SDRSW58 Merzbow『Ecobondage (Another Mix)』

Merzbow
『Ecobondage (Another Mix)』

¥2,000+税
SDRSW-58
2019年6月21日リリース

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メルツバウのアーカイブシリーズ、『Early Sessions』『Early Cassettes』『Loop & Collage』に続く4つめのシリーズでは秋田昌美が独自に考案した“Environmental Percussion”と呼ばれる手法が用いられた作品がリリースされる。本作は87年リリースのアルバム『Ecobondage』のアナザー・ミックスとなる音源。“Environmental Percussion”以外にも80年代に試みられた様々な手法が断片的に聴きとれ、一つの方法論に留まらず常に実験を繰り返すメルツバウならではの、手法や性格を異にするサウンドの横溢が味わえる一作。

<作品概要>
本シリーズで中心的に取り上げられる“Environmental Percussion”のアイデアは1982年の『Material Action for 2 microphones』の頃から存在し、具体的には部屋の床や壁を叩いたり、身の回りの様々なものや、小さな物体をコンタクト・マイクで拾い、増幅し、リバーブやディレイなどの空間エフェクト処理を加える事で獲得される音響を意味する。このアプローチにおける主な使用素材は、発砲スチロールの塊(床などを叩く為に使用)、プラスティック製のカセット・ケースやカード(バイオリンの弓で弾く)、輪ゴム(つまびく)、トイレット・ペーパーの芯(吹く)、ガス・ストーブやテーブル・ランプ(メタル・パーカッション)等で、歪んだエフェクト加工によるノイズとは異なる機微と手触りを持ったアンプラグドな雑音が発せられる。『Material Action for 2 microphones』においてはこの手法はノイズ的なサウンドを獲得する目的で用いられていたが、後の『Ecobondage』(1987)や『Storage』(1988)といった時期の作品ではより音楽的なかたちで用いられており、前者のアナザー・ミックスにあたる本作からも同様の方向性が聴き取れる。加えてこの時期の録音には、トタン製の衣装ケースの内側にピアノ線、ギター弦、スプリングなどを張り、それをバイオリン・ボウで弾いて発音する新しい自作楽器が用いられている。この楽器はトタンの箱の中に様々なオブジェクトを入れて揺さ振ったりしてメタル・ジャンク的な音を出すことも可能な仕様だが、この時期の録音では主に弦楽器的なサウンドを発する用途で用いられ、このサウンドとEnvironmental Percussion、更にエレクトリック胡弓、横笛、縦笛などの響きを適時ミックスすることによって最終的な作品が形作られている。『Ecobondage』はこれらの要素に加えテープ・ミュージック的な加工や電子的なサウンドも随所に聴きとれ、更にゲスト・プレイヤーの音もミックスされた内容であるが、アナザー・ミックスである本作ではゲストの演奏は含まれていない。また、アルバム収録曲の最後の曲「Contraction」は入っていないためアルバム・マスターに先行するミックスと考えられる。一つの方法論に留まらず常に実験を繰り返すメルツバウならではの、手法や性格を異にするサウンドの横溢が味わえる一作。 よろすず

Track List:
1. Ecobondage
  including: Prison of Takaou, Blow Up
2. Ha Ha Ho Bari(Mari)
  including: Balloon