SOFT MACHINE - 1
ソフト・マシーンの1st-2ndでみられるのは
ビートジェネレーションの"Upbeat!" "On The Road"の
存在論とそのリアリズムに影響を受けたヒッピーのドラッグ世界
SOFT MACHINE-1
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 27
'90年代クラブミュージック以後ドラッグ・カルチャーといえば、いまや地中海スペイン領イビサ島がその本拠地だが、ブライアン・ジョーンズが死の直前に発表したアルバム「ジュ ジューカ(Ju jouka )」('71年)での伝統的な儀式音楽は、'68年にジョーンズがモロッコのタンジールで録音したテープを加工/編集したもので、"地の果て"アルジェリアから西に、目と鼻の先にある中世イスラム都市の要塞や迷路のような街路が残された街、そのタンジールのカフェで、'60年代にジェイン・ボウルズ、ウィリアム・バロウズ、ポール・ボウルズらタンジェリノたちが談笑している「エスクワイア」誌に掲載された古い1枚の写真をみたとき、当時のビート・ジェネレーションたちのスノッブで自由なボヘミアンとしての生き方にただただ嫉妬するばかりだった。'40年後半から'50年代に、ニューヨークのアンダーグラウンド社会で生きる若者のなかのひとり、'52年にニューヨーク・タイムズ誌に掲載されていた小説家ジョン・クレロン・ホルムズのエッセイ「これがビート・ジェネレーションだ(This is the Beat Generation)」が、この言葉の発祥源だが、特にビートニクスのウィリアム・バロウズとロック・ミュージシャンの関係は、カウンターカルチャーから新しい音楽が発生するとき、必ずといっていいほど取り沙汰される。新しいところでは、クラブミュージックが表出した'90年代初期のサンプリングやリミックス(いまでこそ音楽創造の常套手段だが)の時代に。バロウズの「裸のランチ」や「ソフトマシーン」での麻薬常習者、ホモなどが織りなす支離滅裂な物語り(?)、小説そのものにそれほど興味はないが、カットアップやフォールドインの手法が、ミュージシャンが音楽を創造するときの手法に、またバロウズの小説を読んでいるうちに、無意識やサブリミナルなメッセージが顕現してくるが、ロック・ミュージックやノイズ、音響系、クラブミュージックなどの音楽を聴くときに生まれる抽象的イメージと似ているところが多く、それが最も彼の文学に惹かれた理由だ。言ってみればバロウズの小説は文学ではなく音楽なのだ。ところでソフトマシーンという本来の言葉は精神病者の肉体、あるいは器官が未発達な生まれたばかりの赤ん坊にとっての世界を意味するのだが、オーストラリア生まれの世界を放浪するヒッピー、デイヴィッド・アレンが、パリに渡った際にビート文学の巨匠、ウィリアム・バロウズと出会うことによって名付けられた。ソフト・マシーンの1st、2ndで聴かれる音楽は、バロウズというよりもビートニクスの著作にもある"Upbeat!"、"On The Road"の思想に影響を受けたヒッピー、ドラッグ・カルチャーがダイレクトに反映されたものだ。
THE SOFT MACHINE/THE SOFT MACHINE
(GTT 2041)
'68年に発表された1st.。レコーディング・メンバーはケヴィン・エアーズ(b)、ロバート・ワイアット(Dr、vo)、マイク・ラトリッジ(k)の3人。デイヴィド・アレンも結成メンバーのひとりだったが、ライヴ活動中にドラッグによる入国問題が起きてフランスから出国することができなかった。音楽的にはベートーヴェンの第九、クラシック音楽とサイケデリック・ミュージックではまるで合致しないが、当時のドラッギーな時代を支配していた空気感からか、このジャケット・デザインをみるといつもボクは、後にスタンリー・キューブリックにより映画化されたイギリスの小説家アンソニー・バージェスの「時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)」をなぜかイメージしてしまう。いま再び聴くとポップな サイケデリック・ミュージックだ。
side one:1. Hope for Happiness 2. Joy of a Toy 3. Hope for Happiness (Reprise) 4. Why Am I So Short? 5. So Boot If at All 6. A Certain Kind
side two:1. Save Yourself 2. Priscilla 3. Lullaby Letter 4. We Did It Again
5. Plus Belle Qu'une Poubelle 6. Why Are We Sleeping? 7. Box 25/4 Lid
GOLDIES 33/PROBE 1968
http://www.youtube.com/watch?v=gETYS-sNI9E&NR=1
http://www.youtube.com/watch?v=xZ8vEKKQbQ8&feature=related
THE SOFT MACHINE/VOLUME TWO
(SPB 1002)
ケヴィン・エアーズの跡をヒュー・ホッパーが埋め、新たにソプラノ/テナーサックスのブライアン・ホッパーをフィーチャーして制作した2nd。英国での事実上のデビュー作になるこのアルバムは、サイケデリック・ミュージックからフリーフォームのジャズロックに向かう過程でマイク・ラトリッジのイニシアティブが強くなりジャズ的なグルーヴが全面に聴こえ始める。ワイアットの歌からも、ジャズのコード進行をきっちり押さえたメロディーも聴こえてくる。全体が短かい17の組曲によって構成され、「Dedicated to You but You Weren't Listening」のようなクラシック・テイストの曲もあるが、フリージャズを意識した当時としては実験的な試行が感じられる作品だったのだが・・・。しかしラストの曲「10.30 Returns to The bedroom」は現在の"ジャズ的なる"耳でも充分耐えうるだけの曲が収録されている。
side one:1. Pataphysical Introduction, Pt. 1 2. Concise British Alphabet, Pt. 1 3. Hibou, Anemone and Bear 4. Concise British Alphabet, Pt. 2 5. Hulloder 6. Dada Was Here 7. Thank You Pierrot Lunaire 8. Have You Ever Bean Green? 9. Pataphysical Introduction, Pt. 2 10. Out of Tunes
side two:11. As Long as He Lies Perfectly Still 12. Dedicated to You But You Weren't Listening 13. Fire Engine Passing with Bells Clanging 14. Pig
15. Orange Skin Food 16. Door Opens and Closes 17. 10: 30 Returns to the Bedroom
PROBE 1969
※ソフト・マシーンのバイオグラフィーはWikipediaを参照してください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ソフト・マシーン
※ビート・ジェネレーション
http://ja.wikipedia.org/wiki/ビート・ジェネレーション