JOHN STEVENS' AWAY

リフの反復効果を強調した渋いミニマル・ジャズファンクと
YESTERDAYS NEW QUINTETを想起させるスピリチュアル・ジャズ
JOHN STEVENS' AWAY
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 33

JOHN STEVENS' AWAY/JOHN STEVENS' AWAY(VERTIGO 6360 131)
ジョン・スティーヴンスは英国のフリージャズ、フリーインプロヴィゼイションのシーンで活躍したパーカッショニスト。サックス奏者、トレヴァー・ワッツなどと結成した小編成ユニット、フリー・ジャズ集団SME(Spontaneous Music Ensemble/スポンテニアス・ミュージック・アンサンブル、後にデレク・ベイリーなども参加)の中心人物で、その活動は60年代初頭から30年間続き、アウェイでの活動は80年代初めまで続いた。他にも種々のグループ活動、音楽教育活動に大きな成果を残している。
Spontaneous Music Ensembleの'66年-'67年までの初期の作品「Challenge (Emanem)」での、メンバーはKenny Wheeler (fh), Paul Rutherford (tb), Trevor Watts (as, ss, piccolo), Bruce Cale (b), Jeff Clyne (b), John Stevens (ds, cymbals), Evan Parker (ss), Chris Cambridge (b)で、'73年と'74年の音源集「Quintessence (Emanem)」でのメンバーがJohn Stevens (perc, cornet), Derek Bailey (g), Kent Carter (cello, b), Evan Parker (sax), Trevor Watts (sax)だから、いまにして思えばイギリスでのフリー系の最も円熟した時代だったのかも知れない。オーネット・コールマン(Ornette Coleman)から引き継いだSMEのフリージャズのもうひとつの側面として、ジョン・スティーヴンスは新しいユニット、アウェイを結成し発表したのが今回紹介している2枚のアルバムだ。このスティーヴンス・アウェイのデビュー作はドイツのベルリンでのライヴ録音で、リフの反復によるブルージーなジャズとジャズファンク、フリーとスピリチュアル・ジャズを横断していて、ボクには現在のYESTERDAYS NEW QUINTETやMADLIBさえも思わせる。

side one:1.It will Never Be The Same 2.Tumble
side two:1.Anni 2.C.Hear Taylor 3.What's That?
JOHN STEVENS(dums) PETER COWLING(electric bass) STEVE HAYTON(electric guitar) TREVOR WATTS(alto saxophone)
produced by J.Stevens all compositions:J.Stevens
recorded 'live7 at the Quartier Latin,berlin,W. Germany November 1975
VERTIGO 1976

JOHN STEVENS' AWAY/SOMEWHERE IN BETWEEN(VERTIGO 6360 135)
当時のイギリスでのフリー・インプロヴィゼイションを語るには、ジョーン・スティーヴンス・アウェイのファーストにもアルト・サックスで参加していたトレヴァー・ワッツのことを記録しておくべきだろう。イギリス生まれのサックス奏者の彼は、独学でサックスを学びイギリス空軍の楽隊でJohn StevensとPaul Ratherfordに出会い、その後もRutherfordと共に音楽活動を続け、New Jazz Orchestraのメンバーとしてレコードデビューする。その後彼らは'65年にJohn Stevensと再会し、'66年初頭からロンドンの"Little Theatre Club"に出演するようになり、そこで共演したミュージシャンらとともにSMEを設立、そこでの活動を続ける傍ら、Barry GuyらとAMALGAMを結成し「PRAYER FOR PEACE」や「ANOTHER TIME」などの作品では、ジャズや前衛、民族音楽、ロック、フュージョンなど様々な音楽的要素を取り込みながらポストモダンな展開を繰り広げていて、イギリスならではの知的でクラシック(現代音楽)をも押さえたオーソドックスなフリー・ジャズの作品を発表していた。
Amalgamでの活動は'67年から'79年までの12年に及び、'82年には民族音楽に主軸を置いたMoire Musicを結成し、Moire Music Drum Orchestra、Moire Music Trioなどユニット名を変えながら活動を行っていた。ワッツの関わった他のユニット、バンドはJohn StevensのAway、Stan TraceyのOpen Circle、Louis Moholo Group、Bobby Bradford Quartet、London Jazz Composers' Orchestraなどがある。アウェイのセカンドは、リフの反復を基調とするスピリチュアルなジャズで、最近JAZZMENレーベルからリリ−スされているダンスミュージックの類いとしても再解釈することも可能だし、エルヴィン・ジョーンズに捧げられたサイド2の1曲目「Spirit Of Peace」などは、ミニマルな反復手法を使ってうねるグルーヴを作り出し、まるでYESTERDAYS NEW QUINTETやMADLIBを思わせるスピリチュアルなジャズだ。

side one:1.Can't Explain 2.Follow Me 3.Chick-Boom
side two:1.Spirit Of Peace(Tribute to Elvin Jones) 2.Now
JOHN STEVENS(drums) NICK STEPHENS(electric bass) RON HERMAN(acoustic bass) ROBERT CALVERT(soprano & tenor saxophone) DAVID COLE(electric guitar) BRENO T'FORDO(percussion)
produced by John Stevens & Co-ordinated by Terry Yason for Away Productions
recordd at Phonogram Studios:15/16th June 1976
VERTIGO 1976

※70年代後半のパンクや80年代ニューウェイヴに行く前に、70年代のイギリスでのフリージャズ、フリーインプロヴィゼイションの作品も(ロックマガジンではそれほど紹介しなかったが)、人知れずこっそりと、かなりの数を聴いたので、機会をみつけてまた紹介します。

Comment ( 1 )

東山 聡 :

フリージャズに当時、デレク ベイリーなんかはすごく難解なイメージがついて回り、結局手を延ばせず終いでした。
あの頃は、いろんな情報を知りたくて音楽雑誌を読みあさっていましたが、言葉や活字と言った音楽とは関係ないものに振り回され、結果自分自身の音楽に対する幅を狭めてしまっていました。今は、これと言った雑誌が無いのもありますが、いらない物を買うくらいなら、その分直接レコードやCDを買うようにしています。失敗も多いですが、それが本来の楽しみ方かなと思っています。 今回紹介された物も近いうちに買って聴いてみます。

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