LOL COXHILL AND STEPHEN MILLER

ロル・コックスヒルのスピリチュアル・ジャズと
スティーヴ・ミラーのオブスキュア・ジャズ
LOL COXHILL AND STEPHEN MILLER
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 12

STEPHEN MILLER/THE STORY SO FAR.....+LOL COXHILL/.....OH REALLY?
(CAROLINE C1507)
ロル・コックスヒルといえばハットフィールド・アンド・ノースの前身である'68年にスティーヴ・ミラー、フィル・ミラー、ピップ・パイル、ジャック・モンクと結成したデリヴァリーというイギリスのプログレッシヴ・バンドのメンバーの1人だったソプラノ・サックス奏者だが、ボクが彼の音楽を聴いていたのは、せいぜい'77年に発表されたOGUNからの「DIVERSE」までで、ジャズにルーツを持ち、フリーミュージック、シャンソン、エセ・フォーク、パンク/ニューウェイヴなど多岐にわたり様々な音楽ジャンルを横断するソプラノ・サックス奏者としてのイメージが強く、それ以後の活動にはまったく興味がなかった。今回最考察するためにググったらその後も結構の枚数の作品を発表しているのに驚いた。スコットランドのコンテンポラリージャズ・シーンをリードするThe George Burt & Raymond Macdonald Quintetとのコラボレーション「Hotel Dilettante Textile 」や、イギリスのフリー・ジャズ・レーベルLEO RECORDSでリリースされている”CONSPIRACY OF EQUALS"に参加しているギターリストでもありアルトサックス奏者のAARON STANDON(DEREK BAILEYとの共演歴もある)と、ベースのPETER BRANDT、ドラムのSTEVE HARRISと共に制作したAARON STANDON/PETE BRANDT/STEVE HARRISの「RED DISPERSION」などでもサックスを吹いているし、ソロ活動として最近ではEMEMENから「Freedom Of The City 2001(small groups)」「Freedom Of The City 2001(large groups)」、「Alone and Together」、「Worms Organising Archdukes」、FMPから「Three Blokes」などの作品を発表している。ボクが彼の音楽に縁遠くなってからも、この周辺は知らないうちにずいぶん奥深いシーンが形成されていたのかな。
このアルバムは74年にキャロラインから発表されたもので、Bサイドがロル・コックスヒル、Aサイドがスティーヴ・ミラー(Stephen Miller)のカプリングでコンパイルされたもの。このアルバムも、デリヴァリーの'72年未発表ライヴ音源3曲他ボーナス・トラック8曲が追加され、日本で去年の6月にCDでリイシューされている。しかしニッポンの音楽業界の商魂の逞しさと、レコードマニアの強い物欲は恐るべしだな(でも、だからこそ若い世代がこうした良質の音楽に触れることも出来るのだから良しとするか)。セールス・コピーの"カンタベリーサウンドをベースにさらにJazz/Avantgarde色を加えた個性的な内容"とあるけれど、アヴァンギャルドという言葉が、近代化の中で過去の伝統を否定し芸術の革命を目指し未来派、構成主義、ダダイズム、シュルレアリスム等、20世紀のはじめに急速に広がったもので、「自分を取り巻く社会の先を行き、先取りする事。未知を目指して進み、新しい認識、すなわち新しい現実を手に入れ築き上げる事」であるという定義に添って考えるなら、もはやこのアルバムの音楽のどこがアヴァンギャルドなのだろう。それならnu jazzやFinn Jazzのほうがよほどアヴァンギャルドだよ。それに個性的ってなんだ? このアルバムでロル・コックスヒルは「Reprise For Those Who Prefer It Slower」から「Soprano Derivativo」や「In Memoriam...」では、Archie Leggett(bass)、Laurie Allan(drums)、Steve Miller(piano)、Robert Wyatt(perc,vocals)、Kevin Ayers(guitar)などのプレイヤーとスピリチュアル・ジャズを、「Oh, Do I Like...」ではインプロヴィゼーション・ジャズを、スティーヴ・ミラーは全編クラシカル・テイストを持つオブスキュア・ジャズを展開している。アヴァンギャルドや個性的という言葉は、何につけ曲者だから決して惑わされないように。このアルバムでのジャズはFinn Jazz好きなひとには、充分楽しめるもの。

side one:STEPHEN MILLER/"THE STORY SO FAR..."
1.G Song 2.F Bit 3.Songs Of March 4.More G Song 6.Does This 6.Or This 7.The Greates Off-Shore Race In The World
written by Stephen Miller
side two:LOL COXHILL/"OH REALLY?"
1.Reprise For Those Who Prefer It Slower 2.Tubercular Balls 3.Soprano Derivativo/Apricot Jam 4.Oh Do I Like To Be Beside The Seaside? 5.In Memoriam,Meister Eckhart 6.A Fabulous Comedian
written by Lol Coxhill
1974 VIRGIN /CAROLINE RECORDS

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