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SDRSW77 Merzbow『Metallic (6CD BOX)』

MERZBOW
『Metallic (6CD BOX) 』

¥6,000+税
SDRSW-77
2019年12月20日リリース

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2018年にスタートしたスローダウン・レコーズによるメルツバウ・アーカイブ・シリーズ、その第6弾としてリリースされた作品をまとめたボックスが登場!本ボックス〈Metallic〉には『Bluedelic+』『小品集 Vol.1』『Phillo Jazz』『小品集 Vol.2』『Live at 同志社大学』『Chameleon Body』の6作を収録。本シリーズは1993年から1995年の録音をメインに構成されている。この期間はメルツバウがライブを頻繁に行うようになってから数年が経過した地点に当たり、精力的な演奏活動の中で研ぎ澄まされた「金属」の扱いが最大の特徴といえる。同時期には『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウでも特に評価の高い作品が多数制作されており、本シリーズの音源もそれらに通じる凄まじいテンションを感じさせる。

<作品概要>
2018年よりスタートしたメルツバウの未発表/発掘音源を収めたアーカイブ・シリーズ、その6つ目のシリーズは1993年から1995年の録音により構成された『Bluedelic+』『小品集 Vol.1』『Phillo Jazz』『小品集 Vol.2』『Live at 同志社大学』『Chameleon Body』の6作であった。そしてそれらをまとめたボックス作品がこの〈Metallic〉である。
この時期の作品の特徴として、まず言及すべきはシリーズのタイトルにも表れている「金属」の扱いについてだろう。90年代に入りライブを積極的に行うようになってからのメルツバウの演奏では金属を素材とした自作楽器がよく用いられている。最も知られているのは金属のフィルムケースにバネを取り付けることで弦楽器的な動作を加えることを可能にしたタイプのものだが、ライブに際し鉄板などを用い即席で制作されることもあったようで、形状や素材の差異はあれど発音に繋がる構造は金属にコンタクトマイクを取り付けたシンプルなものであることが多いようだ。金属に(叩くなど)何らかの動作を加えたサウンドを作品の中に取り入れること自体はメルツバウの活動初期から様々なかたちで試みられてきたことではあるが、それを過激な即時エフェクトと組み合わせライブ演奏の中で様々な音響を発することができる固有の楽器と呼べるような状態へ昇華し、演奏や作品の中心に据えたのは90年代に入ってからの大きな特徴といえるだろう。
また、90年代以降の作風において過激なノイズサウンドと共に重要な役割を果たしている要素として、周期を持った音の扱いがある。前シリーズの時期ではこのような周期を持った音は現れる度に非常に耳を引く、ある種の異物感を伴ったものとして演奏の中に存在していたが、本シリーズの長時間の演奏ではより自然に組み込まれ、周期を持った音と炸裂するノイズが一体となることで時間を手繰り寄せるような推進力を演奏全体にもたらしている。
前シリーズからストレートに繋がる要素を多く持つ本シリーズであるが、ライブを精力的に行うようになり数年が経過する中で研ぎ澄まされ、着実に強度を増した演奏が収められたのがこの時期の作品であり、ライブ活発化以降の最初の到達点を示すものと捉えられるだろう。近い時期には『Metalvelodrome』『Noisembryo』『Hole』『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウの中でも特に知名度や評価の高い作品の制作が行われており、時期を同じくする本シリーズの演奏もテンション、クオリティともに凄まじいものがある。

よろすず

Track List:
CD-1 Bluedelic+
CD-2 小品集 Vol.1
CD-3 Phillo Jazz
CD-4 小品集 Vol.2
CD-5 Live at 同志社大学
CD-6 Chameleon Body

SDRSW76 Merzbow『Tapestary Of Noise (6CD BOX)』

MERZBOW
『Tapestary Of Noise (6CD BOX) 』

¥6,000+税
SDRSW-76
2019年12月20日リリース

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2018年にスタートしたスローダウン・レコーズによるメルツバウ・アーカイブ・シリーズ、その第5弾としてリリースされた作品をまとめたボックスが登場!本ボックス〈Tapestary Of Noise〉には未発表のテープが多く残されていた1991年の録音を中心に構成された『Cloud Cock OO Grand (Another Mix)』『Crash For Hi-Fi Tapes』『Travelling』『Untitled 1991 Vol.1』『Untitled 1991 Vol.2』『Untitled 1991 Vol.3』の6作を収録。90年代初頭はメルツバウの活動においてライブの活発化により80年代のコラージュなどから過激なノイズサウンドへと作風の転換が行われた時期であり、本シリーズも全作が生々しいノイズ演奏を収めたものとなっている。

<作品概要>
2018年よりスタートしたメルツバウの未発表/発掘音源を収めたアーカイブ・シリーズ、その5つ目のシリーズはこれまでアーカイブなどの機会にあまり収録がなされておらず、未発表のテープが多く残されていた1991年の録音を中心に構成された『Cloud Cock OO Grand (Another Mix)』『Crash For Hi-Fi Tapes』『Travelling』『Untitled 1991 Vol.1』『Untitled 1991 Vol.2』『Untitled 1991 Vol.3』の6作であった。そしてそれらをまとめたボックス作品がこの〈Tapestary Of Noise〉である。
1991年の作品の特徴として、レコードのスクラッチやサンプリングが1980年代の『抜刀隊』の時のようなコラージュ的ではない新たな手法で使用されている点がまず挙げられる。それは具体的にはNextやDigitech社製のサンプリング・ディレイの導入によってもたらされた、よりリズミカルでカットアップ的な使用方である。この手法によるディレイ音の機械的な反復はシリーズの中で様々な形で用いられており、サンプリングされる音声やそのループ範囲などが切り替わることで場面や演奏の速度感の変化を瞬間的に演出したり、時には低い帯域でうねりグルーヴを生み出し、時には警報のように鳴り響き前のめりなノイズの炸裂を更に煽り立てるなど、幅広い機能を果たしている。
また、当時の作品は4chの複数のカセットの他に2chの複数のカセット、更に生演奏などをライブでカットアップし、ミックスすることで制作されていたが、今回はその素材となったテープ(ほとんどは4chのカセット)がカットアップなどを行わずほぼ未編集のまま使用されている。当時はTASCAM Porta Twoを使用してミックスが行われていたが、現在はその機材がないためTASCAM MFP-01を使用して新たなミックスが行われた。
メルツバウは89年のヨーロッパ・ツアー以降それまであまり行っていなかったライブを活発に行うようになったが、録音作品にもおいてもそれがダイレクトに反映され、90年代に入ってからの作品では80年代のコラージュなどとは異なる過激なノイズサウンドがメインとなっている。本シリーズはそのような作風の大きな転換期の貴重なドキュメントととしても、また以降のメルツバウの作品や演奏の雛形としても示唆に富んだ内容となっている。

よろすず

Track List:
CD-1 Cloud Cock OO Grand (Another Mix)
CD-2 Crash For Hi-Fi Tapes
CD-3 Travelling
CD-4 Untitled 1991 Vol.1
CD-5 Untitled 1991 Vol.2
CD-6 Untitled 1991 Vol.3

SDRSW73 Merzbow『Chameleon Body』

MERZBOW
『Chameleon Body』

¥2,000+税
SDRSW-73
2019年12月20日リリース

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スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズではメルツバウの中でも知名度や評価の高い作品が立て続けに発表された1993年から1995年の音源を収めた6作がリリースされる。本作『Chameleon Body』は1995年の録音で、最初の9分程は50枚組のBox作〈Merzbox〉内の『Red Magnesia Pink』というディスクにおいて既に「Chameleon Body」というタイトルで収録されている。Merzbowは80年代初頭の一部作品を除いてこれまで意図的にシンセサイザーを使用していなかったが、この作品では1994年の後半に購入したEMS Synthi ‘A’が使用されている。

<作品概要>
スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズでは1993年から1995年の音源を収めた作品がリリースされる。この時期は『Metalvelodrome』『Noisembryo』『Hole』『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウの中でも特に知名度や評価の高い作品の制作やリリースが行われた時期であり、近年再発も積極的に行われている。
今回のシリーズはこれまでのシリーズで多かったカセット・マスターではなく全ての作品でDATマスターが使用され、新たにリマスターを施すというかたちで制作されている。DATマスターはカセットをマザー・テープとして一応作品としてMIXされている状態の物であるため、カセット音源に比較すれば完成度は高いといえる。そのため小品集なども含む本シリーズの作品はたとえ長時間の演奏であっても展開などの面でタイトにまとまっている印象が強い。
本作『Chameleon Body』は1995年の録音で、最初の9分程は50枚組のBox作〈Merzbox〉内の『Red Magnesia Pink』というディスクにおいて既に「Chameleon Body」というタイトルで収録されている。
Merzbowは80年代初頭の一部作品を除いてこれまで意図的にシンセサイザーを使用していなかったが、この作品では1994年の後半に購入したEMS Synthi ‘A’が使用されている。その後、MerzbowはEMS Synthi ‘A’ やEMS VCS3を頻繁に使用するようになる。
シンセの導入により金属などの素材と過激なエフェクトをメインに構成されていたこれ以前の作風に比するとロウな音の質感や時に歪なバランスで複数の響きがぶつかり合うような印象はやや後退し、より明瞭に空間を隅まで埋める電子ノイズの密度に圧倒される。シンセ購入からそれほど時間の経っていない時点での録音であるが、他のメタルなどの素材による過激なサウンドに引けを取らない非常に存在感のある響きが既に作り出されており、それらの見事な拮抗に新たなメルツバウ・サウンドの誕生を聴き取ることができる。

よろすず

Track List:
1. Chameleon Body Part.1
2. Chameleon Body Part.2

SDRSW72 Merzbow『Live at 同志社大学』

MERZBOW
『Live at 同志社大学』

¥2,000+税
SDRSW-72
2019年12月20日リリース

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スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズではメルツバウの中でも知名度や評価の高い作品が立て続けに発表された1993年から1995年の音源を収めた6作がリリースされる。本作には1995年の京都同志社大学の学園祭で行われたライブ演奏の録音と、そのリハーサルとして東京の自宅で行われた短い録音を収録。当日の演奏はこの時期のメルツバウのライブに度々関わっていたBaraが“声”と“アクション”で加わった編成で教室で行われ、それをAUBEとしての活動で知られる中嶋昭文氏がDATにて録音したものがマスターとして使用されている。

<作品概要>
スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズでは1993年から1995年の音源を収めた作品がリリースされる。この時期は『Metalvelodrome』『Noisembryo』『Hole』『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウの中でも特に知名度や評価の高い作品の制作やリリースが行われた時期であり、近年再発も積極的に行われている。
今回のシリーズはこれまでのシリーズで多かったカセット・マスターではなく全ての作品でDATマスターが使用され、新たにリマスターを施すというかたちで制作されている。DATマスターはカセットをマザー・テープとして一応作品としてMIXされている状態の物であるため、カセット音源に比較すれば完成度は高いといえる。そのため小品集なども含む本シリーズの作品はたとえ長時間の演奏であっても展開などの面でタイトにまとまっている印象が強い。
本作には1995年の京都同志社大学の学園祭で行われたライブ演奏の録音と、そのリハーサルとして東京の自宅で行われた短い録音を収録。当日の演奏は教室で行われ、それをAUBEとしての活動で知られる中嶋昭文氏がDATにて録音したものがマスターとして使用されている。リハーサルの音源は英国Ash Internationalより1996年にリリースされたコンピレーション『A Fault In The Nothing』に収録されたものと同一音源。また、当日のパフォーマンスにはこの時期のメルツバウのライブに度々関わっていたBaraが“声”と“アクション”で参加しており、荒ぶる轟音の中から呻きや吠え声のようなサウンドが時折浮かび上がり演奏に変化をもたらしている。

よろすず

Track List:
1. Live at Doushisya University
2. Soundcheck for Doushisya University Performance

SDRSW75 Merzbow『Strings & Percussion (6CD BOX) 』

MERZBOW
『Strings & Percussion (6CD BOX) 』

¥6,000+税
SDRSW-75
2019年11月15日リリース

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2018年にスタートしたスローダウン・レコーズによるメルツバウ・アーカイブ・シリーズ、その第4弾としてリリースされた作品をまとめたボックスが登場!本ボックス〈Strings & Percussion〉には『Environmental Percussion Vol.1』『Environmental Percussion Vol.2』『Crocidura Dsi Nezumi』『Material H2』『Ecobondage (Another Mix)』『Enclosure』の6作を収録。“Environmental Percussion”と呼ばれるアイデアや弦を用いた新たな自作楽器によるアコースティックなサウンドに焦点が当てられ、メルツバウ独自の「弦と打楽器」の用法が堪能できる作品群となっている。

<作品概要>
2018年よりスタートしたメルツバウの未発表/発掘音源を収めたアーカイブ・シリーズ、その4つ目のシリーズは1987年の録音をメインに構成された『Environmental Percussion Vol.1』『Environmental Percussion Vol.2』『Crocidura Dsi Nezumi』『Material H2』『Ecobondage (Another Mix)』『Enclosure』の6作であった。そしてそれらをまとめたボックス作品がこの〈Strings & Percussion〉である。
このシリーズではメルツバウ独自の“Environmental Percussion”と呼ばれるアイデアを音楽的に具現したものが集められている。このアイデアは1982年の『Material Action for 2 microphones』の頃から存在し、具体的には部屋の床や壁を叩いたり、身の回りの様々なものや、小さな物体をコンタクト・マイクで拾い、増幅し、リバーブやディレイなどの空間エフェクト処理を加える事で獲得される音響を意味する。このアプローチにおける主な使用素材は、発砲スチロールの塊(床などを叩く為に使用)、プラスティック製のカセット・ケースやカード(バイオリンの弓で弾く)、輪ゴム(つまびく)、トイレット・ペーパーの芯(吹く)、ガス・ストーブやテーブル・ランプ(メタル・パーカッション)等で、歪んだエフェクト加工によるノイズとは異なる機微と手触りを持ったアンプラグドな雑音が発せられる。『Material Action for 2 microphones』においてはこの手法はノイズ的なサウンドを獲得する目的で用いられていたが、後の『Ecobondage』(1987)、『Storage』(1988)といった時期の作品ではより音楽的なかたちで用いられており、今回のシリーズでリリースされる音源もそのほとんどは87年に録音が行われている。
加えてこの時期の録音には、トタン製の衣装ケースの内側にピアノ線、ギター弦、スプリングなどを張り、それをバイオリン・ボウで弾いて発音する新しい自作楽器が用いられている。この楽器はトタンの箱の中に様々なオブジェクトを入れて揺さ振ったりしてメタル・ジャンク的な音を出すことも可能な仕様だが、この時期の録音では主に弦楽器的なサウンドを発する用途で用いられ、このサウンドとEnvironmental Percussion、更にエレクトリック胡弓、横笛、縦笛などの響きを適時ミックスすることによって最終的な作品が形作られている。
正にタイトル通り、メルツバウ独自の「弦と打楽器」の用法が堪能できる作品群であり、前シリーズ〈Loop & Collage〉とは異なるいわばアナザーサイドの試みに焦点を当てたシリーズといえるだろう。
よろすず

Track List:
CD-1 Environmental Percussion Vol.1
CD-2 Environmental Percussion Vol.2
CD-3 Crocidura Dsi Nezumi
CD-4 Material H2
CD-5 Ecobondage (Another Mix)
CD-6 Enclosure

SDRSW74 Merzbow『Loop & Collage (6CD BOX) 』

MERZBOW
『Loop & Collage (6CD BOX) 』

¥6,000+税
SDRSW-74
2019年11月15日リリース

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2018年にスタートしたスローダウン・レコーズによるメルツバウ・アーカイブ・シリーズ、その第3弾としてリリースされた作品をまとめたボックスが登場!本ボックス〈Loop & Collage〉には『Agni Hotra (2nd Mix)』『Antimony』『Batztoutai Mix』『Jinrinkinmouzui』『Antimonument Tapes』『De-Soundtrack』の6作を収録。その象徴的なタイトル通り、機械的なループや細かなコラージュ技法の到達点が示され、“編集と設計の音楽家”としての秋田昌美の姿を浮かび上がらせる作品群となっている。

<作品概要>
2018年よりスタートしたメルツバウの未発表/発掘音源を収めたアーカイブ・シリーズ、その3つ目のシリーズは84~87年の録音により構成された『Agni Hotra (2nd Mix)』『Antimony』『Batztoutai Mix』『Jinrinkinmouzui』『Antimonument Tapes』『De-Soundtrack』の6作であった。そしてそれらをまとめたボックス作品がこの〈Loop & Collage〉である。
この象徴的なタイトルにも表れているが、収録作の録音時期に当たる80年代半ばはメルツバウにとって、Throbbing Gristleの登場以降に世界中に起こったインダストリアル・ムーブメントとの共振を感じさせる機械的なループの援用と歪んだ音色の徹底的な過激化によって独自のインダストリアル・ノイズのスタイルを確立させた時期であり、またデュオ時代から試みられていたテープ・コラージュ手法による複雑なサウンド構築が極点に達し、『抜刀隊 with Memorial Gadgets』などそのキャリアの中でも特に知名度の高い作品がリリースされ、テープ・ミュージックとしてのメルツバウの到達点が示される時期でもある。ここに収録されている6作においても極度に歪ませた響きを多用するインダストリアル・ノイズな音色のセンスと、テープ素材の概形を残したコラージュとしての様相がそれぞれに異なるバランスでせめぎ合っている。
本シリーズの作品には他の既発作品の別テイクやアウトテイク、初期バージョンなどが多く収録されており、それらの存在からはこの時期のメルツバウが、偏執的なテープ・コラージュという技法故の常につきまとう細かな改訂の余地や可能性との対話の中で、いくつものバージョンを生み出しながら創作を行っていたことが伺える。
メルツバウのサウンドの変遷において、聴覚を塗りつぶすが如きハーシュ・ノイズなスタイルが前面に出てくるのはライブ活動が活発化する90年代に入ってからであるため、サンプリング・コラージュを中心に組み立てられたこの時期の作品は瞬間的な音圧では劣るように感じられるかもしれないが、反面その手法ゆえの音源の自由さや響きの多彩さ、ライブでの再現性に縛られない細かなエディットが大きな魅力だ。『Loop & Collage』に収められた作品からノイジーな響きだけにとどまらないサウンドの魅力を知ることは、他のノイズミュージックとメルツバウの作品に差異を見出すうえでも、後の氏の作品をより深く聴くうえでも非常に大きな手掛かりとなってくれるはずだ。
よろすず

Track List:
CD-1 Agni Hotra (2nd Mix)
CD-2 Antimony
CD-3 Batztoutai Mix
CD-4 Jinrinkinmouzui
CD-5 Antimonument Tapes
CD-6 De-Soundtrack

SDRSW71 Merzbow『小品集 Vol.2』

MERZBOW
『小品集 Vol.2』

¥2,000+税
SDRSW-71
2019年11月15日リリース

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スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズではメルツバウの中でも知名度や評価の高い作品が立て続けに発表された1993年から1995年の音源を収めた6作がリリースされる。本作はタイトル通りの内容で、本シリーズの中で2つめとなる小品集。当時のコンピレーション収録曲や未発表音源などが集められており、「Phillo-Jazz Grind」はもともと「Phillo Jazz pt3-pt5」と名付けられていた個別のトラックを1つにまとめたものとなっている。Suicideの「Ghost Rider」がサンプルされた1曲目「G-Rider」をはじめ、既存の楽曲や楽器のサンプリングも耳を引く興味深い内容。

<作品概要>
スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズでは1993年から1995年の音源を収めた作品がリリースされる。この時期は『Metalvelodrome』『Noisembryo』『Hole』『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウの中でも特に知名度や評価の高い作品の制作やリリースが行われた時期であり、近年再発も積極的に行われている。
今回のシリーズはこれまでのシリーズで多かったカセット・マスターではなく全ての作品でDATマスターが使用され、新たにリマスターを施すというかたちで制作されている。DATマスターはカセットをマザー・テープとして一応作品としてMIXされている状態の物であるため、カセット音源に比較すれば完成度は高いといえる。そのため小品集なども含む本シリーズの作品はたとえ長時間の演奏であっても展開などの面でタイトにまとまっている印象が強い。
本作はタイトル通りの内容で、本シリーズの中で2つめとなる小品集。当時のコンピレーション収録曲や未発表音源などが集められており、「Phillo-Jazz Grind」はもともと「Phillo Jazz pt3-pt5」と名付けられていた個別のトラックを1つにまとめたものとなっている。近い時期の作品では『Metalvelodrome』の2枚目のディスクも小品集であり、この時期には7インチやコンピレーションへの提供など小品を作る機会が多かったことが伺える。
Suicideの「Ghost Rider」がサンプルされ、そこに破壊的なノイズが上塗りされていく1曲目「G-Rider」をはじめ、複数のトラックで何らかの既存の楽曲や楽器のサンプルがそれとわかるかたちでループ化され演奏に取り入れられており、歪んだノイズの炸裂の中で異化的な効果を発揮している。

よろすず

Track List:
1. G-rider
2. Phillo-Jazz Grind
3. SB 1
4. Freizeitfick
5. Elephant Memory
6. Pretties For You
7. Untitled Voice 1
8. Untitled Voice 2

SDRSW70 Merzbow『小品集 Vol.1』

MERZBOW
『小品集 Vol.1』

¥2,000+税
SDRSW-70
2019年11月15日リリース

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スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズの第6弾がスタート!今回のシリーズではメルツバウの中でも知名度や評価の高い作品が立て続けに発表された1993年から1995年の音源を収めた6作がリリースされる。本作はタイトル通り短くまとめられたトラックを収録した小品集であり、『Metalvelodrome』収録の「Another Crash For High Tide」のショート・ヴァージョンや、2018年の『Venereology』の再発に際しボーナス・トラックとして収録された「TD3」がもともと入っていたDATの前半部分の曲である「New TD」、Exotic Musicをサンプルした作品である「Arthur」「Percussion Sound」などが収録されている。

<作品概要>
スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズでは1993年から1995年の音源を収めた作品がリリースされる。この時期は『Metalvelodrome』『Noisembryo』『Hole』『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウの中でも特に知名度や評価の高い作品の制作やリリースが行われた時期であり、近年再発も積極的に行われている。
今回のシリーズはこれまでのシリーズで多かったカセット・マスターではなく全ての作品でDATマスターが使用され、新たにリマスターを施すというかたちで制作されている。DATマスターはカセットをマザー・テープとして一応作品としてMIXされている状態の物であるため、カセット音源に比較すれば完成度は高いといえる。そのため小品集なども含む本シリーズの作品はたとえ長時間の演奏であっても展開などの面でタイトにまとまっている印象が強い。
本作はタイトルが示す通り短くまとめられたトラックを多数収録した小品集であり、『Metalvelodrome』収録の「Another Crash For High Tide」のショート・ヴァージョンや、2018年の『Venereology』の再発に際しボーナス・トラックとして収録された「TD3」がもともと入っていたDATの前半部分の曲である「New TD」、Exotic Musicをサンプルした作品である「Arthur」「Percussion Sound」などが収録されている。近い時期の作品では『Metalvelodrome』の2枚目のディスクも小品集であり、この時期には7インチやコンピレーションへの提供など小品を作る機会が多かったことが伺える。
収められた音源はどれも短い時間の中で小気味いい場面の移り変わりがあり、隙間を感じさせる音の配置やドラムやピアノと思われる響きも用いたコラージュ的な様相、またはビートと呼んでも差し支えないようなアタックのしっかりした反復サウンドの表出など、同時期のメルツバウのアルバム作品ではあまりフィーチャーされない作風も聴き取ることができる。時間的制約がある中で効果的にカタルシスを生むために試みられたとも思われる作風であるが、ある種軽快にも感じられるテンションで投げ入れられる様々な響きが見事な完成度でまとめられており、同時期のメルツバウの創作の充実を示す興味深い一作といえるだろう。

よろすず

Track List:
1. Crash for High-Tide 1 (Short Version)
2. Crash for High-Tide 2 (Short Version)
3. Arthur Sound
4. Percussion Sound
5. Geometric Drums
6. Untitled Drums
7. New TD 1
8. New TD 2

MERZBOW×KAORU SATO『KYOTO OCT 21 2018』

MERZBOW×KAORU SATO『KYOTO OCT 21 2018』

Merzbowと佐藤薫、日本の実験的な音楽やインディペンデントなシーンを多少なりとも追いかけた経験のある方ならこの二者の名前に聞き覚えのないほうが稀だろう。

 

Merzbowはノイズ・ミュージックの代名詞のようにも語られ、事実その分野で世界的に最も影響力の大きいアーティストといえる存在だ。しかしながら始動からの40年に及ぶ活動の中では、空間を塗りつぶすようなノイズだけでなく、細かなテープコラージュやビートの導入、アコースティックな素材をフィーチャーした作品など数多の試みがあり、そこで一貫しているのは音に対する実験精神といえるだろう。近年の活動においては音源、ライブどちらの面でも他者との共演の機会が増えており、そのサウンドが新たな趣や機能を持って耳に入ってくる機会も多い。

 

佐藤薫は主に80年代にカルト的な支持を得たバンドEP-4の首謀者として知られている。EP-4はポストパンクの影響を独自に消化した先鋭的なサウンド、それをダンスの触媒として用いる姿勢やシーン形成への意識、ゲリラ的なパフォーマンスなど様々な点で注目を集めた。90年代、00年代には佐藤薫個人、EP-4ともに表立った活動は行われなかったようだが、2010年代に入ると佐藤が関わった作品の復刻を皮切りにEP-4の活動再開、EP-4のメンバーである佐藤とBANANA(川島裕二)による別動隊EP-4 Unit3としての作品リリース、更に佐藤と家口成樹とのデュオ編成となる新ユニットEP-4 [fn.ψ]の始動など、刺激的な活動を展開するようになる。そして2018年には80年代に自身が立ち上げたインディー・レーベル《SKATING PEARS》のサブレーベルとして先鋭的なエレクトリック/ノイズ系の作品を中心にリリースする新レーベル「φonon (フォノン)」を始動。最初のリリースとしてEP-4 [fn.ψ]のアルバム『OBLIQUES』をリリースし、以降もエッジーなディレクションで作品を送り出している。

 

 

 

本作は2018年10月21日、京都メトロにて行われた「スローダウン」、「φonon (フォノン)」、「きょうレコーズ」という3つのレーベルのショウケース・イベントにおけるライブ録音が中心となっている。MerzbowはスローダウンよりNyantora、duennとのユニット3RENSAとしての作品や、Merzbowが始動した時点からの未発表/発掘音源を時系列に沿ってまとめたアーカイブシリーズなどをリリースしており、スローダウンの代表的なアーティストとして出演したかたちだ。
当日のイベントはまず佐藤薫のソロ演奏、途中からそこにメルツバウが加わりしばらく共演の状態が実現、そして佐藤が抜けメルツバウのソロ演奏へという流れであった。CDではこの一続きの演奏がほぼそのまま収録され、最初の25分ほどが佐藤薫のソロ、続く15分ほどが二者の共演、そしてそこから35分ほどがメルツバウのソロ演奏となっている。LPではA面に二者の共演部分が収められ、B面にはそれぞれがソロ演奏を基にエディットやミックスを施した2つのトラックが収録されている。

 

ともに国内外問わず高い知名度と影響力を誇る両者は1981年のコンピレーション・アルバム『沫』において(佐藤は現代音楽家である佐野清彦との共同プロデュース、Merzbowはそこに音源が収録されたアーティストというかたちで)関りがあるものの、ライブでの共演などはなく、アーティストとして向き合い共に音を出す“共演”の機会はこの日が初であった。実に38年ぶりとなったこの両者の交錯を、歴史的邂逅と位置づけるのも決して大袈裟ではないだろう。

 

かたやソロで様々なマテリアルを用い長きに渡り数えきれないほどの作品のリリースやライブなどを行ってきたメルツバウに対し、かたやバンドという形態で数少ない(がゆえに非常にインパクトの強い)作品とパフォーマンスを残し、以降表舞台から退いていた期間の長かった佐藤薫と、両者のキャリアの成り立ちはある種対照的ではあるが、その活動の起点にはどちらもポストパンク以降のインダストリアルなどのアヴァンギャルドなサウンドや、メール・アートなどのインディペンデントなシーンからの影響があり、最終的なアウトプットのかたちは異なれど根源的な部分ではその距離はそう遠くなかったといえるのではないだろうか。

 

更に近年の両者の活動、ジャズ/即興の領域や多様な電子音楽のアーティストまで刺激的なコラボレーションを行ってるメルツバウと、EP-4 Unit3やEP-4 [fn.ψ]で大胆にアンビエントやノイズ、抽象的な電子音楽への接近を見せている佐藤薫、という流れを意識すれば、双方の活動のベクトル上にこの共演は必然性を持って浮かび上がってくる。実際のサウンドにおいても、両者の演奏は互いが互いの異物となり衝突し高めあうというより、それぞれが相手の出す音の呼吸に深く耳を澄ます様子が浮かんでくるような、自然かつ豊かな交感を感じさせるものとなっている。

 

 

 

それでは演奏の内容に移っていこう。
佐藤薫のソロは近年のEP-4 [fn.ψ]で聴かせたダイナミックかつ非常に音響的な情報量の多いアンビエント寄りの作風を思わせるものとなっている。特に中心的に鳴らされる金属的な音色はチャイム(チューブラー・ベルズ)の音を引き延ばしたような倍音の伸びがあり、同時にハリー・ベルトイアの音響建築Sonambientのサウンドを思わせる冷たさと瞑想性を感じさせる特異なもので、演奏全体の印象を決定づけている。この音色の高い周波数まで伸びる打楽器的な倍音の広がりに加え、蠢くように存在し続ける低音や淡々とした律動を持つ曇った音色、更に7khz以上や10khz以上のような非常に高い音域でまとめられた電子ノイズのような響きも場面によって効果的に用いられており、総じて響きの情報量の豊かさと、帯域を広く使いシャープにサウンドを響かせる巧みなデザイン性が感じられる演奏となっている。

 

共演部分はソロ演奏の流れを引き継ぎ中央で金属的な音色を発し続ける佐藤と、音程や音量が上下動する電子音を扱うメルツバウという、両者の振る舞いの違いが明確に聴き取れる演奏となっている。発する音色とそれが位置する帯域がある程度固定的にデザインされている佐藤のサウンドに対し、メルツバウは音程や音量の即興的な操作やパンニングで意識的に帯域を横切るような動きを多用し、空間のゆらぎや重力の変化を感じさせるような効果を生み出している。佐藤が生み出した独自性の強い音響空間に対し、四方から刺激を加えることでその形状を押し広げてみたり、または聴き手の耳の焦点をある音域へ引っ張ることで別の聴こえ方を誘導してみたりと、即興的な電子音のセッションで単なる音響のレイヤーに留まらないアプローチを聴かせてくれる。これが初共演で、おそらく事前の打ち合わせなどもない状態でできてしまうのだから驚きだ。

 

共演部分では時間が進むにつれてメルツバウが発するザラついたノイズが徐々に空間を満たしていき、潮の満ち引きのような自然さで佐藤の音が退きメルツバウのソロへ突入する。メルツバウの演奏は自作楽器やシンセ、発信機など複数のマテリアルの生演奏からなる即興性の高いもので、佐藤薫との共演部分では控えられていた地鳴りや濁流を思わせる轟音も容赦なく用いられる。しかしながらそういったホワイトノイズに近いような音響はあくまで演奏を構成する一部として、時には背景的に、時には空間を埋め尽くすように、また時にはノイジーなギター演奏のように前面で激しくうねったりと様々に機能しており、それのみが聴き手の印象を塗りつぶすようなことはない。35分ほどの時間の中で明確に演奏の趣が変わる瞬間が複数回あり、特に中盤でザクザクと一定の律動を持った音色が入りサウンドのバランスが変わる場面は非常にスリリングだ。即興的な音色の変容や配置の操作によって確かな構成感のある一続きの演奏を成り立たせる、ライブミュージシャンとしてのメルツバウの巧みさが堪能できる演奏といえるだろう。

 

LPに収録されている両者が個別にミックスしたトラックは、各々のソロ演奏の内容を基としている。佐藤薫のトラックでは序盤に音色のエディットと点描的な再配置による新たな場面などが追加され、ライブ演奏がそれらと接合されるいわばリコンポーズのような内容となっており、CD版での演奏とは異なる構成の妙が生まれている。メルツバウのトラックはソロ演奏におけるいくつかの異なる場面が大胆に圧縮接合されたような仕上がりで、一息で駆け抜け聴き手を圧倒するような、瞬間的な快楽性がより高められたバージョンとなっている。

 

 

両者のソロ演奏は方向性を異にしながらも明確な目的意識が感じられる(佐藤薫のサウンドのデザイン性、メルツバウの即興的に形作られていく音の起伏運動や展開)という点で通じ、故に非常に研ぎ澄まされた強度やアクチュアリティーを持っている。共演部分においても、その目的意識が反映された結果としてあらゆる意味で曇りや誤魔化しのない音の交錯と交感が実現している。倍音の扱いとそこから導き出される音色の性格、音の配置や帯域のデザイン性、即興性の扱いなど、様々な視点からの検証にそれぞれに異なるハードコアなかたちで応えてくれる両者のサウンドは、多様化している現在の電子音楽の中でも非常にエッジーな表現がなされたものであるといえるだろう。表現にまつわるあらゆる側面を自身の意思でディレクションし、強力な実践を行ってきた両者の鋭いまなざしが今、どこを向いているのか、それは本作の音そのものが、つぶさに示してくれている。

よろすず

SDRSW61 MERZBOW×KAORU SATO『KYOTO OCT 21 2018』LP Version

MERZBOW×KAORU SATO
KYOTO OCT 21 2018』LP Version

¥3,000+税
LPレコード
SDRSW-61
2019年11月22日リリース

Amazon  https://amzn.to/2ZVvVZu

2018年10月21日、京都メトロにて行われた「スローダウン」、「φonon(フォノン)」、「きょうレコーズ」という3つのレーベルのショウケース・イベントにおいて実現したメルツバウと佐藤薫の初セッションの録音がCDとLPの2フォーマットでリリース!LP版となる本作ではA面に当日の共演の録音をそのまま収録。B面には共演の前後に切れ目なく行われた両者のソロ演奏を基に、各々がエディットやミックスを施した2つのトラックが収められている。デザイン性の高い発音を行う佐藤薫と、音程や音量の上下動を即興的に操り広く帯域を横切るような動きを多用するメルツバウ、両者の振る舞いの違いによって曇りや誤魔化しのない音の交錯と交感が実現した刺激的な一夜の記録だ。

<作品概要>
この2人の交錯を歴史的邂逅と位置づけるのも決して大袈裟ではないだろう。
時にノイズ・ミュージックの代名詞のようにも語られ、極端に歪んだ響きを多用しつつ40年に及ぶ活動の中で数多の試みを行ってきたメルツバウと、80年代にEP-4の首謀者として伝説的なパフォーマンスと作品を残した後沈黙し、近年になって新たなユニットやレーベルの始動、大胆なアンビエントやノイズへの接近など刺激的な活動を展開している佐藤薫。
ともに国内外問わず高い知名度と影響力を誇りながらも、共に音を出す“共演”といったかたちでは関りのなかった両者の初セッションが実現したのは2018年10月21日、京都メトロにて行われた「スローダウン」、「φonon(フォノン)」、「きょうレコーズ」という3つのレーベルのショウケース・イベントにおいてであった。そしてその日の演奏の記録が、この度CDとLPの2フォーマットでリリースされる。
LP版となる本作ではA面に当日の共演の録音をそのまま収録。B面には共演の前後に切れ目なく行われた両者のソロ演奏を基に、各々がエディットやミックスを施した2つのトラックが収められている。
両者の共演は、そこへ繋がるソロ演奏の流れを引き継ぎデザイン性の高い発音を行う佐藤薫と、音程や音量の上下動を即興的に操り広く帯域を横切るような動きを多用するメルツバウ、両者の振る舞いの違いが明確に聴き取れる演奏であり、それぞれのソロ演奏においても明確に示される方向性が共演時においても深く反映された結果、曇りや誤魔化しのない音の交錯と交感が実現している。
倍音の扱いとそこから導き出される音色の性格、音の配置や帯域のデザイン性、即興性の扱いなど、様々な視点からの検証にそれぞれに異なるハードコアなかたちで応えてくれる両者のサウンドは、多様化している現在の電子音楽の中でも非常にエッジーな表現がなされたものであるといえるだろう。表現にまつわるあらゆる側面を自身の意思でディレクションし、強力な実践を行ってきた両者の鋭いまなざしが今、どこを向いているのか、それは本作の音そのものが、つぶさに示してくれている。
よろすず

Track List:
A1. KYOTO OCT 21 2018
B1. KAORU SATO evil MIX
B2. MERZBOW MIX

SDRSW69 Merzbow『Phillo Jazz』

MERZBOW
『Phillo Jazz』

¥2,000+税
SDRSW-69
2019年10月18日リリース

Amazon  https://amzn.to/2zu9M5J

スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズではメルツバウの中でも知名度や評価の高い作品が立て続けに発表された1993年から1995年の音源を収めた6作がリリースされる。本作『Phillo Jazz』には1994年録音の3つのトラックが収録されており、2曲目「Phillo Jazz June (Electronica)」は同年に英国のFool’s Paradiseよりリリースされたコンピレーション『Bovine Spongiform Encephalopathy』に「Phillo-Jazz Electronica」というタイトルで収録されたものと同一曲となっている。

<作品概要>
スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズでは1993年から1995年の音源を収めた作品がリリースされる。この時期は『Metalvelodrome』『Noisembryo』『Hole』『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウの中でも特に知名度や評価の高い作品の制作やリリースが行われた時期であり、近年再発も積極的に行われている。
今回のシリーズはこれまでのシリーズで多かったカセット・マスターではなく全ての作品でDATマスターが使用され、新たにリマスターを施すというかたちで制作されている。DATマスターはカセットをマザー・テープとして一応作品としてMIXされている状態の物であるため、カセット音源に比較すれば完成度は高いといえる。そのため小品集なども含む本シリーズの作品はたとえ長時間の演奏であっても展開などの面でタイトにまとまっている印象が強い。
本作『Phillo Jazz』には1994年録音の3つのトラックが収録されており、2曲目「Phillo Jazz June (Electronica)」は同年に英国のFool’s Paradiseよりリリースされたコンピレーション『Bovine Spongiform Encephalopathy』に「Phillo-Jazz Electronica」というタイトルで収録されたものと同一曲となっている。
収録された3曲は順を追ってサウンドがより過激化していくように配置されており、アルバム作品としてこの時期の演奏のダイナミズムが反映された内容となっている。また、1曲目は歪んだノイズの炸裂以上にディレイの操作による発信音の反復やその矢継ぎ早な切り替えが非常に耳を引く内容で、モノクロームなノイズの壁というより細かな伸縮を繰り返す電子音のライブ・コラージュといった印象を残す興味深い1曲だ。

よろすず

Track List:
1. Phillo Jazz March
2. Phillo Jazz June(Electronica)
3. Phillo Jazz July

SDRSW68 Merzbow『Bluedelic+』

MERZBOW
『Bluedelic+』

¥2,000+税
SDRSW-68
2019年10月18日リリース

Amazon  https://amzn.to/328Nrab

スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズの第6弾がスタート!今回のシリーズではメルツバウの中でも知名度や評価の高い作品が立て続けに発表された1993年から1995年の音源を収めた6作がリリースされる。本作『Bluedelic+』は4枚組CD Box『Metalvelodrome』のアウトテイク集。Boxに収録されていた「Bluedelic」の本来の音源となる長時間のDATマスターを元に、ロング・バージョンとエクストラ・バージョン2編が収録され、録音の全容を今までより広くうかがい知れる内容となっている。身体に響く爆発音のような響きから耳をつんざくひび割れた響きまでダイナミックに変化する粗い音の質感が一種のロウ・エレクトロニクス作品としても極上の魅力を放つ一作。

<作品概要>
スローダウンによるメルツバウのアーカイブ・シリーズ、第6弾となる今回のシリーズでは1993年から1995年の音源を収めた作品がリリースされる。この時期は『Metalvelodrome』『Noisembryo』『Hole』『Venereology』『Pulse Demon』などメルツバウの中でも特に知名度や評価の高い作品の制作やリリースが行われた時期であり、近年再発も積極的に行われている。
今回のシリーズはこれまでのシリーズで多かったカセット・マスターではなく全ての作品でDATマスターが使用され、新たにリマスターを施すというかたちで制作されている。DATマスターはカセットをマザー・テープとして一応作品としてMIXされている状態の物であるため、カセット音源に比較すれば完成度は高いといえる。そのため小品集なども含む本シリーズの作品はたとえ長時間の演奏であっても展開などの面でタイトにまとまっている印象が強い。
本作『Bluedelic+』は4枚組CD Box『Metalvelodrome』のアウトテイク集。「Bluedelic」はBoxに収録されている曲タイトルであるが、その本来の姿はDATに録音された長時間の音源であり、Boxには最初のパートのみが収録されていた。今回の『Bluedelic+』ではその長時間のDATマスターを元に、より長いバージョンとエクストラ・バージョン2編が収録され、録音の全容を今までより広くうかがい知れる内容となっている。(尚、『Metalvelodrome』は2019年にイタリアのUrashimaから改訂版の再発が行われたが、そこに収録の「Bluedelic」は別のDATマスターを使用しており、オリジナルや本CDに収めたものともミックスや長さが異なる。)
極度に歪んだメタリックなノイズや発信音がディレイ音の反復やうねりとせめぎ合うこの時期の作風が非常に生々しいかたちで収められており、特に身体に響く爆発音のような響きから耳をつんざくひび割れた響きまでダイナミックに変化する粗い音の質感は一種の過激なロウ・エレクトロニクス作品としても極上の魅力を放っている。
よろすず

Track List:
1. Bluedelic 1
2. Bluedelic 2
3. Bluedelic 3

SDRSW60 MERZBOW×KAORU SATO『KYOTO OCT 21 2018』

MERZBOW×KAORU SATO
『KYOTO OCT 21 2018』

¥2,500+税
SDRSW-60
2019年9月20日リリース

Amazon  https://amzn.to/2M9BaO1

2018年10月21日、京都メトロにて行われた「スローダウン」、「φonon (フォノン)」、「きょうレコーズ」という3つのレーベルのショウケース・イベントにおいて実現したメルツバウと佐藤薫の初セッションの録音がCDとLPの2フォーマットでリリース!CD版となる本作には佐藤薫のソロ演奏、途中からそこにメルツバウが加わるかたちで実現した共演セッション、そして佐藤が抜けメルツバウのソロ演奏へという当日の一連の流れがほぼそのまま収録されている。特異な音色を軸にデザイン性の高い演奏を聴かせる佐藤薫と、性質の異なる数種類の音源を即興的にミックスしバランスの異なる轟音やダイナミックな展開を作り出すメルツバウ、そして両者の持つデザイン性と即興性が見事な交錯を見せる共演セッションと、どの瞬間にも研ぎ澄まされた強度やアクチュアリティーが宿っている。

<作品概要>
この2人の交錯を歴史的邂逅と位置づけるのも決して大袈裟ではないだろう。
時にノイズ・ミュージックの代名詞のようにも語られ、極端に歪んだ響きを多用しつつ40年に及ぶ活動の中で数多の試みを行ってきたメルツバウと、80年代にEP-4の首謀者として伝説的なパフォーマンスと作品を残した後沈黙し、近年になって新たなユニットやレーベルの始動、大胆なアンビエントやノイズへの接近など刺激的な活動を展開している佐藤薫。
ともに国内外問わず高い知名度と影響力を誇りながらも、共に音を出す“共演”といったかたちでは関りのなかった両者の初セッションが実現したのは2018年10月21日、京都メトロにて行われた「スローダウン」、「φonon (フォノン)」、「きょうレコーズ」という3つのレーベルのショウケース・イベントにおいてであった。そしてその日の演奏の記録が、この度CDとLPの2フォーマットでリリースされる。
CD版となる本作には佐藤薫のソロ演奏、途中からそこにメルツバウが加わるかたちで実現した共演セッション、そして佐藤が抜けメルツバウのソロ演奏へという当日の一連の流れがほぼそのまま収録されており、具体的には最初の25分ほどが佐藤薫のソロ、続く15分ほどが両者の共演、そこから35分ほどがメルツバウのソロとなっている。
チャイム(チューブラー・ベルズ)の音を引き延ばしたような倍音の伸びや、ハリー・ベルトイアの音響建築Sonambientのサウンドを思わせる冷たさと瞑想性を感じさせる特異な音色を軸にデザイン性の高い演奏を聴かせる佐藤薫と、自作楽器やシンセ、発信機など複数のマテリアルの生演奏によって即興的にバランスの異なる轟音やダイナミックな展開を作り出すメルツバウ、そして両者の持つデザイン性と即興性が見事な交錯を見せる共演セッションと、どの瞬間にも研ぎ澄まされた強度やアクチュアリティーが宿っている。
倍音の扱いとそこから導き出される音色の性格、音の配置や帯域のデザイン性、即興性の扱いなど、様々な視点からの検証にそれぞれに異なるハードコアなかたちで応えてくれる両者のサウンドは、多様化している現在の電子音楽の中でも非常にエッジーな表現がなされたものであるといえるだろう。表現にまつわるあらゆる側面を自身の意思でディレクションし、強力な実践を行ってきた両者の鋭いまなざしが今、どこを向いているのか、それは本作の音そのものが、つぶさに示してくれている。 よろすず

Track List:
1. KYOTO OCT 21 2018

SDRSW67 Merzbow『Untitled 1991 Vol.3』

MERZBOW
『Untitled 1991 Vol.3』

¥2,000+税
SDRSW-67
2019年9月20日リリース

Amazon  https://amzn.to/2GtDU4Z

これまで4つのシリーズが発表されているメルツバウのアーカイブシリーズ、第5弾となる本シリーズではこれまであまりアーカイブなどの機会に収録されてこなかった1991年の録音が中心的にリリースされる。 本作は無機的なタイトルが示す通り1991年の録音であり(ミックスとマスタリングは2019年)、それ以上の他作品との関りなどを示す情報は記載されていない。リアルタイム・ミックスな制作手法によるライブ感溢れるノイズの応酬に加え、80年代の作風がフラッシュバックされるような瞬間も存在し、ある種のハイブリッドといえるような仕上がりとなっている。

<作品概要>
本シリーズで中心的にリリースされる1991年の作品の特徴として、レコードのスクラッチやサンプリングが1980年代の『抜刀隊』の時のようなコラージュ的ではない新たな手法で使用されている点が挙げられる。それは具体的にはNextやDigitech社製のサンプリング・ディレイの導入によってもたらされた、よりリズミカルでカットアップ的な使用方である。当時の作品は4chの複数のカセットの他に2chの複数のカセット、更に生演奏などをライブでカットアップし、ミックスすることで制作されていたが、今回はその素材となったテープ(ほとんどは4chのカセット)がカットアップなどを行わずほぼ未編集のまま使用されている。また、当時はTASCAM Porta Twoを使用してミックスが行われていたが、現在はその機材がないためTASCAM MFP-01を使用して新たなミックスが行われた。本作は無機的なタイトルが示す通り1991年の録音であり、それ以上の他作品との関りなどを示す情報は記載されていない。速度を緩めず疾走するような印象の強い本シリーズの音源の中で本作は隙間や緩急が大胆に表れ、また2曲目の前半では比較的歪みの度合いが少ない電子音が、3曲目ではジャズやラジオ音声のようなサンプルがしっかりと聴き取れる状態でノイズの応酬の中に織り交ぜられるなど、80年代の作風がフラッシュバックされるような瞬間もある。しかしながらリアルタイム・ミックスな制作手法によるライブ感が衰えることはなく、ある種のハイブリッドといえるような仕上がりとなっている。1991年という時期に特有の要素をしっかりと備えつつ、この特定の短い期間においても確かに存在する変化の兆しが垣間見える一作。 よろすず

Track List:
1. May 891Mix
2. 917Mix01
3. 19914Mix2-Far East Network

SDRSW66 Merzbow『Untitled 1991 Vol.2』

MERZBOW
『Untitled 1991 Vol.2』

¥2,000+税
SDRSW-66
2019年9月20日リリース

Amazon  https://amzn.to/2KfxXdh

これまで4つのシリーズが発表されているメルツバウのアーカイブシリーズ、第5弾となる本シリーズではこれまであまりアーカイブなどの機会に収録されてこなかった1991年の録音が中心的にリリースされる。 本作は無機的なタイトルが示す通り1991年の録音であり(ミックスとマスタリングは2019年)、それ以上の他作品との関りなどを示す情報は記載されていない。45分に及ぶ長尺のトラックが含まれており、そこでの響きの語彙の豊富さと構成力に、「ノイズ」が持ち得る多様性と、それを操るメルツバウの演奏家としての巧みさがうかがえる一作。

<作品概要>
本シリーズで中心的にリリースされる1991年の作品の特徴として、レコードのスクラッチやサンプリングが1980年代の『抜刀隊』の時のようなコラージュ的ではない新たな手法で使用されている点が挙げられる。それは具体的にはNextやDigitech社製のサンプリング・ディレイの導入によってもたらされた、よりリズミカルでカットアップ的な使用法である。当時の作品は4chの複数のカセットの他に2chの複数のカセット、更に生演奏などをライブでカットアップし、ミックスすることで制作されていたが、今回はその素材となったテープ(ほとんどは4chのカセット)がカットアップなどを行わずほぼ未編集のまま使用されている。また、当時はTASCAM Porta Twoを使用してミックスが行われていたが、現在はその機材がないためTASCAM MFP-01を使用して新たなミックスが行われた。本作は無機的なタイトルが示す通り1991年の録音であり、それ以上の他作品との関りなどを示す情報は記載されていない。1曲目は45分に及ぶ長尺のトラックとなっており、鳥の鳴き声を早送りしたような高域の応酬や、金属が叩きつけられるような響きと歪みのコントロールで聴かせるインダストリーな場面、前後感が認識できないほどに空間を塗りつぶすホワイトノイズ的な音響など様々に展開していく。終始「ノイズ」という形容が相応しく思える何らかの過剰さを持った音響を用い、速度を緩めるような時間がないにも関わらず、長時間を飽きさせることなく聴かせる響きの語彙の豊富さと構成力に、「ノイズ」が持ち得る多様性と、それを操るメルツバウの演奏家としての巧みさがうかがえる一作。 よろすず

Track List:
1. 91921Mix
2. 19914Mix1