MAGNA CARTA

例えるならイギリスのアンティーク・ショップの隅っこに
埃に塗れて置いてある飛び出し絵本や
ドイツの絵本作家エルンスト・クライドルフの
「花のメルヘン(Blumen-Mrchen)」世界が
クラシカルで美しいフォークロックで歌われ描かれている
MAGNA CARTA
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 38

MAGNA CARTA/SEASONS(VERTIGO 6360 003)
マグナカルタは'69年5月10日、Chris Simpson(ギター、ボーカル)、Lyell Tranter(ギター、ボーカル)、Glen Stuart (ボーカル)によってロンドンで結成された。ジェントル・バラード・スタイルと神話的世界を歌う彼らのフォークロックは、当時それほど話題にはならなかったが、バンド名になっている1215年6月15日に制定された63か条から成るイングランドの憲章「マグナカルタ」の、王の権限を限定する法での前文はいまも廃止されずに現行法として残っており、成文憲法を持たないイギリスにおいて憲法の一部として残されている。"教会は国王から自由である、王の決定だけでは戦争協力金などの名目で税金を集めることができない、ロンドンほかの自由市は交易の自由を持ち、関税を自ら決められる、自由なイングランドの民は国法か裁判によらなければ、自由や生命、財産をおかされない"などにみられる、法の支配、保守主義、自由主義の原型は、伝統を重んじるイギリスならではの、またアメリカ合衆国建国の理由にも使われている憲章で、彼らの音楽の保守的で自由な精神と重なり合わせていた。Trenterがオーストラリアに戻るまでの、確か3年の短い期間にフォンタナから「Lord of The Ages」、「Songs From Wasties Orchard 」などの作品がリリースされていたが、このアルバムは'70年にヴァーティゴ・レーベルから発表されたセカンド「SEASONS」で、A面は四季をテーマにした物語り風の組曲で、ストリングスやブラスが多用され、なによりもギブソンのナイロン弦の音色が美しい。ゲストで、後にSTRAWBSに加入するリック・ウェイクマンのキーボード、後にエルトン・ジョンと「Smile Face」などの作品を発表するエレクトリック・ギターのDavy Johnstoneのプレイも聴ける。それに加えアレンジ、コンダクト、レコーダー、フェンダー・ベースに、70年代のデヴィッド・ボウイの殆どのアルバムやT.REXの「ELECTRIC WARRIOR」初め多くの代表作をプロデュースし、グラム・ロックの火付け役となったTony Viscontiの名前がクレジットされているのも、当時彼らの音楽に興味を惹かれた大きな要因だ。
マグナカルタの音楽を例えるなら、イギリスのアンティーク・ショップの隅っこに埃に塗れて置いてある飛び出し絵本、あるいはドイツの絵本作家エルンスト・クライドルフの「花のメルヘン(Blumen-Mrchen)」世界が、クラシカルで美しいフォークロックで歌われ描かれている感じだ。
http://yushodo.co.jp/pinus/60/picture/index.html
nu jazzやFinn Jazzを聴いてるいまはその影響か、北欧やイアリアン・ファニチャーに惹かれるが、ロックを聴いていた70年代はイギリスのアンティーク家具が好きで、ボクの部屋は京都の東寺の朝市などで買った、何度も上塗りされた茶色いニスの光沢を持った木目も鮮やかな古い家具類で溢れていた。ロンドンに行ったときには、ポートベローやカムデンタウンの蚤の市で見つけた安価な雑貨なども蒐集していたし、ブリティッシュ・ロック愛好家とアンティーク世界はいまも密接に関係しているように思う。さてマグナカルタの最終章SimpsonとStuartはTommy Hoy (ex-Natural Acoustic Band:RCAから「Learning To Live」「 Branching In」の2枚の作品を発表している)で活動後、Stuartがサリー州リッチモンドでペットショップを営んでいるという噂を聞いたのを最後に、次第に人々から忘れ去られていった。。

side one:1.Prologue 2.Winter Song 3.Spring Song 4.Summer Poem 5.Summer Song 6.Autumn Song 7.Epilogue 8.Winter Song(reprise)
side two:1.Goin7 My Way(road song) 2.Elizabethan 3.Give Me no Godby 4.Ring of Stones 5.Scarecrow 6.Airport Song
CHRIS SIMPSON(composes,steel-strung martin D18,sings) LYELL TRANTER(guitar,arrangements,nylon-strung gibson) GLEN STUART(vacal,five-octave range,harmonies,spokenmusicians:drums:Barry Morgan,Tony Carr fender bass:Tony Visconti string bass:Spike Heatley organ and piano:Rick Wakeman recorders:Tony Visconti,Tim Renwick electric guitar & sitar:Davy Johnstone cello:Peter Willson flute:Derek Grossmith
produced by:Gus Dudgeon arranged and condacted:Tony Visconti recorded at:Tridet studios,london/morgan studios london
engineer:Robin Geoffrey,Mike Bobak
sleeve design:Linda Glover
VERTIGO 1970

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