2009年06月 アーカイブ

2009年06月03日

MY DAILY LIFE

My Daily Life

最近会う人ごとに阿木さんは毎日なにをして過ごされてるのですかと、よく聴かれる。このブログでは、誰かのようにどこかのクラブに行って踊っただとか、なにを今夜食べただとかの、読む人にとってどうでもいい記述はなるべく避けているので、よけいそうしたボクの日常性をひとは、最も知りたがっているのかも知れない。最近は、いたって単調な日常で、起きてはPCの前に座り、過去に聴いてきたレコードを聴き直し、それらのレコードをアーティストごと
に整理し、ミュージシャンの資料や、それに関係する情報を新たに調べ直し翻訳したり、レコードジャケットをスキャナーで取り込んだり、そうした山積みになったやっかいな作業に毎日に追われていて、気がつくと外はもう明るくなっているといった具合だ。PCの前には少なくても8時間は座り続けているだろうか。その合間に休憩をと
って食事したり、テレヴィのニュースを見たりしているうちに、いつの間にか一日が終わってしまう。たまには外の空気にでも触れないと、ほんと、いつか身体を壊してしまうかも知れない。30数年に渡って聴いてきた音楽を整理していて、最もエネルギーが奪われる気がするのは、やはりロック・マガジンを発刊していた70年代後半から80年代初頭にかけてのものだろう。あの時代のレコードには、個人の感情移入を越えたところに、すべての音楽に意味や物語りがあり、言ってしまえば、現在の先端での音楽にもみられる新しい音楽のヴィジョンとコンセプトが、すべて凝縮されているといっても過言ではないから、いい加減に処理できないのだ。そしてエネルギーが奪われる気がするもうひとつの大きな要因は、そこに当時関わってくれていた人たちの残した思いのようなものが、見えるからだ。Oblique Strategiesでの再考察は、まだ1000分の1しか果たしていない。よくもまあ、それほどのレコードを聴いてきたなと、呆れてもいる。もうレコードやCDが当時のように売れる時代は2度と来ないだろう。それはなによりも、ボクら音楽ジャーナリズムに関わる人間が、80年代後半から現在までなにもしてこなかったからだ。脱意味と快楽主義の横行する時代であっても、やはり音楽を聴く行為は、そこに感情移入できればこそ、楽しさが倍増するのだ。ネットで80年代音楽の情報を調べていても、誰一人として、詳細な資料になる情報すらも、整理して記述していないことに、ある意味で失望している。ボクのアーカイヴした情報を見て、コンタクトがあるのは、" 俺はそのレコード持っていないからCDRに焼いて送ってくれませんか " というイギリスのレコードジャンキーからが最も多いというのも、当然と言えば当然かも。
( 写真は次に整理するClock DVAやJoseph Beuys、Brion Gysinのアルバム ) 。

2009年06月18日

Cubanismo From the Congo, 1954-55 ( The World is Shaking ) / The 1979 Foundation for The Black Arts presents JUJU / native - Futurism

●Cubanismo From the Congo, 1954-55 ( The World is Shaking )
●The 1979 Foundation for The Black Arts presents JUJU
●Pyramids
●native - Futurism

Honest Jon'sからの " London Is The Place For Me " でのカリプソ・シリーズの第5弾 " The World Is Shaking " は、'54-'55年にコンゴから発生したEMI Archiveが権利を持つSP盤音楽を収集しコンパイルしたもの。当時のナイジェリア、マリ、カリブ海の音楽から聴こえるものは、ノスタルジックで古いマテリアルではあるが、ボクにとっては最新のムラトゥ・アスタトゥケ+ヘリオセントリックと同じ領域として解釈しているもので、nu jazz以後最も関心のある急所だ。アルバムに付けられたゲイリー・スチュアートによるノートには、当時のコンゴの政変と社会環境について記述されていて、このアルバムは貴重なアフリカ動乱/コンゴの壮絶な社会背景の中で培われたキューバン・ミュージックとそのドキュメンタリーな記録でもある。
THE WORLD IS SHAKING
Cubanismo From the Congo, 1954-55
( HJRLP 40 )
A: 1. Laurent Lomande - Maboka Marie
2. Adikwa Depala - Matete Paris
3. Adikwa Depala - Akei Cimetierre
4. Andre Denis - Cherie N' Aluli Yo
5. Vincent Kuli - Yaka Ko Tala
B: 6. Jean Mpia - Klim
7. Boniface Koufoudila - Ntango N' Abali
8. Robert Yuakarie - Musinichkie
9. Albert Bongu - Koseke Moniga Te
10. Rene Mbu - Boma Limbala
C: 11. Adikwa Depala - C.C.T. Ebongisi Mokiri
12. Fabien Libasi - Bengela Ngai Bosele
13. Laurent Lomande - Elisa
14. Adikwa Depala - Mon Moni Non Dey
15. Boniface Koufoudila - Bino Boton Bosele
D: 16. Norbert Yakari - Kioo Cha Nyumba
17. J.P. Ndagu - Mokolo Bafuti Sanza
18. Boniface Koufoudila - Tokowela Angelique
19. Laurent Lomande - Akimi Magai Na Butu
20. Jean Mpia - Tika Moseka
21. Adikwa Depala - Yoka Ngal
compilation by Mark Ainley
notes by Gary Stewart, author of Rumba On the River: A History Of The Popular Music Of The Two Congos
translations by Zabana Kongo with Honest Jon's
thanks to Richard Noblett and Savannaphone
mastered by Andy Walter at Abbey Road
design by Will Bankhead: leaflet by Sandhya Ellis
HONEST JONS RECORDS 2009
" 当時のアフリカ社会に蔓延する黒人奴隷制、支配者のヨーロッパ人が、かの地で娯楽として集うバーやクラブ等に出入りするようになったコンゴ現地のミュージシャン達が先陣を切り、当時普及の兆しを見せていたラジオの為に、初めてコンゴで黒人のサウンドがレコーディングされていく。
リンガラ語によるオーセンティックな伝承音に、ジャズやシャンソンの要素が加えられ、さらには黒人奴隷売買の歴史が音楽的にも波及し、ラテン/キューバン・サウンドが当時のコンゴ音楽に大きく影響することとなる " 。 こうした音楽をコンゴのルーツとして聴くのではなく、ヨーロッパや西洋からの文化や音楽がどのような影響を受けポピュラー・ミュージックとして発展していったのか ( このノートでも書かれているルイス・アームストロングやティトロッシィの音楽にどのように影響をおよぼしたのか ) を聴き取ることのほうが大切だ。アビーロードスタジオにてリ・マスタードされた2枚組。

THE 1979 Foundation for The Black Arts presents JUJU
MORNING
( Dimension 381 )
A: Morning
the image from the drug session was slowly fading...
written by JUJU
chosen by Paul Nickerson for Poverty's Paradise, Inc.
a division of Strange Reputations, Cambridge - 2009
wards by Jean-Paul Sartre
*hand crafted 1st edition pressing - 100 scribed
this release is in direct conflict the unlawful societies act of 1799
ALICE B. TOKLAS 2009
Paul Nickersonが監修しているニューヨークのクラブ系Slow To Speakレーベル傘下Alice B. Toklasレーベルの " The 1979 Foundation For the Black Arts " からは、この作品以外にも2007年にはPresents Robert Rich - The
Other Side Of Twilight ( Dimension 16 ) 、2008年にはPresents Tangerine Dream - Nebulous Dawn ( Dimension 4 ) 、Presents Audioasis - Sigh Of The Zephyr ( Dimension 2 ) 、Presents Summer's Lease - Untitled ( Dimension 1 ) 、2009年にPresents John Abercrombie - Timeless ( Dimension 618 ) の5枚が発表されている。すべてが片面プレスで100枚限定というから、
この時代に相応しい賢明な戦略だ。ミュージシャンなら世界に100人も自分の音楽を聴いてくれる人間がいることに、幸せだと思わなきゃならない時代が来ている。それほど音楽にも細分化が進行してしまったというわけだ。'70年代に" A Message from Mozambique " 、 " Chapter Two:Nia " 、 " Oneness of Juju " などの作品をリリースしていたスピリチュアルジャズ・バンド " JuJu "の 未発表音源 " Morning " が収録され、ジャン・ポール・サルトルの言葉も使われている。ジャケット裏に隠されたシジル・モノグラムといい、レーベル名に使われている作家のガートルード・スタインの終生の伴侶だったAlice B. Toklasといい、なんだか、臭ってくるな。

THE PYRAMIDS
70年代に特にパリやアムステルダムなどのヨーロッパで支持者の多かったザ・ピラミッズは、Idris Ackamoor、Margot Ackamoor、Kimathi Asante、Donald Robinsonの4人によってオハイオで結成された。ヨーロッパでの支持者が多かった理由は、ザ・ピラミッズは、オハイオの大学生だったアイドリスたちが、奨学生となって海外留学先で結成したグループであり、71年にパリやオランダで活動していたからで、そこからアフリカ大陸に渡りモロッコや様々な土地を巡り各地の音楽を吸収し、最後はエチオピアまで赴いたという。そのアフリカ直輸入音楽とイスラム思想の感性を育み、オハイオに帰国後はサンフランシスコに移住し、3枚のアルバムを自主制作した。今回紹介している3枚の作品がそれである。彼らの音楽にある地中海的エキゾチシズムとアフリカン・サウンド、宇宙的世界観などのイメージを内包した世界観は、最もいまのボクにピッタリくるものかも知れない。様々な打楽器と木管楽器が強調されたシカゴとニューヨークのフリージャズに影響されたスピリチュアルなR&B/ジャズを特徴としているが、当時のサイケデリックな時代風潮を反映して、70年代中期サンフランシスコで知り合ったアメリカ人の若いマニアックなロック・ファンに少なからず支持されていたのを覚えている。ピラミッズのメンバーのひとり、アイドリス・アカムーア( Idris Ackamor ) は、マルチ器楽奏者 ( 主にサキソフォン ) で、作曲家、俳優、タップダンサー、ディレクター、プロデューサー、ヴィデオグラファーとしての顔も持ち、現在も世界各地を飛び回り現役で活動しているアーティストだ。
Idria Ackamoor
http://www.culturalodyssey.org/v2/aboutus/idris_bio.html

THE PYRAMIDS / LALIBELA ( IKEF 09 )
side 1: 1. Lalibela
side 2: 1. Lalibela ( cont. )
2. Indigo
written by Idrissa & Margo Ackamoor/ Kwame Asante
recorded & mixed Juky 1973
at Schumacher's Studios
engineer: Duane Schumacher
photo: Leonard L. White
Idrissa Ackamoor - alto, soprano saxophones, bailofone, masenqo, talking drum, moroccan clay drum
Margo Ackamoor - flute, piccolo, percussion
Kwame Kimathi Asante - hagstrom bass, ugandan harp, ethiopian drum, bamboo flute
Masai - soprano sax, bamboo flute, percussion
Marcel Lytle - drums, percussion
Hekaptah - conga drums, osi drum, percussion
IKEF 1973 / 2009

THE PYRAMIDS / KING OF KINGS ( IKEF 10 )
side 1: 1. Mogho Naba ( King Of Kings )
2. Queen Of The Spirits
side 2: 1. Nsorama ( The Stars )
2. My Africa
all compositions composed by Idris Ackamoor, aka Bruce Baker
Iris Ackamoor - alto sax, talking drum, bailophone, one-stringed goge,
ethiopian drum, calypso box
Margo Ackamoor - flute, percussion
Kwame Kimathi Asante - hagstrom bass, ugandan harp, percussion
Hekaptah - conga drums, percussion
Donald Robinson - drums, bongos, percussion
Jerome Saunders - piano, percussion
Chris Chafe - cello
The Pyramids - vocals
recorded in the Coutry at Appalachia Sound recording Studio, Chillicothe
Ohio in March 1974
engineer: Wayne mitchell
African Statue, coutesy Marvin Jones, Acirfa Company, 1137 E. 50th st, Chicago, III
PYRAMID RECORDS / IKEF RECORDS 1974 / 2009

PYRAMIDS / BIRTH, SPEED, MERGING 1976 ( IKEF 11)
side A: Birth / Speed / Merging Suite
part 1. Aomawa
part 2. Birth / Speed / Merging
part 3. Reaffirmation
side B: 1. Jamaican Carnival
2. Black Man and Woman of the Nile
the composing of Birth / speed / Merging Suite was made possible by grant from The National endowment
for the Art
Kimathi asante - hagstrom bass guitar, talking drum, ugandan harp, bamboo flutes, percussion, vocals
Heshima Aka Mark Anthony Williams - accoustic bass, vocals
Margo Ackamoor - flute, piccolo, percussions, vocals
Idris Ackamoor, Aka Bruce Baker - alto sax, bongos, ku cheng, bamboo flutes, talking drum, percussions, vocals
Augusta Lee Collins - drums, talking drum, percussions
Kenneth Nash - congas, bongos, rosenbow, percussions, guatemalan stick drums, vocals
recorded at His Master's Wheels Studio in November 1975
IKEF 1975 / 2009

*****

NATIVE

NATIVE / FUTURISM ( OMOCD-0057 )
1. Skydive
2. " Opening Session "
3. Shine
4. Blow Up The Jazz!
5. Moon Breath
6. Real Friends
7. My Little Suede Shoes
8. Radionics
9. Futurism
10. Moonless Planet
11. " Closing Session "
12. CQCQ
Tomoyoshi Nakamura - alto, soprano saxophones, flute
Taichi Sugimaru - keyboards, piano
Kenichi Ohkubo - acoustic bass
Yoshtaka Yamashita - drums
Hiroki Horisaki - percussion
10年ものながい活動歴の、その中から生まれたNativeの作品の中で、ヴァイオリンやチェロ、ヴィオラなどのストリングス・アレンジも聴かれ最も贅沢な構成がみられる " Futurism " は、彼らの頂点でもあり、ひとつのピリオドを意味するのと、また新たなメンバー編成による新成Nativeの " 始まり " へと繋がる通過点としての記念すべき作品となるだろう。ジャズの新たな領域を駆け抜ける未来派Nativeの新譜、時代の先端をこのアルバムでも突っ走っている。後年に名盤としての高い評価がなされるのは必至だろう。
futurism - native ( by三田創 )

昨夜遅く6/24日にリリースされる中村氏の送ってくれた " Futurism " のサンプルCDが届いたので、急遽追加記述しているのだが、全体的にレコーディングとミキシングにかなりの時間を費やしたことを裏付ける緻密で完成度の高い出来上がりをみせていて、特に中村氏のサックスに絡む杉丸氏のピアノ・テクニックが絶妙なグルーヴと緊張感を醸している。このアルバムを最後にドラムスの山下クンがバンドを脱けるのは、あまりにも残念で勿体ない話だが、まあ彼なりに色々事情があるのだろう。とりあえず明後日今週の土曜日20日にjaz' room " nu things " で行われる" It's Time " での彼の最後のステージを楽しみたい。オリジナル・メンバーによるNativeのステージはこれで最後になるので、是非みなさんも顔をみせてあげて下さい。



RICHARD LAINHART
Short Films

1. A Haiku Setting ( 1999 ) 2. Dreamwood ( 2002 ) 3. One Year ( 2008 ) 4. Lux ( 2008 ) 5. Pneuma ( 2008 ) 6. Drift ( 2008 )
NTSC DVD-R
ⓒ 1999-2008 Richard Lainhart
四季おりおりの、季節がやってくるたびに感じていた新しい息吹の感覚は、都会に住み、まして部屋に籠って作業していると、せいぜいがバスを使うときに蛇口をひねってでてくる水の温度にそれを知るぐらいで、ますますこの身体から遠のいてしまい四季のない国に住んでいるような気持ちにさせられる。時にはいまは秋なのか春なのかも忘れてしまうことがある。もうそろそろ夏だよね。

One Year from Richard Lainhart on Vimeo.

現在、スリープ・ミュージックというジャンルでスリープ・コンサートを展開している作曲家/映像作家のRichard Lainhartの2008年の作品 " One Year " の四季おりおりに移り変わる樹木の変化と風景を撮った映像を観ることで、自然の美しさを思い出しているが、Lainhartは、Joel ChadabeとニューヨークのState Universityで学び、John Cage、David Tudor、Steve Reich、Phill Niblock、David Berhman、Alvin Lucierなどとパフォーマンスや演奏活動を続けていたアーティストで、音楽ソフト会社の技術部長の顔を持ちながら、テレヴィやフィルムのための音楽を制作したり、対話型アプリケーション、CD-ROMなどのメディアで多くの作品を発表している。このDVD-R " Short Films " にも収録されているトロントのInternational Festival of Cinema and Technologで受賞した彼の2002年のフィルム作品 " A Haiku Setting " や " One Year " などのサウンドイメージは、まるで禅や俳句の世界で、アンビエントな音響も効果的だ。音響制作と平行して行ってきた99年~2008年までの実験映像作品がDVD化されメタル缶仕様でリリースされている。

http://www.otownmedia.com/

http://www.downloadplatform.com/directory.php?
artist=177&title=Richard+Lainhart

http://www.vimeo.com/rlainhart


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