SOFT MACHINE - 3

ジャズ・フュージョンはダサい 
あの上っすべりのグルーヴにはジャズ・インプロヴァイズの高揚するテンションもスリリングも感じないし黒人ジャズの分厚いグルーヴも欠損している
SOFT MACHINE-3
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 29

SOFT MACHINE/FIFTH(CBS 64806)
アラベスク・テイストのジャズ・フュージョン"All White"から始まる'72年のアルバム「FIFTH」を再び聴き直すと、この作品はECM系のユーロジャズに通じるオブスキュアで繊細なグルーヴだけが全面に出ていて、ジャズという観点からみると前作のような緊張感ある太いグルーヴは影を潜め、ジャズでも人によっては色んな解釈の仕方があることを改めて思う。
ワイアット脱退後、ドラマーにはディーンの友人、フィル・ハワードが参加するのだが、この頃から今度は先鋭的なフリー・ジャズを志向するエルトン・ディーン、フィル・ハワードと、初期ソフト・マシーンのジャズ・ロックを発展させようとするヒュー・ホッパー、マイク・ラトリッジの間に亀裂が生じ始める。その結果、ハワードはアルバム制作期間中にバンドを脱退し、フィルの穴を埋めるドラマーとしてイアン・カー率いるニュークリアスからジョン・マーシャルが加入して、なんとかアルバムは完成する。「Fourth」を紹介したラストに"ソフト・マシーンが本格的なジャズへの道を選択する"と書いたが当時ボクはほんとにそう信じていたんだ。だけど、その期待は見事に裏切られたことを思い出す。誤解をおそれず断言してしまうが、"ジャズ"というならマイク・ラトリッジのオルガン、エレクトリック・ピアノが常にメイン楽器として全面に出てくることが間違っているのだ。"ジャズ"のピアノやエレピはあくまでもコード進行を支えるためのコード楽器であり、ときには打楽器のようなリズム楽器としての役割を果たすためのものなんだ。その言葉を証明するかのように、アルバム完成時にもうひとつのメロディー楽器であるアルト・サックスのエルトン・ディーンが脱退している。上品に作られてはいるが当時ボクはこのアルバムでソフト・マシーンの音楽を見限ってしまった。

SOFT MACHINE/'SIX'ALBUM(CBS 68214)
当時、ただ惰性で買った'73年のアルバム「SIX」だが、脱退したディーンに代わってニュークリアスから加入したのがカール・ジェンキンス(Oboe, Sax, Kb)だ。彼が新しく加入したからといって、前作でのボクが抱いた悪いイメージはなにひとつ覆ることはなかった。ジェンキンスがイニシアティヴを持つようになったこのアルバムでは、前作にも増してジャズ・フュージョンのダサさが際立って、相変わらずマイク・ラトリッジのオルガン・プレイと、それに加えてジェンキンスのオーボエの音色が鼻につくようになった。このボクの思いはきっとアヴァンギャルド志向のヒュー・ホッパーも同じだったろう。やはり彼も'73年「SIX」を最後に脱退している。このアルバムではラストの「1983」の、オブスキュアでクラシカルなアイリッシュやカンタベリー独特のサウンドスケープから現代音楽的なアンビエント・ミュージックが聴けることが、唯一の救いかな。
ロックの時代もそうだったが、ジャズを聴いているいまでもジャズ・フュージョンはダサい。あの上っすべりのグルーヴには、ジャズ・インプロヴァイズの高揚するテンションもスリリングも感じないし、黒人ジャズの分厚いグルーヴも欠損しているからだ。このアルバムを最後にボクはソフト・マシーンの音楽を一切聴かなくなった。その後も、オリジナルメンバーのラトリッジだけを残し、ベーシストにダブルベースに元ニュークリアスのロイ・バビングトンと、全員元ニュークリアスのメンバーがソフト・マシーンを受け継ぎ、'73年「SEVEN」を発表するが、後で知ることになったシンセサイザー導入には絶句した。その後の彼らの動向は一切知らないが、ソフト・マシーンの頂点はアルバム「FORTH」で完全に燃焼してしまったのだ。コレクションの1枚としてこうしたアルバムもあってもいいけれど、現在、新たにカンタベリーやソフト・マシーンの音楽に関しての多くの雑誌や情報が溢れているけれど、どうか惑わされないように。ソフト・マシーンなら「FOURTH」さえあればいい。

Comment ( 1 )

東山 聡 :

たしかにFIFTHはFOURTHに比べて、例えば仕事中に流してる分には耳障りはいいですが、FOURTHのようなガッーンと胸に訴えるものはなかったです。
SIXはジャケットを見て聴くの止めました(笑)

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