SOFT MACHINE - 2

ジャズの文脈で語られるべきソフト・マシーンのアルバム「THIRD」「FORTH」
SOFT MACHINE-2
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 28

SOFT MACHINE/THIRD(CBS 66246)
ソフト・マシーンの音楽が初めて確立されたのは、'70年から'73年にかけてだ。それはエルトン・ディーンの存在がそうさせたのだが、「Third」「Forth」はもはやジャズの文脈で語られるもので、フュージョンの始祖の一人とも言えるウェザーリポートのジョー・ザヴィヌルが、レコーディング・セッションで参加したマイルス・デイビスの「In A Silent Way」がフュージョンの基礎となったと言われている歴史的セッションにも匹敵するものかも知れない。それはリード楽器として当時キース・ティペット・グループに在籍していたエルトン・ディーン(Alto Sax, Saxello)を起用したこと、キース・ティペット・グループのメンバー5人(ジミー・ヘイスティングズ、ラブ・スポール、ニック・エヴァンズ、リン・ドブソン)が参加していることなどが挙げられる。本来このアルバムはロックではなくジャズの地平に並べられるものだ。
8人編成になったソフト・マシーンは'70年に3枚目のアルバム『Third』を制作、このアルバムは2枚組で全4曲収録された大作。当時、イギリスよりもフランスのジャズ界で最も支持されていたソフト・マシーンだが、後にフランスで「Third」はポストモダンとしての現代的解釈を取り入れて録り直し再構築されている。ソフト・マシーンの代表的作品と言われている「Third」には、ジャズ、現代音楽、ロック、ポップスなど複数のジャンルをクロス・オーヴァーしているエクスペリメンタル精神が色濃くみられる。全体的にはスピリチュアル・ジャズとも言えるし、このアルバムに特徴的なテーマの反復、断片的フレーズのミニマル・テクニックによる催眠性は現代音楽としても解釈可能だ。初期ソフト・マシーンの顔だったロバート・ワイアットのヴォーカルは「Moon in June」1曲だけで、完璧にインストゥルメンタル・グループ化してしまった新たなソフト・マシーンの始まりを意味する作品。

side one:1.Facelift side two:2.Slightly All The Time side three:3.Moon In June side four:4.Out-Bloody-Rageous
Mike Ratledge (organ and piano) Hugh Hopper(Bass guitar) Robert Wyatt (Drums and vocal) Elton Dean(Sax and saxello) Rab Spall(Violin) Lyn Dobson(Flute ans soprano sax) Nick Evans(Trombone) Jimmy Hastings(Flute and bass clarinet)
* Facelift was recorded live at Fairfield Hall Croydon January 4th 1970 and at Mothers Club Birmingham, January 11th 1970
Engineering : Andy Knight I.B.C recording studio , Bob Woolford : concert recordings
CBS 1970

http://www.youtube.com/watch?v=51LYKbXV9SE&eurl=http://209.85.175.104/search?q=cache:knTEk67Vga4J:musictv.jp/artist/show/%2525E3%252582%2525BD%2525E3%252583
http://www.youtube.com/watch?v=ahBzZ55De8k

SOFT MACHINE/FOURTH(CBS 64280)
ネットでソフト・マシーンのことを調べていると、"歴史を紐解くと、このバンド、なかなか日本国内ではリアルタイムでは認知されていなかったらしい。ネームバリューは日本ではイマイチ、多分当時の日本のプレスが彼等の先進的な音楽性についていけなかったのだろう”と書いていたひとがいたが、それはいまだから言えることで、当時のスピードをともない目まぐるしく常に動いている情報は、静止したものはよく見えるが、運動しているものの正体までは誰も明確に看破できないのは当然だ。それに加え、当時の時代風潮そのものが、'60年代のマッシュルームカットにモッズ、フラワームーブメント、サイケデリック、'70年代のグラム、パンクなどの華やかなブリティッシュ・インヴェイジョンでの情報に偏っていて、ボクも含めてソフト・マシーンの音楽を正当に評価していたかというと、それはおおいに疑わしい。
一方、60年代のジャズシーンは次第に活気を失っていく状況にあって、新たなる活動の場所を求めてヨーロッパに移住してしまうミュージシャンも増えていた時期だった。それはビートルズやローリング・ストーンズなど白人中心のロック・ミュージック、ブリティッシュ・インヴェイジョンの波をジャズシーンももろに受けて黒人ミュージシャンさえもブルースやソウルへの傾向を強め、アート・ブレイキーやホレス・シルヴァーたちはハード・バップを、オーネット・コールマンやドン・チェリーたちはフリージャズを、コルトレーンはスピリチュアル・ジャズを、マイルス・デイヴィスは'75年以降の長いスランプ前の、8ビートのリズムとエレクトリック楽器をジャズに導入したり、ファンク色の強い、よりリズムを強調したスタイルへと進展し、フュージョンとは一線を画するハードな音楽を展開するというように、ジャズミュージシャンたちは衰退していくジャズを独自に、なんとか発展/深化させるための様々な試行錯誤を繰り返していた時代でもあった。60-70年代のジャズもまさに激動、混沌の時代だったのである。'70年に入るとソフト・マシーンはそうした時代風潮とはまるで逆を行くように、ロックから逸脱して、ますますジャズへ接近しその道を深めていった。アルバム「Fourth」は、'60年代後半のマイルス・デイビスのアルバム「Sorcerer」や「Kilimanjaro」などにみられる若干19歳の天才ドラマー、トニー・ウィリアムスと展開していた異常なまでのテンションとスリリング、暴力性。それでいてクールなインテリジェンスある実験的な試みに似て、ボクは「Fourth」を60年代のハイテンションでバリバリ吹きまくるインプロバイザー、フリーブローイング・ジャズと相関関係にあると思っている。マイク・ラトリッジ(kb)、ヒュー・ホッパー(b)、ロバート・ワイアット(ds、vo)、エルトン・ディーン(sax)によるソフト・マシーンは「THIRD」と「FOURTH」によって終焉を迎え、本格的なジャズへの道を選択する。

side one:1. Teeth 2. Kings and Queens 3. Fletcher's Blemish
side two:1. Virtually, Pt. 1 2. Virtually, Pt. 2 3. Virtually, Pt. 3 4. Virtually, Pt. 4
Hugh Hopper(bass) Mike Ratledge(organ & piano) Robert Wyatt(drums)Elton Dean(alto saxophone, saxello) Roy Babington(double bass) Mark Charig(cornet) Nick Evans(trombone) Jimmy Hastings(alto flute & bass clarinet) Alan Skidmore(tenor sax)
Recorded Autumn 1970 at Olympic Studios, London
CBS 1971

Comment ( 2 )

東山 聡 :

ThirdとFourthの間にもかなりの音楽的変化を感じました。Fourthは完全にジャズですね。レコードジャケットの雰囲気もロックじゃなくジャズだと思いました。

70年代80年代、グラム、パンク、全盛の頃にあっても当時、雑誌のレコード評でソフトマシーンを取り上げていたのは、多分阿木さんくらいだったのではないでしょうか。

この辺りの音は全く知りません。ちょっとチェックしてみたいと思います。

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