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もはや音楽は音楽ではなくダウンロード用にデジタル符号化された圧縮データに過ぎない
VA/DANCE THE LATIN JAZZ(JAZZMAN JMAN.062)
今日紹介するのは今週買ったばかりのアルバムばかりだが、ラテン・ジャズ・ダンスというとサルサというイメージが強く、すべてがアフロ・キューバン・グルーヴを想起しない。Mongo Santamaria、Willie Boboのようなキューバン・グルーヴには激しさとメランコリックな感情が同居していて、この世界も深いなあと感じるけれど、ロンドンのJAZZMANレコードからの7インチ3枚組「Dance The Latin Jazz」は、ニューヨークのラテン・ラジオDJ、シンフォニー・シドに捧げられたジョー・バターンの曲などが6曲収録されているが、そこまでは至ってない。
先端音楽すらも表出しない音楽シーンは、なし崩しの様相を呈してきたな。これ以上前に進むことも出来ないから、愈々データベース構築、アーカイヴ作業に入る時期がきているのだろう。「すべてのコレクションをポケットに。音楽なら40,000曲、ビデオなら200時間」とコピーされたメタルボディの新しいiPod classicが発売される時代に、もはや音楽は音楽ではなくダウンロード用にデジタル符号化された圧縮データに過ぎない。レコードやCDも古き良き時代の遺物となるのも時間の問題だろう。とりあえずレコード収納倉庫に毎日出入りして、60年代から現在までの、1枚々のレコードデータをパソコンに打ち込んで記録し集積していくことから始めようか。実数を数えたことがないけれど、郊外の建て売り住宅なら3軒は余裕で買えるほどの金を注ぎ込んだほどの枚数はある倉庫のレコードの山の、あのレコードに掲載された曲名や録音日、パーソネルなどのデータを、ジャケ写も取り込みながら1枚々キーボードで打ってゆけというのかい(ウ〜ン。膨大なデータベースを構築し記録しておくのは、ひとのため世のためで、うまく生かされるならすべてのレコードを寄贈してもいいと考えている。でも、ひとりの賛同者もいなくバカらしく思ったらすべて売却して金に換えればいいことだとも考えている)。
*地下鉄の最終電車が出たあとの、なんだ、都会のこの不気味なまでの静けさは。天地異変か株価大暴落、経済破綻がすぐそこまでやってきているのを予知しているかのようだな。
STUDIO ONE
SOUL JAZZ RECORDSからも「Various Artists - Studio One Root3」などのスタジオ・ワン・シリーズが数枚リリースされているが、ボクにとってこうしたレゲエ音楽は、80年代初期に取材で度々渡英した時に、ロンドンの夏のノッティングヒル・カーニバルで美しく編んだドレッドヘアーのラスタファリアンたちが、町の至る所で重低音スピーカーから大きな音で流していたのを聴いたのが最初だった。だから70年代のラスタファリアニズム、黒人意識、自由意志、ジャマイカの国民のアイデンティティとしてのレゲエの本質的なこととまるで関係ない当時のパンクやニューウェイヴ、そしてリップリグ・パニック、ピッグバッグ、スリッツ、オンユー・サウンドなどの音楽のルーツとしてとらえていた部分が大きく、いまもそれは変わらない。ここで紹介するスタジオ・ワンの60年代にリリースされた4枚のアルバムも、ソウル・ジャズ・レコードでリリースされているものとは異質で、もっとジャマイカのポップミュージックといった音楽で、個人的にはモッズやダンスホール、ノーザンソウル、イビザ/チルアウトの香りがして、こうしたもののほうがボクの体質に合っていて、当時のロンドンの風景や思い出と重なってノスタルジックな感情が蘇ってくる。
DELROY WILSON/DANCING MOOD(SOLP 50152)
コクソン・ドッドのスタジオ・ワン・レーベルから、ローティーンでデビューし、瞬く間にジャマイカ中で人気が沸騰した当時の最大のスターがデルロイ・ウィルソンだ。このアルバムでの音楽は、ニッポンで言えば哀愁ただようナツメロ歌謡のようなものだ。
http://www.youtube.com/watch?v=n_kG3ligwSU
JOHNNY OSBOURNE/TRUTHS AND RIGHTS(SOLP 0132)
http://www.youtube.com/watch?v=Gj_QC2lmm7c
KEN BOOTHE/MORE OF KEN BOOTHE(SOL 9010)
68年当時17歳で発表したケン・ブースのセカンドアルバム。こうしたものをいまではロックステディ/スカと呼ぶらしいのだが、やはりボクにとってはジャマイカン・ポップスだよね。
http://www.youtube.com/watch?v=kHdkn8wfpDw
DENNIS BROWN/NO MAN IS AN ISLAND(SOLP 01112)
デニス・ブラウンは「プリンス・オブ・レゲエ」と呼ばれているらしい。彼もまた9歳でコクソン・ドッドの下スタジオ・ワンからデビューしている。とろけるような甘いテナー・ヴォイスが魅力の実力派シンガーとして不動の地位を確立し、30余年に渡りラブ・ソングからコンシャス・レゲエ、ルーツ・レゲエ〜ダンスホールに至るまであらゆるジャンルに挑戦し、時代の感性をいち早く取り入れながらレゲエの発展に大きく貢献し続けたという。ジャマイカ、アメリカ、イギリスのレーベルを含めリリースされたアルバムは80枚以上というから凄い。99年、ツアー先から帰国後に急逝。まだ40代に入ったばかりの年齢だったという。
http://www.youtube.com/watch?v=zWZMWFezOhc