2009年03月 アーカイブ

2009年03月06日

DOLL no.260 April 2009

昔のことは語りたくない。それが誤解されたままであっても、" いや、違うんですよ" なんて死んでも言わないと決めていた。ひとは噂話をするとき、そのひとのいいことなんて話すわけなどないし、決まって悪口を叩く。そんなクスクス笑いのお茶飲み話に付き合う必要もない、と決めていた。
しかも、検索でボクの名前をググってみても、その多くが70年代中期から80年代中期までの、編集していた" rock magazine " 時代に関する過去の情報が出てくるだけ。これには少しばかりガッカリした。まあ、それほどrock magazineは影響力があったのかと、いまは喜ぶことにしているが。去年の暮れ、滋賀近江八幡の酒游館の
西村明氏から雑誌 "Doll "の4月号に、当時のrock magazineや、KBSの番組 " Fuzz Box In " のこと、Vanity Recordsなど70年代中期から80年代中期までのボクの活動についてのインタヴューをしたいとのオファーがあった。最初は断っておいてくれと、nu thingsのスタッフに伝えたが、rock magazineの熱心な読者だったという理由と、わざわざ灰野敬二のイヴェントに顔出ししてくれたことへの誠意を感じ、了承することにしたのだが、送られてきたDoll誌の" 阿木譲とメディアミックス / ギャザーズ・ノー・モス " を手にして、西村氏は当日ボクの話したことを忠実に活字にして下さっていて色んな事実が少しは伝えられたかと有り難く思っているが、Doll誌の他の記事を読んでいて少々複雑な感情が流れた。 ( 当時、森脇美貴夫やパンク雑誌としてあったDoll誌は、ロンドン・パンクをメインに取りあげていて、森脇氏とは数回レコード会社で顔を合わせたことが
あるくらいで、親密な付き合いはなかったが ) 。パンクと言えばボクにとっては、ニューヨークのテレヴィジョン、パティ・スミス、トーキングヘッズ、リーチャード・ヘルであり、No Newyork、DNAだった。それらはやはりヴェルヴェット・アンダーグラウンドやイギー・ポップ・ストゥージズ、MC5などの文脈から派生した反知的で文学的な、キラキラ輝いているものだった。送られてきたDoll誌をみていて最も気になったのは、ニッポンのノイズやロック系のミュージシャンやリスナーにも感じるあの一種独特の " 汚れ " 感はいったい何なのだろうかと。ボクにとってロックやパンクとは最も退廃的で耽美なサイケデリック・バロキスムでもあったから。当時ロックやパンクに関わっていたミュージシャンや業界人、評論家、リスナーたちは、みんなキラキラ輝いていて美しかった。いまパンクを最も体現しているのは、ゴスロリや、ヴィヴィアン・ウェストウッドのファンションに身を包む若い女性たちだと、ボクは信じている。

2009年03月08日

JAZZ & MILK / DUSTY / ROMANOWSKI

JAZZ & MILK
DUSTY
ROMANOWSKI

クラブダンス・フロアは、もうすでにディスコテーク化している。90年代に隆盛を極めたクラブカルチャーがこれほどまでに衰退するなんて思いもしなかったが、クラブミュージックの時代もまた終息に向かっているのは事実だ。相も変わらず量産されている現在のハウスミュージックを聴けば、すべてが歌もののソウル/ディスコ・エディトに処理されていて、ディープ・ソウル・ハウスとでもいう80年代ディスコテークの時代に後退しタイムスリップしているかのようだ。デトロイト系テクノハウスも、カール・クレイグなどのアー
DUSTY / KEEP IT RAW ( JM 007 )
ティストを除いては、初期のテクノを超えるような作品も見られないしね。Waxpoetics系のファンク/レアグルーヴや、ロック, ブレイク、ヒップホップものは一瞬キラっと光るものを感じるけれど、これも70-80年代ディスコテークへのルーツ帰りだ。そもそもクラブミュージックはクラブフロアでDJイングされ、クラウドを踊らせることが目的の、消費されるだけのものだから、ここに意味性を見つ
けようとしていること自体が間違っている。DJや世代が代わればまた初めからやり直しってもんだ。同じ円をグルグル回る20日鼠のような気にさせられる。ファイヴ・コーナーズ・クインテットを初めとするclub jazzも、もうきっと多くのクラブジャズ・ファンには飽きがきている頃だろう。新しいものなどなんにもなし。これを機会にそれそろボクもディスコ経営者に転職するかw。しかし、そんななかでも、クラブジャズで唯一気になるレーベルと動きがある。それはドイツ/ミュンヘンのJazz & Milkレーベルでの、DustyやRomanowskiのニュー・ヘッズ ( nu hedz )とでも形容したいブレイクビーツ/クラブジャズだ。2007年の春に表出してまだ数枚の作品しかリリースしていないが、21世紀版Mo' Waxとしての煌めきを感じる。Timeighによるカヴァーアート/デザインひとつとってみても、なかなかシャレた金のかかった贅沢な作りがされていて、1枚々の作品にも愛情と気合いが入っている。内容もローズピアノを演奏するChristoph Doepke率いるDustyは、ジャケット同様バップ・モダンな世界で、バックメンバーをサックス、ベース・クラリネットにFlorian Riedl 、ベースにJerker Kluge、トランペットにFranz Weyerer、ギターにBartellow Alias、Beni Brachtel、ハープにAlfred Hirschを配した変則編成のユニットだ。Christoph Doepkeは、ファンク、ジャズ、アフロヘア、ラテンのスタイルに影響を受けていて、それらが結合したユニークなクラブジャズ/nu hedzを展開している。こいつは要注意だ。そして、Romanowskiはサンフランシスコのアーティストで、ディキシーランド・ジャズやラテン、スカ、ブガルー・テイストを持つヘッズ、ダイナミックでなジャジーブレイクを展開していて、Up,Bustleが1曲リミックスを手掛けている。他に2枚発売されているコンピレーション " Jazz & Milk Breaks " には、Constant Deviantsの " Can't Stop " と同じピアノフレーズ・ネタを使ったカリフォルニアのヒップホップ・クルーFree The Robotの " Jazzhole " やMarchop、ファンキー・ブレイクビーツのProxt、このレーベルの顔DustyとRomanowski、その他Mocean Worker、Blank Zulu、Vono Boxなど今後Jazz & Milkの顔になるだろうスリリングなブレイクビーツとアーティストたちがひしめき合っている。とにもかくにもエキゾチックな音楽で、ジャズ・アンド・ミルクが、このまま、いい作品をリリースし続けるなら21世紀でのMo' Wax的役割を担うだろう予感がする。

jazz and milk MILK BAG EXHIBITION


DUSTY / KEEP IT RAW ( JM 007 )
A: 1. i Keep it raw
2. Voodoo
B: 1. Loco Para La Pista
2. Tap Tap
all tracks written & produced by Christoph Doepke
cover: Timeigh
master: Andreas Schoenrock at Stidio Schoenrock in Berlin
rhodes: Christtian Doepke
sax & bas clarinete: Florian Riedl
bass: Jerker Kluge
trumpet: Franz Weyerer
guitar: Bartellow Allis, Beni Brachtel
harp: Alfred Hirsch
Jazz & Milk: preysingstrasse 8, 81667 Munich, Ger Lc 15027
JAZZ & MILK 2008

DUSTY / KEEP IT RAW REMIXED ( JM 008 )
A: 1. Loco Para La Pista ( Solo Moderna remix )
2. Voodoo ( Romanowski's Voodoo Island remix )
B: 1. Tap Tap ( Watch TV remix )
2. Keep It Raw ( Vono Box remix )
master: Calyx Mastering
cover: Timegh
A1 remixe 6 additional production by
Bas Voorn
A2 remixe & additional production by Roman Weingartner / Truser Trout edition
B1 remix & additional production by Ruben Garcia
B2 remix & additional production by Zsolt Jakab & Sandor Lakatos
JAZZ & MILK 2008

DUSTY
http://www.myspace.com/dusty45

ROMANOWSKI / ALL STYLES ALL SMILES ( JM 004 )
A: 1. Strudel Strut
2. Strudel Strut ( Up, Bustle & Out remix UBO self published )
B: 1. Days And Daze
2. Days And Daze ( DJ Smash remix keefy songs-ASCAP )
artwork Romanowski
JAZZ & MILK 2007

ROMANOWSKI
http://www.myspace.com/romanowski45

JAZZ & MILK BREAKS VOL 2 ( JM 005 )
A: 1. Mocean Worker - Shamma Lamma Dingdong
2. Black Zulu - Mellow Magic
3. Free The Robots - Session Two
B: 1. Vono Box - Pepita
2. Pharoah Roche - Swing a right hook
3. Energie Du Verre - Rockin Habanera
all tracks licensed by Jazz & Milk Recordings
design: Timeigh
foto: Max Schmid-Burgk
master: Alexklier @ Lxkstudios. com
JAZZ & MILK 2008

我々が日常使っているミルクカートンには様々な種類があって、'52年にスウェーデン/テトラ社で開発されたテトラ・クラシック、テトラ・ブリック、現在我々がスーパーで購入している'15年にアメリカのジョン・ヴァン・ウォーマーによって発明された屋根型のゲーベルトップなど色々ある。その屋根型のゲーベルトップのミルクカートンの作り方が " Jazz & Milk Breaks Vol.2 " に付録で添付されている。こうした遊び心にジャズ・アンド・ミルク・レーベルの奥の深さが表われていて、レーベルの未来に期待が持てる大きなひとつの要因なのだ。

Jazz & Milk - Mocean Worker
http://www.youtube.com/watch?v=WkIMZ1HcX-8

JAZZ & MILK BREAKS ! VOLUME ONE ( JM 002 )
A: 1. Free The Robots - Jazzhole
2. Mr Chop - Snob
3. Romanowski - Flagranti
B: 1. Proxy - The Art Of Leisure
2. Dusty - Explosion
all tracks licensed by Jazz & Milk
recordings, mastered at The Goldmine Studios ( Joer@ The -Goldmine. De )
graphic design: Timeigh
JAZZ & MILK 2007

JAZZ & MILK
http://www.myspace.com/jazzandmilk

http://www.jazzandmilk.com/

JAZZ & MILK BREAKS with THE HI-FLY ORCHESTRA, LIVE! 08.12.07
http://www.youtube.com/watch?v=au-SiZmK52I

jazz&milk - sempre avanti - dia show
http://www.youtube.com/watch?v=ZJGqhgaNf7c

2009年03月29日

FIRECRACKER RECORDINGS / LINKWOOD

FIRECRACKER RECORDINGS
LINKWOOD

脱意味のクラブミュージックには珍しく、T・E・ローレンスの " Seven Pillars of Wisdom " からの、 " すべての夢、それらは等しく夢見られるというわけではない。それらの夢が昼には、夜の心のくぼみのなかの虚栄であったことに目覚める " や、フリードリヒ・ニーチェの" 未来は現在に、まさしく過去と同じくらいに影響をおよぼす" という言葉が引用され、音楽の意味性を宣言し、リスナーに感情移入させる姿勢を持つファイアークラッカー・レコーディングス。このレーベルも要注意だ。そりゃそうだ、夢は昼間にみて、それを現実にしていくものだし、未来のヴィジョンや目標をどこにターゲットをあてて今日を生きているかによって、自ずと現在の自分自身が決まる。
LINKWOOD FAMILY / MILES AWAY ( FIREC 001 )
FRはスコットランド、エディンバラに拠点を置く2004年に設立された新興レーベルで ( おそらく500枚ほどしかコピーされていないであろう作品は ) 、現在まで3枚 ( 再発も含めて6枚 ) の10インチシングが発売されているが、特にリンクウッドの一度聴いたらやめられない中毒性あるサイケディスコジャズに、並々ならぬ関心を持っている。このレーベルのメンバーには
Fudge Fingas、Linkwood、House Of Traps、Linkwood Family、 The Complainers、Denaji などが名を連ねている。ブリティッシュ・コミックスの一コマを拡大しフォーカスした、まるでロイ・リキテンスタイン( Roy Lichtenstein ) の " Waarm! "や " "Hopeless ( 70年代の頭に新宿の伊勢丹の彼の展覧会で購入したこの背丈以上もあるアートポスター作品を、当時ボクが設立した" I am a boy " というマンシション・メーカーのアトリエにかざっていた) "を思わせるポップ・アートのように、ファイアークラッカーの10インチのジャケットアートと、その音楽には無邪気でスリリングな物語り性がある。彼らの音楽はあのMoodymannと比較されることが多い。彼らは影響されたクラブ・アーティストに、Derrick May、Osunlade、Mike Clark、 Mike Grant、 Carl Craig、 Danny Krivit、 Ron Trent、 Stacey Pullen、 JazzySport djs、 DJ Spinna、 Theo Parrish、 Joe Claussell、 Jazzanova、 Shelter Djs、 Lindstrom、 Recloose、Idjut Boys、 Moodymannなどの名前を挙げている。

LINKWOOD FAMILY / MILES AWAY ( FIREC 001 )
A: 1 . Linkwood Family - Miles Away
vocals - Joseph Malik / horn - Colin Steele
AA: 1. Fudge Fingas - Gettin' Together
sampled, vocals - Marvin Gaye
written by G. Sutherland
2. Linkwood - Fate
written by - N. Moore
**dedicated to emil tha chief button
design by crea
pusher RIP
FIRECRACKER RECORDINGS 2004

nu jazzであれFinn Jazzであれ、テクノハウスであれ、クラブミュージックの没意味性、脱意味性は、音楽の愉しみを根こそぎ削ぎ落としてしまった。感情移入できない音楽ほど、実はつまらないものはないのだ。没個性の、どいつもこいつも同じファッションとヘアスタイル、それに加え同じ顔した、ノッペラボウの、なんにもない時代。若いリーマン・ミュージシャンがリクルート・スーツを着てジャズをやれば、nu jazz ? w。なにもないことに気付き始めたアーティストがそろそろイギリスに現れ始めている。ひょっとすると、近いうちに音楽シーンになにかが起こり始める、そんな微かな期待が生まれている。

Linkwood
http://www.myspace.com/linkwoodfamily

Fudge Fingas
http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewProfile&friendID=409601928

VARIOUS / FIRECRACKER 2 ( FIREC 002 )
A: 1. Fudge Fingas - Escape
written by G.Sutherland
2. The Complainers - Bacon Rolls
written by N.Moore, T.Moore
B: 1. Linkwood - What's Up With The Underground
written by N.Moore
2. Linkwood - What's Up With The Drums
written by N.Moore
**design by tim@intervaldesign.co.uk
please visit www.firecrackerrecordings.com
*vinyl junkies record store
FIRECRACKER RECORDINGS 2005

最近のクラブミュージックの、なにを買っても同じでような音楽で、買わなきゃよかったと後悔させられる、このような不毛不作の時代には、絶対にジャケット・アートとレーベル・コンセプトの優れたものだけを選ぶことだ。それは、90年代にゴミにもならない糞のような12インチシングルを山ほど買って失敗したボクの苦い経験から。

これは付録に付けられたステッカー・シール。

VARIOUS / FIRECRACKER EP 3 ( FIREC 003 )
A: Linkwood Family - Piece Of Mind
written by N.Moore & L.Todd
engineered by Linkwood
B: 1. Unknown Artist - ...Skit
2. Linkwood - Hear The Sun
written & produced by N.Moore
additional keys by Fudge Fingas
supreme diggin T.Moore
3. Fudge Fingas & His Fidgety Friends
- Aksman
written, produced & performed freestyle by G.Sutherland
all instruments - Fudge Fingas except thumb piano
-Jake Denaji inspration & vibes supplied by Newteys
design - T & Xiao an nthcreative.co.uk
**piece of mind is a re-edit of the deep funk classic I'm Back For More by Leo's Sunship originally released 1978 on Lyon's Record Company Inc
FIRECRACKER RECORDINGS 2007

FIRECRACKER RECORDINGS
http://www.myspace.com/firecrackerrecordings

Linkwood - R.I.P. ( PN-02 )
http://www.youtube.com/watch?v=RpD6jcarfMo

COMIC & POP ART

The Roy Lichtenstein Foundation
http://www.lichtensteinfoundation.org/

British Comics from Comics UK
http://www.comicsuk.co.uk/

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