KEITH CROSS AND PETER ROSS

サンディ・デニーとトレヴァー・ルーカスの「フォザリンゲイ」などに影響を受けたモダンなアシッド・フォークロック
KEITH CROSS AND PETER ROSS
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 24

'60年代後半のロンドンといえば、フォークとロックの融合という動きがあった。ペンタングル、フェアポート・コンベンション(Fairport Convention
)、スティーライ・スパン(Steeleye Span)などによってフォークロックはイギリス各地に波及していくのだが、トラディショナル・ブリティッシュ・フォークのミュージシャンに、エレクトリックギターやアンプなどの電気機器を駆使しロックの要素を取り入れることが当時流行していた。ジョニ・ミッチェル、ボブ・ディランといったアメリカのフォークに影響を受けた彼らのなかで、忘れてならないのが、フェアポート・コンベンションだろう。音楽を紡ぐ人と言われたリチャード・トンプソンとサンディ・デニーの存在も当時のブリティッシュ・ロックに多くの影響を与えている。アーリージャズの影響さえみられるフェアポート・コンベンションの'69年の作品「Unhalfbricking 」や、特にサンディ・デニーの’71年の作品「The North Star Grassman and the Ravens 」を、歌手を辞めた直後の、すべてを捨てて文無しで東京から転がり込んだ神戸の葺合区熊内の高台にある彼女のアパートの窓から見える、神戸の港の海を見下ろしながら、脚のついたミッドセンチュリー・モダンの古いハイファイ・ステレオで、よく聴いていた。こうしたイギリスのフォークロックにおける様々な試みは、インクレディブル・ストリング・バンド(The Incredible String Band)などの流れを経て、やがてカンタベリー系ジャズロックやプログレッシブ・ロックへと変遷していく。

KEITH CROSS AND PETER ROSS/BORED CIVILIANS
(DECCA SKL5129)
'72年に英DECCAから発表されていたT2のギタリストのKeith Crossとブラック・キャット・ボーンズに在籍したPeter Rossによるコラボレーション・アルバム「Bored Civilians」には、この後、キャラバン、ナショナル・ヘルスのメンバーになるJimmy Hastings、ブリンズリー・シュウォーツのNick Loweなどそうそうたるメンバーが参加している。このアルバムのなかに、フェアポート・コンベンションを脱退したサンディ・デニーが自分の理想のバンドを作ろうとしてトレヴァー・ルーカスと結成した「フォザリンゲイ」の'70年のアルバム「Same」から"Peace in the End"のカヴァーも収録されていて、シンフォニックなアシッドフォークやジャズロックの香りも漂う。願わくばこうした音楽は、いま若いギャルのあいだで流行りのボヘミアン・スタイルのフォルクローレ、プチ・ヒッピー、レトロモダンでお洒落なファッションと同じように着こなしてほしいものである。

side 1:The Last Ocean Rider 2.Bored Civilians 3.Peace In The End 4.Story To A Friend
side two:1.Loving You Takes So Long 2.Pastels 4.The Dead Salute 4.Bo Radley 5.Fly Home
musicians:Keith Cross (Bulldog Breed, T2) / Peter Ross (Richard Thompson, Hookfoot) / Peter Arnesen (If, Ian Hunter, Rubettes, Daddy Longlegs, Hollies)/B.J. Cole ?? (credited as Brian Cole) /Jimmy Hastings (Caravan, Soft Machine, Hatfield & The North, National Health)/ Nick Lowe (Brinsley Shwarz, Elvis Costello, Dave Edmunds, solo) / Dee Murray (Elton John Band) / Chris Stewart (Spooky Tooth, Frankie Miller, Joe Cocker) / Tony Carr /Steve Chapman /Sid Gardner/ Jenny Mason/ Lea Nicholson/ Billy Rankin/ Tony Sharp/ Andy Sneddon
Produced by Peter Sames arranged & Conducted by Tony Sharp Engineer:David Grinsted/Kevin Fuller
DECCA RECORDS 1972

※70年代初期、中期ヴァージン/キャロライン・レーベルでの作品はまだあるのだが、そこからそろそろ離れて、今回からは他のレーベル、シーンでの動きを最考察/回顧していこうと思っています。ところでボクからのお願いですが、この世界には詳しくマニアックな音楽ファンが多いので、このCASCADESで、間違ったことも書いているかも知れないので、気になった人はコメント欄に自由に訂正、補足、注釈を加えて下されば嬉しく思います。(その場合、匿名やハンドル・ネイムは迷惑メールとしてセキュリティで削除されますので、本名や連絡先が分かる名前でお願いします。)

Comment ( 3 )

東山 聡 :

このBlogでいろんな人からの情報や意見が聞かれれば、僕みたいな無知な音楽ファンにとってもありがたい事です。

僕がここにコメントを寄せるようになったのは、ここで情報を降りてくるのを待っているだけでは、nu jazzが立ち消えになってしまうのでは無いかと言う危機感にも似た思いからでした。
どんなに素晴らしい音楽でも、ファンの後押しがなければ成り立っていかないと思います。


新譜が出ない。あまり、ぱっとした動きが無いのは、アーティストやレコード会社のせいでもなく、僕ら聞き手側の責任でもあると思う。

本題とはほとんど関係ないのですが、nu jazzという言葉が出てきたのでレスさせて頂きます。
最近FCQやNicola Conteにディズニーの音楽をやらせたコンピというのが出ました。私はこれで日本でのnu jazz的な動きというかnu jazzの持っていた記号が大きく壊れたと思っています。制作の現場にいる人の責任も看過できません(これは日本だけの問題かもしれないけれど)。

東山 聡 :

辰巳さん

はじめまして。よろしくお願いします。僕もそれなら見た事があります。FCQがプーさんのテーマとかやっているやつですよね。最初見た時はやはり「なんで!」と言った思いがありました。レーベルに印刷された、ミッキーマウスにも違和感を感じましたし...

日本でのnu jazzまだまだこれからなのに、壊れしまうのはあまりに悲しいです。

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