BRIAN AUGER / JULIE DRISCOLL

ブライアン・オーガーのモッドジャズは
ブルースとモータウンとジャズ・メッセンジャーズ(ビバップ)の三位一体
ジュリー・ドリスコールの声 それは人間の最もリアルな存在感を表すもの 
BRIAN AUGER/JULIE DRISCOLL
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 36

BRIAN AUGER
植民地時代のインドに生まれロンドンのノース・ケンジントンで育ったブライアン・オーガーは、ジャズピアニスト、バンドリーダー、スタジオ・ミュージシャン、ハモンドB3のイノヴェーターという肩書きと様々なキャリアを持つアーティストだが、3歳の時、父親がオペラやミュージカルのレコード蒐集家で、彼の家に置いてあった自動ピアノに興味を持ち、既に幼少時代には近所のひとを集めて小さなコンサートを開いてプレイしていたという。
BRIAN AUGER AND THE TRINITY/OPEN
(IECP-10018)
当時流行っていたポップスやR&Bはすべて弾け、兄のジェームスが蒐集していたカウント・ベイシーやデューク・エリントンのレコードを聴いているうちにジャズの構造やパターンを習得し、ビル・エヴァンスやオスカー・ピーターソン、ハンプトンホウズ、ビクター・フェルドマン、レッド・ガーランド、マッコイ・タイナー、ハービーハンコックなどのニューヨークや、ウェストコースト・ジャズに興味を持ち、17歳の頃にはジャズ・メッセンジャーズのハードバップやマイルス・デイヴィスなどもプレイしていたという。その後、65年にジミースミスのアルバムでのオルガンを聴いたオーガーはハモンドB3を、自分のミュージシャンとしての顔にすることを決心した。ブライアンの音楽はブルースとモータウン、そしてジャズ・メッセンジャーズの三位一体である。ローズ・ピアノやハモンド・オルガンを多用する70年代のジャズファンクやソウルジャズなどのレアグルーヴへのこだわりは、80年代が終わろうとした頃に表出したアシッド・ジャズや、90年代中期のポップジャズ(ラウンジ・ジャズ)で再評価され、現在でもオルガン・ジャズはクラウドたちの御用達音楽で、いま一度nu jazz、Finn Jazzのヴィジョンで再解釈/再構築してみるのもアリだ。

BRIAN AUGER AND THE TRINITY/DEFINITELY WHAT
(IECP 10019)
'64年にブライアン・オーガー&ザ・トリニティの名前で活動を始める。この年のメロディー・メイカー誌の人気投票でジャズ・ピアニスト部門および新人アーティスト部門の1位に選ばれている。ジョージー・フェイムの代役ではじめて正式にオルガンを演奏、まもなくモッズの間で人気のオルガニストの一人に。65年、ロング・ジョン・ボールドリー、ロッド・スチュアート、ジュリー・ドリスコールと共に、スティームパケットを結成するが、マネージメントの問題でアルバムを発表できないまま翌年解散。その後、トリニティとしての活動を再開し、67年、ドリスコールを加えたバンド編成でも並行して活動を始める。68年、「火の車」のカヴァーでブレイク。同年、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演。69年アメリカ・ツアーの最中にドリスコールが脱退。トリニティ名義では'67年「OPEN」、’68年「DEFINITELY WHAT!」、'69年「STREETNOISE」の3枚の作品を発表しているが、その活動は70年には終わっている。
その後、モーグル・スラッシュへの参加を経て、新たにオブリヴィオン・エクスプレスとして活動開始する。'75年にはイギリスからアメリカ西海岸に移住し、アメリカで始まったフュージョン・ブームに乗って人気を集め、'77年にRCAからワーナー・ブラザーズに移籍、’78年のジュリー・ティペッツとの久しぶりの共演作「アンコール」を含む2枚を残している。現在は、オブリヴィオン・エクスプレス、CABなどで現役で活動を続けている。
julie driscoll
http://www.youtube.com/watch?v=L8AYvQgVri4&feature=related

http://www.brianauger.com/

JULIE DRISCOLL
JULIE DRISCOLL,BRIAN AUGER & THE TRINITY
/STREETNOISE
(35MM 0198/9)
ジュリー・ドーン・ドリスコール(Julie Dawn Driscoll)は、1947年6月8日にロンドンで生まれ、10代からヴォーカルとギターを始め、父親がトランペット奏者で早くからジャズの洗礼を受け、ニーナ・シモン、レイ・チャールズ、オスカー・ブラウンなどのジャズとR&Bのヴォーカル物のレコードを聴き、15歳の頃には父親のジャズバンドでときどき歌い、ローリング・ストーンズやヤードバーズを手掛けたジョルジオ・ゴメルスキーの事務所に所属し、'63年最初のソロ・シングル「テイク・ミー・バイ・ザ・ハンド」を発表。'65-'66年スチームパケット(ボールドリーと無名時代のロッド・スチュアート、それにジュリーの3人のリード・ヴォーカルを持つグループで、当時彼女は、オスカー・ブラウンをはじめとするジャズを好んで歌っていたという)、'67-'69年ジュリー・ドリスコール、ブライアン・オーガー&ザ・トリニティでの活動、'67年、スチームパケットの同僚だったブライアン・オーガーのバンドに参加し、同年「オープン」でアルバムデビュー。'68年、シングル「火の車」が全英5位ヒット、'69年アメリカ・ツアー中に脱退。'70年1月に放映されたBBCのテレビドラマ「魔女の季節」にも出演している。

JULIE DRISCOLL/1969(23MM 0197)
'69年ブライアン・オーガー&ザ・トリニティを脱退したジュリー・ドリスコールは、オーネット・コールマンらの影響でイギリスにもフリージャズや実験的な音楽へ流れ始めた頃に、キース・ティペットと巡り会った。当時キース・ティペットはジョルジョ・ゴメルスキーの事務所に所属していて、彼のデモテープをゴメルスキーから聴かされたジュリーは、瞬時にティペットの音楽に魅了されたという。トリニティ時代のニーナ・シモンやスタックス、アレサ・フランクリンなどソウル&ジャズのカヴァーという域を出ない音楽に満足しきれなかった彼女の心の隙間を、キース・ティペットの音楽が埋める役割を果たしたのだろう。ジュリーのファースト・ソロ作「1969」にはアレンジと ピアノでキース・ティペットの名前がみられるが、そのレコーディングの最中にふたりは恋に落ち、結婚し、現在までの音楽活動でのコラボレーションが始まった。ジョルジョ・ゴメルスキーはキースとジュリーの2人に、当時人気のあったシカゴのブラッド・スウェット&ティアーズ風のブラス・ロックをやるように勧め、アルバム「1969」ではBS&Tテイストのブラス・アレンジが聴こえる。その後、オヴァーリッジやスポンティニアス・ミュージック・アンサンブルなどのフリースタイルのユニットに参加、4ピースのヴォーカルのみのアルバム「Voice」を発表、'76年セカンド・ソロ「Sunset Glow」、「Warm Spirits,Cool Spirits」、ドイツのFMPレーベルから「Sweet and's' Ours」など立て続けに発表している。82年にニッポンで再発された「1969」のライナーノーツで北村昌士が”ブライアン・オーガー・トリニティ時代は60年代の若者のひたむきな現実への怒りの代弁、センティピードでは炎のような歌唱、「ブループリント」ではシャーマニックなトランス気味の魔術的な、「Sunset Glow」では心の熱をさますように安らいだヴォーカルが聴ける”と書いていた。物語りのある詩、心の葛藤を表現するジュリーの声には物憂げでありながらロック的な激しいエモーションとリアルな凄みがあり、声そのものに存在感がある数少ないヴォーカルストだ。’70年、キース・ティペットと結婚しジュリー・ティペッツに改名。'70年センティピードに参加。以後今日まで、キース・ティペットの音楽活動に頻繁に参加している。'71年、初のソロアルバム「1969」、75年、2枚目のソロ作「サンセット・グロー」、'77年、ブライアン・オーガーと再び組んで「アンコール」を制作している。近年ジュリー・ティペッツは、2000年にリリースされたロバート・ワイアットのトリビュート・アルバム「スープソングズ・ライヴ」で、ワイアットの「ロック・ボトム」での数曲を歌っている。彼女の最新作'99年の「シャドー・パペティア」は、伴奏を最小限にした彼女の歌声の可能性を徹底的に追求したヴォーカル・アルバムだと言われている。最近は、夫のキースに付き添って、世界各地で、音楽を通じた児童や成人を対象にした芸術教育に力を入れ、イギリス国内や南アフリカの教育機関で集中講座などの臨時講師を務めてもいる。「ミラー~イメージ」という仮の題名で、新たなソロ作も構想中。'99年には、キース・ティペットの日本公演に同行し、初来日を果たした。
Wheels on Fire - Julie Driscoll,Brian Auger & Trinity
http://www.youtube.com/watch?v=g3qnUjyff8w

BRIAN AUGER AND THE TRINITY/OPEN
1.In And Out 2.Isola Natale 3.Black Cat 4.Lament For Miss Baker
5.Goodbye Jungle Telegraph 6.Tramp 7.Why (Am I Treated So Bad)
8.Kind Of Love-in 9.Break It Up 10.Season Of The Witch
11.I've Gotta Go Now (bonus track) 12.Save Me (bonus track)
13.Road To Cairo (bonus track) 14.This Wheel's On Fire (bonus track)

BRIAN AUGER AND THE TRINITY/DEFINITELY WHAT
1.Day In The Life 2.George Bruno Money 3.Far Horizon
4.John Brown's Body 5.Red Beans And Rice 6.Bumpin' On Sunset
7.If You Live 8.Definitely What 9.What You Gonna Do
Brian "Auge" Auger, Dave "Lobs" Ambrose, Clive "Toli" Thacker (vocals); P. Halling, S. Margo, A. Peters, C. McKeown, J. Harris, J. Hess, K. Albrecht, R. Mosley (violin); J. Harrison, T. Lister, K. Cummings, B. Thomas (viola); C. Ford, P. Willison (cello); R. Swinfield (flute); A. Hall, G. Bowen, D. Watkins, D. Healey, L. Calvert, S. Reynolds, D. Campbell (trumpet); C. Hardie, J. Simcock, B. Router, A. Reece, B. Altram (trombone); T. Randall, J. Buck, A. McGavin, I. Beers (horn).

JULIE DRISCOLL,BRIAN AUGER & THE TRINITY/STREETNOISE
side one:1.Tropic Of Capricorn 2.Czechoslovakia 3.Take Me To The Water 4.World About Colour
side two:1.Light My Fire 2.Indian Rope Man 3.When I Was A Young Girl
4.Flesh Failures
side three:1.Ellis Island 2.In Search Of The Sun 3.Finally Found You Out
4.Looking In The Eye Of The World
side four:1.Vauxhall To Lambeth Bridge 2.All Blues 3.I've Got Life 4.Save The Country
JULIE 'JOOLS' DRISCOLL(vocals,acoustic guitar) BRIAN 'AUGE' AUGER(organ,piano,electric piano,vocals) CLIVE 'TOLI' THACKER(drums,percussion) DAVID 'LOBS' AMBROSE(4 and 6 string elecctric bass,acoustic guitar,vocals)
recorded at Advision Studios,83 New Bond Street,London,England 1969
produced by Giorgio 'Rubbishenko' Gomelsky

JULIE DRISCOLL/1969
side one:1.A New Awakening 2.Those That We Love 3.Leaving It All Behind 4.Break-Out
side two:1.The Choice 2.Lullaby 3.Walk Down 4.I Nearly Forgot-But I Went Back
JULIE DISCOLL(vocal,acoustic guitar) CHRIS SPEDDING(electric guitar,bass guitar) JEFF CLYNE(bass、arcobass) MARK CHARIG(cornet) ELTON DEAN(alto) NICK EVANS(trombone) KEITH TIPPETT(arranged,piano,celeste) CARL JENKINS(oboe) BUD PARKES(trumpet) STAN SAITZMAN(alto) DEREK WEDSWORTH(trombone) TREVOR TOMPKINS(drums) JIM GREEGAN(electric guitar) BRIAN GODDING(electric guitar) BRIAN BEISHAW(bass) BARRY REEVES(drums) BOB DOWNES(flute)
produced by Jiorgio Gomelsky recorded in 1969

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