JOHN GREAVES / PETER BLEGVAD /LISA HERMAN

ヘンリーカウの新しい顔「KEW.RHONE.」は、カンタベリージャズとハードバビッシュなジャズとの融合
JOHN GREAVES/PETER BLEGVAD/LISA HERMAN
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 14

ジャズの持つ自由な表現形式、文脈のなかに、カンタベリー系のアーティストたちは当時のプログレッシヴ・ロックや現代音楽、伝統的なクラシックを統合させてひとつのカンタベリーと形容される新しいジャンルを確立させたと言っていいだろう。このアルバム「KEW.RHONE.」のジャケットに1800年代後半に発行された古書C.W.pealeの「Exhuming the First American Mastodon」の挿絵が引用されピーター・ブレグヴァドによってコラージュされているが、当時このカビ臭い暗いイメージに惑わされて彼らの音楽を聴き感情移入していた自分を笑ってしまうよね。英語に堪能ではない我々は、いい意味で直感的/感覚的にその音楽をとらえることもあるのだが、時にはジャケットのデザインに支配されて、そこに収められたレコードでの音楽のイメージをも決定づけてしまう危険性もはらんでいる。それにミスティな歌詞とジャケット裏の魔法のような謎解きのイラストだからね。音楽に文学的コンセプトを持ってくるとその本質を見誤ってしまう(否定はしないが、このことが音楽にとって最も大きな難題だ。音楽を文学的に聴くのか否か!、ボクはごめんだけどね)。いまならボクはこのアルバムに、ヘンリーカウの新しい顔「KEW.RHONE.」は、カンタベリージャズとハードバビッシュなジャズとの融合というコピーをつけるかも。

JOHN GREAVES,PETER BLEGVAD,LISA HERMAN/KEW.RHONE
(VIRGIN V2082)
'75年ヘンリー・カウを脱退したピーター・ブレグヴァドとジョン・グリーヴスが'76年にニューヨークで再会し、リサ・ハーマン(Vo)を加え、ニューヨークで活躍するカーラ・ブレイと夫マイケル・マントラーの協力のもとに制作され'77年にヴァージンから発表されたアルバム。CASCADES 7で紹介したWATTからの2枚とは違って、バップチューンの「Good Evening」から始まるこのアルバムは、Mike Mantkerのトランペット、Vito Rendaceのアルト、テナーサックスがここでの音楽を支配していて、まさにハードバビッシュなグルーヴのうえにリサ、ジョン、カーラ、ピーターのヴォーカルがサックスやトロンボーンのジャズ・フレーズの上を斉唱するかのようにドラマチックに歌われている。このアルバム発表後ジョン・グリーヴスはマイケル・マントラーのバンドやナショナル・ヘルスでベーシストとして活動拠点を移した後、'83年「Accident」、'84年「Parrot Fashions」をリリース、85年ゴールデン・パロミノス、88年ザ・ロッジなどとも関わり後、90年に3rd「Little Bottle of Laundry」を91年にはデヴィッド・カニンガムとのコラボレーション・アルバム「Greaves,Cunningham」、95年にピーターとのデュオ「Unearthed」、96年には過去の作品のカバー集「songs」を発表し、現在はフランスを拠点に活動を続けている。ヘンリーカウのメンバーだったフレッド・フリスやクリス・カトラーらがフリーインプロヴィゼイションの道を歩んだのに対し、ジョン・グリーヴスは対称的にあくまでアヴァンポップへの道を進んでいる。一方ピーター・ブレグヴァドは'83年にXTCのアンディ・パートリッジの協力のもと1stソロ・アルバム「The Naked Shake-speare」、'85年2nd「Knights Like This」89年に3rd「Downtime」を発表し、90年に4th「King Strut & Other Stories」、95年にはジョンそして同じくヘンリー・カウのクリス・カトラーと3人で5th「Just Woke Up」、98年には「HANGMAN'S HILL」などの作品を発表している。

side one:1.Good Evening 2.Twenty-Two Proverbs 3.Seven Scenes from the Painting "Exhuming the First American Mastodon" by C.W.Peale 4.Kew.Rhone. 5.Pipeline 6.Catalogue of Fiften Objects and Their Titles
side two:1.One Footnote(to Kew.Rhone.) 2.There Tenses Onanism 3.Nine Mineral Emblems 4.Apricot 5.genenstand
LISA HERMAN(vocals) JOHN GREAVES(piano,organ,bass,vocals,percussion) PETER BLEGVAD(vocals,guitars,tenor sax) ANDREW CYRILLE(drums,percussion) MIKE MANTLER(trumpet,trombone) CARLA BLEY(vocals,tenor sax) MICHAEL LEVINE(violin,viola,vocals) VITO RENDACE(alto & tenor saxes,flute) APRIL LANG(vocals) DANA JOHNSON(vocals) BORIS KINBERG(clave)
engineered by Mike Mantler at Grog Kill Studio,Woodstock,New York,Oct.'76
arranged bu John Greaves
music by John Greaves
lyricks by Petr Blegvad
1997 VIRGIN RECORDS

http://www.youtube.com/watch?v=pHhqiVEEXTo

※追伸 最近このブログは本題のクラブジャズの情報から遠くなっているけど、お許しを。一昨日チェコのビッグバンド・マイスター、Karael Krautgartner Orchestraのスプラフォンで発表されていた65年の2枚組アルバム「JAZZ KOLEM KARLA KRAUTGARTNERA」を買ったけれど、このハードバビッシュ・グルーヴは最高だね。MPSなどでの録音で有名なカレル・ヴェルブニーを含む11人編成のグループで、ケニー・クラーク=フランシー・ボランドも真っ青なハード・バップだ。それ以外にはスピリチュアル・ジャズのNIMBUSからのHORACE TAPSCOTTの「The Call」など、それと今夜のnu thingsのイヴェント「NOSTALGIA 77」の12インチ「QUIET DAWN」などがお薦めです。今夜のロンドンから招聘したノスタルジア77のイヴェントは今年初の力の入ったnu thingsのクラブイヴェントですので、是非顔をみせて楽しんで下さい。

« EGG | メイン | GILGAMESH »