2008年01月 Archive

2008年01月31日

SIMONE WHITE / LAL WATERSON

妖精などのミステリアス・ファンタジーや魔法のケルト的文化
あるいは幻覚的な植物世界
SIMONE WHITE / LAL WATERSON 
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES1

Simone White/I Am The Man
(HJRCD28)
いまでも中世の世界をそのまま残しているイギリスのカンタベリーでのプログレッシヴ・ロックを聴いていた70年代後半、神話的世界観やブリティシュ・ガーデンの色とりどりの花が咲き乱れたような植物的なサイケデリック世界の迷宮に迷い込み、それがこうじてアイルランド・フォークやブリティッシュ・トラッドなどのレコードまで手を伸ばし聴いていた時期があった。妖精などのミステリアス・ファンタジー、魔法などのケルト的文化、あるいは幻覚的な植物世界は、最終的には80年代にオレンジジュースやアズテックカメラ、ストロベリー・スウィッチブレイド、elレーベル、ネオアコースティック、そしてシュガーキューブ(ビョーク)などの音楽に流れ着くのだが、ボクがこの30年の間に失ったものといえば、イングランド民謡として知られている「埴生の宿」の歌詞にあるような郷愁じみた、ある意味でキミたちにとっての癒しの世界かも知れない。ロックをはじめイギリスの音楽に惹かれた最も大きな要因は、ケルト的世界の自然信仰と神話世界のなかの植物的感性なのだが、巨大なオークの木がある庭付きの古い木造家屋に住むシモーネ・ホワイトのサウダージ・フィーリング(ほのかな哀しみとある種の切なさを帯びた歓びと感傷が入り混じる気持ちをこう言うんだってね)を持つアコースティック・ミュージックを聴いていると、70年代−80年代のイギリスにまつわるあの頃の思い出が映画のワンシーンのように頭を過る。

Migrating Bird/The Songs Of Lal Waterson(HJRCD31)
なぜいまにもなってシモーネ・ホワイトやニッポンではまったく無名だとも言える60年代に活躍したバンドWatersonsのメンバーであったUKのフォーク・シンガーで、98年に死去したラル・ウォーターソンのトリビュートCDなどを聴いているのだろうか。それはボクの音楽人生がひとつのサイクルを描き、再び振り出しにもどった感が拭えない理由からだろう。全音楽史とでもいうデータベース構築、レコード・アーカイヴに早く着手しなきゃね。でも、もっと無理してこじつければ神戸の海岸通りにある「アンセム」のような都会のなかのオシャレなカフェにこそこうした音楽がBGMに最適だと思い続けているからか、倉庫で古い新聞紙に包まれたままになっているボクの蒐集したブリキの玩具たちが深夜になって我々が寝静まると暴れだすからか、都会に生まれ育ったボクの身体が植物の声を聴き取りたいと希求しているからか、このアルバムタイトル「Migrating Bird」のごとく季節が巡り渡り鳥が古巣に帰る帰巣本能からか、それともやっぱり終わりからの始まりか。

華やかだった60-80年代のブリティッシュ・ロックの最盛期を支えていた音楽関係者、ジャーナリスト、評論家たち残党の多くは現在、雑誌Adventures in Modern Music「WIRE」や、この2枚のレコードをリリースしているロンドンのHONEST JONSなどに見られるように、彼らイギリス人の原点に戻り、伝統音楽からアーカイヴ的にモダンミュージックを俯瞰し最考察する動きをとっている。ひとつ、残念に思うのは、というより、それが英国人の世界観なのだが、彼らのモダンミュージックの概念は未だロックの呪縛(バロック、ゴチックロマンス)からやはり解き放たれていないことか・・。
http://www.thewire.co.uk/
http://new.honestjons.com/shop.php

Main | 2008年02月 »

About 2008年01月

2008年01月 に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

Next→ 2008年02月

→Main Page
→Archive Page

Powered by
Movable Type 3.35