VANITY BOX カタログ 全作品リスト&解説 CD-4

CD-4 SYMPATHY NERVOUS – Sympathy Nervous(1980 年)VANITY 0007

Sympathy Nervous
Yoshihumi Niinuma – UCG system with Korg synthesizers
& voice
Tatsuya Senzaki – some noises by his guitar, voice
recorded and mixed at Niinuma’s Private Studio
cover photo by Achim Duchow
produced by AGI Yuzuru
VANITY RECORD 1980

『U.C.G.』と命名された自作のコンピュータ・システムを駆使し、当時としては水準の高いプログラミング技術と音響デザイン力を誇った新沼好文によるプロト・テクノ・ユニット。千崎達也のノイズ・ギターが効果的なアクセントとなりインダストリアル的要素も強い。ジャケット写真はラ・デュッセルドルフのロゴ・デザインやRM 表紙画を手掛けたドイツの画家/ 写真家アヒム・デュホウ。
本作発表後は東京を離れ郷里でプログラマーの仕事をしながら地道に録音を続け、90年代に入りテクノ・シーンへ参入。
ベルギーK.K. と契約を結び積極的に活動を再開。
2000年に入って岩手県宮古市で国産テルミンの工房を設立するが、3.11被災を受け工房と全財産を失う。米ミニマル・ウェイヴは新沼のために過去音源を編集したチャリティ・アルバムを2枚制作し援助活動を行った。2014年逝去。

 


Ⅱ 嘉ノ海幹彦

新沼好文の『SYMPATHY NERVOUS/SYMPATHY NERVOUS』は、商業主義的音楽集団”Yellow Magic Orchestra”に対する『ロック・マガジン』としての返答だ。
「YMO」の音楽のように時代に迎合した表象ではなく、あくまでも個的に自作の電子楽器UCGシステムやコンピュータを駆使し、夭折したドイツ表現主義詩人ゲオルク・ハイムのアフォリズムに登場する古参兵のように「それにもかかわらず敢えてなお」の精神性で作成された。
『ロック・マガジン』2007号(1980/09)誌上で新沼は、まず自分は音を生産する機械主義者であり、作品を作る行為のことを編集と語っている。また機械を使っている時にエロティシズムを感じることもあるとも。
だからこそ”SYMPATHY NERVOUS”の音楽は、エレクトロニクスでなければならなかったし、リアルな時代の快楽主義者達の音楽であり得たのだ。

 


Ⅲ Y.Hirayama

ノーマル・ブレインが参照していたクラフトワークやクラスターのようなジャーマン・ロック電子音派に加え、パンク経由のロバート・レンタルとトーマス・リアらのライヴやノイエ・ドイチェ・ヴェレ・ムーヴメントにも通じているピュアなエレクトロニック・ミュージック。その先見性とタイミングの早さはずば抜けており、長い時を経てロン・モアリなどのロウ・ハウスにも大きく先回りすることとなった。後にテクノへ合流するのも納得で、鈍重なベースや残響を筆頭に、大音量と相応のオーディオシステムで再生すれば全身で体感すべきサウンドであると理解できる。