GILGAMESH

ジャズが8ビートのロックに取り込まれた
ジャズ・フュージョンの結晶としての先駆けとなる重要な作品
GILGAMESH
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 15


当時はキャロラインやヴァージンから発表されていたデヴィッド・ベッドフォードの「The Odyssey」などのアルバムやユーロジャズなどに、ギリシアの叙事詩「オデュッセイア」や、古代メソポタミア、シュメール文明の古代都市ウルクの伝説的な英雄「ギルガメシュ」などの神話の英雄を題材にした作品が多くみられた。バンド名として使っているこのギルガメッシュは、聡明で美貌で戦いにも長けおよそ不得手とするモノがなかった若き王が、唯一死を恐れ不死の身を望み「不死の秘術」(薬草)を求める旅が描かれた叙事詩だが、人は人としての分をわきまえて与えられた人生を全うして死ぬ宿命なのだという教訓が諭されている。神話的起源や英雄叙事詩は、民族の発生の真実の歴史性を隠蔽し、それを偽りの永遠の相のもとに顕彰する目的で援用されている物語にすぎないとする説もあるが、いまでもイギリスやヨーロッパ、北欧などに伝承されている賢者の石、錬金術などの幻想世界、神話は、すべての道がローマに通じるヨーロッパならではの、その源のギリシャなくしては始まらないことの表れなのだろうか。

GILGAMESH/GILGAMESH
(CAROLINE/VIRGIN CA 2007)
アサガイ、サンシップ、ナショナル・ヘルス、ソフト・ヒープ、ソフト・ヘッド等々、数多くのバンドに参加していたジャズ畑のキーボード奏者アラン・ゴウエンを主軸としたギルガメッシュの'75年キャロライン/ヴァージンから発表された作品。当時ここでのクロスオーヴァー・ジャズ(フュージョン)は、ロックファンにはあまり評価のいいものではなかった。それはロックファンにはとても馴染みの薄い、ジャズとロックが融合した未知の音楽だったからだ。このアルバムではカンタベリーのサウンドスケープも聴けるのだが。しかし冷静に批評すれば、当時としては先駆的な、ジャズが8ビートのロックに取り込まれたジャズ・フュージョンの結晶としての重要な作品として再評価されるべきだろう。フュージョンと呼ばれる音楽は、1960年代後半に表出した新しい音楽スタイルで、電気楽器やロック風な奏法を取り入れたジャズ・ロックで、その後、クラシックや現代音楽の要素も取り入れられアメリカでは'70年代の終りに、日本でも同時期から'80年代に定着した。'90年代に入るとよりポップ性を持ち大衆に受け入れやすくなったフュージョンは、スムーズジャズと呼ばれるようになる。このアルバムはナショナル・ヘルスがハットフィールド・アンド・ザ・ノースとギルガメッシュ合体という動きをとる直前でのメンバーが入り乱れゴタゴタした時期で、いまから思えば「ギルガメッシュ」はヴァージン・レコードが急遽セッション・ユニットとして作ったプロダクションだったように思う。メンバーはアラン・ゴウエン(p)、フィル・リー(g)、ジェフ・クライン(b)、マイク・トラヴィス(ds)で、プロデュースはデイヴ・スチュワート。(なお1981年5月17日、アランは白血病により他界している)。結局、ギルガメッシュはこの1枚で解散するが・・・。(79年にソフト・マシーンのヒュー・ホッパー(b)を加え一時的に再結成し、よりジャズに接近した音楽を展開している。それに2000年に米Cuniformよりファーストのアウトテイクを中心とした「Arriving Twice」もリリースされているらしい)。

PHIL LEE(electric,acoustic 12 string and classical,guitars) ALAN GOWEN(piano,electric piano,clavinet,synthesiser,mellotron) JEFF CLYNE(double bass and bass guitar) MICHAEL TRAVIS(drums and percussion) AMANDA PARSONS(voice)
side 1:a)One end More b)Phil's little dance-for phil millers trousers c)worlds of Zin 2.Lady and friend 3.Notwithstanding
side 2:1.Arriving twice 2.a)Island of Rhodes b)Paper boat-for Doris c)As if your eyes were open 3.For abstent friends 4.a)We are all b)Someone else7s food c)Jam and other boating disasters-from the holiday of the same name 5.Just C
recorded and mixed at Manor-May 1975
engineer-Steve Cox
produced by Gilgamesh and Dave Stewart
1975 VIRGIN/CAROLINE RECORDS


16日のNostalgia77 JAPAN TOUR IN OSAKAにはnu thingsいっぱいの、予想以上の多くのクラウドたちが顔を見せて下さり、大成功に終わりました。ほんとにありがとうございました。当日の模様はInfomapの平野隼也クンのブログに後日掲載しますのでチェックして下さい。

Comment ( 1 )

東山 聡 :

土曜日はありがとうございました!
体調の方は、もう大丈夫でしょうか?

素朴な疑問なのですが、フュージョンとジャズロックはいっしょのものなのでしょうか? 単なる、呼び方の違いだけなんでしょうか?

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