IVOR CUTLER

私の詩を作るやり方はジャズのコンサートに行って
ひとつの意味よりむしろ単語の雑音を聞いているように
音楽をただ素通りさせてその時思い浮かんだナンセンス詩を書く方法でした
(アイヴァー・カトラー)
IVOR CUTLER
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 22

ペダル駆動のハルモニウムに乗せてユーモアに歌うスコットランド人の芸術家、風刺漫画家、ミュージシャン、詩人、作詞作曲家のIVOR CUTLERは、ロンドンのスラム地区のサマーヒル学校で30年間教師を勤め、詩や歌を書き始めたのは'50年代後半で、’59年から'63年の間に放送されたBBCの月曜日の番組ナイト・アット・ホームで38の物語りの、ハルモニウムで伴奏して歌うそのシリーズはとても人気があり、イギリスのラジオの名物男になったそうだ。'67年のビートルズの映画マジカル・ミステリー・ツアーや、ニール・インネスのテレビ番組にも出演していたことも有名な話だが、そのラジオ番組を聴いていたポール・マッカートニーがビートルズの映画マジカル・ミステリー・ツアーへの出演依頼をし、そこでマッカートニー作曲の「 I'm Going In A Field / I lie beside the grass」が歌われている。その後、ビートルズのジョージ・マーチンがプロデュースしたIvor Cutler Trioの「Ludo(1967)」を発表。その音楽は、ジャズトリオをバックにしたトラッドジャズからのインスピレーションを得たブギウギの伝統的な音楽が聴かれる。

IVOR CUTLER/DANDRUFF
(VIRGIN V2021)
'70年代には、ロバート・ワイアットがアルバム「ROCK BOTTOM('74)」のなかでアイヴァーのハルモニウムをフィーチャーしたことが縁で、ヴァージンから3枚のアルバム、「DANDRUFF ('74)」,「 VELVET DONKEY('75) 」、「JAMMY SMEARS ('76)」を発表することになる。また'80年代にはラフ・トレード・レコードから「PRIVILEGE('83)」、「PRINCE IVOR ('86)」、「GRUTS ('86)」の3枚のアルバムもリリースしている。、前後になるが、名前からしてユーモアな「刃物屋」という名字を持つアイヴァー・カトラーは、'23年1月15日にユダヤ人の中産階級の家族のもとグラスゴーで生まれ、 祖父は帽子の行商人、父は家具と刃物の職人だった。厳格な幼年期を過ごした彼はそのことを幸せに感じていて、幼いときから大袈裟なスコットランドの物語を語るのが好きだったという。当時を振り返った水にまつわるエピソードなどは、そのまま彼の音楽で歌われている。15歳の頃、すでに自分は将来作曲家になるだろうと予感し Droveやシューベルトのような簡単で、しかも力強いメロディーを作ることを決心している。

side one:1.solo on Mbira 2.Dad's Lapse 3.I worn my elbows 4.Hair Grips 5.I believe in bugs 6.Fremsley 7.Goozeberries and bilberries 8.Time 9.The railway sleepers 11.Life in a Scotch sittingroom Vol.2,ep.I 12.Three sisters 13.Baby suts 14.Not big enough 15.A barrel of nails
side two:1.Men 2.Trouble trouble 3.I love you 4.Vein girl 5.Five wise saws 6.Life in a Scotch sittingroom Vol2 ep.I 7.The oainful league 8.Piano tuner song A.D. 2000 9.Self knpwledge 10.An old oak tree 11.The aimless dawnrunner 12.Face like a lemon 13.A bird 14.A hole in my toe 15.Mu mother has two red lips 16.i like sitting 17.The forgetful fowl 18.If everybody 19.For sixpence 20.I used to lie in bed 21.If all the cornflakes 22.My sock 23.When I entered 24.Two balls 25.Miss Velvetlips 26.Lean 27.Fur coats 28.The darkness 29.A beautiful woman 30.Making tidy
produced by IVOR CUTLER
VIRGIN RECORDS 1974

IVOR CUTLER/JAMMY SMEARS
(VARGIN V2065)
幼少の頃の思い出話には、ユダヤ教からユニテリアン派、そして無神論者、人道主義のベジタリアンになっていくプロセス、戦争体験、などの面白い逸話が一杯あって、その経験が日常的な素材を取り上げながら独特のユーモラスでナンセンスな詩と音楽に反影されている。その経験のなかで、最も音楽の創造の源になっているのは、教師でもあった彼の子供達への愛で満ちている「教室」である。ひとのために歌い演奏していると同時に「自分を治療していました」と語っているように、彼のお伽噺のような世界を聴いているうちに、いつの間にか自然と癒されている自分に気付く。そんな彼の詩を創作する方法はとてもユニークで、ジャズのコンサートに行って、ひとつの意味よりむしろ単語の雑音を聞いているように、音楽をただ素通りさせてその時思い浮かんだナンセンス詩を書くのだという。現在、彼の書いたすべての詩が、フェーバーのダグラス・ダンによって編集されたスコットランド詩に収集され保存されている。また今年の1月に亡くなる寸前まで騒音反対運動のNoise Abatement SocietyとVoluntary Euthanasia Societyのメンバーのひとりだった。彼の音楽からは少なからず「ジャズ的なるもの」も聴こえてくるが、詩を語り歌う声の母音、子音から聴こえるコックニーやスコットランド訛り独特のサウンドは、ケルティック・フォークにまで遡り、古代のスコットランドやウエールズの文化をも呼び起こし強いケルト魂も感じる。

side one:1.Bicarbonate of Chicken 2.Filcombe Cottage,Dorset 3.Squeeze Bees 4.The Turn 5.Life in a Scotch sitting room,Vol.2 EP.11 6.A Linnet 7.Jumping and Pecking 8.The Other Half 9.Beautiful Cosmos 10.The Path 11.Barabadabada 12.Big Jim 13.In the Chestnut Tree 14.Dust 15.Rubber Toy 16.Fistyman
side two:1.Unexpected Join 2.A Wooden Tree 3.When I stand on an Open Cart 4.High is the Wind 5.The Surly Buddy 6.Pearly-Winged Fly 7.Garden path at Filcombe 8.Peddington Town 9.Cage of Small Birds 10.Life in a Scotch sitting room Vol.2 Ep.6 11.Irk 12.Lemon Flower 13.Red Admiral 14.Everybody Got 15.the Wasted Call
recorded by David Vorhaus at Kaleidophon
VIRGIN RECORDS 1976

http://www.ivorcutler.org/

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