CD-11 DADA – 浄(1978 年)VANITY 0001
personnel:
Mutsuhiko Izumi – guitar, korg synthesizer
Kenji Konishi – piano, korg synthesizer
special thanks to Hiroshi Natori ( percussive synth 1 )
Yasuhiko Horiuchi ( water 4) , Jiro Yamada
recorded at Studio Sounds Creation Osaka 19th, April, 1978
engineered by Oku
produced by AGI Yuzuru
*this records was inspired by “Gaki Zoshi” 餓鬼草紙
and dedicated to Eno
VANITY RECORDS 1978
70年代中期の関西ハードロック/ プログレッシヴ・ロック・シーンで活動した飢餓同盟(平山照継・在籍)の小西健司とカリスマ(菅沼孝三・在籍)の泉陸奥彦が1977年に結成したエレクトロニクス&ギター・デュオ。本来の彼等の楽曲はもっと華やかで綿密に構築された作風だったが、阿木の要望によって東洋的な叙情性と静謐さを強調したインプロヴィゼイションで録音。ジャケットは平安時代の餓鬼の救済に関する説話を描いた絵巻『餓鬼草子』の背景部分を拡大引用。アンビエントの概念を提唱しはじめた時期のブライアン・イーノに捧げられている。
1981年にキング/ ネクサスからメジャー・デビュー。デュオ解消後、小西は4-Dを結成、1994~2000年にかけてP-MODELに参加。泉はジャズ・ロック・バンドKennedy を経てコナミへ入社、『ギタドラ』シリーズの楽曲を手掛けゲーム音楽作曲家として活躍。
Ⅱ 嘉ノ海幹彦
『浄/DADA』はVanity Records第1作目を飾るにふさわしい作品だ。ユーロプログレの系譜にある純粋に宇宙的音響の世界を表現した。初期の『ロック・マガジン』創刊~1977年1月(6号)を象徴している音世界であった。
時代性を排して外的世界の音連れは1曲目から地上の鼓動へと連動する。
天上界からのエーテル力は物質を溶かす働きがある。その意味で『浄/DADA』は1978年時点の天上の音楽ともいえる。
世紀末ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンが目論んだ神秘体験としての音の響きが、電子音楽の衣をまとい”DADA”の音楽として現前する。
VANITY0002の『Crystallization/SAB』では、宇宙に充満するエーテル体は『浄/DADA』とは異なった地球深部の凝縮力(=Crystallization)に向かい、この2作品でセットを形成している。
Ⅲ Y.Hirayama
78年に立ち上げられたヴァニティ初のリリースはパンク・ロックではなくブライアン・イーノへの回答として始まり、イーノがロバート・フリップと共同で作ったアルバムや、オブスキュア・レーベルからリリースした一連のレコードを追いかけるかのようなサウンドとなっている。アマチュア志向を良しとするパンクにとって、演奏技術や構成の複雑さ、そしてコンセプチュアルであることが常識であったプログ・ロックは否定の対象だったが、あえてそれをルーツとするダダに白羽の矢を立てることで、パンク・ロックの形骸化を指摘していたのかもしれない。
揺らめくエレクトロニクスが延々と続いていく様は昨今のシンセサイザー・ミュージックまたはニューエイジのリバイバルとシンクロする部分も大きいが、泉陸奥彦の微かにブルージーなギターは他にない個性を見せている。