LA DUSSELDORF
NEU !
KLAUS DINGER / THOMAS DINGER / MICHAEL ROTHER
KLINGKLANG 2
Deutschland Deutschland über alles
「ジャズ的なるものから」
ジャーマン・エクスペリメンタル・ミュージックへの回顧 2
ノイ!とラ・デュッセルドルフのクラウス・ディンガーに会ったのも、やはり'81年の6月だった。アヒム・デュフォー ( ラ・デュッセルドルフのロゴマーク、そしてrock magazineの2006と2007号のカヴァー・ペインティングも彼の手によるもの) と2人で彼の自宅を訪ねると、ボクの背丈ほどもあるデッカい犬が迎えてくれた。
LA DUSSELDORF / VIVA ( STRAND 6.23626 )
数時間ヴィデオワークなどを見せてもらいながら雑談に花を咲かせ、その当時、彼は音楽への興味を無くしかけていた頃で、ボクの携帯していたソニーのヴィデオカメラに執拗に興味を示し、話の途中でひょっこり顔を見せた弟のトーマス・ディンガーにインタヴューしてもらえと、しきりにけしかけていて、結局はヴィデオ撮影しただけで、記事にするほどのインタヴューは出来
なかった。トーマスがその翌年、ソロアルバム " Fur Mich " を発表したが、クラウスが見せてくれたヴィデオは様々な女性に変装する彼を撮影したもので、" Fur Mich " のプロモーション用に撮ったものだったようだ。ポラロイドカメラ、ヴィデオテープ、カセットテープなど、いまでは前時代的なアナログで、磁気テープの上に粒子の荒っぽい映像や音響しか録音/再生できない時代でもあったが、それはメガバイトと言われる大容量のデータが記憶できるデジタル機器での映像よりも、よりリアルな空気感がとらえられ自由な抽象的イメージだけが拡がっていった。それと同じように、ノイ ! やラ・デュッセルドルフの音楽は、玩具のようなテクノロジーによる歪みや、安っぽさ、不完全性、フィードバック・システムから生まれたザラザラしたパワフルなハンマービートとサウンドが魅力だった。デジタル機器はある意味ですべての音楽的魅力を台無しにするものかも知れない。La Dusseldorfの前身NEU!の音楽は、催眠的ドローンなクラウトロック ( この言葉をクラウスは毛嫌いしていたが ) と呼ばれているが、ミニマリズムに固執したヴェルヴェット・アンダーグラウンドともいえる。デヴィッド・ボウイはラ・デュッセルドルフの音楽こそが80年代のサウンドトラックだと高く評価していた。
'70年、クラフトワークのファーストアルバムのドラマーにクラウス・ディンガーが参加しているが、'71年にクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターは新たにノイ!を始める。
'72年" NEU! " 、'73年 " NEU! 2 " 、'75年 " NEU! 75 "の3枚の作品を残しているが、ノイ!の音楽からはアンビバレンツな二面性が聴こえてくる。それは" NEU! 75 "で顕著だが、 " Isi "という曲にみられるラルフ・アンド・フローリアンを思わせるフロート ( 浮遊 ) する70年代プログレッシヴ・ロックのグルーヴと、 " Hero "でのパンクロックを先取りしたかのようなハンマービートだ。ノイ!やラ・デュッセルドルフの音楽にずっと携わっていたコニー・プランクは、彼らは非常に甘いメロディといいセンスを持っていたが、お互いが孤立していて人間的な面で色々問題があり素晴らしいチャンスを失ったと語っていたが、当時彼らがイギリスにでも渡り活動していたなら、きっとセックス・ピストルズやPILを超えた存在にもなれただろうと、思う。クラウス・ディンガーとミヒャエル・ローター ( '74年からはHarmoniaのメンバーとしてHans-Joachim RoedeliusやクラスターのDieter Moebius とともに活動 ) の音楽的違いによってノイ!は解散することになるのだが、トーマス・ディンガーとハンス・ランペ(コニー・プランクのエンジニア・アシスタント)を加え、クラウスは再び '76年にラ・デュッセルドルフ ( La Dusseldorf ) として活動を再開し、'76年に1st " La Dusseldorf "、78年に2nd " VIVA "、80年に3rd "Individuellos "の3枚の作品と、'82年にトーマス・ディンガーのソロ作品 " Fur Mich " を残している。彼らの残した数少ない作品のなかでは、 " Viva " の物悲しげでメランコリックなメロディーと、パンク・アチチュードは、ロック史のなかで永遠に語り継がれるだろう名盤の1枚だろう。これはロックイディオムの終わりが見えた時代の、ロックへの哀歌/賛美歌/鎮魂歌でもあったのだ。ボクはいま、この " Viva " を聴くときだけ、なぜか泣けてくるんだ。
( 写真は'81年6月にクラウスの自宅でボクが撮影したもの。曲のタイトルにも付けられ、常に彼らが着ている白いオーヴァーオールこそがラ・デュッセルドルフの音楽にも聴こえる白とブルーのイメージとが重なり合う )
LA DUSSELDORF / VIVA ( STRAND 6.23626 )
A: 1 Viva
2. White Overalls
3. Rheinita
4. Vögel
5. Geld
B: 1. Cha Cha 2000
all titles written and composed by Klaus Dinger ( tracks: A5, B1 / tracks: B )
Klaus Dinger ( Percussion, Guitar, Vocals )
Thomas Dinger ( Percussion, Vocals )
Hans Lampe (drums, percussion )
Harald Konietzko (tracks: A5, B1 / bass )
Nikolaus van Rhein ( keyboards, synthesizer )
Andreas Schell (tracks: B1/ piano)
produced , recorded + mixed at La Dusseldorf by Ladusseldorf June - September 1978
sound engineered by Hans Lampe
La Dusseldorf trademark by Achim Duchow
STRAND RECORDS 1978
LA DÜSSELDORF - CHA CHA 2000
La Düsseldorf Rheinita 70s 12inch
http://www.youtube.com/watch?v=HcbWpFO2DII
La Düsseldorf / White Overalls ( VIVA )
http://www.youtube.com/watch?v=XeOsd6pKEyY
LA DUSSELDORF / LA DUSSELDORF ( SKL -R 5252 )
A: 1. Düsseldorf
2. La Düsseldorf
B: 1. Silver Cloud
2. Time
musicians:
Klaus Dinger ( guitars, vocals )
Thomas Dinger ( percussion, vocals, light )
Hans Lampe ( percussion, electronics )
Nikolaus Van Rhein ( keyboards, synthies )
Harald Konietzko ( bass on Silver Cloud & Time )
instruments:
Hagstrom, rickenbacker, gibson, bachstein, kaufhof, farfisa, yamaha, fender, A.R.P., davoli, dynacord, barth K.G., lansing, shure, paiste, ludwig
all tracks composed by Klaus Dinger
produced by La Dusseldorf + Konrad Plank
september 1975
recorded at la Dusseldorf + Conrad Plank
remixed at Conny's Studio
engineered by Konrad Plank
assistants: Petrus + Udo
la Dussedorf trademark: Achim Duchow
DECCA 1976
La Düsseldorf / Düsseldorf Teil 1 / 2
http://www.youtube.com/watch?v=4Dsmyws5p7I&feature=related
La Düsseldorf / Time
http://www.youtube.com/watch?v=rQnnODwYUxo&feature=related
LA DUSSELDORF / INDIVIDUELLOS ( TELDEC 6.24524 )
A: 1. Menschen 1
2. Individuellos
3. Menschen 2
4. Sentimental
5. Lieber Honig 1981
B: 1. Dampfriemen
2. Tintarella di…
3. Flashback
4. Das Yvönnchen
text und music : k. Dinger
produced recorded mixed at La D. by La D.
cover + fotos Dinger Brothers
TELDEC 1980
La Düsseldorf / Individuellos / Individuellos
http://www.youtube.com/watch?v=4hhXoiHX5e0&feature=related
La Düsseldorf / Das Yvönnchen/ Individuellos
http://www.youtube.com/watch?v=SoUGM23kPjc
La Düsseldorf / Menschen 1 / Individuellos
http://www.youtube.com/watch?v=GUf7HoI41KE
THOMAS DINGER / FUR MICH ( TELEFUNKEN 6.25126 AP )
A: 1. Ballgeflüster
2. Leierkasten
3. Für Dich
B: 1. E-605
2. Alleewalzer
3. Für Euch
all titel: Thomas Dinger
producieat, Rufgenommen und Micscht im
recorded at La Dusseldorf - Studio Vom 19.8. 781 -32, 10. '81
co-produced by Hans Lampe
producenten : Thomas Dinger und La Dusseldorf
Thomas Dinger ( spielt orgaln, synthies, strings, klaviere, ... )
Hans Lampe ( spelt schlagzeug auf ballgefluster )
cover: Thomas Dinger
make up: Barbel Lange
TELEFUNKEN 1982
La Dusseldorf
http://www.youtube.com/results?search_type=&search_query=LA+DUSSELDORF&aq=f
70年代の後半から80年代中期にかけて、ドイツのデュッセルドルフには3度訪れている。取材のためだったとはいえこの都市にはなみなみならぬ愛着があった。ルール工業地帯の中心的な役割を担っている工業の発達した都市として
栄えたデュッセルドルフは、当時からエコノミック・アニマル ( もう死語だな ) のニッポン人が多く滞在していて、そのせいか、やたらこの街に住む人々はニッポン人には親切で、色っぽい話や、現代美術作家 Imi Knoebel、その夫人のレコードショップPurefreudeを経営していたプロデューサー carmen Knoebel、アタタックのFrank、Moritz、プロパガンダのRalf Dorperなどなど、いい思い出話もたくさんある。ライン川沿いにあるケーニッヒスアレー・ショッピング通りなど懐かしい。聞くところによると、メーディエン港 ( Medienhafen ) にゲーリー建築 ( Gehry-Baute ) やTorre de la televisión Düsseldorfなどもできたというし、あの市街地もモダンな都市にすっかり様変わりしていることだろう。アヒムやクラウスやコニーなど、ボクの知っているひとはもうこの世にはいないけれど、次にヨーロッパに旅行する機会があるなら、足を延ばそうと思っている。70ー80年代ドイツのエレクトロニック・ミュージックはすべてがこのデュッセルドルフとコニー・プランク・スタジオから発生したと言っても過言じゃないんだよ。
NEU!
NEU! / NEU! ( BRAIN 1004 )
A: 1. Hallogallo
2. Sonderangebot
3. Weissensee
B: 1. Im Glück
2. Negativland
3. Lieber Honig
music by Klaus Dinger, Michael Rother
Klaus Dinger ( japan banjo, drums, guitar, vocals )
Michael Rother ( guitar, dehguitar,
bass, bowed bass )
produced by Conrad Plank, Klaus Dinger, Michael Rother
sound engineered by Conrad Plank
recorded in December 1971 at the Windrose Studios ( Dumont - Time ), Hamburg
mixed at Ralf Arnie's Star-Musik Studio, Hamburg
BRAIN RECORDS 1972
Neu! - Negativland
http://www.youtube.com/watch?v=23HfAHSKWlk
NEU! / NEU! 2 ( BRAIN 1028 )
A: 1. Für Immer (Forever)
2. Spitzenqualität
3. Gedenkminute (Für A + K)
4. Lila Engel (Lilac Angel) (4:35)
B: 1. Neuschnee 78
2. Super 16
3. Neuschnee
4. Cassetto
5. Super 78
6. Hallo Exentrico !
7. Super
music by Klaus Dinger and Michael Rother
produced by Konrad Plank, Klaus Dinger, Michael Rother
engineered by Konrad Plank
assistant engineer: Hans Lampe
recorded in January 1973
mixed in February 1973 in Windrose - Dumont - Time Studios, Hamburg, Germany
BRAIN RECORDS 1973
NEU! - Fur Immer
http://www.youtube.com/watch?v=Oy5A7fOY0MA&feature=related
NEU! / NEU! 75 ( BRAIN 1062 )
A: 1. Isi
2. Seeland
3. Leb' Wohl
B: 1. Hero
2. E-Musik
3. After Eight
written by Klaus Dinger, Michael Rother
guitar, piano, voice - Klaus Dinger, Michael Rother
drums - Hans Lampe (2) (tracks: B1 to B3 ) , Thomas Dinger (tracks: B1 to B3)
percussion, organ - Klaus Dinger
synthesizer, electronics - Michael Rother
producedby Konrad Plank and NEU!
engineered by Konrad Plank
recorded and mixed December 1974 to January 1975 in Conny's Studio
BRAIN 1975
**当時、こうしたジャーマン・エクスペリメンタルに関しては、ポリドールやテイチクなどから日本盤も発売され、評論家の赤岩和美やたかみひろし、間章やボクなどがライナーノーツを書き大プッシュしていた。だけど、レコードはたいして売れなかったね。
Neu! - Isi
http://www.youtube.com/watch?v=YiMQ5r5y78g
NEU! - Seeland
http://www.youtube.com/watch?v=awNiwKoyoR8
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La Düsseldorf web-site.
http://www.la-duesseldorf.de/
myspace
http://www.myspace.com/ladusseldorf
70年代を通して聴き続けてきたジャーマン・エクスペリメンタルやプログレッシヴ・ロックは、ボクのなかでは81年に" ザ・バイブル"という1500枚弱のレコード・カタログ本を発刊することで、総括してしまった。その行為は多くのロックファンに批判され、阿木は評論家として信じられない奴だと恨まれもした。しかし今振り返ると、正に正解だった。あれこそが正真正銘のロック・イディオムへの決別宣言だったし、その後ドイツの音楽は、ダフやディー・クルップス、ダープラン、プロパガンダなどのノイエ・ベレ( ジャ−マン・ニューウェイヴ ) の文脈へと傾れ込み変容していったのだから。