SDRSW119 Merzbow『Groon Lesson』

MERZBOW
『Groon Lesson』

¥2,200(with tax)
SDRSW-119
2021年6月18日リリース

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スローダウン・レコーズによるメルツバウ・アーカイブ・シリーズは第12弾に突入!今回のシリーズではメルツバウがドラム演奏を取り入れた作風を展開した2008~2009年の音源がリリースされる。秋田昌美は元々サイケデリックやプログレッシヴ・ロックをはじめ70年代のフリー・ミュージックに大きな影響を受けたドラマーであったが、メルツバウとしてはドラムの使用はあえて避けられていたため、Merzbow単独名義での作品における本格的なドラムの使用はこの時期が初めてである。本作『Groon Lesson』は2009年の正月にDATに録音された作品の一つ。RolandのV-Drumsを使用し、King Crimson『Earthbound』収録の「Groon」のドラム・ソロを意識して制作されており、そのためかドラムにEMS VCS3をかましていると思われるサウンドも聴き取れる。

<作品概要>
これまで11のシリーズがリリースされているスローダウン・レコーズによるメルツバウの未発表音源を中心に収めたアーカイブ・シリーズは第12弾に突入。
今回のシリーズではメルツバウがドラム演奏を取り入れた作風を展開した2008~2009年の音源がリリースされる。
秋田昌美は元々サイケデリックやプログレッシヴ・ロックをはじめ70年代のフリー・ミュージックに大きな影響を受けたドラマーであったが、メルツバウとしては(70年代後期の水谷聖とのデュオ時代や80年代初頭のMerzbow Nullでのドラム演奏を除き)ドラムの使用は避けられていたため、Merzbow単独名義での作品における本格的なドラムの使用はこの時期が初めてである。
メルツバウのこういった作風の作品では2008年から2009年へとまたがり1年かけて13作がリリースされた「13 Japanese Birds Series」(Important Records)が有名なところだが、そのきっかけは2008年4月、London公演の翌日にTin Pan Alley Studiosで行われた英Cold Springからリリース予定の新アルバムの為の録音作業であった。その際スタジオにあった生ドラムを録音しコンピューター・ノイズと合成するという手法がとられ、以降の本格的なドラム使用の端緒となる(この録音は『Anicca』(Cold Spring, 2008)へ収録された)。帰国後にはこのドラムを用いた作風はコンピューター音源だけでなく即興的なノイズと組み合わせたものへと発展し、これが『Arijigoku』(Vivo, 2008)、『Protean World』(Noiseville, 2008)、『Microkosmos』(Blossoming Noise, 2009)と続く一連の作品となっていく。
また同時期に秋田氏はハンガリーのドラマーBalazs Pandiと出会い、彼とのデュオで海外公演を頻繁に行うようになる。音楽的な背景に多くの共通項を持つドラマー(メタル、グラインドコア系だけでなくSun Raやフリージャズにも精通)との出会いによって、メルツバウが希求していたドラム演奏を取り入れたスタイルは以降このデュオを基本に追求されていくこととなり、Merzbow単独ではドラムレスな音楽(ドラムが入っていても非即興的なスタイル)へ戻っていくため、秋田氏自身のドラム演奏が用いられたこの時期の音源は貴重といえるだろう。
本作『Groon Lesson』は(同シリーズの『Pi-Eggplant』と同じく)2009年の正月にDATに録音された作品の一つ。ドラム演奏は外部スタジオでの別録りではなくRolandのV-Drumsを使用しMunemihouseで録音されている。King Crimson『Earthbound』収録の「Groon」のドラム・ソロを意識して制作されており、そのためかドラムにEMS VCS3をかましていると思われるサウンドが聴き取れる。特に2曲目中盤では歪み、変質したドラム・サウンドが電子ノイズと混ざり合い、カオティックな渦を形成しており、空間が捻じ曲がるようなフリーキーな演奏となっている。

よろすず

01. 09-1 No.3-3
02. 09-1 No.3-2
03. 09-1 No.3-1