MICHAEL GARRICK

ジャズとクラシック カリビアン 教会音楽とポエト・リーディングなどが混在したガーリックのポスト・モダン・ジャズと
ユーロ・ジャズにあるリリシズムの哀愁とアラビック・テイストもブレンドされた美しいジャズ・アンサンブル
MICHAEL GARRICK
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 41

GARRICK'S FAIRGROUND/EPIHANY
/MR SMITH7S APOCALYPSE
( (ARGO ZAGF 1/CDSML 8433)
1933年、エンフィールド、ミドルセックス生まれのマイケル・ガーリックは、イギリスのジャズピアニスト、作曲家、詩とジャズによるパフォーマンスのパイオニアで、ユニバーシティ・カレッジ、ロンドン(U.C.L.)在学中に最初のカルテットを結成し、70年代のジャズが円熟した時代をバークリー大学で過ごしている。UCL卒業後、ガーリックは「コンサートにおける詩とジャズ」の音楽監督になり、その詩とジャズによるビートニクス的な作品は「Poetry And Jazz In Concert」というアルバムで聴ける。その後、ソニー・ロリンズ
やジョン・コルトレーン等のスタイルも取り入れ、モード奏法から革新的な独自のスタイルを築き上げたイギリスを代表するマルチ・リード奏者ドン・レンデル(’63年結成のイアン・カーとのクィンテットで多くの秀作を残すことになる。60年代中期から後期にかけて、‘イギリスのマイルス・クィンテット’と称された)や、'65-'69年までをイアン・カー・クインテットのバックサイドをつとめ、'66年には彼のセクステットを結成し英国アーゴから「PROMISES」を発表しているが、このアルバムにはIan Carr(tp,flh)、Joe Harriott(as)、Tony Coe(ts,cl)などの名前もみられる。ガーリックといえば'67年に始めたジャズの合唱曲の作品が最も良く知られていて、'69年のジョン・スミスのプロデュースによる「GARRICK'S FAIRGROUND/MR SMITH'S APOCALYPSE(CDSML 8422)」はその代表作で、ガーリックのプロジェクトGARRICK'S FAIRGROUNDが残したセッションでの2つの作品が収録されている。アルバム「MR SMITH'S」とEPのみで発表された「EPIPHANY」を1枚にまとめたこのCDには、LOWTHER、RENDELLらのセクステットに、NORMA WINSTONEら4名のヴォーカル、さらに中学生の聖歌隊が加わったジャズとクラシック、カリビアン、教会音楽とポエト・リーディングなどが混在したドラマチックでシアトリカル・パフォーマンスのような音楽/世界観が凝縮されたポスト・モダン・ジャズだ。現在彼はジャズの教育に熱をいれており、ロイヤル・アカデミー音楽院、ロンドンのトリニティー・カレッジで教育職に就きながら、自身でも'89年にJazz Academy Vacation Coursesのサマースクールを始めている。ガーリックはインディアンのクラシック・ミュージックに興味を持っていて、彼の音楽に多くの影響を及ぼしているという。

Jazz Praises© by The Michael Garrick Sextet
http://www.youtube.com/watch?v=2LefpHQJzCg

1.EPIPHANY/MR SMITH'S APOCALYPSE-PART1
2.Blues 3.Invocation 4.In The Silence Of God 5.Who Can Endure? 6.Speak,God! 7.For We Are Lost 8.I Have Torn Up 9.You Are Fools 10.Some Men Live On The Mountain 11.I Saw The Face 12.How May We Understand?
MR SMITH'S APOCALYPSE-PART2
13.Organ Improvisation 14.Blues 15.Invocation 16.Who Will Plead For Us? 17.I Took Myself Off To The Doctor 18.What Is This Clamour? 19.Who Hath Made Man's Heart? 20.Childrens' Chorus 21.I Will Speak, I Will Say 22.Heart,Like A Dove,Be Still 23.The Waters Of Love 24.To The Celebration 25.Blessed Are The Peacemakers
GARRICK'S FAIRGROUND
Peter Mound(conductor) vocals:Norma Winstone;John Smith;George Murcell;Betty Mulcahy
instrumental:Henry Lowther(trumpet,flugelhorn) Don Rendell(tenor sax,clarinet,flute) Art Themen(tenor & soprano saxes,clarinet,flute) Coleridge Goode(double bass) Trevor Tomkins(percussion) Michael Garrick(organ) choral:a great number of
ARGO 1971

THE MICHAEL GARRICK SEXTET WITH NORMA WINSTONE
/THE HEART IS A LOTUS
(ARGO ZDA 135/ZDA 135)
MICHAEL GARRICK SEXTET「THE HEART IS A LOTUS」は'70年1月ロンドンで収録された10枚目のリーダー・アルバムで、ガーリックが参加していたレンデル・カー・クィンテットのメンバーを中心としたイアン・カー、ドン・レンデル、ジム・フィリップ、アート・テメンのセクステットに、ノーマ・ウィンストンの神秘的なヴォーカルをフィーチュアした'70年にUKアルゴからリリースされたもの。ユーロ・ジャズにあるリリシズムの哀愁とアラビック・テ
イストもブレンドされたジャズ・アンサンブルが美しい。それになによりもノーマのスキャットとバックの掛け合いがクールだ。マイケル・ガーリックの作品には'64年「 A CASE OF JAZZ (AIRBORNE NBP 0002)」、'64年「POETRY AND JAZZ IN CONCERT RECORD ONE (ARGO (Z)DA 26) 」、「POETRY AND JAZZ IN CONCERT RECORD TWO (ARGO (Z)DA 27) 」、「MOONSCAPE (AIRBORNE NBP 0004)」、'65年「OCTOBER WOMEN (ARGO (Z)DA 33)」、「ANTHEM (ARGO EAF/ZFA 92) 」、「PROMISES (ARGO (Z)DA 36)」、'66年「BLACK MARIGOLDS (ARGO (Z)DA 88) 」、'68年「JAZZ PRAISES AT ST.PAUL'S (AIRBORNE NBP 0021) 」、'69年「POETRY AND JAZZ IN CONCERT 250 (ARGO ZPR 264/5) 」、'73年「TROPPO (ARGO ZDA 163)」、'78年「YOU'VE CHANGED (HEP 2011)」などがある。
当時のイギリスの音楽市場はDERAMやARGOといったDECCA傘下のレーベルが次々に設立され、ジャズ・ミュージシャンをサポートするかのような重要な作品を発表し、その体制を作りあげていた。主にロックミュージックからのエディトリアルをメインにし、そうした動向を見抜けなかったボクもおおいに責任を感じているが、70年代のプログレッシヴ・ロックが果たした役割は聴き手をジャズに向かわせるのではなく、ジャズから遠ざけ外していく行為だったのかも知れない。しかし90年代に入りクラブ・ジャズ・シーンが、ジャズという視点で再解釈/構築し始めたこれらのブリティッシュ・ジャズ・ロックを再び引き寄せ聴き直して再検討していくと、まだまだボクがやり残していた仕事が多くあることに反省させられる。いまでこそ60-70年代のオリジナル紙ジャケ仕様のレコードが数多く再発されてはいるが、当時はこうしたレコードに関する情報もなく入手困難で知るすべがなかった。そういう意味でもこの"「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧”に意義を感じている。ガーリック周辺や、イアン・カー、ドン・ランデル、マイケル・ギブスなどのジャズ・ミュージシャンを洗い直していくと、60−70年代ブリティッシュ・ジャズの広大なパノラマがひらけてきて興味深く、一度ゆっくりとレコードやCDを聴いて批評してみなければならないと思っている。このアルバムやMIKE WESTBROOKの「Lovesongs」でもヴォーカルでセッションしていたNorma Winstoneのこともね。

1.The Heart is A Lotus 2.Song By The Sea 3.Torrent 4.Temple Dancer 5.Blues On Blues 6.Voices 7.Beautiful Thing 8.Rustat's Grave Song
Art Themen(flute,clarinet,soprano tenor) Jim Philip(flute,clarinet,tenor) Don Rendell(flute,soprano,tenor) Ian Carr(trumpet,flugelhorn) Dave Green(bass) Coleridge Goode(bass) Trevor Tomkins(drums) Michael Garrick(piano,harpsichord) Norma Winstone(voice)
ARGO 1970

Comment ( 1 )

東山 聡 :

マイケルガーリック、イアン カー、ドン レンデル、ノーマ ウィンストン、マイク ウェストブルックこの辺りの情報が1番知りたかったのかも知れないです。
CASCADESも41回を数え、ロック、ジャズ双方からそれぞれに密接に結び付き、いかに発展していったか、今まで漠然としていたイメージが洗い出されプログレッシヴロックが何であるか、少しだけ分かってきつつあるように思います。
ところで、今月来月にかけて、SCHEMA/REARWARDから、大量にリイシューものが出たり、ここで紹介されるものも興味がありで、何からどこから手をつければいいか迷ってしまいます。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

« MIKE WESTBROOK | メイン | MICHAEL GIBBS »