VASHTI BUNYAN / NICK DRAKE

ブリティッシュ・ビートのルーツとはイギリス北部ノーザンソウルのリリシズムとクールで都会的なモッズスタイル
VASHTI BUNYAN / NICK DRAKE
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 2

VASHTI BUNYAN/SOME THINGS Just Stick In Your Mind SINGLES and DEMOS 1964 to 1967
(DICRISTINA/SPINNEY STEP11)
37年前に1枚だけアルバムを残し消息不明になった謎に包まれたフォークシンガー、ヴァシュティ・バニアンが1964年から1967年までに録音した「VASHTI BUNYAN/SOME THINGS Just Stick In Your Mind SINGLES and DEMOS 1964 to 1967」が'07年にリリースされていた。この2枚組アルバムには64-67年頃の未発表音源や最近発見されたばかりのデモ、初期の作品、アルバムタイトルにもなっている Rolling Stones のミック・ジャガー、キース・リチャーズによって作曲された 「Some Things Just Stick In Your Mind」などが収録されている。('65年 英DECCAからリリースされた同名の7インチシングルも「I Want To Be Alone」のカップリングでリイシューされている)。アコースティックというスタイルをとってはいるがヴァシュティ・バニヤンの音楽にもブルースロックの影があり、これこそがブリティッシュ・ロック=ブリティッシュ・ビートのルーツであり原点なのだ。(余談だが、下記のYoutubeの映像を見ていてフランスかぶれのモッズガールのようなヴァシュティによく似た若い頃の立花マリというモデルさんのことを思い出した)。なお'04年「Just Another Diamond Day」、'05年に「LOOKAFTERRING」というアルバムをリリースしているが、個人的には新しい彼女の作品には興味はない。ブリティシュ・ロックとはイギリス北部のノーザンソウルのリリシズムとクールで都会的なモッズスタイルを引き継ぐもの。
http://www.youtube.com/watch?v=a0e7nQrmf40&feature=related
http://www.youtube.com/user/visionacida

NICK DRAKE/FAMILY TREE
(sunbeam records SBR2LP5041)
ニック・ドレイク(Nick Drake, 1948-74)は不眠症のために眠り薬の代わりにしていた抗鬱剤の過剰摂取によりこの世を去った悲劇的な生涯を終えたイギリスのシンガー・ソングライターで、当時彼のすべての音楽を聴いていたわけではないが、ボクには72年に発表された3枚目のアルバム「Pink Moon」と「River Man」のメロディだけがなぜかいまも強く印象に残っている。資料によると74年にこの世を去った後も86年に「Time Of No Reply」、2004年に「Made To Love Magic」、生前には69年に「Five Leaves Left」、ノーザンソウルの風のようなサウンドが聴かれる70年リリースのアイランドからのアルバム「Bryter Layter」の制作時、ジョー・ボイドとレコーディングだったヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがニックの作品を偶然耳にし彼との交流が始まったという逸話もある。ポール・ウィーラーも「Bryter Layter」というアルバムを"シティーLP"と呼ぶほど高く評価していたという。ジョン・ケイルやヴェルヴェット・アンダーグラウンドを死ぬほど聴き狂っていたボクでさえ、この逸話を知ったのはつい最近のことである。この2枚組アルバム「Family Tree」は2007年7月に発表されたもので、ホーム・レコーディング未発表29曲収録されている。アコースティック・ギターとヴォーカルだけのシティーブルースからはすべてのブリティッシュ・ロックの原型が聴こえてくる。このアルバムにはニックのソロだけではなく姉のガブリエル・ドレイクとのデュエット「All My Trials」や母親のモリー・ドレイクが唄う「Poor Mum」と「Do You Ever Remember」も収録されていてフィナーレを飾る「Do You Ever Remember」は圧巻だ。オリジナルの他にバート・ヤンシュの「Strolling Down The Highway」、ボブ・ディランの「Tomorrow Is A Long Time」、デイヴ・ヴァン・ロンクの「If You Leave Me」、ジャクソンCフランクの「Here Come The Blues」等のカバー曲もコンパイルされている。
●●このドキュメンタリーNick Drake Documentary - A Skin Too Few - はPart5まであるので参考に。
http://www.youtube.com/user/sunshineonsnow

Comment ( 2 )

東山 聡 :

Ricky-Tickのアンチ エーリカイネンもかなりのノーザンソウル好きだったと(このブログで読んだのかな?)聞いた事があり、彼もモッズカルチャーに影響されたひとりなのですね。ブリティッシュロックもnu jazzも出所は一緒とまでは言いませんが、元をたどっていくと以外な共通点があるような気がして。

今回のブリティッシュロック回顧、とても興味深く読ませていただきました。

阿木 譲 :

「Cascades」での回顧は、決して懐古しているのではなくジャズをイニシエーションした耳で最考察することが目的です。情報過多の時代に迷い子になった若い音楽ファンにひとつの指針になればと。

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