日本の地霊に受肉するための恩寵なのか。電子音楽の拡張性は体験(深く聴くということ)を通じて聴き手(自分)を変容させる。
”ANONYM”とは匿名の意だが、なにものでもないもののための音楽だ。

 


Ⅲ Y.Hirayama

狭い地下室の中で響き渡るかのようなジャムは、ゆっくりと、しかし確実にコズミックな音の塊へと変貌していく。奏者のパーソナリティはもちろん、演奏している様子さえ想像がつかない虚ろなサウンドは、虚栄を意味するヴァニティの名に忠実であると同時に、それが有効であった時代の証左となっている。現代のようにポータブルプレイヤーを通した屋外での再生や会話のBGMにあてがうのではなく、閉じられた空間で音楽に没入していく体験のために設計された作品だ。その陰は同時代のナース・ウィズ・ウーンドは勿論のこと、アンディ・ストットにまで伸びている。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-2

CD-2 TOLERANCE – Divin(1981 年)VANITY 0012

recorded 30/ 12 /80
2,5,6/1 / 81
mixed 8,9,12/ 1
mixer: Cimei-Bushman 19Ylam
luminal: j-Tange
input: M-Yoshikawa
, Hypersp+
cover concepts: Fusifix, Gekko-U4
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1981

丹下順子、吉川マサミ:トレーランスのセカンド・アルバム。タイトルはフランス語で『神』の意味。前作で聞けたギターは後退、ドラムマシーンの躍動感とエレクトロニクスの律動が強調され、無機的で曇った空間にほのかな色彩感が加わり不思議な音響が創出される。T-5では角谷美知夫(腐っていくテレパシーズ)の『ぼくはズルいロボット』の詩を流用。ミックスはイーレムの大森智明(Bushman-19)が担当。
ファーストとセカンドの間にはRM付録でアルバム未収録曲『Today’s Thrill』の片面ソノシートも制作。今聞き返しても古びた部分はなく時代的な耐久性が高い。残念ながら、この後の活動は途絶えてしまっている。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

『DIVIN/TOLERANCE』はVanity Recordsを代表する実験的で新しい時代に対する新たなヴィジョンを感じさせる電子音楽(エレクトロニクス・ミュージック)で、丹下順子による新「工業神秘主義」音楽だ。
フランスのベル・エポック時代にロシアの作曲家ニコライ・オブーホフは十二音技法を開拓した後「クロワ・ソノール」という十字架を模した電子楽器を開発した。時代への強い衝動は微分音階から無限音階を通り越し響きそのもののエーテル化を企てた。
この地下鉱脈のように引き継がれたかすかな電子音は、フランス語で「神」を意味する”DIVIN”という名を冠した作品の中で聴くことができる。
地上界と天上界の間で凝縮と溶解を螺旋状に繰り返すエレクトリックな音響音楽。
『DIVIN/TOLERANCE』はVanity Records最後のLP作品としてふさわしい。
しかし、果たしてわれわれは、響きと音階の構造に初めて気がついた古代ギリシャの哲学者ピタゴラス以降、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが惑星の軌道の中に夢み、ドイツの司祭アタナシウス・キルヒャーが試みた宇宙の神秘と真理の音楽、天界のメロディーを聴くことが出来るだろうか。

 


Ⅲ Y.Hirayama

『アノニム』よりもリズミックかつエレクトロニックになったアルバム。リズムマシンとシンセサイザーがギターにとって代わっていたヨーロッパ・ポストパンクの動向を反映した編成となっている。最小限の音を反復させるファウストやカン的なジャーマン・ロック的手法と、テープ加工とエレクトロニクスというスロッビング・グリッスル経由のインダストリアル・ミュージックの影響がより強く出ている。「Misa (Gig’s Tapes In “C”)」で確認できるテープの逆回しとパンニングによるサイケデリックな音響を筆頭に、演奏してる図がイメージできない非人間性は前作よりも更に高くなった。イーレムが同年に出した国産バンドによるコンピレーション『沫』に通じる荒涼としたサウンドは間違いなく「時代の音」だが、2010年代のシンセウェイヴに象徴されるノスタルジーを伴った消費から離れていることで、本作およびヴァニティの神秘的とも言える存在感は増すばかりである。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-3

CD-3 NORMAL BRAIN – Lady Maid(1980 年) VANITY 0009

Normal Brain are Fujimoto Yukio
Shimura Satoshi
Torii Ayumi

produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1981

幼少期よりテープレコーダー、カメラ、映写機で遊び、大阪芸術大学音楽工学科で電子音楽を学んだ藤本由紀夫のユニット。アナログ・シンセサイザー、リズム・マシーン、学習玩具スピーク & スペル、英会話学習用テープなどを使用し、その簡易性と特質を最大限に生かした知的で機知に富んだ音楽を組み立てる。アルバム・タイトルはマルセル・デュシャンを信奉する藤本らしいトリック。
80年代半ばに従来の電子音楽を捨て、日常の中に潜む聴覚、視覚、嗅覚、触覚を喚起する美術家/ アーティストとして、様々なサウンド・オブジェの制作やインスタレーションを始める。2001年と2007年にヴェニス・ビエンナーレに出品。国立国際美術館、西宮市大谷記念美術館、和歌山県立近代美術館にて同時個展を開催するなど国内外で高い評価を得ている。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

藤本由紀夫の『Ready Made/Normal Brain』は、”Kraftwerk”の「The Man Machine」の『ロック・マガジン』的回答としての音楽だ。
藤本由紀夫は、”Kraftwerk”の音楽についてエレクトロニクスをピュアに使用していることを評価していた。ピュアでありながら緻密、ジョン・ケージの音楽にも通低する。
1962年10月に来日した際にジョン・ケージが鈴木大拙と交わした会話で、ケージが「先生の講義で忘れられない言葉は、”山は山である。春は春である。”という名句です。私はその時に”音は音である”と霊感のように思ったんです。」と話している。
この大拙の言葉は、十牛図第9の「返本還源」のことを示している。
続けて大拙の「現代音楽というものは、非常に知的なものだということをいう人がおるが」という問いに対して、ケージは「それがあんまり、知的なものにならないように、一生懸命努力しているのです。知的なものじゃつまらない」「音は、ただ音であるようにしたいと」と答えている。(『芸術新潮』1962年11月号より)
『Ready Made/Normal Brain』に関連して『ロック・マガジン』01(1981年01月号)では”Normal Brain”のコンセプトシートを掲載した。
”Normal Brain”の由来は、19世紀イギリスの作家メアリー・シェリーのゴシック小説の『フランケンシュタイン』では若きフランケンシュタイン博士が死者を蘇えらせようとして、Normal BrainとAbnormal Brainとを取り違え「怪物」を生み出してしまった物語だ。藤本由紀夫は1世紀以上を経て、フランケンシュタイン博士が取り違えた「怪物」の脳を”Normal Brain”として蘇えらせた。
また、アルバムタイトルの『Ready Made』はフランスの美術家マルセル・デュシャンが、1917年に男性用小便器に偽のサインを入れ、「Fountain(泉)」というタイトルをつけて公募展に応募し、これは「これはアート作品だ」と言って、本人自らが「レディメイド」と呼んだことからの引用である。
デュシャン・フリークである藤本由紀夫らしい。
デュシャンは、音楽芸術に対しても「音楽的誤植」という概念も打ち出している。
イギリスの作曲家デヴィッド・カニンガムの「Grey Scale (1977)」の「Error System」もデュシャンを強く意識した作品だ。
藤本由紀夫は2015年デヴィッド・カニンガムとロンドンで二人会を開催したり、現在も交流しているそうだが、音楽へのアプローチはお互い影響を与え合っているのだろう。
藤本由紀夫は、”Normal Brain”以降も「音は、ただ音であるようにしたい」と思索し続けている。

 


Ⅲ Y.Hirayama

シンセサイザーに加えて、当時日本では珍しかったスピーク・アンド・スペルを採用したサウンド。シンセサイザーが身近な存在になったポストパンク時代は良くも悪くもそれに依存したものになりがちだが、ここではクラフトワークとキャバレー・ヴォルテールの中間に立つような感覚、ポップであると同時にドライなそれが提示されている。ネタがわかると途端にユーモラスに感じる「You Are Busy, I Am Easy」を筆頭に、アマチュアイズムの活かし方・殺し方がコントロールできていると書けばよいのか、アカデミックなルートを辿ってきた藤本由紀夫氏ならではのバランス感覚が冴える。「Fragment」は初期タンジェリン・ドリーム的なエレクトロニクス実験に挑戦した記録で、イーノのオブスキュア・レーベルからのリリースにも近い。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-4

CD-4 SYMPATHY NERVOUS – Sympathy Nervous(1980 年)VANITY 0007

Sympathy Nervous
Yoshihumi Niinuma – UCG system with Korg synthesizers
& voice
Tatsuya Senzaki – some noises by his guitar, voice
recorded and mixed at Niinuma’s Private Studio
cover photo by Achim Duchow
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORD 1980

『U.C.G.』と命名された自作のコンピュータ・システムを駆使し、当時としては水準の高いプログラミング技術と音響デザイン力を誇った新沼好文によるプロト・テクノ・ユニット。千崎達也のノイズ・ギターが効果的なアクセントとなりインダストリアル的要素も強い。ジャケット写真はラ・デュッセルドルフのロゴ・デザインやRM 表紙画を手掛けたドイツの画家/ 写真家アヒム・デュホウ。
本作発表後は東京を離れ郷里でプログラマーの仕事をしながら地道に録音を続け、90年代に入りテクノ・シーンへ参入。
ベルギーK.K. と契約を結び積極的に活動を再開。
2000年に入って岩手県宮古市で国産テルミンの工房を設立するが、3.11被災を受け工房と全財産を失う。米ミニマル・ウェイヴは新沼のために過去音源を編集したチャリティ・アルバムを2枚制作し援助活動を行った。2014年逝去。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

新沼好文の『SYMPATHY NERVOUS/SYMPATHY NERVOUS』は、商業主義的音楽集団”Yellow Magic Orchestra”に対する『ロック・マガジン』としての返答だ。
「YMO」の音楽のように時代に迎合した表象ではなく、あくまでも個的に自作の電子楽器UCGシステムやコンピュータを駆使し、夭折したドイツ表現主義詩人ゲオルク・ハイムのアフォリズムに登場する古参兵のように「それにもかかわらず敢えてなお」の精神性で作成された。
『ロック・マガジン』2007号(1980/09)誌上で新沼は、まず自分は音を生産する機械主義者であり、作品を作る行為のことを編集と語っている。また機械を使っている時にエロティシズムを感じることもあるとも。
だからこそ”SYMPATHY NERVOUS”の音楽は、エレクトロニクスでなければならなかったし、リアルな時代の快楽主義者達の音楽であり得たのだ。

 


Ⅲ Y.Hirayama

ノーマル・ブレインが参照していたクラフトワークやクラスターのようなジャーマン・ロック電子音派に加え、パンク経由のロバート・レンタルとトーマス・リアらのライヴやノイエ・ドイチェ・ヴェレ・ムーヴメントにも通じているピュアなエレクトロニック・ミュージック。その先見性とタイミングの早さはずば抜けており、長い時を経てロン・モアリなどのロウ・ハウスにも大きく先回りすることとなった。後にテクノへ合流するのも納得で、鈍重なベースや残響を筆頭に、大音量と相応のオーディオシステムで再生すれば全身で体感すべきサウンドであると理解できる。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-5

CD-5 <7″ シングル> ジャケット写真は3 枚全てBGM 白石隆之の撮影。
SYMPATHY NERVOUS – Polaroid(1980) VA-S1

system & sonic design by Niinuma Yoshihumi
Sympathy Nervous
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1980

ヴォコーダーで歌うA面のキャッチーさは、そのままポラロイド・カメラのCM曲にも使えそうなほど。3曲全てアルバム未収録。

 

MAD TEA PARTY – Hide And Seek(1980)VA-S2

composed and performed by M.T.P.
engineered and all tapes operation – Tchimay ( Bushman 19)
cover photo – Takayuki Shiraishi
recorded at Theory Studio
remixed at YLEM Studio ’80 Spring
contact – YLEM 03 460 8469
executive produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1980

吉祥寺マイナーやイーレムに出入りしていた白石喜代美が率いるガールズ・トリオ。ダブ処理とテープ逆回転をふんだんに使ったエッジーで愛らしいポスト・パンク・ポップ。

 

PERFECT MOTHER ‒ You’ ll No So Wit(1980)VA-S3

water muzzy
tecno-end
fan
Gancan – g,b,per., vo
Summition – synthesized-vo, randam-D-tuning -g, per
Nono – tape, effect
Atsko – vo
composed by Perfect Mother
cover photo – Takayuki Shiraishi
thanks to Tchimay ( Bushman 19 )
all electronics & engineer
home recording by Sound Cookee 144
teac-30-4
at YLEM Studio
executive produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1980

東京の音楽/ アート集団『イーレム』組織者、上田雅寛が率いるレフトフィールド・エレクトロニック・ポップ・グループ。後に山崎春美のTACOに参加し、新人類の一人として注目された野々村文宏が在籍。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

声はエレクトロニクスと同化し電子の一部となり、記号と非記号が電極の中を行き来する情念的音楽群だ。彼らの音楽は電子楽器を駆使し実験的でありながら同時にエロスも感じさせるポップ・ミュージックである。 1980年は、『乗物図鑑/あがた森魚』『R.N.A.O Meet P.O.P.O/RNA ORGANISM』『SYMPATHY NERVOUS/SYMPATHY NERVOUS』 『BGM/Back Ground Music』『Ready Made/Normal Brain』『2LP MUSIC/V.A.』が相次いでリリースされVanity Recordsにとってピークの年だった。 この3枚は同年に同時リリースされた。まさに時代がなせる業か。

 


Ⅲ Y.Hirayama

7インチで発表された3組の音源を収録したもので、いずれもメインストリームに投げかけるように(他のリリースと比べて)ポップな曲群が揃っている。明確な主張や意図を表さないヴァニティだったが、これら一連のシングル音源は表面上だけ煌めいているサウンドに溢れた世間(そこに生きる個人をわずかに揺さぶるだけだとしても)を変えようと試みた形跡のように思えてしまう。 シンパシー・ナーヴァスはアルバムでも響かせているシンセサイザー製パーカッションをここでも披露し、ヴォコーダーでノイズのような語りを聞かせてくれる。 ダブ的なエフェクトを施して生演奏を加工し尽くすマッド・ティー・パーティーは英国ポストパンクに忠実な渇いた音を持ち、何を意図しているかを教えてくれない寡黙さと、テープの逆回しを用いた「Modern Time’s Pop」の長閑さの奇妙なバランスに惹き付けられる。 ミニマル・ウェイヴが2018年にリリースしたコンピレーション『ザ・ベッドルーム・テープス』にも1曲収録されているパーフェクト・マザーは、ヴァニティのリリースを一繋ぎにしたミックステープのようなテープ・コラージュ「Ephemeral Pieces」が圧巻。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-6

CD-6 R.N.A.ORGANISM – R.N.A.O Meets P.O.P.O(1980 年)VANITY 0006

all designed by R.N.A.O.
R.N.A.O. is 0123
                   Chance
                   Zero
thanks to Dudu *inorganic People
special thanx to Friend Jean-Jacques
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1980

匿名ユニット” R.N.A. オーガニズム” による唯一のアルバム。ロンドンからエアメールで送られたカセットテープを基に制作された。現在ではEP-4の佐藤薫がプロデュースした最初のグループとして知られる。0123、Chance、Tetsuの3人により1978年に結成。宅録とスタジオライヴで趣味的活動を続け、翌年Tetsu の脱退と同時にZeroが加入。本アルバムはその時期の録音で、リズムボックス、ギター、シンセ、ヴォイスに様々なガジェットを用いたスーパーチープなオルタナ・ダブを展開する。ジャケットはレタリングシートをまんま使用のミニマルデザインが印象的だ。無クレジットだが音楽プロデュースは佐藤薫。
ライヴ活動は、スタジオライヴを録音しカセットで送りつけるという特殊な方法で行っていた。本作のほか、81年のコンピレーション『沫』や83年のTACOのファースト『タコ』にも参加している。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

佐藤薫の初期プロデュース作品。 ”RNA ORGANISM”の一番初めの出現は、Vanity Recordsのミュージシャンが多く出演した1979年12月のロックマガジン主催のイベント「NEW PICNIC TIME」の匿名の観客としてだった。 頭髪を緑色に染めた集団。それは佐藤薫率いる時代に拮抗した過激派であり他の観客を刺激した。 当時佐藤薫が主宰(拠点?)していた京都河原町のディスコ「クラブ・モダーン」では、ダンスミュージックとして西アフリカの民族音楽をかけていた。何の加工もせずそのままの音源でリスナー(参加者)は朝まで踊っていた。 その「場所」は僕らが名付けたエスノ(エスノミュージックとテクノとを融合した)ミュージックの実験空間でもあったのだ。当然エスノにはジェイムズ・ブラウンなどのR&B、イヌイットの狩猟の音楽、日本の舞楽なども含まれていた。 イギリスでは”THE POP GROUP”や”THE SLITS”の音楽が新しい原始リズムを刻んでいた。二十世紀初頭ロシアの作曲家イゴーリ・ストラヴィンスキーの”春の祭典”のように…。 佐藤薫は現在も時代精神を反映した個人レーベル「フォノン」で時代の響き(ドローン)を発信し続けている。二十一世紀音楽は「響き」をいかに時代の背景音として捉えるかにかかっている。現在の彼の音楽的冒険はいわば二十一世紀にメタモルフォーズし再登場したパンクミュージックだ。

 


Ⅲ Y.Hirayama

佐藤薫プロデュースの本作はダブやファンクが持つトランシーな感覚に注目しており、この時点でEP-4の萌芽が確認できると言っても良い。ミニマルなアートワークと連動するようにギターや加工された声によるノイズの反復が少しずつ表情を変えていくサイケデリアは、音数からコンセプトに至るまで情報過剰な現代にこそ新鮮に響く。
ジェームス・ブラウンの曲名をもじった「Say It Loud, I’m Dilettante, I’m Proud」は肉体だけでなく頭に訴えかける自己暗示的ファンクで、後のワープ・レコーズから多くリリースされるリスニング・テクノの影をそこに見ることができるし、ニヒルなエンドロール「Matrix」は佐藤が2017年のライヴを皮切りにスタートさせたEP-4 [fn.ψ]によって鳴らされるノイズに通じている。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-7

CD-7 BGM – Back Ground Music(1980 年)VANITY 0008

BGM
Shiraishi Takayuki – g. v. sy
Kawashima Harunobu – b.g.
Hashimoto Syuichi – sy.
Ebisawa Kenichi – d
recorded and mixed at Studio Sounds Creation
on July 1980
engineered by Oku Naoki
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1980

当時、17歳の高校生だった白石隆之が自身の音楽ヴィジョンを具体化するために旧友の川島晴信らを誘い1980年夏に東京から大阪へ遠征し1日で録音。ポスト・パンク、ファンク、ディスコビート、ダブ、インダストリアルのエッセンスが混在する早熟なティーネイジ・エクスペリメンタル・スタジオ・ユニット。ライヴ活動は行っていない。無駄を省いたベース・ラインを弾き出す川島は後に『Der Zibet』に参加。
白石は、本作発表後、園原潤とのデュオ『MLD』『Tristan Disco』でセルフ・プロデュースと録音スキルを学びながらシングルを制作。80年代末にデトロイト・テクノと出会ったことを契機に90年代以降はテクノ/ クラブ・ミュージックへとシフト。国内外の様々なレーベルからソロ作品を発表し、テクノ、ハウス、ブレイクビーツ、アンビエントと柔軟にスタイルを横断しながら活動中。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

白石隆之の作品。まだ高校生だった彼は大阪に来てVanity Records作品の多くをレコーディングしたサウンドクリエイションにおいて1日で録音した。
『ロック・マガジン』では「家具の音楽」を特集していたが、「家具の音楽」とは、元々フランスのベル・エポック時代の作曲家エリック・サティが「家具のように、そこにあっても日常生活を邪魔しない音楽、意識的に聴かれることのない音楽」をコンセプトとしていたものだ。「家具の音楽」の思想はその後ブライアン・イーノによって「Ambient Music」へと昇華させた。
Vanity Recordsの『BGM/Back Ground Music』(1980/09)もこの系譜に位置される。
1980年代以降音楽が新たな展開を見せる前夜に出された「Erik Satie Funiture Music特集」号(1980/11)では、サティの音楽や思想そのものの捉えなおしを行い、工業神秘主義音楽などオルタネイティヴな世界への準備を行ったのである。
その展開としての”Back Ground Music”は、ブルガリアの思想家エリアス・カネッティ『群集と権力』で記述されているアーケードの中の群集、大衆の中に存在する潜在意識、意識下で蠢く醒めた欲望機械のための音楽だ。
群集の複数の足音は、ある瞬間から創発性をおび時代の意味深長なリズムとなり、体内整流音楽へと変化する。『BGM』は突如として身体に現れる創発性の音楽として意識された。
ちなみに同じタイトルの「YMO」の『BGM』は1981年3月にリリースされたが、全く異なる音楽である。
なお現在、白石隆之は80年代に体験した音楽を昇華し今日の音としてリリースを予定しているときく。さてどんな響きを提供してくれるか楽しみだ。

 


Ⅲ Y.Hirayama

「Neo Dancer」と名付けられた曲が象徴するように、モダンなダンス・ミュージックとしてのファンクに執心した作品。同時代にパンクとファンクを交配させていたジェームス・チャンスよりも、ダブの催眠的なグルーヴをも取り入れたパブリック・イメージ・リミテッドなどに共鳴したサウンドである。同じくしてダブとファンクに触発されたRNAはエレクトロニクスに特化し、ミックス≒作曲な方法論をとっているが、こちらはあくまで演奏が主体となっており、終始ベースがギターやシンセを押しのけつつ活躍しているところもポストパンクという時代を感じさせる。中心人物の白石隆之は後にテクノやアンビエントに居場所を見つけるが、言葉を伴うことなく「アブストラクト」と曲名でも示されるように抽象であり続ける音楽を考えれば、それも必然に思える。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-8

CD-8 あがた森魚 – 乗物図鑑(1980 年)VANITY 0005

Agata Morio – vocals, compose, piano
Sab – synthesizer, strings, vocorder,
clabinet, lead guitar, bass guitar, guitar synthesizer,
bass synthesizer, rhythm box, echo, flanger,
electronics & arrangement
Fujimoto Yukio – electronics,
special synthesizer programming, effect synthesizer
special thanks to:
Phew + Idiot Girls – chorus
Mukai Chie – ko kyu
Yasuda Takashi – drums
Taiqui – synthesized drums
Punk Boys: Jun Shinoda & Kitada – side guitar
Roland Corporation Osaka
recorded at Studio Sounds Creation on November 1979
engineered by Oku
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1979

フォーク歌手として1972年に『赤色エレジー』の大ヒットを放ったあがたがテクノ・ポップを取り入れ、ヴァージンVS結成への足掛かりとなった重要転機作。Sab、藤本由紀夫(ノーマル・ブレイン)、Phew、北田昌宏(INU)、篠田ジュン(SS、コンチネンタルキッズ)、富家大器(ウルトラビデ、アインソフ)、向井千惠(イースト・バイオニック・シンフォニア、シェシズ)、安田隆(飢餓同盟)が参加。わずか2日間で制作されたラフな録音ながら、あがたの歌にポスト・パンク+ テクノ・ポップ・サウンドが出会い、20世紀少年の夢見るブリキ玩具仕立てのレトロ・フューチャー世界が組み立てられている。『恋のラジオ・シティ』はテレックス、『サブマリン』はジョイ・ディヴィジョン曲を下敷きにアレンジ。『エアプレイン』ではあがたが敬愛する稲垣足穂の肉声をループ処理しコラージュ使用。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

阿木から、昔からの知り合いであるあがた森魚から、再起を図るために手を貸してほしいと依頼されているとの話があった。当時のあがた森魚の事情は知らないし聞いてもいない。ただその取っ掛かりとして Vanity Recordsからアルバムをリリースするということだった。タイトルは『乗物図鑑』。
阿木の「コンセプトはテクノ・ポップであり、泣きの曲はなしだよ」、と始まった。
あがた森魚は自分のことを”A児(えいじ)”と名のった。製作期間は一週間。通常、録音からミックスまで一か月間近くを要する作業を、Vanity Recordsでは経費の関係から一日で”完パケ”まで持っていく慣わしだったが、あがた森魚の録音には二日間をかけるという”特別待遇”であった。
今から考えると、それでもたった二日間だった!!
メイン・サポーターである『Crystallization』のSABとは、その時に初めて会った。バグワン・シュリ・ラジニーシに師事していたSABはホーリー・ネームを名乗った。「僕はSABではない。これからはホーリー・ネームで呼んでくれ」と言ったが、みんなSABと呼んだ。当時珍しかったギター・シンセサイザーを持参していた。
サポートメンバーである藤本由紀夫とは大阪北浜の〈三越劇場〉で彼の作品を発表した時に声をかけて知り合った。事前打合せの段階で、あがた森魚と同じく稲垣足穂のファンである藤本由紀夫が足穂と瀬戸内晴美(寂聴)とのNHKラジオでの対談をカセットで保有しており、話の途中で足穂が飛行機の口真似をし始める箇所を編集し、「エアプレイン」(A面・四曲目)のイントロで使用した。足穂の声の後から藤本由紀夫のコルグのシーケンサーが演奏された。
このアルバムの「Rの回答」(B面・三曲目)で向井千恵の胡弓が聞ける。彼女は現在も定期的に即興演奏を中心にライヴ活動をしている。『ロック・マガジン』を通して知り合ったドラムは”飢餓同盟” の安田隆と”ウルトラ・ビデ”のTaiqui、ギターが”コンチネンタル・キッズ”のしのやん(篠田純)と”INU”の北田昌宏、そして『ロック・マガジン』編集の明橋大二がピアノを弾いている。
この録音でプログレ、現代音楽、エレクトロニクス、パンク、即興演奏の違った音楽の方向性を模索する多種多様のミュージシャンが集まったのも1979年を象徴している。
たった一週間でテレックスの「Twist a St.Tropez」は「恋のラジオ・シティ」(A面・一曲目)に、ジョイ・ディヴィジョンの「She’s Lost Control」は「サブマリン」(A面・三曲目)として結実した。「サブマリン」のバック・ボーカルは、ヒュー、向井千恵、竹内敬子。「連続香水瓶」(B面・四曲目)のミニマル・ミュージックはテリー・ライリーを想起させる。
コンセプトがテクノ・ポップだが、最後に録音した「黄昏ワルツ」(B面・二曲目)は、あがた森魚が一人でピアノを弾きながらの”一発録り”だった。
アルバムジャケットには、第2次世界大戦敗戦直後のドイツの写真を引用しデザインしている。敗戦国ドイツの少年が瓦礫の上で敵国アメリカの輸送機に手を振っている写真。まるで現代の少年十字軍だ。

 


Ⅲ Y.Hirayama

ヴァニティのポップ・サイドを担うアルバムの一つで、ドライ極まりない音楽の中に当時のヨーロッパ圏のメインストリーム(「サブマリン」のアイデア元であるジョイ・ディヴィジョンなど)への目配せも感じられる強かさがある。あがた本人の意向というよりはプロデューサーとしての阿木の趣向と2日だけの制作スケジュールによるところはあれど、「黄昏ワルツ」のように本来のあがたの味であるロマンチックな世界観が独特のサイケデリアの形成を手伝っている。「エアプレイン」で用いた声のサンプル化は「連続香水瓶」でより音楽的に使われ、その音と声が溶けゆく音響はグルーパーの青写真とすら呼べる。

 

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-9

CD-9 AUNT SALLY – Aunt Sally(1979 年)VANITY 0003

all words by Phew
personel
Phew – vocals
Bikke – guitar, vocals
Mayu – keyboards
Y. Nakaoka – bass
T. Maruyama – drums
recorded & mixed at Studio Sounds Creation Osaka February – March 1979
engineered by Naoki Oku
assistant engineered by Toshiteru Mimura
cover art & photo by Masayoshi Sukita
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1979

INU、ウルトラビデ、SSと並び、関西パンク・シーンを代表した伝説的グループ。1978年6月結成、1979年10月解散。
録音時のメンバーはPhew(vo)、Bikke(g、vo)、Mayu(key)、中岡義雄(b)、丸山孝(ds)。Phew の文学的歌詞と魅惑的な歌唱、荒削りながら的確な演奏が織り成す独創的世界。わずか1年ほどしか活動しなかったティーンエイジ・バンドの輝きを奇跡的に記録した名盤である。ジャケットはマーク・ボラン、デヴィッド・ボウイ、YMOなどの撮影で知られ、当時のRM表紙写真を担当した鋤田正義。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

パンクミュージックは時代への直接的キリスト衝動の発露としての音楽だ。それはその時代を生きた人だけが体験できる特権かもしれない。その後は心象風景となり、常に遠ざかっていく。
ただ状況を言語化しその歴史を探索し、その表象を発掘するのが歴史哲学としての役割だ。散歩した街路のショウウインドウの中に、ふらっと入った喫茶店の紅茶の香りに、さっき見かけた黒い犬に、古い雑誌の一枚の写真に、見逃せない痕跡を蜘蛛の糸のように絡めとる。ヒューのボーカルとビッケの引っかくようなギターが時代(いまここ)を逆なでする。
そして”アーント・サリー”は「文学」という鎧を纏い、武装し※ 無謀ではなく賢く果敢に戦場から撤退しながら、蝸牛の足跡のように時代へ痕跡を残した。そんなバンド、”アーント・サリー”の作品は、時代の恩寵としての音楽だ。
僕は通勤の護送列車の中でウォークマンに録音したアーント・サリーを繰り返し聴き時代からの逃走を計画していた。ハーメルンの笛に導かれるように。
”アーント・サリー”は、”INU”、”ウルトラ・ビデ”などと共にライブハウス心斎橋「バハマ」でよく聴いた。心斎橋「バハマ」という名は歴史に記憶されるべきだ。
※「文学的武装」とは、ウジェーヌ・イヨネスコの『禿の女歌手』やブレーズ・サンドラールの『世界の果てまで連れてって 』などを表象のファッションを纏うこと。

 


Ⅲ Y.Hirayama

とにかくパンクによるパンク殺しがアーント・サリーである。直接的なメッセージが省かれていたヴァニティのリリースの中でも数少ない歌と詩によるアルバムで、10代のニヒリズムに彩られる詩世界とその繊細さは、「強くあれ」と説き続ける旧態の音楽およびカルチャー、その最たるものの一つであるロックンロールを引きずるパンクをも拒絶している。既に音が悪くて当たり前というマナーが出来上がっていたパンク・ロックのクリシェに対して、しっかりとスタジオで録音している点も見逃せない。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-10

CD-10 SAB – Crystallization(1978 年)VANITY 0002

personnel:
Sab – Sh-3A strings , SQ-10 ms-20, acoustic piano, e guitar,
echo machine, equlizer, flaging machine, phase shifter, frying pan,
distortion, comptesar, noise
gate, line river
Meg – strings ( Al ) with frying pan, SQ-10 MS-10
( B4 again) , echo machine, frying pan, equilizer
Ravi – sitar ( B4 ) , some flute (B4 )
recorded at Studio Sounds Creation
Osaka July, 1978
engineered by Oku
cover illustration and aret :Marino Lounie
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORDS 1978

当時19歳のマルチ・インストルメンタル奏者、SABが各種シンセサイザー、エレクトロニクス、ギターを多重録音して作り上げた作品。一部ゲスト・ミュージシャンによるシタール、フルートもあり。タイトルとおり鉱物が結晶化してゆくような硬質で透明感のある水晶振動音楽が聞ける。サイケデリックとプログレッシヴ・ロックの残り香を漂わせながらメディテイショナルなニューエイジ音楽へと向かう直前の微妙な時代の気配が流れる本作は、昨今のニューエイジ・リヴァイヴァルや海外からの日本のアンビエント音楽再発見の動向と見事にリンクする。ジャケットは稲垣足穂の本などで幻想的なパステル画を描く、まりの・るうにい(工作舎、松岡正剛の夫人)。
ヴァニティではあがた森魚『乗物図鑑』の主アレンジャーとして活躍したが、バグワン・シュリ・ラジニーシに傾倒し渡米。
その後の活動は不明。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

アルバムジャケットは、フランスの思想家ロジェ・カイヨワの『石が書く』に掲載された瑪瑙と、まりのるうにいによる工作舎のシンボルマークである土星のパステル画をデザインしたものだ。
土星の輪と瑪瑙の輪が弱い相互作用で存在している。惑星と地球との関係の中に”SAB”の音楽が響く。『Crystallization/SAB』はどこまでも内的でスペキュレーティブな作品だ。
物質が結晶化するにはほんの少しの不純物が必要だが、”SAB”の不純な響きがフランスの詩人シャルル・ボードレールの『コレスポンダンス(霊的交感)』のように「芳香と色彩と音響とが呼応しあい」結晶化する時の音楽を奏でている。
カイヨワは「石の中に宇宙の謎が文書として記録されている」という。まさに結晶化とは凝固する瞬間に受苦を伴いその魂を受肉させる。宇宙からのエーテル体の地上への働きかけに凝縮力があるからだ。
SABは、この作品を発表した後、ライフスタイルも変えインドの神秘思想家バグワン・シュリ・ラジニーシに師事し徐々に音楽活動から遠ざかっていった。
『Crystallization/SAB』は、彼のその後の精神活動を予感させる作品だ。

 


Ⅲ Y.Hirayama

短期間ながらヴァニティお抱えのエンジニア的役割を担っていたサブによるニューエイジ調のエレクトロニクス絵巻。そのサウンドスケープと方向性にはクラウス・シュルツェといった所謂コズミックと称されるシンセサイザー・ミュージックの影響が顕著で、ヴァニティにとってジャーマン・ロックはイーノと並ぶインスピレーション元であったことを決定付ける。和製ニューエイジの先駆的存在である喜多郎(かつて所属していたファー・イースト・ファミリー・バンドのアルバムはシュルツェのプロデュース)や、東洋をテーマに作ったダダの『浄』と異なり、エキゾチズムや土着性をも排した感覚は、脈々と流れ続けて今日何度目かの隆盛を見せるニューエイジ・ムーヴメントに発見される時を待っているかのようである。

 

VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-11

CD-11 DADA – 浄(1978 年)VANITY 0001

personnel:
Mutsuhiko Izumi – guitar, korg synthesizer
Kenji Konishi – piano, korg synthesizer
special thanks to Hiroshi Natori ( percussive synth 1 )
Yasuhiko Horiuchi ( water 4) , Jiro Yamada
recorded at Studio Sounds Creation Osaka 19th, April, 1978
engineered by Oku
produced by AGI Yuzuru
*this records was inspired by “Gaki Zoshi” 餓鬼草紙
and dedicated to Eno
VANITY RECORDS 1978

70年代中期の関西ハードロック/ プログレッシヴ・ロック・シーンで活動した飢餓同盟(平山照継・在籍)の小西健司とカリスマ(菅沼孝三・在籍)の泉陸奥彦が1977年に結成したエレクトロニクス&ギター・デュオ。本来の彼等の楽曲はもっと華やかで綿密に構築された作風だったが、阿木の要望によって東洋的な叙情性と静謐さを強調したインプロヴィゼイションで録音。ジャケットは平安時代の餓鬼の救済に関する説話を描いた絵巻『餓鬼草子』の背景部分を拡大引用。アンビエントの概念を提唱しはじめた時期のブライアン・イーノに捧げられている。
1981年にキング/ ネクサスからメジャー・デビュー。デュオ解消後、小西は4-Dを結成、1994~2000年にかけてP-MODELに参加。泉はジャズ・ロック・バンドKennedy を経てコナミへ入社、『ギタドラ』シリーズの楽曲を手掛けゲーム音楽作曲家として活躍。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

『浄/DADA』はVanity Records第1作目を飾るにふさわしい作品だ。ユーロプログレの系譜にある純粋に宇宙的音響の世界を表現した。初期の『ロック・マガジン』創刊~1977年1月(6号)を象徴している音世界であった。
時代性を排して外的世界の音連れは1曲目から地上の鼓動へと連動する。
天上界からのエーテル力は物質を溶かす働きがある。その意味で『浄/DADA』は1978年時点の天上の音楽ともいえる。
世紀末ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンが目論んだ神秘体験としての音の響きが、電子音楽の衣をまとい”DADA”の音楽として現前する。
VANITY0002の『Crystallization/SAB』では、宇宙に充満するエーテル体は『浄/DADA』とは異なった地球深部の凝縮力(=Crystallization)に向かい、この2作品でセットを形成している。

 


Ⅲ Y.Hirayama

78年に立ち上げられたヴァニティ初のリリースはパンク・ロックではなくブライアン・イーノへの回答として始まり、イーノがロバート・フリップと共同で作ったアルバムや、オブスキュア・レーベルからリリースした一連のレコードを追いかけるかのようなサウンドとなっている。アマチュア志向を良しとするパンクにとって、演奏技術や構成の複雑さ、そしてコンセプチュアルであることが常識であったプログ・ロックは否定の対象だったが、あえてそれをルーツとするダダに白羽の矢を立てることで、パンク・ロックの形骸化を指摘していたのかもしれない。
揺らめくエレクトロニクスが延々と続いていく様は昨今のシンセサイザー・ミュージックまたはニューエイジのリバイバルとシンクロする部分も大きいが、泉陸奥彦の微かにブルージーなギターは他にない個性を見せている。

 

remodel 03 V.A. 『Musik』

発売日:2019年10月21日
定価:¥4,000(-税別)
品番:remodel 03
仕様:□オリジナル マスターテープよりデジタル リマスタリング
           □CD2枚組( 紙ジャケット)
           □限定400set
           □各CDジャケットは新デザイン
           □オリジナル レコードジャケットのカード入り
           □135㎜×135㎜×17㎜のオリジナルボックス
           □ヴァニティ ロゴステッカー
           □ライナーノーツ

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V.A.
Musik

CD-1
01. Pessimist-Sattyuzai
02. Un Able Mirror-Hischool Pigs
03. Un Able Mirror-Ignorant Animal
04. Mr-213
05. Adode/Cathode-..Of The Passive Voice Through The Light
06. Kiiro Radical-Denki Noise Dance 1
07. Kiiro Radical-Denki Noise Dance 2
08. Kiiro Radical-Denki Noise Dance 3
09. Kiiro Radical-Denki Noise Dance 4
10. Kiiro Radical-Denki Noise Dance 5
11. Tokyo-Cassette Tape

CD-2
01. Daily Expression-Inka Sanka 1
02. Daily Expression-Inka Sanka 2
03. Plazma Music-Green Brain
04. Nose-Dolby Nr On
05. New York 1976
06. Arbeit-Bundes Nachrichten Dienst
07. Invivo-Isolation
08. Necter Low-Artificial One

remodel 03
21.Oct 2019 release
4.000yen+tax

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ヴァニティレコードより1981年にリリースされた2枚組ボックスセット「Musik」の初CD化。すべてオリジナル マスターテープよりデジタルリマスタリング。
当時、日本中から送られてきたカセットテープの中から13アーティストを選んでLP2枚組に収録したレコード。
初期宅録ミュージックのモニュメント的作品集。

<作品概要>
VA – Musik(1981年)
全国各地からRMへ送られてきた100本以上のカセット・テープの中から選出された13組を収録した2枚組コンピレーション。手頃になったシンセサイザーやマルチ・トラック・レコーダーの登場で80年代中期から世界中のアンダーグラウンド・シーンで活性化するエクスペリメンタルな宅録テープ音楽発生初期のモニュメント作品。
第五列とピナコテカからのリリース作がある『Adode/Cathode』、成田宗弘(ハイライズ)の『Tokyo』、B.C.レモンズ前身『Plazama Music』、RM表紙画を描いたアヒム・デュホウの『Arbeit』、ヴァニティから単独カセットが出された『黄色ラジカル』と『Invivo』、阿木本人によるニューヨークでのフィールド録音『New York』以外は、詳細不明の匿名アーティスト達が並んでいる。テープ・ヒス・ノイズまみれでロウファイな音質を超えた様々なアイデアとDIYスタイルの集積。

テキスト 東瀬戸 悟

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

ロシアのセルゲイ・エイゼンシュタイン監督映画『戦艦ポチョムキン』の中で登場する戦艦の叛乱に呼応するオデッサ市民のように、『ロック・マガジン』の呼びかけに多数のミュージシャンが作品を送ってきた。
”MUSIC”は音楽と題された作品だが、時代に対しての蜂起した作品群だ。その蜂起の仕方は13組のアーティストで多種多様であり、ひとつとして同質のものはない。
『ロック・マガジン』では、ジェネシス・P・オリッジが「industrial music for industrial people」として展開したindustrial musicを工業神秘主義音楽と名付けた。80年代の音楽は、この工業神秘主義音楽に代表される実験的でオルタナティヴな方向性へと変わっていく。
ロックでは”Cabaret Voltaire”や”Bauhaus”が登場し”Adam and the Ants”が「未来派宣言」を歌っていた。

 


Ⅲ Y.Hirayama

スロッビング・グリッスルによって拡散していったDIYムーヴメントとしてのインダストリアル・ミュージック、それが育んだカセットテープ文化にならって作られたようなオムニバス企画である。参加者が一部を除いて詳細不明であり、80年代初頭その刹那にしか現れなかったインディ・ミュージック、商業用ラベルとなる前のそれを切り取った貴重かつ痛快な記録だ。
スーサイドの影響色濃いプラズマ・ミュージックや、LAFMS的サウンド・モンタージュを見せるアルバイト、アーロン・ディロウェイのプロトタイプにも思えるアノード/カソードやネクター・ロウなど、今日エクスペリメンタルと称されているサウンドの型が既に日本の中でも確立されていたことを証明する意味でも重要なコンピレーションである

 

remodel 04 V.A. 『VANITY TAPES』

発売日:2019年10月21日
定価:¥9,000(-税別)
品番:remodel 04
仕様:□オリジナル カセット テープより デジタル リマスタリング
           □CD6枚組 ( 紙ジャケット)
           □限定300set
           □各CDジャケットは新デザイン
           □135㎜×135㎜×22㎜のオリジナルボックス
           □ヴァニティ ロゴステッカー
           □ライナーノーツ

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V.A.
VANITY TAPES

CD-1 SALARIED MAN CLUB – Gray Cross
CD-2 KIIRO RADICAL – Denki Noise Dance
CD-3 DENSEI KWAN – Pocket Planetaria
CD-4 INVIVO – B.B.B.
CD-5 WIRELESS SIGHT – Endless Dark Dream
CD-6 NISHIMURA ALIMOTI – Shibou

remodel 04
21.Oct 2019 release
9.000yen+tax

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6本のカセットテープをボックスにした「Limited Edition Vanity RecordsBox Set」の初CD化。『Music』同様、全国から寄せられたカセット・テープの中から6アーティストを厳選。単独販売とボックスでの6本セット販売があった。ボックスにはジャン・コクトーの詩「Mon oreille est un coquillage Qui aime le bruit de la mer. 私の耳は貝のから 海の響をなつかしむ」が記されたカードが添えられている。ボックスは70セット限定とされているが実際には30セット程度しか作られていない。1981年リリース。
すべてオリジナル カセットテープより デジタル リマスタリング。

<作品概要>
CD-1 SALARIED MAN CLUB – Gray Cross
ホワイトカラーとしてのアイデンティティを高らかに宣言するサラリーマン3人組が奏でる頭脳労働インダストリアル・サウンド。京都dee-Bee’sでライヴ活動も行っていた。イーレムのコンピレーション・アルバム『沫』にも参加している。

CD-2 KIIRO R ADICAL – Denki Noise Dance
鳥取県米子市の持田雅明による『黄色ラジカル』。繊細で隅々まで計算の行き届いたミニマル電気ノイズの乱舞は阿木から「今の時点では日本のエレクトロニクス・ミュージックの頂点」と絶賛された。『Music』にも5曲収録されている。

CD-3 DENSEI KWAN – Pocket Planetaria
福島市の斎藤英嗣による『電精KWAN』。オリジナル・テープには稲垣足穂めいた” 因果交流、電燈は少年のズボンの隠しでカチコチなる一箇のビー玉でありま す(ポケット・プラネタリーム概論)” というテキストが添えられていた電子の 精が騒めく箱庭的ノイズ世界。

CD-4 INVIVO – B.B.B.
逗子市のタチバナマサオによる作品。前半6曲は『In Vivo:生体内』、後半6 曲は『In Vitro:試験管内』と生物学用語が付けられた顫動する音のバイオミュータント生成実験の記録。『Music』にも1曲収録されている。

CD-5 WIRELESS SIGHT – Endless Dark Dream
ミニコミ誌『無線音楽』を発行するワカエ・クニオのプロジェクト。ピアノ、メトロノーム、ラジオ・ノイズだけを使い、静謐でポスト・クラシカルなアンビエント空間をスケッチ。映像と舞踏を絡ませたパフォーマンスも行う。

CD-6 NISHIMUR A ALIMOTI – Shibou
西村有望のソロ名義作『脂肪』。ギター/ ベース/ ドラム/ヴォイスのバンド編成で初期アモン・デュール、メタボリストなどを想起させるプリミティヴで重く引き摺ったオルタナティヴ・サイケデリック・ロックを聞かせる。

テキスト 東瀬戸 悟

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

時代の表層のハイブリッド、もはや時代の速度に対応するため、カセットテープという衣装の纏いでリリースされた。
ここでジョン・ケージの”音は音である”という言葉を思い出して欲しい。もはや現前した音源を体験するのみであり、疑問や議論の余地はない。
『VANIY TAPES』の記録は記憶(血液)の中で再生産され、時代と共に常に新しく変質する。
ひとつひとつに深く耳を傾けて見ると、蝸牛官から耳骨を経て時空を超えて過去と未来の「音=響き」が聞えてくるであろう。

 


Ⅲ Y.Hirayama

『ミュージック』同様、スロッビング・グリッスル経由のインダストリアル・ミュージックまたは次に登場したカム・オーガニゼーションなどに同調したような企画で、カセットテープという媒体の選出や、個々のアートワークからもその影響が見てとれる。黄色ラヂカルを筆頭に、エレクトロニクスとテープ特有のノイズによって形作られるアブストラクトな音は正に時代を象徴するものだが、特筆すべきは西村有望『脂肪』のトライバルなサウンドとそれを採用していることだ。80年代中盤に現れるヨーロッパのインダストリアル・ミュージック第二波、例を挙げれば23スキドゥーのようなインダストリアルのエスノ化を見据えている。

 

KYOU-032 Kassel Jaeger/ Jim O’Rourke『Wakes on Cerulean』

発売日:2019年8月16日
定価:¥2,000(-税別)
品番:KYOU-032

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Kassel Jaeger/ Jim O’Rourke
Wakes on Cerulean

1.Wakes on Cerulean A
2.Wakes on Cerulean B
3.#0073A2(bonus track)

KYOU-032
16.Aug 2019 release
2.000yen+tax

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Editions Mego、Shelter Pressなどの先鋭的なレーベルから作品をリリースし、同時にGRM(フランス音楽研究グループ)の芸術監督を務めるなど近年の幅広い活動で注目を集めるKassel JaegerがJim O’Rourkeとのコラボレーションで作り上げた2017年リリースの傑作『Wakes on Cerulean』がこの度ボーナストラックを加えて初CD化!音のパラメータの複雑な管理を用い、抽象的な音響を追求する電子音楽家として近年更なる高みに達しているジム・オルークと、他者との電子音響のミックスにおいて物語性やサウンドの調和を巧みに生み出すKassel Jaeger、両者の手腕が見事に結実しており、多様な音色と動的な展開を要しながらも聴き手の意識を逆立てない、いわば水面の揺れや潮の満ち引きのような動と静を湛えた音響作品となっている。

<作品概要>
Kassel Jaegerは1981年フランス生まれのFrançois J. Bonnetが音源制作やライブなどのアーティスト活動にて用いる名義である。彼は近年Editions Mego、Senufo Editionsなどの先鋭的なレーベルから単独での作品をリリースし、Stephan Mathieu、Oren Ambarchi、Giuseppe Ielasiなど数々の先鋭的な作家とコラボレーションを行うだけでなく、本名名義でGRM(フランス音楽研究グループ)の芸術監督を務めるなど幅広い活動で注目を集めている人物だ。そんな彼が2017年にJim O’RourkeとのコラボレーションでEditions Megoよりリリースした作品が本作『Wakes on Cerulean』である。オリジナルはLPとデジタルアルバムの形式であったためCD化は今回が初となり、特筆すべき点としてアルバムのラストにボーナストラックとして「#0073a2」が追加収録されている。Steamroomでのリリースなどから抽象的な音響を追求する電子音楽家として近年更なる高みに達していることが伺えるジム・オルークであるが、近年において他者との電子音響のミックスをメインとした作品は珍しく、彼のディスコグラフィー上でも貴重な一作といえるだろう。一人の卓越した音響作家としてはもちろん、他者の音との関りにおいて物語性やサウンドの調和を巧みに生み出すKassel Jaegerの手腕も存分に発揮されている。多様な音色と動的な展開を要しながらも聴き手の意識を逆立てない、いわば水面の揺れや潮の満ち引きのような動と静を湛えた豊かな電子音響/ドローンの傑作だ。 よろすず