2007年12月 アーカイブ

2007年12月02日

THE STANCE BROTHERS

テッポ・マキネンの新プロジェクト、The Stance Brothers

THE STANCE BROTHERS/KIND SOUL(RICKY-TICK RT019/OTCD-2158)

フィンランドの新しい世代によるジャズシーンでは、ユッカ・エスコラ、ティモ・ラッシー、ファイヴ・コーナーズ・クインテットなどのアルバム・プロデューサーとしても、またひとりのジャズドラマーとしても、傑出した力量、存在のTeppo Makynennだが、彼による新たなプロジェクト、The Stance BrothersのCD「Kind Soul」がニッポンのUltra-Vibeから世界に先駆けて発売された。正確に言うとThe Stance Brothersは、ヴァイブ、キーボード、パーカッションのイサイアと、ベース.ギターのドウェイン・スタンス兄弟。それにドラムス、パーカッションのバイロン・ブレイクスの3人によって成るのだが、彼らのガレージ・ジャズは、シンプルでダウンなドラムキックのうえを全編を通じてヴィブラフォーンのサウンドが占領する次世代のためのポスト・ファンク、アブストラクト(ジャジー)・ヒップホップといえるものだろう。イエスタデイズ・ニュー・クインテットなどのアブストラクトとの相違点はなにかと考えれば、スタンス・ブラザースには至る所にモダニスト的な醒めたクールでスタイリッシュな感覚があり、ロウ・テックなポスト・ファンクとしての印象が強く、曲の構造も明確でスピリチュアル・ジャズとは言い難い。それはやはり黒人と白人の創る音楽の根本的な世界観の違いと、ヴァイブの透明感ある響きによるものだろうが。朝起き抜けにトーストの焼けるにおいのするリヴィングで、紅茶でも飲みながらバング・アンド・オルフセンのレトロ・フューチャーなデザインのオーディオ装置でスタンス・ブラザースの「Kind Soul」でのガレージ・ジャズを聴く、これこそ最高の幸せじゃないだろうか。

A:01.Steve McQueen 02.Prayer 03.Roll Call 04.Dynamite 05.Bright Moments 06.Capricorn B:01.Garage Days 02.Jay's Lament 03.Upside The Head 04.Cool Hand/Turmoil 05.Mean Spirit 06.She May Be Moody 07.Blocw Back (14.Currents"bonus track"日本盤のみ)

ISHIAH STANCE;vibes,key,percussion
DWAYNE STANCE;bass,guitar
BYRON BREAKS;drums,percussion
Chauncy Mcbride;vocals(3) Diamond T.Sparks;saxophone(4) Tyrone Desmond;guitar812) & tambourine(6)
all tracks written,arranged and produced by TEDDY ROC
http://www.ricky-tick.com/thestancebrothers.html

THE STANCE BROTHERS/ROLL CALL(RT017)
THE STANCE BROTHERS/STEVE McQUEEN.JAY'S LAMENT(RT012)

2007年12月06日

CHRISTIAN PROMMER'S DRUMLESSON/DRUM LESSON VOL.1

2007年のベストアルバム 今年いちばんの衝撃

CHRISTIAN PROMMER'S DRUMLESSON/DRUM LESSON VOL.1(SONAR KOLLEKTIV SK162CD)

Truby Trio や Fauna Flash、Voom:Voom での活動で知られる Christian Prommerのデビュー・アルバムでもある「DRUM LESSON VOL.1」には、現在の「ジャズ的なるもの」の時代の90年代テクノハウスのあるべき音楽が聴かれ、ボクにとっては今年いちばんの衝撃だった。2部構成で完結するプロジェクトの第1弾であるこの作品には、Derrick May 「Strings Of Life」、 Masters At Work 「Nervous Track」、Kraftwerk 「Trans Europa Express」などなどクラブミュージックの名曲がジャズ・カヴァーされていて、テクノ、エレクトロニカ、ハウス、クラブ・クラシックなどのいまでは古い概念を持ちDJするのもダサくてカッコ悪くなってしまった過去のクラブミュージックを見事なまでに本格的なジャズに再構築、ニュー・コンセプションしている。それもDJ的テクニックの”REMIX”などという過去の手法ではなく、ゲストに迎えたWolfgang Haffner、Dieter Ilg、Roberto Di Gioia、Ernst Stoerといった現在のヨーロピアン・ジャズ・シーンのリーディング・ミュージシャンによってである。全曲たった一日のワンテイクでレコーディングしたというから、今更ながらジャズ・ミュージシャンのスキルの凄さと、アレンジャーRoberto Di GioiaとChristian Prommerの手腕に驚く。それに加えミックスがあの90年代クラブジャズ・シーンを席巻したクルーダー・アンド・ドルフマイスターのPETER KRUDERというのも嬉しい。もはやDJの時代ではないことを、このクリス・ボーデン以上の「DRUM LESSON VOL.1」での太いジャジー・グルーヴを聴いて、キミも納得せざるを得ないだろう。ニッポンで最初にクラフトワークを紹介したボクにとって、20数年の時を経て「Trans Europa Express」がジャズリメイクされる意味は重く、現在「ジャズ的なるもの」の地平に立っているのが間違っていなかったと、このことが立証してくれている。

Featuring:
Roberto Di Gioia:MD,Piano,Bass
Wolfgang Haffner:Drums
Ernst Stroer:Percussion
Dieter Ilg:Bass

1.Drum Lesson I 2.Can You Feel It 3.Rej 4.Plastic Dreams 5.Drum Lesson II 6.Trans Europa Express 7.Elle 8.Claire 9.Drum Lesson III 10.Higher State Of Consciousness 11.Strings Of Life 12.Beau Mot Place 13.Nervous Track 14.Drum Lesson IV
Produced By Christian Prommer
Mixed By Peter Kruder

**クラフトワークの「Trans Europa Express」は下記のyoutubeのDrumlesson - Song 6で。
http://youtube.com/watch?v=_9oWI3n2KG8&feature=related

http://youtube.com/watch?v=Ok7a0UM8ttA&feature=related

http://www.sonarkollektiv.com/

2007年12月14日

LTC/A Different View

若いクラウドたちがこうしたジャズを聴き、踊る、そうだといいね

ジャズに関してまだブルーノートやプレステッジ、リヴァーサイドなどなどのレコードをやっと2000枚近くそれなりに聴き終えた素人だと思っているから大きなことは言えない。ジャズ的なるものとはそれほど奥が深い。このニッポンにはジャズに関して精通している先輩諸氏たちが多々おられ、彼らに少しは近付けたらといまは勉強中でもある。ジャズを聴くとき、ノスタルジックな記号だけは出来るだけ避けてレコードを選ぶようにしている。そして、強靭なバネと熱気を持つグルーヴか、渇いたニヒルなブルースコード、クール、スタイリッシュ、都市、モダニズムといった記号のあるものには注意を払って聴いていて、ハードバップでもやはりテンションの高揚するフリー直前のものか、それを通過した頃のものにいちばん惹かれる。(ブルーノートからの2枚のリイッシューとユニバーサルクラシックス&ジャズから発売されたアナログ復刻5+1も一緒に紹介しようと思ったけれど、時間がないので今日は2枚だけを)。

LTC/A Different View( RICKY-TICK RTCD08/COCB-53683)

リッキーチックからの新作。こうしたピアノトリオの作品が本当にリアルにクラブジャズ・シーンに受け入れられる時代になったのだろうか。"イタリア発。スタイリッシュな 「新世代ジャズ」 の極致!"か。若いクラウドたちがこうしたジャズを聴き、踊る、そうだといいね。こうしたモーダルでアフロ・キューバン、ハードバップなレコードをDJイングするDJはどこに存在しているんだろう。いたらnu thingsに紹介してよ。さて、LTCは、ピアノのピエトロ・ルッス、ベースのピエトロ・チャンガグニーニ、ドラムのロレンツォ・トゥッチから成るトリオ。LTCはニコラ・コンテ、ハイ・ファイヴ・クインテット、スケーマ・セクステットにも参加しており97年にはヨーロッパ・ジャズ・コンテストで優勝するなど、いまやイタリアのジャズシーンでは重要な位置にありメンバーは各々他にソロ作品もリリースしている。

PIETRO LUSSU piano
PIETRO CLANCAGLINI bass
LORENZO TUCCI drums
01.Just give Me Time 02.A Different View 03.The Holy Ghost 04.Magic Mirror 05.Meninos das Laranjas 06.Easy Does It 07.Antony and Cleopatra's Love 08.Shibuya Crossing 09.Breakfast with Silvia 10.I Wish I Knew How it Would Feel to Be Free 11.Japanese Crowd(bonus track)

http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendid=262476353

http://www.nu-things.com/blog/2007/06/give_the_game_away.html


NILS KROGH/DISPOSITION(Village Again VIA-0067CD)

ノルディック・ダンスシーンで’06年あたりから注目を集めだしたスウェーデンのイエテボリ出身の若きDJ、ジャズ・ピアニストのニルス・クロウが先に発表した12インチ「DISPOSITION」の6/8拍子で刻まれるモーダルな曲に彼の高い音楽性が垣間みれたが、それに続く彼のデビューアルバム。このCDにはジャズボッサ、ポエトリーディング、アフロ・キューバンなどのnu jazzの典型的パターンと、2001年頃のクープやユキミ・ナガノにみられた、いまやスウェーデンを象徴するイエテポリ・サウンドが聴ける。ここでの音楽こそnu jazzのメインストリーム(主流)といえるものだろう。11月に発売されたもので紹介するのが少し遅れたけれど、クラブジャズ(ダンスミュージック)をおさえたメジャーになってもおかしくないnu jazzだ。

*ちなみに2002年の初夏にスウェーデンのストックフォルムなど北欧に旅したときの古いブログでもどうぞ。開いたら右側にある数字の1をクリックして、→4から8までを。
http://www.nu-things.com/old_site/index.html

2007年12月15日

Mute and continue

fujiwara,daisuke release party in OSAKA

14 December'07 at jaz' room nu things
SPECIAL GUEST:fujiwara,daisuke (a.k.a quartz head)+Omar Guaindefall
LIVE:SOULMARINE PRODUCTION feat Wita-Sex-Alice

FUJIWARA DAISUKE+OMAR GUAINDEFALL
Fujiwara Daisukeがクラブミュージックを意識した過去のテクノトランスから、ひとりのジャズ・サックス奏者として次世代音楽の新しい境地に侵入し踏み込んでいることを予感させるアフロ、ダブ、デトロイトのグルーヴが渦巻くスピリチュアルなライヴだった。彼のホームページでも書いている『icchieと二人で作ったトラックを都内某所のスタジオに持ち込み、オマールとレコーディング・セッションをしました。彼にはあらかじめトラックを聴いてもらっていたものの、ほとんどその場のインスピレーションにまかせて歌っていました。まずトラックを聴きながら歌が「降りてくる」までラフにセッションします。するとオマールが「オゥケイ、レコーディング!」となったら、彼にその歌の内容をかいつまんで話してもらいます。そして3人のイメージの統一を図ったのち、一気にレコーディングしていきます。プレイバックを聴いてオマールがパーカッションを足したいというアイデアがあれば重ねて録音していくという流れでレコーディングを進めていきました。』という言葉通りのオマールのパーカッションとヴォイス、Fujiwaraのエフェクテッド・サックスがアフロテイストに彩られた太いエレクトリック・グルーヴのうえを歌うかのようにポゼッションし「ゼネガルの碧い月の夜」へトリップしているかのような時間が流れていた。恐らく彼も次のステップとして構想していると思うが、本来のジャズミュージシャンに立返り、Fujiwara Daisukeがアフリカという記号をコンセプトにしてnu jazzの領域に侵入してくるのは時間の問題だろう。

SOULMARINE PRODUCTION+Wita-Sex-Alice
写真家ミロン・ツォブニールの映像と、ウィタセクスアリスのSMショウがソウルマリーン・プロダクションのディープで憂鬱なアブストラクト・ミュージックと融和しシュールで美しい非日常世界がnu thingsの空間を圧倒した。泣くに泣けない哀し過ぎるほどノスタルジックな音楽だ。まるで我々の病んだ潜在意識を物語るかのような自虐的、自己破滅的刹那は、はたしてロックの現在形なのだろうか。いまの、ボクにとってのロック的なるものとは、レコードショップに並べられているリイシューもののCD群をみても、まるで屍体の山だ。そう、ロックはもう既に80年代に終焉したのだ。ソウルマリーンのアブストラクトはポストインダストリアルからノイズにいたる過程でのあの空虚な日々を呼び戻すかのようだった。あの場所からこの「ジャズ的なるもの」へ這い出るまでどれだけの時間を要したことだろう。そのことをムラセ・コウもきっと近いうちに思い知ることだろう。存在することの痛み、畏れ、そして美しさ。生きることの意味と、音楽の意味? そこに答えなどないのだ。
"すべては夢のまた夢"
ムラセ・コウよ!「冗談だよ」と言ってしまえよ。音楽は文学ではないんだ。身体的な波打つ振動、リズムこそがすべてなんだ。

2007年12月16日

Use an old idea

国内ユニバーサルから完全限定アナログ正規リイシュー
「アナログ復刻5+1」

LARS GULLIN
ウェストコースト・ジャズやジェリー・マリガンのレコードを探していたついでに中古盤で買ったEmArcyからのラルス・ガリンの「LARS GULLIN」は、53、55年にストックフォルムで録音されたもので、ウェストコーストでのトリスターノ的といわれるノスタルジックなジャズが収録されていた。そして今回のラルス・ガリン「オキ・ペルソン」も57年にストックフォルムで録音されたもので、音楽的にはそれほどの違いはない。彼らスウェーデンを始めとするスカンジナヴィアン、ヨーロッパでのジャズは、ジャズをやる前にクラシックの和声や作曲法などの理論、このラルフ・ガリンで言えばピアノやクラリネットのテクニックをマスターしたことが大きくものを言っているといわれていて、それがヨーロッパ、白人ジャズの特徴でもある。まああまり難しいこと音楽的なことを求めないで、こうしたジャズもまたスカンジナヴィアン・ファニチャーと同じように一種のスウェディッシュ・モダンととらえたほうが賢明だろう。なによりもモノクロのジャケット写真がカッコいい。ジャズは50年代のものと60年代のものとは大きな違いがある。50年代はやはりちょっとノスタルジックだ。

LARS GULLIN/ake persson(P 08202 L)
LARS GULLIN/Lars Gullin(EMARCY MG 36012)

THE DIAMOND FIVE
一昨年だったかユニバーサルクラシック&ジャズからリイシューされた"フォンタナ/フィリップス幻の名盤"のなかで最も刺激的だったのは、オランダ、アムステルダムのクインテット、ザ・ダイアモンド・ファイヴの「ブリリアント!」だった。このアルバムでの音楽はダイレクトにファイヴ・コーナーズ・クインテットのFinn Jazzに直結しているサウンドスケープが聴けたことが嬉しかったからだ。トランペット、テナーサックス2管編成もFCQと同じだし。今回7インチ仕様で発売された「Poll Winners Jazz」もこのシリーズで期待を裏切らなかった唯一のものだ。ウェストコースト・ジャズに似た知的でスタイリッシュなハードバップが聴ける。

THE DIAMOND FIVE/Poll Winners Jazz(UCJU-9089)
THE DIAMOND FIVE/Brilliant!(UCJI-9047)

THE MUSIC OF YUSEF LATEEF/Before Dawn(UCJU-9088)

YUSEF LATEEF
ユセフ・ラティーフの名前を知ったのはPrestigeからオリジナル・ジャズ・クラシックス・シリーズでリイシューされた「EASTERN SOUND」だが、そこでのアーシーなオリエンタルブルースに少々失望した覚えがある。しかしtenor sax, oboe, bassoon, fluteを自在に演奏するマルチプレイヤーとしての名前だけは覚えていた。このヴァーヴからの「Before Dawn」でもフルートのフレーズやアルバムコンセプトに民族的なサウンドを感じるが、A3「Pike's Peak」、A4「Open Strings」、B4「Constellation」などの上品なハードバップ・グルーヴとB3「Chang,Chang,Chang」のアフロ・キューバン・サウンドが聴けるということで厳選されたのだろうか。

STAFFAN ABELEEN QUINTET
スウェーデンのモダン・ピアニスト、Staffan Abeleen Quintetの66年のアルバム「Down Stream」と64年のアルバム「Persepolis」。去年Ricky-Tickから発売された2枚組コンパイル「ON THE SPOT」に61年作の原盤EP"Soul Time"からの「PIa 」がA1に収録されていた。そしてスタファン・アベリーンの60年代のアルバムもリッキーチックから「On The Spot」がコンパイルされリリースされたからこそ注目されるのであって、皮肉をこめて言えば、シックで上品なジャズではあるが"北欧ジャズの金字塔"と大上段に言えるものではない。このような概念作用は、nu jazz→Ricky-Tick→Five Corners Quintet→Finn Jazz→Scandinavian Design→Norse mythologyなどなど、連鎖するイメージによって彼らのジャズを捉えようとする・・それに加え予約限定アナログ復刻、「完全限定プレス」だからね。でもこうした仕掛けには要注意だ。 この2枚は、極論すればクラシックなどのバロキスム・ムード好き、ニューヨークよりもウェストコースト系が好きで、知的なひと向けのジャズ=スカンジナヴィアン/ヨーロッパ・ジャズの図式にあるもの。個人的にはこのアルバムからハードバップだけを選曲し、全体を通してその作品の価値を問わないことにしている。ボクはレコードマニアではないが、このシリーズを監修した須永辰緒によって入手困難な60年代北欧ジャズを聴ける機会が持てたことは感謝している。

STAFFAN ABELEEN QUINTET/Down Stream(PY 842 551)
STAFFAN ABELEEN QUINTET/PERSEPOLIS(PL 08217)

MEIRELLES E OS COPA 5/O Som(P-623.184-L)

MEIRELLES E OS COPA 5
今回のシリーズのなかからnu jazzの流れでレコードをセレクトするなら、先のダイアモンド・ファイヴとメイレリス・イ・コパ5、付け加えてLARS GULLINだ。60'Sジャズ・ボサの最高峰にも数えられるJ.T.メイレリス名盤「O SOM」だが、ドン・ウン・ホマオゥン(ds)、 ルイス・カルロス・ヴィーニャス(p)、ペドロ・パウロ(tp)など参加アーティストを見るとラテン/ブラジリアン/ボッサノヴァ好きのひとは納得だろう。ハード・ジャズ・サンバは来年の夏にはきっとクラブの核を占領するダンスミュージックになるだろう。"ジャズ・ボサ史的にも、クラブ・ジャズ的視点で見てもモンスター・トラックとして語り継がれる名曲「QUITESSENCIA」を収録したアルバムとしても名高い一枚"だと言われている。そのままnu jazzといっても語弊のないアルバムだ。

2007年12月23日

Fluorescent Baroque

Fluorescent Baroque

OPT!!!
'07 12 22 sat at jaz' room nu things
LIVE:OPTRUM
伊東篤宏(Optron) 進揚一郎(Ds)

"extreme optical noise core band"
伊東篤宏の蛍光灯の発光による放電ノイズをアンプリファイし、エアーギターを操るかの様にマニュピレートして発するノイズコアな音楽を聴いて、正直もったいないなと思った。ドラマー進揚一郎のドラミングもスキルの高いテクニックを感じたし、OPTRUMはストレートに時代遅れのフリーやインプロヴァイズという手法を使うのではなく、あらかじめもっと明確な構造を持った曲を作り、そのうえをパフォーマンスとしての即興演奏が織りなし、それに加え光と映像とが融合するSculpture Music、インスタレーション・ミュージックとしてこのポストモダンの時代を泳いだらいいのにと、そう思った。ファッション・ショーからもお呼びがかかるというOPTRUMは、現代美術としての要素のほうが大きいのだから・・・。それにしても伊東篤宏の存在感とOptronのコンセプト、仕掛け、装置は久しぶりに興味を惹かれた。アンプリファイしているサウンドは、なにもノイズやロック的じゃなくて、例えばガラスのような質感を持ったようなものとか、他のサウンドを使ってもいいんじゃないのかな。音楽が「ジャズ的なるもの」だったら言うことなかったけれど・・・。


伊東篤宏(Optron) 進揚一郎(Ds)

これはボクが個人的に感じたことではあるが、伊東篤宏と進揚一郎の音楽はいたるところにバロックの香りがして、fluorescent Baroqueとでも命名して誰もやらないコンセプチュアルなバロキスム世界を構築したらおもしろいだろうなと、彼らのステージングを観ていてそんなこと考えていた。残念だが、"インプロを通過したハードコア・パンク/ヘヴィ-・ロック的なアプローチ"なんて、ボクにはちょっと古過ぎる。

2007年12月25日

Merry Christmas

Merry Christmas!! 街はイヴでとても華やいでいたよ。ボクの若い頃のクリスマス・イヴというとあまり楽しい思い出はなかった。それは中学生の頃、住んでいた家の近くのバプテスト教会で洗礼を受けてから、キリスト教徒としての「星の導き」というクリスマス・イヴのイメージが強く刻印されていて、イヴになると"我々は何処にいくのだろう"という存在論のほうに思いがいってしまって、現在の若者たちのようなプレゼントを交換し合い"好きなひとと一緒にいる夜"とは、まるで関係ない、メランコリックな孤独感がともなうブルークリスマスでもあった。でもたとえ好きなひとがいたとしても(いまはもうキリスト教徒でもないが)、イヴの夜はひとりで過ごすことに決めていて、それこそが非日常的な時間と空気の漂うイヴの最良の過ごし方だと思っているし、その態度はこの歳になるまで続いている。

昨夜は阿倍野HOOPのイルミネーション・ゲートで行われたNATIVEのステージに付き合っていた。実はHOOPの1Fオープンエアプラザで催されるイヴェントSpecial Jazz Liveでの一昨日の細川 玄 Nice Groove Cool Jazz Unitなども陰でサポートしていて、オーガナイズしている方に挨拶を兼ねて顔をだしたのだが、外で聴くNATIVEジャズは、Jaz' room nu thingsで聴くのとはまた違った趣きがあって、イヴの夜に相応しい、サンタクロースが住むと信じられているフィンランドに今も残る、未来を思うケクリの伝統の儀式にも似た夢のような時間をプレゼントしてくれた。

2007年12月30日

consider difference fading systems

今年もあと大晦日のカウントダウン・パーティを残してjaz' room nu thingsの予定はすべて完了。音楽に携わる人間にとっては、某輸入レコードショップの倒産などなどに象徴されるように、今年も悪いニュースばかりで、シーンもことさら新しい大きな動きもなにも起こらなく、不況、不作の年だった。今年発売されたレコードを整理していても、唯一RICKY-TICK周辺のFINN JAZZとCHRISTIAN PROMMER'S DRUMLESSON/DRUM LESSON VOL.1での新しいヴィジョンをみせてくれた片手で数えられるほどのアルバムが残っただけ。来年も、この業界はますます斜陽の影をおとして、考えられないほどの衰退ぶりを加速させるだろう。それはそのままボクやキミの日常にリアルに反映されるのだが。突然やってくる自然災害や経済破綻は別にしても、なにも起こらない退屈な時間が延々と流れるだけ。それも幸せのひとつの形なのかな。

あと2日もすれば、新しい年が明ける。けれど、きっと来年はもっともっと暗い時代が待ち構えているだろう。キミも覚悟しておいたほうがいいよ。それは音楽の先端の動きを俯瞰して冷静に眺めていたらみえてくるのだ。先端の音楽はある意味で予言的だからね。この数十年、先端音楽で時代を読み解いてきたけれど、外れたことは一度もなかった。先端音楽は嘘付かないのだ。それは人間の集合的無意識が世界のいたるところで同時にシンクロニシティに表出してきたものだからだ。さて、4年目に向かうjaz' room nu thingsは、関わってくれている意識的なミュージシャンやDJ、そしてオーガナイザーによって支えられ今年もなんとか乗り越えてこれました。でも、この場が次世代ミュージシャンによる物語が始まることなく、このまま凡庸な日常に窒息して前に進めないと感じたなら、すべてをリセットしてまた新しいことを一から始めるかも知れない。毎日々ドキドキして生きてなきゃ生きてる心地がしない性分だからね。年の終わりに、とりあえず店に出演してくれたすべてのミュージシャンとDJ、他のクラブやライヴハウスとは違う素晴らしいイヴェントを提供してくれたイヴェントオーガナイザー、そしてライヴやイヴェント、パーティーに足を運んでくれた数えられないほど多くのお客さんにありがとうと言っておきます。みなさんにとって来年も良いことがありますよう。いい年をお迎えください。ちょっと早いけれど、HAPPY NEW YEAR!!

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