2008年06月 アーカイブ

2008年06月04日

THE FIVE CORNERS QUINTET/HOT CORNER EP

THE FIVE CORNERS QUINTET/HOT CORNER EP(RT023)
今年の後半に発売されるだろうファイヴ・コーナーズ・クインテットのセカンド・アルバムに先駆けて10インチEP「HOT CORNER EP」がリリースされた。このEPには3曲が収録されていて、リッキーチックのオフィシャルホ
ームページでは、「ロカビリーにインスパイアされたアップビートでドライヴィングするダンスフロア・ジャズ"Hot Rod"は、ジーン・ヴィンセントがウェイン・ショーターとコラボレートしたならこうしたサウンドを構築しただろう。"Shake it"は爪先立つダンスフロア・ナンバー。バカラックがStaxレコードのために曲を作ったなら、キミが"イェィ"と手拍子したくなるようなメロディックで多才なインストゥルメンタル・トラック”Easy Diggin'"のようなブガルー・テイストの曲を作っただろう」というコピーがうたわれている。ファイヴ・コーナーズ・クインテットのメインマンでありコンダクター・プロデューサーのトーマス・カリオの現代のクラブシーンの置かれた状況と空気感を読む感性、それを音楽に転換する着眼点と発想はやはり並みのものではなかった。ハードバップとロカビリーの融合"Hot Rod"のハード・ロカバップの1曲だけでもワクワクさせてくれる素晴らしいEPだ。トーマス・カリオは、FCQの今回の再出発について、「'05年に発売された"Chasin' the Jazz Gone By"は、
クラブ空間に機能する新しい角度のポストモダン・ジャズというメソッドだった。でも今回はロカビリーとロックンロールにあるザラザラした荒削りのサウンドにしたかったし、ファーストアルバムがクールなら、セカンドアルバムはきっとホットなものになるだろう」と語っている。おそらくファイヴ・コーナーズ・クインテットという彼のネクスト・プロジェクトへの美意識はダイナミックに変容して表われてくることだろう(現在進行形のFCQプロジェクトは数人のゲスト、ヴォーカリスト、ヴィブラフォン、弦楽器などのセクションも加える計画もあると語っている)。楽しみだな。FCQの登場でジャズの新たな概念作用がもたらされ4年もの時間が経過したが、nu jazzやFinn Jazzが発展していき、クラブフロアがジャズグルーヴで熱くなってきた、と、いうこともなく、ただ、やっと最近になって耳の肥えたレコードリスナーがFinn Jazzの良さに気付きはじめた頃かも知れない。いまのうちにこの周辺のレコードは押さえておいたほうが賢明だぜ。

THE FIVE CORNERS QUINTET/HOT CORNER EP(RT023)
A:Hot Rod(T.Kallio)
AA:Shake It(T.Makynen)
AAA:Easy Diggin'(T.Kallio)
produced,arranged and recorded by Tuomas Kallio at Nuspirit Helsinki Studios
mastered by Bo Kondren at Galyx Mastering
illustration by Sanna Paananen/www.pekkafinland.fi
lay-out by Antti Eerikainen
Timo Lassy(tenor sax) Jukka Eskola(trumpet) Mikael Jakobsson(piano) Antti Lotjonen(bass) Teppo Makynen(drums & percussion) Tuomas Kallio(commander in chief)
RICKY-TICK RECORDS 2008

The Five Corners Quintet
http://www.myspace.com/thefivecornersquintet
http://www.ricky-tick.com/thefivecornersquintet


ON THE SPOT VOL.2- A PEEK AT THE 60s DANISH JAZZ SCENE(RT022)
リッキーチックからの新作もう1枚は"ON THE SPOT VOL1 - A Peek At 1960's Nordic Jazz Scene"に続く第2弾ON THE SPOT VOL.2 – A Peek At The 60s Danish Jazz Scene"が発売された。60年代のデンマークシーンから表出したJazz Quintet 60"Vacker flicker"、 Sahib Shihab"Charade"、Pedro Biker"Wives And Lovers"、Bent Jaedig“B's waltz” 、Axen & Wissing“Hilsen fra Peter”などが11曲コンパイルされたもの。編集したのは
Povoの片割れであるAnders-Peter Andreasenで、彼は最近ダニッシュ・ジャズのジャケット・カヴァー集「Cool Scandinavians」も出版しており、スカンジナヴィアン・ジャズに関して精通したレコード・コレクターでもある。その彼のコレクションのなかからベストのものがコンテインされている。50年代前半にモダンジャズが発展したビバップから始まったデンマークのジャズシーンは、小さいながらも活気がありサックスのMax Brüel、ベースのErik Moseholm、 トランペットのJørgen Rygなどのミュージシャンがいた。その後、'61年にコペンハーゲンにニューヨークやパリのクラブに似た最初のジャズハウス"Montmartre"がオープンしたことによって発展していき、サクソフォーン奏者のスタン・ゲッツとベーシストオスカー・ペティフォードは1958年以来コペンハーゲンに住み、サクソフォーン奏者のSahib Shihab、デクスター・ゴードン、ベン・ウェブスター、およびピアニストのケニー・ドリューなど、多くの外国人ミュージシャンもそれに続きコペンハーゲン・ジャズ・シーンに関わり賑わいをみせていたという。選曲は前作よりもこのコンパイル・アルバムのほうが勝っている。

ON THE SPOT VOL.2-A PEEK AT THE 60s DANISH JAZZ SCENE(RT022)
A:1.Jazz Kvintet 60:Vacker Flickor 2.Finn Mickelborg's Quintet:Bennie7s Groove 3.Erik Moseholm,Bent Axen & Peter Wissing:Hilsen fra Peter 4.Finn Savery:Night and Day 5.Louis Hjulmand Quartet:Opbrud 6.Bent Jaeding:B's Waltz
B:1.Max Leth:Taboo 2.Cy,Maia & Robert:City Blues 3.Sahib Shihab:Charade 4.Bjarne Rostvold:Folk Music 5.Pedro Biker:Wives and Lovers
compiled & produced by Anders-Peter Andreasen
mastered by Thomas Hass at MCS,additional mastering by Svante Forsback at Chartmakers & Bo Kondren at Calyx Mastering.
sleeve by Antti Eerikainen
photos by Jan Persson
cover photo:Jazzhus Montmartre
RICKY-TICK RECORDS 2008

※正確なカウンターはされていないけれどこのnu thingsのホームページのアクセス解析を調べてみると、5月では次のような利用統計がでている。(左の数字が平均/右が最大)
一時間あたりのヒット数 1025 5717
一日あたりのヒット数 24605 35262
一日あたりのファイル数 13631 19950
一日あたりのページ数 9531 14251
一日あたりの訪問者数 1039 1313
一日あたりのKBytes数 289712 483788
このなかで、いったい何人の人間がFinn Jazzやnu jazz系のレコードを買っているのだろう。これ以外に聴くものなどないというのに、ところで、いったいキミはいまどんなレコードを聴いているの? このアクセス数がそのままクラブシーンやjaz' room "nu things"に反映されることを願っているよ。

2008年06月07日

ELLEN WELLER + BOB WELLER + M.F.

EXPERIMENTAL FROM SANDIEGO
2008/6-06 at jaz' room nu things
Ellen Weller - flute, soprano sax, clarinet, multi-winds,
Pianist.Ethnomusicologist, Improvisor, Composer
Bob Weller - piano, drums, Pianist, Percussionist, Composer
M.F. - percussion, electronics

マルチ管楽器奏者、ピアニスト、エスノミュージックの学者、インプロヴァイサー、作曲家のエレン・ウェラーと、ピアニスト/打楽器奏者/作曲家のボブ・ウェラー、マルコス・フェルナンドスのパーカッションによる"EXPERIMENTAL FROM SANDIEGO"が昨夜Jaz' room nu thingsで行われた。サンディエゴを拠点に活動するエレンとボブが、国際的ベーシストのマーク・ドレッサーと去年リリースしたCD「Point Of Contact」(イヴェントが終わった後にエレンから頂いたのだが)には、彼女たちのジャズとクラシックの支柱から拡張し創造される15のインプロヴァイズド・ミュージックの断片が収録されていて、現在のアメリカのインプロヴァイズド・ミュージックの水準と質の高さが感じられるほどに素晴らしい。


音楽理論やスキルを学べばこそ、こうした高みに達することができるのだなあと思わずにいられないほどだ。それに比較するとロックのなれの果てのニッポンのフリー/インプロヴァイズド・ミュージックのなんと貧弱なことよ!(もういいかげんオマエの音楽以前の病んだ精神とテクニックなさゆえのノイズを捲き散らすなよ!) ジャズであれロックであれ、クラシックであれ、やはりアメリカやヨーロッパなど海外のミュージシャンのスキルやテクニックに比べるとニッポンのミュージシャンはフェイクで偽物だと思わずにいられないね。エレンはフルートからソプラノサックスなどを、またボブはピアノとドラムスを縦横無尽に駆使しながら、昨夜の彼女たちのステージは2ステージ行われラストにエレンとボブによるウェイン・ショーターの曲でフィナーレを迎えたが、ホンモノのミュージシャンの演奏するジャズから現代音楽、クラシック、民族音楽などの多様なミュージカル・パラダイムの底辺には、やはり"ジャズ的なるもの"が大きく支配していた。彼女たちは初来日で、ニッポンではまだ無名に近いアーティストだけれど、今回のステージを逃したひとは是非次の機会に。フリー/インプロヴァイズドの先端での音楽は確実にスキルアップし新たな次元にさしかかっている。そのことを今夜の彼女たちの音楽を体験し確信した。

BOB AND ELLEN WELLER WITH MARK DRESSER/POINT OF CONTACT(CIRCUMVENTION 056)
1.Society for the Abolition of Redundancy Society 2.Coalescence 3.Cassini-Huygens 4.His Lucent Empire 5.Mandelbrot 6.Concatenation 7.Spiral Galaxy 8.Strange Attractor 9.Collusion
Point of Contact 10.Point of Contact 11.Point of Departure 12.Point of No Return 13.Point of Impact
Two Marches 14.Fog of War 15.Aftermathat
recorded Proxy Studios Aug 2006 and YUSM Studios Jan 2007
engineer:Charlie Weller additional mixing:Joe Marlett mastered at golden Mastering design:Andrew West photo:Ellen Weller
point of contact Bob Weller(piano,prepared piano) Ellen Weller(flute,soprano sax,clarinet,fife,recorders,ocarina,jaw harp) Mark Dresser(acoustic bass-tracks 2,3,6,9)
all tracks composed by Weller/Weller/Dresser and published by YUSM Music(ASCAP)
www.wellermusic.com
CIRCUMVENTION 2007

2008年06月20日

REARWARD / SAHIB SHIHAB / CLARKE BOLAND SEXTETT

REARWARD
SAHIB SHIHAB
CLARKE BOLAND SEXTETT
VALDAMBRINI+PIANA
JOHNNY GRIFFIN

なんだかThe Five Corners QuintetのEP"Hot Corner"の売れ行きがいいらしい。やっとFinn Jazzやスカンジナビアン・ジャズ、nu jazzの素晴らしさに気付き始めたのだろうか。正直ちょっと遅過ぎるけどね。でもこの周辺の"ジャズ的なるもの"に興味を持つひとが増えることは嬉しい限りだ。
THE SAHIB SHIHAB QUINTET/SEEDS(SCHEMA RW122LP)
さて、新譜のほうはFCQ以外はイタリアのSCHEMAレーベルのLuciano Cantone、Davide Rosa、Gerardo FrisinaのコーディネーションによるREARWARDシリーズでの、リッキーチックからの"On The Spot Vol.2-A Peek At The 60s Danish Jazz Scene"にもコンパイルされていたサヒブ・シハブやケニー・クラーク、フランシー・ボーランド周辺のリイシューものの数枚を買うしかめぼしいものがないのが現状。その中でも2枚組Sahib Shihab"Companionship"は驚くほどFinn Jazzの流れに添った作品で60年代後半の作品とは思えないほど新しい。69年の独Vogue原盤の超レア盤Sahib Shihabの"SEEDS"は、名盤の誉れ高い1枚で、バリトン・サックス&フルート奏者、サヒブ・シハブによるオリジナル復刻盤で、このアルバムはSCHEMAから"The Latin Kick"などの数枚の作品をリリースしているDJ/プロデューサー/アーティストのGerald Frisinaが、"African Seeds"という曲を作るときにインスパイアされた作品でもあるのだが、まあ2枚組の"Companionship"にはかなわない。イスラム教改宗者のサヒブ・シハブ(Edmond Gregory)は'25年サバンナに生まれ、'89年にテネシーで死去したジャズ・サクソフォーン奏者(バリトン、アルト、ソプラノ)で、13歳の頃にルター・ヘンダーソンとプレイし、その後ボストン音楽学校で学び、トランペッターのロイ・エルドリッチと活動を続け、'40年代後半にはセロニアス・モンク、アート・ブレーキー、ケニー・ドーハム、およびベニー・ゴルソンをなどのミュージシャンの多くのアルバムでレコーディング・セッションしている。50年代にデイジー・ガレスピーのビッグバンドでプレイした体験を通してバリトンこそが彼自身の音楽の重要な要であることを悟ったという。'59年に米国の人種的な政治の動きにうんざりしていたサヒブ・シハブは、クインシー・ジョーンズと共にヨーロッパをツアーし、そのままスカンジナビアに定住することになる。スカンジナビアでは、コペンハーゲン・ポリテクニックを拠点に働き、テレビ、シネマ、および劇場用のスコアを書いていた。その後の12年間は、'61年にケニー・クラーク・フランシー・ボーランド・ビッグ・バンド(The Kenny Clarke-Francy Boland Big Band)に加わって、バンドの重要な要/存在として活動を続けていた。異邦人の彼はデンマーク人の女性と結婚して、ヨーロッパに家庭を築くほどに北欧やヨーロッパのジャズシーンに影響を与え続けた。彼の音楽の底に流れているのは、常に人種問題を敏感に意識しているアフリカ系アメリカ人独特のアイデンティティを喪失した者の感情だったのかも知れない。

SAHIB SHIHAB
http://jp.youtube.com/results?search_query=SAHIB+SHIHAB&search_type=&aq=f

THE SAHIB SHIHAB QUINTET/SEEDS(SCHEMA RW122LP)
side I:1.Seed 2.Peter's Waltz 3.Set Up 4.Who'll Buy My Dream 5.Jay Jay
sode II:1.Another Samba 2.My Kind'a World 3.Uma Fita De Tres Cores 4.Mauve 5.The Wild Man
personnel:Sahib Shihab(baritone and flute)
Sadi(vibraphone,marimbaphone and bongos)
Francy Boland(piano)
Jimmy Woode(bass except tracks 4 and 5,side 2)
Jean Warland(bass only tracks 4 and 5,side 2)
Kenny Clarke(drums)
produced and supervised by Gigi Campi
recording engineer:Wolfgang hirschmann
recorded June 9th,1968 at Lindstrom Studios Cologne
cover photo design and layout:Heinz Bahr
insiderphoto:Chargesheimer
project coodination:Luciano Cantone,Davide Rosa,Gerardo Frisina
SCHEM REARWARD 2008

SAHIB SHIHAB/COMPANIONSHIP(SCHEMA RW119 LP)
featuring:Kenny Clarke / Benny Bailey / Francy Boland / Milt Jackson / Ake Persson / Jimmy Woode
A1:1.Om Mani Padme Hum 2.Bohemia After Dark 3.Companionship 4.Stoned Ghosts 5.Jay - Jay
A2:1.Dijdar 2.Con Alma 3.CT + CB. 4.The Turk's Bolero 5.Talk Some Yak-Ee-Dak
B1:1.Calypso Blues 2. Balafon 3.I'm A Fool To Want You 4.Insensatez 5.Invitation
B2:1.Yah-Yah Blues 2.Serenata 3.Just Give Me Time 4.Born To Be Blue 5.Sconsolato
recorded in Cologne 1964/65,July 1970, may 8/9 1964
recorded in the "Alten Bahnhof Von Rolandsek" September 25th,1965
recorded at Lindstrom Studio Cologne August 13th,1968
recorded at Electrola Studio Cologne February 2nd,1969
produced by Gigi Campi
recording engineer:Wolfgang Hirschmann
recorded at Lindstrom Studios,Cologne
original design and layout by Heinz Bahr
redesigned by Elena Pollini
project coordination by Luciano Cantone,Davide Rosa,Gerardo Frisina
SCHEMA REARWARD 2008
Sahib ShihabがドイツのVogueに残した2枚組LP。"Jazz Joint Vo.2"では、A1-2の"Bohemia After Dark"(夕暮れのボヘミア)のヴァイブがフューチャーされたハードバップ・チューン、B1-1のパーカッシヴなカリプソ・グルーヴの"Calypso Blues..."などはイケてるしイキだな。B2-2はLTCがカヴァーした“Serenata”だが、アルバムには20曲が収録されている。今回の再発物のなかではボクにとってベストな作品だ。

CLARKE BOLAND SEXTETT/MUSIC FOR THE SMALL HOURS(RW120LP)
side 1:Ebony Samba / Lush Life / Tin Tin Deo / Please Don't Leave / Potter's Crossing
side 2:Wives And Lovers / Ensadinado / Lorraine / Day By Day ? Love Hungry
personnel:Sahib Shihab(flute) Francy Boland(piano) Sadi(vibes,bongos) Jimmy Woode(bass) Joe Harris(percussion) Kenny Clarke(drums)
recording date:June 16th,1967
sound:Wolfgang Hirschmann
produced and supervised by Gigi Campi
under the auspices of Electrola GmbH,Cologne
SCHEMA REARWARD 2008

ケニー・クラークは'14年ペンシルバニア州ピッツバーグ生まれで、'85年に死去したジャズ・ドラマーで、ハイスクール時代にドラムなどの楽器や音楽理論を学び、35年にロイ・エルドリッチと共演。その後ニューヨークへ進出し、エドガー・ヘイスの楽団、ベニー・カーターの楽団を経て、自己のバンドを率いた。その後ディジー・ガレスピー、MJQなどに参加し、また'52-55年までMilt JacksonなどとModern Jazz Quartetを結成している。彼もまたサヒブ・シハブと同じようにニューヨークでの暮らしを嫌いヨーロッパへ移ったジャズメンのひとりで、'56年以降はパリで活動している。60年にはフランシー・ポーランと双頭バンドを結成。
そしてベルギー出身のピアニストFrancy Bolandは、40年代末にベルギーやフランスで活動するBobby Jasper、Jacques Pelzer、Rene Thomas等によるジャズ・セットBob Shotsに加入し、その後2年間アメリカに渡り、その間にCount Basie、Benny Goodman、Mary Lou Williams等への楽曲提供 / アレンジを行なっていた。60年代後期のヨーロッパのビッグバンドを象徴するKenny Clarke-Francy Boland Big Bandは、Benny Bailey, Idrees Sulieman, Johnny Griffin, Sahib Shihabuなどのヨーロッパに移住したアメリカ人ミュージシャンと現地のミュージシャンの多国籍ビッグバンドなのだが、ドイツのMPSから発表されている作品を聴いても、その無国籍的でグローバルなサウンドが、現在のクラブジャズ・リスナーに受け入れられる最大の要因だと思う。ケニー・クラークたちのニューヨークのビバップの洗礼を受けた軽快な都会的/スマートなビートとヨーロッパのリヴァーブのかかったモダン・サウンドが融合した彼らの音楽がクラブ・シーンのフロアを彩るのは近い。 彼らの作品の多くにプロデューサーにGigi Campiの名前がみられるが、この周辺のレコード購入するときのためにドイツはケルンに生まれの彼の名前は覚えておいた方がいいだろう。ちなみにケニー・クラークとフランシー・ボーランド関係の作品には、60年のDon Byas"Don Byas"(Columbia)、Francy Boland Ensembleの”Francy Boland Ensemble”(Columbia)、Dusko Gojkovic - Kenny Clarke International Jazz Octetの"Dusko Gojkovic - Kenny Clarke Octet"(RTB)、'71年の"Change of scenes"(Verve)、「Blue flame」(MPS)、「Red hot」(MPS)、「White heat」(MPS)などなどがある。

CLARKE BOLAND
http://jp.youtube.com/results?search_query=CLARKE+BOLAND&search_type=&search=検索

VALDAMBRINI・PIANA QUINTET/AFRODITE(RW121LP)
side A:1.Arabian Mood 2.Drums Atmosphere 3.Parkeriana
side B:1.I Due Modi 2.Palpitazione 3.Afrodite
Oscar Valdambrini(trumpet,flugelhorn)
Dino Piana(trombone)
Oscar Rocchi(piano)
Giorgio Azzolini(double bass)
Tullio De Piscopo(drums)
REARWARD 2008

オリジナルはイタリアのライブラリー・レーベルから77年にリリースされたもの。トランペッター、オスカル・ヴァルダンブリーニとトロンボーンのディノ・ピアナをフィーチャーしたクインテットによる作品。一曲目のコントラバスのクラシカルな弦の音色とアフロ/アラビックでハードバビッシュなグルーヴが交錯する"Arabian Mood"は、ユーロジャズを象徴した物語り性の感じる作品で、Oscar ValdambriniとDino Pianの管楽器のユニゾン、掛け合いが素晴らしい。ユッカ・エスコラはこうした作品は好きだろうな。熟れた70年代イタリアン・ジャズの素晴らしさが堪能できるアルバムだし、イキでお洒落だ。

JOHNNY GRIFFIN/LADY HEAVY BOTTOM'S WALTZ(RW1231LP)
side 1:Foot Patting / Please Send Someone To Love / The Turk's Bolero / Deep Eight
side 2:A Handful Of Soul / The Jamfs Are Coming / Lady Heavy Bottom's Waltz
personnel:Johnny Griffin(tenor) Benny Bailey(trumpet & flugelhorn) Ake Persson(trombone) Sahib Shihab(baritone) Francy Boland(piano) Jimmy Woode(bass) Kenny Clare(drums) Kenny Clarke(drums)
produced and supervised by Gigi Campi
recording engineer:Wolfgang Hirschmann
recorded:August 27th,1968 at Lindstrom Studios Cologne
cover design and layout:Heinz Bahr
insidephotos:Uwe Oldengurg
poject coordination:Luciano Cantone,Davide Rosa,Gerardo Frisina
SCHEMA REARWARD 2008
68年にドイツのVogueレーベルからリリースされたアメリカ、シカゴ出身のテナー奏者でハード・バッパー、ジョニー・グリフィンのアルバム"Lady heavy bottom's waltz"。彼はリトル・ジャイアントと呼ばれクラーク・ボーランド楽団でサイドマンとしても活躍し、この作品にはClarke、Boland、Woode、Sahib Shihab、Benny Bailey、Ake Perssonなどの当時のメンバーたちがセッションに加わっている。このアルバムはブルースコードの曲が多く黒っぽいノスタルジックな面が強く押し出されていて、ハードバップを期待すると裏切られる。念のため。

※このLuciano Cantone、Davide Rosa、Gerardo Frisinaのコーディネーションによるフランシス・ボーランド周辺のリイシュー・シリーズは続けて発売される予定のようだ。
RW 124 Basso-Valdambrini "Conversazioni in Jazz"
RW 125 Carl Drevo and Clarke-Boland Big Band "Swing, Waltz, Swing"
RW 126 Enrico Intra Trio "Jazz In Studio"
RW 127 The Kenny Clarke & Francy Boland Big Band "Jazz Is Universal"
RW 128 Clark-Boland Big Band "Handle With Care"
RW 129 Kenny Clark- Francy Boland & Co "The Golden Eight"

2008年06月30日

FLYING LOTUS / LOS ANGELES

STEVEN ELLISON
FLYING LOTUS

FLYING LOTUS/LOS ANGELES(WARP LP 165)
イギリスのシェフィールでRob MitchellとSteve Beckettによって'89年に設立された"Warp Records"は、デトロイト・テクノと同じようにボクにとっては、現在のnu jazz、Finn Jazzのフィールドに立つまでの、クラブミュージックの流れを形成したその起源となるものだった。
'90年のSWEET EXORCIST、NIGHTMARES ON WAX、LFO、TRICKY DISCOなどのブリープテクノのヒプノティックなグルーヴ、そして'92年の"The Evolution Of The Groove"、94年の"Artificial Intelligence"にみられたB12、THE BLACK DOGなどでのインテリジェンス・テクノの未来派テクノと、APHEX TWIN、AUTECHREなどのポストロックともいえるアヴァンポップな音響系は、まだ微かに未来への希望がみえていた90年代初頭から中
期を象徴するクラブミュージックだった。レイヴカルチャーに嫌気をさしてクラブM2を'92年に閉鎖し、次なるステップとなるボクが湊町に立ち上げたclub"cafe Blue"では、そうしたクラブミュージックがメイン・チューンで、小数のスノッブなクラウドが集っていたが、おそらく当時ニッポン広しといえどブリープやインテリジェンス・テクノなどがかかっていたクラブは、cafe Blueだけだったろう。(ワープレーベルは、"ジャズ的なるもの"からクラ
ブ・ミュージックへの回顧"BRICOLAG
E"で近々紹介します)。しかしこのWarpへの興味を徐々に失い、96年のJake Slazengar ”Groovybeat,Ja"が発売された頃を最後に、あとはJimi Tenorの作品をチェックするくらいで、ニッポンのソニーが配給権を持ち日本盤が発売されるようになった頃にはボクのなかからは完全にワープ・レーベルへの関心が消えてしまっていた(海外の輸入盤の流通システムがここまで確立された時代になにを考えているのだろうかと、評論家NTのバカさかげんに呆れたのを覚えている)。最近のWarpレーベルは、音響系を主軸にしたポストロックともいえるモダンポップ・ミュージックを展開しているが、こうしたものは実は90年代中期のオウテカやドラムンベースで既に終わったグルーヴ/サウンドなのだ。3年前にブラック・ドッグ・プロダクションから発刊されたRob Youngの"Warp Labels Unlimited"をパラパラめくってみていると、やはりWarpレーベルは、90年代中期からクラブミュージックというよりも、ポストロックとしてのコンセプトが強まったことが分かる。アサーテン・レシオ、クロックDVA、キャバレー・ヴォルテールなどのインダストリアルな80年代シェフィールド・サウンドは、現在このワープ・レーベルによって継承されているといってもいいだろう。さて久しぶりにワープ・レーベルでのこのFlying Lotusを買ったのは、Flying LotusことSteven Ellisonは、John ColtraneとAlice Coltraneを叔父と叔母に持つ甥としても知られ、マッドリブのお気に入りのアーティストでもあるからだ。このロサンジェルス在住のヒップホップ・プロデューサーでもあるスティーヴンは、80年代にはクラフトワーク、Afrika Bambaata’s “Planet Rock,”、Cybotron’s “Clear”などのアルバムを聴き、90年代にはテクノハウス、ドラムンベースに影響され、ロボティックとフューチャリスティックなヒップホップの方程式を持つ新たなファンクを構築することを、その音楽の目標としている。IDMエレクトロニカ、ジャズ・フュージョン、ブームバップ時代のヒップホップなどが融合されたフライング・ロータスは、エイフェックス・ツインやオウテカが進化したYesterdays New QuintetやMadlibの流れにあるものだとボクはとらえている。これこそが21世紀にエレクトロニック、FunkとSoul、Hiphopの選ぶべき道かも知れない。しかしこのFlying Lotusは予想以上にイケてる。このアルバム以前にリリースされたEP"Reset"をボクは聴いていないが、彼の関わったものに、KelisやMr.Oisoのミックス盤、AmmoncontactのCarlos Ninoのコンパイル"The Sound Of L.A. Volume 2 "などがリリースされているらしい。youtubeでの過去の彼の作品を聴いた限りでは、この"Los Angeles"は、よりエレクトロニック・ジャンクよりのグルーヴへと変容している。我々の感覚や耳もフライング・ロータスの奇形音楽のように、ここまでブリコラージュされ歪曲されたものにしか、素直に感じなくなってしまっているのかも。

FLYING LOTUS オフィシャルサイト
http://www.flying-lotus.com/destroy/

FLYING LOTUS
http://www.flying-lotus.com/losangeles/
MySpace.com - Flying Lotus
http://www.myspace.com/flyinglotus

Flying Lotus - Riot
http://jp.youtube.com/watch?v=yXULecvImpw&feature=related
Flying Lotus- Los Angeles
http://jp.youtube.com/watch?v=CadMEehyd9g&feature=related

FLYING LOTUS
http://jp.youtube.com/results?search_query=FLYING+LOTUS&search_type=&aq=f

FLYING LOTUS/LOS ANGELES(WARP LP 165)
A1.Brainfeeder Something/Stellar Star A2.Breathe A3.Beginners Faiafel A4.Camel, A5.Melt!
B1.Comet Course B2.Orbit B3.Golden Diva B4.Riot
C1.GNG BNG C2.Parisian Goldfish C3.Sleepy Dinosaur C4.Roberta Flack(feat.Dolly)
D1.Sex Slave Ship D2.Auntle's Harp D3.Testament8feat.Conja Sufi) D4.Auntie's Lock/Infinitum(feat.Laura Darlington)
produced and engineered by Flying Lotus(Just Isn't Music)
except for:08.Golden Diva8add,production by Matthew Davis) 10.GNG BNG (co produced by The Gaslamp Killer) 13.Roberta Flack (add,production by Samiyam and Byron the Aquarius) 14.Sex Slaveship(add,production by Matthew David)
mastered by Daddy Kev D/AD:Build
p:Timothy Saccenti
sculpture:Commonwealth
WARP RECORDS 2008

ROB YOUNG
WARP LABELS UNLIMITED

Black Dog Prublishing
texts by Rob Young and Adrian Shaughnessy
edited by Catherine Grant
picture research and Warp Artists A-Z research by Georgie Gerrish
designed by marit@graphic-shapes,co.uk
BLACK DOG PUBLISHING 2005
情報過多の音楽情報に迷わないためには、なにごともその始まりを押さえておけば、すべてを見通せる。可能ならば後追いではなくリアルタイムに旬の音楽を体験することだ。いまではFinn Jazzやnu cool jazz、そしてYNQやこのフライング・ロータスのabstract jazzy hiphopと呼ばれる情報かな。

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