PIGBAG
Y RECORDS
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 62
黒人解放運動家でアフロビートの創始者、数々の神話を生んだナイジェリア出身のミュージシャン、フェラ・クティ。ファンクの帝王ジェイムス・ブラウン。モダンジャズの旗手といわれ、クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、エレクトリック・ジャズ、フュージョンなど時代に対応して様々に変容していった音楽性でジャズ界を牽引してきたマイルス・デイビス。西ドイツのクラウトロックのカンなどの音楽に影響されたというピッグバッグの音楽は、そのことからもパーカッシヴなポリリズム・グルーヴをなによりも優先させたジャズやファンク・テイストを持つ20数年の時を隔てることなくいつまでも色褪せないダンスミュージックだと言っていいだろう。彼らが残した作品の端々にピッグバッグが影響されたというミュージシャンたちのサウンドとリズムが散りばめられている。これもまた"ジャズ的なるもの"のひとつの鋳型となる不滅のサンプルだ。
PIGBAG/PAPA'S GOT A BRAND NEW PIGBAG(Y 10)
'80年後半にチェルトナムでクリス・ハムリンがメンバー募集して巡り会ったマルチ・インストゥルメンタリスト(多楽器奏者)のロジャー・フリーマン、バーミンガムでの旧友クリス・リー(トランペット)とジェームス・ジョンストン(ギター/アルトサックス)と、それにジェームスの学生時代にジャズ・セッショナリーなユニットHardwareからの友人、ドリー・チップ・カーペンター(ドラムス)、マーク・スミス(ベース)によって最初はジャムセッションのような形式で始められ、そうした非公式のミュージシャン間のセッションの場に誘われたサイモン・アンダーウッド(ベース)とオリー・ムーア(テナーサックス)が接合され自然発生的にピッグバッグは出来上がった。そうした動きのなかでピッグバッグはディック・オディールと知り合い本格的にプロ・デヴューすることになる。サイモン・アンダーウッドにとってはポップ・グループというバンドへの関わりは、当初から、一時的なセッション・バンドとしての思いしかなかったのだろう。'81年の最初のマキシシングルで「Papa's Got a Brand New Pigbag」は、ジェイムス・ブラウンの"Papa's Got A Brand New Bag"からインスピレーションされたもので、発売と同時にインディペンデント・チャートでダンスヒットした(今でもCMやテレビ番組でよく使われている)。自分の思い描いていたピッグバッグの音楽的落差を感じたクリス・ハムリンは早々と彼らから身を引くことになる。'82年4月にファーストアルバム「Dr Heckel And Mr Jive」をYレーベルからリリース。'82年の春にロジャー・フリーマンを前面に押し出し、ツアー・サポート・ミュージシャンとしてブライアン・ネヴィルを加えた主要なカレッジから始まるヨーロッパ、ニューヨーク、イギリス、ジャパンへ続くツアーはどれもが大成功を収めている。
PIGBAG/DR HECKLE AND MR JIVE(Y 17)
新たにヴォーカルにアンジェラ・イェーガーを加え'82年の夏にセカンド・アルバム「Lend An Ear」をレコーディングし、'83年にシングル「Hit The 'O' Deck」と前年に録音済みの「Land An Ear」をリリース。'83年の2月から4月までイギリスを皮切りにヨーロッパ、ポーツマスでのツアーに出るが、それを最後に'83年6月にバンドは解散し、その後ジェイムス、サイモン、アンジェラはInstinctを結成するというのがピッグバッグの大まかな経歴だ。当時ダンスミュージックが大嫌いだったロックファンからは総スカンを喰らった彼らが残した10枚にも満たない作品は、皮肉にも現在ではクラブシーンでDJたちによってターンテーブルに乗っかるレコードとして貴重がられている(Derrick MayやJeff Millsも来日時に中古レコードショップを血眼で探しまわっていたそうである。結局こうしたダンスミュージックを否定していたロックファンは、80年代の終わりに表出したDJ=クラブカルチャーの意味も解らぬまま、やがて時代から取り残されていくことになるのだ)。例えば誤解を恐れず言ってしまえば、いまやJポップでのメジャー路線を走るソイル・アンド・ピンプ・セッションや東京スカパラダイス・オーケストラなどのコンセプトは、ピッグバッグの音楽の二番煎じでモノマネである。彼らの手を借りてアフロからジャズファンク、スカなどのグルーヴが渦巻くダンスミュージックとしてのピッグバッグの音楽がこのニッポンでは25年の時を経てようやく大衆に下りて行ったというべきだろう。二匹目の泥鰌(にひきめのどじょう)という諺は、"柳の木の下で一度泥鰌を捕らえたことがあったからといって、いつもそこに泥鰌がいるとは限らない。一度まぐれ当たりの幸運を得たからといって、再度同じ方法で幸運が得られると思うのは間違いである"というのが真の意味だが、このニッポンでは芸能だけではなく利益を追従することが目的のすべての世界では"二匹目の泥鰌は商売になる"のだ。否定しているのではないが、日本の芸能=産業音楽から輩出されるJazzや現代音楽、クラシック、またクラブミュージック、Funk、J-Popであっても、すべてはこうした海外での音楽をそのまま偽造、模造したフェイクリーなものと断言しても誰も反論できないだろう。ならば話は早い、ミュージシャンで日本の音楽業界で成功したいと思っているなら二匹目の泥鰌、二番煎じを狙った方が得策だね!?
Papa's Got A Brand New Pigbag
http://www.youtube.com/watch?v=gNDccgakPvo
http://www.youtube.com/watch?v=wsmNB0L7of0
PIGBAG/PAPA'S GOT A BRAND NEW PIGBAG(Y 10)
A:Papa's Got A Brand New Pigbag
B:The Backside
produced by Dick O'dell,Dave Hunt+Pigbag
recorded at Berry St March 81
Y RECORDS 1981
PIGBAG/DR HECKLE AND MR JIVE(Y 17)
A:1.Getting Up 2.Big Bag 3.Dozo Don 4.Brian The Snail
B:1.Wiggling 2.Brazil Nuts 3.Orangutango 4.As It Will Be
Chip Carpenter(Drums, Percussion) Simon Underwood(Bass, Cello, Violin) James Johnstone(Guitar, Alto Saxophone, Percussion) Ollie Moore(tenor sax,sanza,alto clarinet) Chris Lee(trumpet,perc,) Rodger Freeman(Percussion, Trombone, Keyboards, Piano)
Produced by Disc O'Dell , Pigbag
engineered by Dave Hant
recorded at Berry Street 1981
cover painting by Ralph Petty
Y RECORDS 1982
PIGBAG/SUNNY DAY(Y 12)
side A:Sunny Day(long version)
side B:1.Whoops Goes My Body 2.Elephants Wish To Become Nimble
produced by Dick O7Dell,Dave Hunt,Pigbag
recorded at Berry St.July 1981
PIGBAG/GETTING UP(Y 16)
side A;Getting Up(long version)
side B:1.Cocat 2.Gigging Mud
recorded at Barry St Studio Nov 1981
produced by Dick O'Dell,Dave Hunt,Pigbag
Y RECORDS 1982
PIGBAG/The Big Bean(12 Y 24)
side A:The Big Bean
side B:Scumda
recorded at Abbey Road June '82
produced by Simon
engineered by Pet Stapley
Y RECORDS 1982
PIGBAG/Hit The 'O' Deck(Y YT101)
side 1:Hit The 'O' Deck
side 2:1.Six Of One 2.Hit The 'O' Deck 8instrumental mix)
produced by Simon Underwood
Y RECORDS/EMI 1983
PIGBAG/LEND AN EAR(YLP 501)
side 1:1.Weak At The Knees 2.Hit The 'O' Deck 3.Ubud 4.One Way Ticket To Cubesville
side 2:1.Jump The Line 2.Can't See For Looking 3.No Such Thing As 4.Listen Listen(Little Man)
Chris Lee(trumpet,percussion,steeldrum) Ollie Moore(tenor and baritone sax,alto and bass clarinet) Simon Underwood(basses,strings,tuned percussion) James Johnston(guitar,bass,tuned percussion,keyboard) Chip Carpenter(rum kit,percussion,vibraphone) Brian Nevill(drum kit,percussion,soprano sax) Oscar Verden(keyboads,piano,trombone) Angela Jeager(voice) Kofi(drum kit"on 'o' deck")
produced by Simon Underwood and mixed by Pigbag at Blackwing with engineer John Fryer and Jacobs Studio with Terry Barham.
engineer Brad
Y RECORDS 1983