CARAVAN

ワイルドフラワーズから2分された片割れ初期キャラバン
ヴィクトリア朝時代からの伝統「ロマン主義世界」
CARAVAN
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 25

英国趣味というのがある。ファッションではいまならPAUL SMITH(http://www.paulsmith.co.uk/)のモダン・メンズウェアがそれを象徴するものだが、伝統的なファッションでは、Nick Ashleyの関係しているDunhillや、トラディショナルなCordings、フォーマルなイヴニング・スーツのGIEVES & HAWKES、英国を代表するロンドンのデパートHARRODS(http://www.harrods.com/HarrodsStore/)、サビル・ロウのKILGOUR FRENCH STAMBURY、伝統的な洋服生地ではFOX BROTHERS & CO(http://www.foxflannel.freeserve.co.uk/products.htm#top)などなど数多くある。他には、骨董市、英国式ティーパーテーや、車種ではローバーミニ、ガーデニング(庭園)、サッカーなどなど星の数ほどあるが、植民地時代の大英帝国は7つの海を支配し5つの大陸をおさめてきたというプライドからくるのか、イギリス人(アングロ・サクソン)はすべてのものが世界一だと自負している。紳士の国イギリスは礼儀ただしいというが、特に老人や年配者と話すと、それが顕著だ。しかし5年前に久しぶりにロンドンを訪ねて驚いたのは、斜陽老大国を象徴する英国病、経済不振に陥ってるのは歴然としていた。グローバル化の波がロンドンにも押し寄せモダン・イングリッシュへの変化も多くみられたけれど、端正に手入れされた田園風景やその美しい自然を維持し、古いものを大切にして使えるものは朽ちるまで使うという昔日の栄光の面影やプライドだけはいまも健在だった。彼ら大英帝国の匂いがプンプンする伝統的なアイデンティティーも、惜しむかな音楽の世界では'70年代のカンタベリー系のジャズロックを最後に消滅してしまったかも知れない。

CARAVAN/IN THE LAND OF GREY AND PINK
(DERAM SDL R1)
ロバート・ワイアットとケヴィン・エアーズ、ヒュー・ホッパーなども在籍していたこともあるワイルドフラワーズは'67年に解散し、ソフト・マシーン、キャラバンの2つのバンドに派生していくのだが、その片割れのキャラバンのオリジナルメンバーはパイ・ヘイスティングス(Gtr,Vo)、デイヴ・シンクレア(Key)、リチャード・シンクレア(Bass,Vo)、リチャード・コフラン(Drs)の4人で、活動の場をカンタベリーからロンドンに移し積極的なギグを行ったことでヴァーヴ・レコードと契約を交わすまでに至り、ファーストアルバム「CARAVAN」が発売される。'70年デッカ・レーベルからセカンドアルバム「if i could do it all over again, i'd do it all over you」をリリース。このなかの「For Richard」はシングルカットされ、初のチャート・インを果たした。'71年にこのサード「In the Land of Grey and Pink」を発表。イントロは牧歌的なメロディーのトロンボーンのフワフワした暖かいサウンドから始まり、サイドB全面に収録された22分の組曲「Nine feet underground」はディヴィッド・シンクレアのキーボードを前面に押し出したジャズロック。このアルバムで使われているAnne Marie Andersonのイラストのピンク色の東洋的な桃源郷は、音楽以前にこの作品のすべてを支配するほど強烈だった。デイヴ・シンクレアはこのアルバムを最後にキャラヴァンを脱退しマッチング・モウルに参加する。その後を元キャロル・グライムス・デリヴァリーのスティーヴ・ミラーが埋め、4枚目のアルバム「Waterloo Lily」を発表。

side one:1.Golf girl 2.Winter wine 3.Love to love you (And tonight pigs will fly) 4.In the land of grey and pink
side two:1.Nine feet underground -Nigel blows a tune - Love's a friend-Make it 76-Dance of the seven paper hankies-Hold grandad by the nose- Honest I did!-Disassociation-100% proof 
RICHARD SINCLAIR(bass,acoustic guitar,vocals) PYE HASTINGS(electric guitars,acoustic guitar,vocals) DAVID SINCLAIR(organ,piano,mellotron,harmony vocals) RICHARD COUGHLAN(drums and percussion) JIMMY HASTINGS(flute,tenor sax,piccolo) DAVID GRINSTED(cannon,bell and wind)
recorded at Decca Studios
produced by DAVID HITCHCOCK
DECCA/DERAM 1971

CARAVAN/WATERLOO LILY
(DERAM SDL R8)
結成直後はリチャード・シンクレアのベースと繊細な美しい声がキャラヴァンでの音楽を特徴づける大きな顔だったが、このアルバムを最後に今度はリチャード・シンクレアが脱退する。暖かみが感じられる牧歌的なメロディとファンタジックな歌詞が、デイヴ・シンクレアを核にしたキャラヴァンの音楽の特徴とされているが、それは'71年の「In The land of grey and Pink」までのことで、’72年の「Waterloo Lily」はジャズやブルースの色合いが濃くなっていて、全体的には荒い音作りだが個人的には彼らの過去の作品を含めてのベストだと思っている。ホーン・セクションやストリングスを導入するなど当時としては、かなり実験的なアルバムだったのだが、それはキャラヴァンの音楽の重心がリチャ−ド・シンクレアからパイ・ヘイスティングスとスティーヴ・ミラーに移動したことによるところが大きいからだと思う。2曲目の「Nothing At All」ではロル・コックスヒルとフィル・ミラーがゲストでセッションしているしね。初期キャラヴァンの音楽の特徴と言えば、ボクにはヴィクトリア朝時代からの伝統、イギリス人ならではのロマン主義世界が聴こえてくるが・・・。その後、'73年「Plump in the night」」、'74年「For Girls Who Grow Plump In Night」、'75年「Cunning Stuns」、「BLIND DOG AT ST.DUNSTANS」、'77年「BETTER BY FAR」などのアルバムを発表している。彼らの音楽を聴いていたのは'77年の「BETTER BY FAR」までだったけれど、その後も続々アルバムはリリースされていたんだな。

side one:1.Waterloo lily 2.Nothing at all It's coming soon - Nothing at all (reprise)- 3.Songs & signs
side two:1.Aristocracy 2.The love in your eye- To catch me a brother- Subsultus-Debouchement- Tilbury kecks 3.The world is yours
RICHARD DOUGHLAN(drums,percussion) PYE HASTINGS(lead vocals,electric and acoustic guitars) STEVE MILLER(piano,electric piano,electric harpsichord,organ) RICHARD SINCLAIR(lead vocals,bass guitar)
produced by David Hitchcock for Gruggy Woof
engineered by David Grinsted
recorded and mixed at Tolling Park Studios
DECCA/DERAM 1972

●'80年「The album」/'80年「The best of Caravan “Live”」/'82年「Back to front」/'86年「The Canterbury Collection」/'91年「Radio 1 live in concert」/'93年「Live」/'94年「Cool Water」/'95年「The battle of Hastings」/'96年「All Over You」/'97年「 ‘Live’Canterbury comes to London」/'98年「Back on the tracks」/'98年「Songs for oblivion fishermen」/'98年「Ether Way」/'99年「Surprise supplies」/'99年「All over you ...too」/2000年「Where but for Caravan would I」/2003年「Unauthorised Breakfast Item」

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