2007年09月 アーカイブ

2007年09月11日

WATCH HOW THE PEOPLE DANCING

もはや音楽は音楽ではなくダウンロード用にデジタル符号化された圧縮データに過ぎない

VA/DANCE THE LATIN JAZZ(JAZZMAN JMAN.062)
今日紹介するのは今週買ったばかりのアルバムばかりだが、ラテン・ジャズ・ダンスというとサルサというイメージが強く、すべてがアフロ・キューバン・グルーヴを想起しない。Mongo Santamaria、Willie Boboのようなキューバン・グルーヴには激しさとメランコリックな感情が同居していて、この世界も深いなあと感じるけれど、ロンドンのJAZZMANレコードからの7インチ3枚組「Dance The Latin Jazz」は、ニューヨークのラテン・ラジオDJ、シンフォニー・シドに捧げられたジョー・バターンの曲などが6曲収録されているが、そこまでは至ってない。



先端音楽すらも表出しない音楽シーンは、なし崩しの様相を呈してきたな。これ以上前に進むことも出来ないから、愈々データベース構築、アーカイヴ作業に入る時期がきているのだろう。「すべてのコレクションをポケットに。音楽なら40,000曲、ビデオなら200時間」とコピーされたメタルボディの新しいiPod classicが発売される時代に、もはや音楽は音楽ではなくダウンロード用にデジタル符号化された圧縮データに過ぎない。レコードやCDも古き良き時代の遺物となるのも時間の問題だろう。とりあえずレコード収納倉庫に毎日出入りして、60年代から現在までの、1枚々のレコードデータをパソコンに打ち込んで記録し集積していくことから始めようか。実数を数えたことがないけれど、郊外の建て売り住宅なら3軒は余裕で買えるほどの金を注ぎ込んだほどの枚数はある倉庫のレコードの山の、あのレコードに掲載された曲名や録音日、パーソネルなどのデータを、ジャケ写も取り込みながら1枚々キーボードで打ってゆけというのかい(ウ〜ン。膨大なデータベースを構築し記録しておくのは、ひとのため世のためで、うまく生かされるならすべてのレコードを寄贈してもいいと考えている。でも、ひとりの賛同者もいなくバカらしく思ったらすべて売却して金に換えればいいことだとも考えている)。

*地下鉄の最終電車が出たあとの、なんだ、都会のこの不気味なまでの静けさは。天地異変か株価大暴落、経済破綻がすぐそこまでやってきているのを予知しているかのようだな。

STUDIO ONE
SOUL JAZZ RECORDSからも「Various Artists - Studio One Root3」などのスタジオ・ワン・シリーズが数枚リリースされているが、ボクにとってこうしたレゲエ音楽は、80年代初期に取材で度々渡英した時に、ロンドンの夏のノッティングヒル・カーニバルで美しく編んだドレッドヘアーのラスタファリアンたちが、町の至る所で重低音スピーカーから大きな音で流していたのを聴いたのが最初だった。だから70年代のラスタファリアニズム、黒人意識、自由意志、ジャマイカの国民のアイデンティティとしてのレゲエの本質的なこととまるで関係ない当時のパンクやニューウェイヴ、そしてリップリグ・パニック、ピッグバッグ、スリッツ、オンユー・サウンドなどの音楽のルーツとしてとらえていた部分が大きく、いまもそれは変わらない。ここで紹介するスタジオ・ワンの60年代にリリースされた4枚のアルバムも、ソウル・ジャズ・レコードでリリースされているものとは異質で、もっとジャマイカのポップミュージックといった音楽で、個人的にはモッズやダンスホール、ノーザンソウル、イビザ/チルアウトの香りがして、こうしたもののほうがボクの体質に合っていて、当時のロンドンの風景や思い出と重なってノスタルジックな感情が蘇ってくる。

DELROY WILSON/DANCING MOOD(SOLP 50152)
コクソン・ドッドのスタジオ・ワン・レーベルから、ローティーンでデビューし、瞬く間にジャマイカ中で人気が沸騰した当時の最大のスターがデルロイ・ウィルソンだ。このアルバムでの音楽は、ニッポンで言えば哀愁ただようナツメロ歌謡のようなものだ。
http://www.youtube.com/watch?v=n_kG3ligwSU

JOHNNY OSBOURNE/TRUTHS AND RIGHTS(SOLP 0132)
http://www.youtube.com/watch?v=Gj_QC2lmm7c

KEN BOOTHE/MORE OF KEN BOOTHE(SOL 9010)
68年当時17歳で発表したケン・ブースのセカンドアルバム。こうしたものをいまではロックステディ/スカと呼ぶらしいのだが、やはりボクにとってはジャマイカン・ポップスだよね。
http://www.youtube.com/watch?v=kHdkn8wfpDw

DENNIS BROWN/NO MAN IS AN ISLAND(SOLP 01112)
デニス・ブラウンは「プリンス・オブ・レゲエ」と呼ばれているらしい。彼もまた9歳でコクソン・ドッドの下スタジオ・ワンからデビューしている。とろけるような甘いテナー・ヴォイスが魅力の実力派シンガーとして不動の地位を確立し、30余年に渡りラブ・ソングからコンシャス・レゲエ、ルーツ・レゲエ〜ダンスホールに至るまであらゆるジャンルに挑戦し、時代の感性をいち早く取り入れながらレゲエの発展に大きく貢献し続けたという。ジャマイカ、アメリカ、イギリスのレーベルを含めリリースされたアルバムは80枚以上というから凄い。99年、ツアー先から帰国後に急逝。まだ40代に入ったばかりの年齢だったという。
http://www.youtube.com/watch?v=zWZMWFezOhc

2007年09月17日

JAZZ INTO THE HEAVEN vol.2

afrontier presents 「JAZZ INTO THE HEAVEN vol.2」

クラブイヴェントでアフロという記号を全面に押し出したものというのは、それほど多くない。横浜のBAR TUNEをホームに開催されているジャズ系イベントであるAFRONTIERは、2005年7月より、Motion Blue YokohamaとBAR TUNEで始められ、アフロジャズ、ブラジリアングルーヴ、サルサ等を、クラブジャズ感覚でハイセンスにミックスするものというのがコンセプトだ。それをそのままjaz' room nu thingsで先月と今月、連続して2回開催した「JAZZ INTO THE HEAVEN」は、予想以上の大きな反響をもって終えることができました。来て下さった多くの方、ありがとうございました。久しぶりにモノホンで良質のクラブイヴェントを楽しんでいただけたことと思います。「JAZZ INTO THE HEAVEN」vol.3は11月か12月にまた開催できるよう準備しています。ご期待ください。

15 September '07
pm21:00- am05.00

LIVE:
細川 玄 Nice Groove Cool Jazz Unit
細川玄(tp) 清水玲(b) 繁泉英明(dr) 堀越昭宏(key)

Maki Mannami Higher Self Ensemble Orchestra
Maki Mannami(vo) isao osada(tp with effects) 清水玲(b) 繁泉英明(dr) 南條レオ(per) 堀越昭宏(key)

DJ:TOJO (afrontier) JUN MORITA (afrontier) Takeshita (afrontier) 大内博成
ORGANIZER:isao osada

nu thingsからのお知らせ

今月のイヴェントで、
9月16日sun「Blue Light 'Til Dawn」でのTONY CHANTY
22日sat 「Nu Jazz Generation」でのTONE QUARTET
23日sun 「It's Time」でのNATIVE
24日mon 「Looking At The Future」でのJABBERLOOP
の4本のイヴェントをすべてクラブイヴェントという形式をとらず、敢えてワンバンドで催すのは、ある意味で音楽的なものを蔑ろにした現在のパーティイヴェントでのダンスミュージックとしてだけではなく、スキルの高い次世代ジャズとしてストレートに聴いてもらいたいためのコンセプト上でのことです。こういう機会もあまりないので、この贅沢ともいえるライヴで是非じっくり彼らの音楽を聴き堪能してください。とは言っても、踊りたい方は自由に踊ってくださって結構です。(nu things staff)

2007年09月25日

JABBERLOOP+NATIVE+TONE QUARTET

メイド・イン・ジャパンの、イギリスやヨーロッパのマーケットで充分通用する次世代ミュージシャンたちの創るクラブジャズ

9/24のJABBER LOOP、9/23のNATIVE、9/22のTONE QUINTETの3日間のいわゆるnu jazz以後のクラブジャズでの括弧付きの「ジャズ的なるもの」というイヴェントを終えて、メイド・イン・ジャパンの音楽状況はまさに新たな局面にさしかかっているなと感じた。それは愈々海外でも通じる次世代によるニッポン独自の「ジャズ的なる」音楽が発生してきているなと強く感じたのだ。ドイツや北欧ではすでに保証済みのNATIVEは勿論のこと、JABBER LOOPやTONE QUINTETの音楽も、もはや充分世界で通用するまでのスキルやセンスに達しているということだ。音楽だけではなく、ファッションからアート.カルチャーに至るまで、新しいことと言えば常にヨーロッパやイギリスなどの輸入文化の流行によってコントロールされ、それを模倣しコピーし続けてた我々は、いつの間にか気がつけばヨーロッパやイギリスを遥かに凌ぎ超えるまでの、世界中の新しもの好きがワクワクするようなニッポン・ブランドを手に入れてしまっていたということだ。60-90年代のような、すべての概念を覆すような新しい音楽は、もう輸入レコードのなかで見られない。それならメイド・イン・ジャパンの、次世代ミュージシャンたちの創るクラブジャズに注意をはらいチェックするほうが数倍ワクワクさせてくれる。彼らの「ジャズ的なるもの」音楽は、海外でマンガやアニメが受け入れられているのと同じように、商品としての完成度も高く充分海外に輸出できる。なんといってもニッポン人の音楽を聴く耳は世界一優れているのだからね。


JABBERLOOP/and infinite jazz...(COLUMBIA COCB- 53658)

若さというのは、なにものにも勝るフェイクな宝石のようなものだ。磨けば磨くほど人工的にキラキラ輝いてくるから美しい。JABBERLOOPの成長し大きくなった音楽と若い女性ファンで埋め尽くされた客席をみてそう思った。彼らがnu thingsのステージを踏んでからすでに3年が経っている。初期はファンク系の音楽を展開していた彼らも、nu jazzやクラブジャズの波を受け、いつの間にか独自のグルーヴを持つクラブジャズを展開するまでに成長している。若さって、凄いよ。メジャーのコロムビアからリリースされた「and infinite jazz...」にはブロークン/ドラムンベース・グルーヴから始まるnu jazzをも包括した若々しいクラブジャズが収録されている。能書きたれてテクニックはあるがスタンダード・ジャズしかやれないジャズミュージシャンよりも何倍もJABBERLOOPはジャズがなんたるかを知っているし、優れた感性を持っている。もしジャズに未来があるとするならJABBERLOOPのような存在こそがいま必要不可欠なのだ。それにしても客席の若い女性ファンをみていて、nu jazz以後のクラブジャズにもすでに世代交代が始まっているんだなと、思い知らされた。それってとても嬉しいことだし、彼らの音楽の彼方に無限大に広がる未来がみえる。
http://www.jabberloop.com/


長友誠(tp) 後藤大輔(sax) 岸本亮(key) 斉藤勝平(ds) 永田雄樹(ba)
DJ SHINSUKE(DJ)


NATIVE/UPSTAIRS(SRIP-9025)

この秋に発売予定だったニューアルバムが、来年2月に延期になったという。今後マネージメントやディストリビュートも「Stride」から「Nature Bliss」に移籍しての展開だという。ステージが終わって中村氏とNATIVEのそうした近況を聞いていて、正直ちょっと不安になった。大丈夫かな? 会話の途中で中村氏が聴かせてくれた Rambling Recordsから発売されたばかりのアルバム「KAREN」のなかのNATIVEのシャーデーのカヴァー「Smooth Operator」などの動きからも、J-POPもクラブジャズの新しい記号を欲しているのが分かる。さあ、どうなんだろう。まあ、なにをやってもNATIVEサウンドが聴こえてきたのでさすがだけど。NATIVEの音楽と付き合ってから、もうかれこれ3年になる。彼らのジャズは、クラブジャズとはいっても、どちらかというとダンスミュージックではない。ジャズシーンから表出してきたこのクラブの時代に対応したNATIVE JAZZとしか言えない独自のクールでスタイリッシュなグルーヴ、サウンドを持ったものだ。それはクラブイヴェントでのNATIVEではなく、こうした単独のライヴではやはりジャズファンの顔が多くみられることでも証明できるだろう。音楽スキルの高さと音楽センスの良さは他の追従を許さないほど突出しているのは、誰もが認めている。さて、NATIVEは来年に向けて、どこに行こうとしているのだろう。nu jazz以後のニッポンでのクラブジャズの未来は彼らの今後の動向にかかっているといってもいい。新しいディストリビューター、マネージメントによって、きっと来年は新生NATIVEが素晴らしい躍進をみせてくれることだろう。
http://www.cnative.com/


中村智由(As) 大久保健一(b) 山下佳孝(Ds) 杉丸太一(p)


TONE QUARTET/Flamenco Sketches(R-0780413)

TONE QUARTETの世界は70年代のWoody Shawの「Love Dance」など数枚の作品にドラムスで参加していたVictor Lewisの「Hey,It's Me Your're Talking To」につきるだろう。これは彼らのCD「Flamenco Sketches」のなかの最後に収録されている曲だが、サスペンス映画のなかのスリリングなワンシーンを想起させるたたみ込むような太いベースのフレーズに絡むヴァイヴやピアノはドラマチックでもありダイナミックで圧巻だ。ベースのN.TONEを核に、音大を卒業したばかりの20代前半のミュージシャン、ヴァイヴのT.KAGEYAMA、ピアノのY.SEKIYA、ドラムスのY.HIKITAによるTONE QUARTETは、結成してまだ半年しか経っていない。女性2人、男性2人からなる彼女たちはnu jazzもクラブジャズも知らない生粋のジャズミュージシャンだが、彼女たちがそうした先端での「ジャズ的なるもの」を自身のカルテットに取り込み動き始めたら、それはそれで凄いことになるだろう。そうした先端でのクラブジャズの感性と共振する曲は彼女たちが演奏する「キャラバン」にすでに見られるが(ボクは予々、音楽のダイナミズムとリズム感の良さは男性よりも女性ミュージシャンのほうが身体的に生まれ持ったもので勝っていると信じているが)。それにしてもヴァイブの音色はなぜか都市の風景にマッチする。ヴァイブは21世紀のこのいまを象徴する音色だ。TONE QUARTETの将来も楽しみだ。
http://www1.odn.ne.jp/giantsteps/tone/index.html


刀祢直和(b) 影山朋子(vib) 関谷友加里(p) 引田裕路(ds)


レコードやCDがダウンロード用にデジタル符号化された圧縮データに過ぎないなら、ライヴこそが音楽やミュージシャンに残された唯一の砦かも。

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