2008年08月 アーカイブ

2008年08月11日

COOL SCANDINAVIANS

晩夏の夕暮れる南の空に半月が輝くのを見上げていると5年前の北欧旅行の空を思い出し、またまたスカンジナヴィアに旅したくなってくる。北欧のジャズに興味を持った理由には色々あるが、ひとつにはヴェルナー・パントン、アルネ・ヤコブセン、イッタラなどのデザイン家具やテキスタイルに90年代後半から興味を持ったことが大きい。5年前の北欧の旅で訪問した国のなかでは、やはりノルウェイのオスロが最高だった。オスロのクラブといえば Blå (ブラ http://www.blaaoslo.no/ )だが、そこはいまも健在だし、70年代にはClub 7という伝説の店があって、'63年から'85年の約20年間存続した北欧における
ジャズの発祥地でもありノルウェイのジャズミュージシャン、アルフ・エーリング・シェルマンなどを育み、Dexter Gordonの " Ballads "、Webster Leisの" In Norway : the Club 7 Live Tapes "など多くのミュージシャンのレコードがここで録音されている。( jaz’ room "nu things"も古くはダダイストたちの巣窟であったキャバレー・
ヴォルテールのように、アーティストやミュージシャンたちが自由にあの空間を使い常に文化の収斂と震源地であって欲しいと、願って立ち上げてはいるのだが・・) 。北欧の音楽に注意をむけ始めたのは、ノルウェーのレコード・レーベル " Jazz Land " での'97年にブッゲ・ヴェッセルトフト(Bugge Wesseltoft)によって"New Conception Of Jazz"が発表された頃からだ。その後、'99年にロンドンのCosmic Soundsでリリースされていたトランペッター、デュシュコ・ゴイコヴィチなどやユーゴスラヴィアやチェコ、ブルガリア、ロシアなど、バルカン諸国のレア音源がリイッシューされていたモダン・ジャズのレコードでの東欧ジャズに興味を持ったことなどに起因している。このCosmic Soundsは2005年のVA / BLUE LIGHT Fusion Gems from Hungarian Vaults vol. 2や、VA / ANTHOLOGY Fusion Gems from Hungarian Vaults vol. 2を最後に作品はリリースされていないが、現在のFinn Jazzやnu jazzのルーツともいえるジャズ音源が多く発売されていた。
COOL SCANDINAVIANS / DANISH JAZZ COVER ARTWORK FROM 1950 - 1970
デンマークのNTY NORDISK FORLAG出版社から発売された"Cool Scandinavians - Danish Jazz Cover Artwork From 1950 - 1970"には、50-70年代にデンマークで発売されたLPやEPのレコードジャケットが142点収録されていて、そのすべてのジャケットデザインが正直優れたものとは言えないが、コペンハーゲンにオープンした
ジャズハウス " モンマルトル " ( 最近リッキー・チックから発売された " On The Spot - A Peak At The 60s Danish Jazz Scene " のジャケットには、そのモンマルトルの店内の壁に彩られたモチーフが使われている )や、コペンハーゲンから遠く離れたユトランド南西部の小さな町ブランデの本屋が設立したジャズレーベル " デ
ビュー ( Debut ) "などを拠点にして広がっていったデニッシュ・ジャズの歴史が計り知れて興味深い。ちなみに、ここで紹介されているレコードでボクが持っているのは'70年に発売された " The Danish Jazzballet Society Ensemble - The Jazz Dance " たったの1枚だけである。
Cosmic Soundsの話に戻るが、'60 - '61年にRTBレーベルでの地元ベルグラードと外国のミュージシャンによるセッションが収録された2002年にリリースされていた " three 10' records originaly " シリーズの10インチ3枚をやっと手にすることができた。3枚目の " BORISLAV ROKOVIC TRIO / III SASTANAK U STUDIJU ( 3RD MEETING IN STUDIO ) は'61年ペオグラードでの録音で、Cole Porterの " You'd Be So Nice to Come Home " 、" Theme From the Beggar's " などがセッションされていて、ノスタルジックなスウィンギン・ピアノ・ジャズ、悪く言えば"どジャズ"だが・・・。2枚目のJACK DIEVAL - II SASTANAK U STUDIJU ( 2nd Meeting In Studio ) は、フランスのピアニストJack Dieval、テナー・サックスにはFrancois Jeanneau、バップ・ドラマーのArt Taylorがフィーチャーされ'61年ベオグラードでのセッション録音。1枚目の " JEROME RICHARDSON - SASTANAK U STUDIJU " は、ユーゴ・ジャズシーンのヴァイブ奏者BOSKO PETROVICを核に地元のジャズメンと、QUINCY JONES楽団の渡欧メンバーとして現地に赴いたテナー・サックス奏者JEROME RICHARDSON、フレンチ・ホーンにJULIUS WATKINSなどによって'60年ベオグラードでのセッション録音。全体的にはノスタルジックでリリカルな面が強いが、なかにはハードバップ・グルーヴも聴こえる北欧スカンジナビアン・ジャズとも共振している東欧ユーゴスラビア・ジャズのマニア向けの60年代レアな作品である。

TRIO BORISLAV ROKOVIC / III SASTANAK U STUDIJU (COSMIC SOUNDS CS-27 EP)
side A: 1. Bad Dream 2. Theme From The Beggar's Opera 3. You'd Be So Nice To Come Home
side B: 1.Bee - Deedle - Dee - Doo 2. The Midnight Sun Will Never Set 3. Donna Lee
Borislav Rokovic (piano) Vojislav Donovic (guitar) Hans Hoitz (drums) Milan Stjanovic (flute) Joe Sydow (bess)
recorded at 14, 15 JUNI 1961
licenced from PGP RTS.1961
COSMIC SOUNDS LONDON 2002

JACK DIEVAL - II SASTANAK U STUDIJU (COSMIC SOUNDS CS - 26 EP)
side A: 1. Pennies From Heaven 2. Moonllight In Vermont 3. Gloria
side B: 1. Theme No.4 2. My Birthplace 3. Bon Voyage
Jack Dieval (klavir) Bernard Vitet (fligelhorn) Francois Jeanneau (tenor sakusofon) Jacques Hess (double bass) Art Taylor (bubnjevi)
SNIMJENO U STUDIJU VI. RTB 4, 5 MARTA 1961
licenced from PGP - RTS.1961
COSMIC SOUNDS 2002

JEROME RICHARDSON - SASTANAK U STUDIJU (COSMIC SOUNDS CS - 25 EP)
side A: 1. Two Songs 2. Why In Blues
side B: 1. Minor Flute 2. Night In Tunisia
Julius Watkins (frenchorna) Jerome Richardson (tenor saksofon, flauta) Bosko Petrovic (vibrafon) Davor Kajfes (klavir) George / Buddy / Catlett (bass) Joe Harris (bubnjevi)
Snimljeno u Studiju VI RTB 16, Juna 1960
licenced from PGP RTS. 1960
COSMIC SOUNDS 2002

http://www.jazzlandrec.com/home/
http://www.nytnordiskforlag.dk/
http://www.cosmicsounds-london.com/menu.html

7/31のTALKIN' ABOUT JAZZY THINGS"nu cool jazz"で、Finn Jazzからニコラ・コンテ、そして最後の1時間はSonar Kollektivレーベルからリリースされていた2004年の"Forum West - Wewerka Archive '62 - '68"、2006年の"Focus Jazz - More Modern Jazz From Wewerka Archive '66 - '69"、"Romanian Jazz - Jazz From Electrecord Archive '66 - '78"、ついこの間Jonny RecordsからリイシュされたHarbie Hancock、Thad Jones、Ron CarterなどのセッションHear, Olsrael "A Prayer Ceremony in Jazz"などを繋いでDJイングしていて感じたことなのだが、時代はハードバップよりも愈々nu cool jazzという新しい形容詞での少々クールでリリカルなグルーヴが最もフイットする時期に差し掛かっているように感じた。それだけクラブジャズを聴いて来たひとたちの耳や感性も鋭くなってきているように思える。次回はハイテンションなグルーヴやボッサ/ラテンにとらわれることなく、nu cool jazzの渋めのグルーヴで4時間展開しようかなと考えている。

2008年08月31日

jaz' room nu things 4周年パーティー

時間というのはあっという間に過ぎて行く。だから迷ってなんていられない、限りある人生だからと、改めて思う。好きなことだけを好きなだけして、嫌になればいつでも辞めて、新たな道を選べばいい、それで人生終われば本望だと、改めて思う。人生で最も難しい迷った時期はボクにとっては40歳代の頭だった。失われた10年というあのちょうど時代が移り変わる節目の時代だった。しかし、それは自分の生き方に迷っていたのではない。時代がそうさせたのだ。でも、ここまでくればもうなんの焦りも曇りもない。走り続けるだけだ。後はどう自分の死に向き合い決着させるかだけだ。
さて、nu thingsを立ち上げてもう4年もの歳月が経っていることに、まず驚く。早いな! 正直ボクのなかでは、少々飽きがきていて、というよりボクはこうした業種は性格的に向かない。いっそnu thingsの変わりに新たにお洒落で素敵な音楽の流れている小さなカフェでも立ち上げて、nu thingsは破棄しようかとも考えている。経営的には決して赤字ではないし、出来るならいまのうちに誰かnu thingsを引き継いでくれないかなと、思い始めている。それは第1に、なによりもそろそろ新しいことに着手し始めたいからだ。人生最後の仕事として、新しい発想を持った雑誌の発刊と、1960-2010年までの全音楽史/レコードデータベースの構築、有能なアーティストの発掘/プロデュース/レーベルの立ち上げなどをしておきたいなと思い始めているが、なかなか果たせない。転職しようかと迷うほどの、つまらないサラリーマン人生歩むくらいなら、ボクと愉快で豪快な人生を歩まないか! これがnu thingsという場からのキミに対する最初で最後の問いかけだ。


●BLACKQP'67 blackqp(as,ts),issy(tp),endo(gt),turner(org),kamiya(dr)
●TATSUMI Tetsuya(trumpet, PC)
●DJ:TAIZO (LESSON ZERO) - OOTANI Yohei - TANII Makoto - Ange (HIJAK)

昨夜の4周年パーティーには多くの人が顔見せてくださってありがとうございました。懐かしい顔と新顔、常連客、ミュージシャンたちが入り乱れて、挨拶するので大変だった。でも、始まりから終わりまで、大盛況で、午前2時頃には散会する予定が、結局朝の5時までオープンしていた。そうした楽しい空気のなかで、来て下さったお客さんみんなが踊ったり、話したり、BLACKQP'67やTatsumi Tetsuyaのライヴを聴き、都会の夜をエンジョイしている姿を見ていると、nu thingsを立ち上げてよかったなと実感しました。自分で言うのもなんだが、いいパーティーだった。とりあえずこの場を借りてお礼を言っておきます。

※わざわざ東京からnu thingsの4周年を祝ってくれるために来てくれたジャズ・トランペッターTatsumi Tetsuyaの打ち込みによるライヴ、ラップトップ・ジャズは新曲2曲と過去の曲4曲で構成されていて、来ていた外人さんたちは彼の音楽を"アメージング!"といって高く評価していた。 BLACKQP'67はNATIVEの中村智由の新しいユニットで、踊らせることを第1の目的としたパーティ・ジャズユニット。中村氏がテナーサックスを操るというのも珍しく、(また彼のニックネイムなのだろうキューピーさんのような髪型を見てご覧、彼のお茶目な一面がみてとれる) 彼らの音楽に合わせてクラウドたちは最後まで踊ることをやめず狂乱しダンスしていた。( 東京と名古屋のミュージシャンが大阪にまで来てnu thingsの4周年を祝ってくれているというのに、nu thingsに常に出演している地元のミュージシャンが顔を出してくれていたのは、ボクの知る限りでは数人だけ。これが大阪で活動しているミュージシャンたちの人間性/実態だ。そんな彼らが音楽で成功することなどまずありえないだろう。まあ、これはなにもミュージシャンに限ったことではないだろう。自分の本性や素性を隠したままのネットコミュニケーションでの匿名性と表面だけを滑って行くだけの、無理に親密さのフリをしながら、無関心を装うアンヴィバレンツな態度が反映された現代の人間模様でもあるのだろう。)

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