KEITH TIPPETT - 1

フリー・インプロヴィゼーションを要にしたストーリー性ある
ジャズのコンセプチャライズ(概念化)
KEITH TIPPETT-1
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 34

キース・ティペットは1947年8月25日、英国港町ブリストル生まれ。10代の頃からリアル・ジャズやビバップへの接点を持ち、ブリティッシュ・ジャズ・シーンで活動していたフリージャズ・ピアニスト、作曲家だが、70年代にキング・クリムゾンに参加したことから、多くのひとがその音楽をプログレッシヴ・ロック系のミュージシャンとして捉えているが、彼のキング・クリムゾンとの接点は単なるひとつのレコーディング・セッションとして参加したに過ぎない。キース・ティペットのリアルな顔はやはりジャズのフィールドでの活動でこそみられるもので、'78年にOGANレーベルでリリースされていた、STAN TRACEY, ELTON DEAN, TREVOR WATTSなどのミュージシャンによる大編成オーケストラARKの「FRAMES」などでみられるフリー・インプロヴィゼーションを要にしたストーリー性のある、ジャズのコンセプチャライズ(概念化)こそが、彼の音楽の本質だろう。それはティペットが南アフリカから追放された、Chris McGregor、Dudu Pukwana、Mongezi Feza、Johnny Dyani and Louis Moholoたちミュージシャン、オリジナルBlue Notesのスピリットにインスパイアされたことが、彼の音楽を決定づけた最大の要因だからだ。 例えばクリス・マクレガーズ・ブラザーフッド・オブ・ブレス(CHRIS McGregors brother food of breath-brotherfood)は南アフリカ出身のピアニスト、クリスマクレガーによって結成されたビッグバンドスタイルのグループだが、そのサウンドは民族主義のメロディを融合したモードジャズ、ビッグバンドジャズで、ラテン調のビッグバンド・サウンドなども聴け、キース・ティペットのジャズの鋳型が多く見られる。この関係で他にはDedication Orchestraというユニットがあり、Chris McGregor、Dudu Pukwana、Mongezi Feza、Johnny Dyani、そしてHarry Millerといった南ア出身のミュージシャンの曲を取り上げてビッグバンドで演奏するのだが、ティペットの音楽にも見られるアフリカ的、英国的なジャズの原点がここにあるのは間違いないようだ。

THE KEITH TIPPETT GROUP
/'YOU ARE HERE...I AM THERE'

(Polydor 2384 004)
ローリング・ストーンズやヤードバーズの仕掛人ジョルジオ・ゴメルスキーをプロデューサーに迎え、エルトン・ディーン(サックス)、マーク・チャリグ(トランペット)、ニック・エヴァンス(トロンボーン)といったブラス・セクションとともにキース・ティペット・グループを結成し、1970年のVertigoからの「You Are Here... I Am There」でデビューする。このアルバムだってあまりにもながくジャズロックとしてカテゴライズされ続け、未だにロックの名盤としてレコードショップに並べられているが、それは誤りだ。例えばこのファーストの2曲目「I Wish There Was a Nowhere」を聴けば明確だが、ティペットのピアノ・ソロでのコード分解はロック・ミュージシャンのものではない。

side one:1.This Evening Was Like Last Year (To Sarha) 2.I Wish There Was a Nowhere
side two:1.Thank You for the Smile(To Wendy and Roger) 2.There Minutes from an Afternoon in July(To Nick) 3.View from Battery Point(To John and Pete) 4.Violence 5.Stately Dance for Miss Primm 6.This Evening Was Like Last Year-short version
KEITH TIPPETT(piano,electric piano) MARK CHARIG(cornet) ELTON DEAN(alto sax) NICK EVANS(trombone) JEFF CLYNE(bass,electric bass) ALAN JACKSON(drums,glockenspiel) GIORGIO GOMELSKY(bells)
recorded at Advision Studios,London,England,January 1970
produced by Giorgio Gomelsky
Polydor 1970

THE KEITH TIPPETT GROUP
/"DEDICATED TO YOU,BUT YOU WEREN'T LISTENING"

(VERTIGO 6360024)
'71年にはセカンド「Dedicated To You But You Weren't Listening」をVertigoからリリースし、ティペット、ニック・エヴァンス、エルトン・ディーンの楽曲によるハードバップ、ビバップなどのバップ・イディオムとフリー・インプロヴィゼーションによるジャズ。ラストの「Black Horse」などはラテングルーヴにトロンボーン、サックスが絡むまさに現在のクラブジャズだ。ロバート・ワイアットらソフトマシーンのメンバーも動員され、当時のカンタベリー系の流れとジャズがシンクロした時代そのものが反映されている。4人のドラマーによるリズムパートの強化、その上をソプラノ、サックス、トロンボーン、コルネットなど3管によるテーマユニゾン、アンサンブルが爆発しブローしていく熱気が、アルバム全体を支配している。この2枚の作品もフュージョンでもジャズロックでもなく、生粋のジャズである。フリーでの白熱のインタープレイを展開していくというものではないが、ミュージシャン間の対話する熱い部分を残しながら、活きたリアルなジャズの21世紀のボキャブラリーである現在のnu jazzやクラブジャズに見られる様式美、構造を持ったジャズでもある。

side one:1.This Is What Happens 2.Thoughts To Geoff 3.Green And Orange Night Park
side two:1.Gridal Suite 2.Five After Dawn 3.Dedicated To You But You Weren't Listerning 4.Black Horse
KEITH TIPPETT(piano,hohner electric piano) ELTON DEAN(alto,saxello) MARC CHARIG(cornet) NICK EVANS(trombone) ROBERT WYATT(drums) BRYAN SPRING(drums) PHIL HOWARD(drums) TONY UTA(conga drums,cow bell) ROY BABBINGTON(bass,bass guitar) NEVILLE WHITEHEAD(bass) GARY BOYLE(guitar)
produced by Pete King for Ronnie Scott Directions
VERTIGO 1971

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