COOL SCANDINAVIANS
晩夏の夕暮れる南の空に半月が輝くのを見上げていると5年前の北欧旅行の空を思い出し、またまたスカンジナヴィアに旅したくなってくる。北欧のジャズに興味を持った理由には色々あるが、ひとつにはヴェルナー・パントン、アルネ・ヤコブセン、イッタラなどのデザイン家具やテキスタイルに90年代後半から興味を持ったことが大きい。5年前の北欧の旅で訪問した国のなかでは、やはりノルウェイのオスロが最高だった。オスロのクラブといえば Blå (ブラ http://www.blaaoslo.no/ )だが、そこはいまも健在だし、70年代にはClub 7という伝説の店があって、'63年から'85年の約20年間存続した北欧における
ジャズの発祥地でもありノルウェイのジャズミュージシャン、アルフ・エーリング・シェルマンなどを育み、Dexter Gordonの " Ballads "、Webster Leisの" In Norway : the Club 7 Live Tapes "など多くのミュージシャンのレコードがここで録音されている。( jaz’ room "nu things"も古くはダダイストたちの巣窟であったキャバレー・
ヴォルテールのように、アーティストやミュージシャンたちが自由にあの空間を使い常に文化の収斂と震源地であって欲しいと、願って立ち上げてはいるのだが・・) 。北欧の音楽に注意をむけ始めたのは、ノルウェーのレコード・レーベル " Jazz Land " での'97年にブッゲ・ヴェッセルトフト(Bugge Wesseltoft)によって"New Conception Of Jazz"が発表された頃からだ。その後、'99年にロンドンのCosmic Soundsでリリースされていたトランペッター、デュシュコ・ゴイコヴィチなどやユーゴスラヴィアやチェコ、ブルガリア、ロシアなど、バルカン諸国のレア音源がリイッシューされていたモダン・ジャズのレコードでの東欧ジャズに興味を持ったことなどに起因している。このCosmic Soundsは2005年のVA / BLUE LIGHT Fusion Gems from Hungarian Vaults vol. 2や、VA / ANTHOLOGY Fusion Gems from Hungarian Vaults vol. 2を最後に作品はリリースされていないが、現在のFinn Jazzやnu jazzのルーツともいえるジャズ音源が多く発売されていた。
COOL SCANDINAVIANS / DANISH JAZZ COVER ARTWORK FROM 1950 - 1970
デンマークのNTY NORDISK FORLAG出版社から発売された"Cool Scandinavians - Danish Jazz Cover Artwork From 1950 - 1970"には、50-70年代にデンマークで発売されたLPやEPのレコードジャケットが142点収録されていて、そのすべてのジャケットデザインが正直優れたものとは言えないが、コペンハーゲンにオープンした
ジャズハウス " モンマルトル " ( 最近リッキー・チックから発売された " On The Spot - A Peak At The 60s Danish Jazz Scene " のジャケットには、そのモンマルトルの店内の壁に彩られたモチーフが使われている )や、コペンハーゲンから遠く離れたユトランド南西部の小さな町ブランデの本屋が設立したジャズレーベル " デ
ビュー ( Debut ) "などを拠点にして広がっていったデニッシュ・ジャズの歴史が計り知れて興味深い。ちなみに、ここで紹介されているレコードでボクが持っているのは'70年に発売された " The Danish Jazzballet Society Ensemble - The Jazz Dance " たったの1枚だけである。
Cosmic Soundsの話に戻るが、'60 - '61年にRTBレーベルでの地元ベルグラードと外国のミュージシャンによるセッションが収録された2002年にリリースされていた " three 10' records originaly " シリーズの10インチ3枚をやっと手にすることができた。3枚目の " BORISLAV ROKOVIC TRIO / III SASTANAK U STUDIJU ( 3RD MEETING IN STUDIO ) は'61年ペオグラードでの録音で、Cole Porterの " You'd Be So Nice to Come Home " 、" Theme From the Beggar's " などがセッションされていて、ノスタルジックなスウィンギン・ピアノ・ジャズ、悪く言えば"どジャズ"だが・・・。2枚目のJACK DIEVAL - II SASTANAK U STUDIJU ( 2nd Meeting In Studio ) は、フランスのピアニストJack Dieval、テナー・サックスにはFrancois Jeanneau、バップ・ドラマーのArt Taylorがフィーチャーされ'61年ベオグラードでのセッション録音。1枚目の " JEROME RICHARDSON - SASTANAK U STUDIJU " は、ユーゴ・ジャズシーンのヴァイブ奏者BOSKO PETROVICを核に地元のジャズメンと、QUINCY JONES楽団の渡欧メンバーとして現地に赴いたテナー・サックス奏者JEROME RICHARDSON、フレンチ・ホーンにJULIUS WATKINSなどによって'60年ベオグラードでのセッション録音。全体的にはノスタルジックでリリカルな面が強いが、なかにはハードバップ・グルーヴも聴こえる北欧スカンジナビアン・ジャズとも共振している東欧ユーゴスラビア・ジャズのマニア向けの60年代レアな作品である。
TRIO BORISLAV ROKOVIC / III SASTANAK U STUDIJU (COSMIC SOUNDS CS-27 EP)
side A: 1. Bad Dream 2. Theme From The Beggar's Opera 3. You'd Be So Nice To Come Home
side B: 1.Bee - Deedle - Dee - Doo 2. The Midnight Sun Will Never Set 3. Donna Lee
Borislav Rokovic (piano) Vojislav Donovic (guitar) Hans Hoitz (drums) Milan Stjanovic (flute) Joe Sydow (bess)
recorded at 14, 15 JUNI 1961
licenced from PGP RTS.1961
COSMIC SOUNDS LONDON 2002
JACK DIEVAL - II SASTANAK U STUDIJU (COSMIC SOUNDS CS - 26 EP)
side A: 1. Pennies From Heaven 2. Moonllight In Vermont 3. Gloria
side B: 1. Theme No.4 2. My Birthplace 3. Bon Voyage
Jack Dieval (klavir) Bernard Vitet (fligelhorn) Francois Jeanneau (tenor sakusofon) Jacques Hess (double bass) Art Taylor (bubnjevi)
SNIMJENO U STUDIJU VI. RTB 4, 5 MARTA 1961
licenced from PGP - RTS.1961
COSMIC SOUNDS 2002
JEROME RICHARDSON - SASTANAK U STUDIJU (COSMIC SOUNDS CS - 25 EP)
side A: 1. Two Songs 2. Why In Blues
side B: 1. Minor Flute 2. Night In Tunisia
Julius Watkins (frenchorna) Jerome Richardson (tenor saksofon, flauta) Bosko Petrovic (vibrafon) Davor Kajfes (klavir) George / Buddy / Catlett (bass) Joe Harris (bubnjevi)
Snimljeno u Studiju VI RTB 16, Juna 1960
licenced from PGP RTS. 1960
COSMIC SOUNDS 2002
http://www.jazzlandrec.com/home/
http://www.nytnordiskforlag.dk/
http://www.cosmicsounds-london.com/menu.html
7/31のTALKIN' ABOUT JAZZY THINGS"nu cool jazz"で、Finn Jazzからニコラ・コンテ、そして最後の1時間はSonar Kollektivレーベルからリリースされていた2004年の"Forum West - Wewerka Archive '62 - '68"、2006年の"Focus Jazz - More Modern Jazz From Wewerka Archive '66 - '69"、"Romanian Jazz - Jazz From Electrecord Archive '66 - '78"、ついこの間Jonny RecordsからリイシュされたHarbie Hancock、Thad Jones、Ron CarterなどのセッションHear, Olsrael "A Prayer Ceremony in Jazz"などを繋いでDJイングしていて感じたことなのだが、時代はハードバップよりも愈々nu cool jazzという新しい形容詞での少々クールでリリカルなグルーヴが最もフイットする時期に差し掛かっているように感じた。それだけクラブジャズを聴いて来たひとたちの耳や感性も鋭くなってきているように思える。次回はハイテンションなグルーヴやボッサ/ラテンにとらわれることなく、nu cool jazzの渋めのグルーヴで4時間展開しようかなと考えている。