「ブライアン・イーノ・コラボレーション」
"アンビエント・ドローンの断片が集積した多層構造を持つ音楽"と
'74年ですでに仮死状態のロックミュージック
BRIAN ENO 2
ROBERT FRIPP
CLUSTER
KEVIN AYERS /JOHN CALE/NICO
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 55
FRIPP & ENO/NO PUSSYFOOTING(HELP 16)
'73年にリリースされたフリップ・アンド・イーノ「(NO PUSSYFOOTING)」の、サイド1の21分の曲「The Heavenly Music Corporation」は、インプロヴィゼーションの自然発生的方法でオーバーダビングなしの直接テープループのシステムに録音されたもので、テリー・ライリーにみられるコンセプトをフリップのギタ−1本でフィードバック奏法により再現している。"アンビエント
・ドローンの断片が集積した多層構造を持つ音楽"と彼らは呼んでいる。サイド2の「Swastika Girls」は、スタジオにあった1セットのポルノグラフィーのカードに因んでこのタイトルが付けられ(ジャケットに写っている鏡の机のうえに並べてあるのが、そうだろう)、この曲はイーノのEMS VC52、シンセサイザーの音をテープループのシステムを使い、そのうえをフリップのギターがインプロヴァイズドするという同じテクニックを使って録音されている。いまでこそドローン・ミュージックと呼ばれるこうしたシンプルな音響に、もはや驚きは感じないが、当時はフューチャリスティックなサウンドとして未来をみたものだ。ジャケット・フォトのグラス・ルームのスケルトンな空間と、その隅に置かれた鏡で出来たメタリック・ギターには、"完全にアルミニウムで密閉された部屋ほど、自分が血と肉でできた人間であることを感じさせるものはない"と語っていたイーノの言葉を思い出す。
side one:"The Heavenly Music Corporation"
recorded at Eno's Studio 8.9.72
equipment:Gibson Les Paul The Fripp Pedalboard 2 Modifield Revox A77 Tape Recorders
side two:"Swastika Girls"
recorded at Command Studios 4/5.8.73
engineer Ray Hendricksen mixd at Air Studios 21/22.8.73
equipment:Gibson Les Paul Frizzbox/VCS3 Synthesizer with DigitalSequencer/Modified Revox A77 Tape Recorder
mastering engineer:Arun Chakraverty cover design & photography:Willie Christie
produced by Robert Fripp & Eno for E.G.Records
ISLAND 1973
EVENING STAR/FRIPP & ENO(HELP 22)
"Evening Star"はイーノが発明した"Frippertronics"と呼ばれるテープループ・システムによる簡素なギターリフのサウンドとデリケートなファズトーンの倍音がかもし出す、ダウンでミニマルなうねりが"明けの明星"というタイト
ルに相応しい静謐な世界を構築している。"Wind on Wind"の2曲は'75年に並行して取り組んでいたオブスキュアの「Discreat Music」から抜粋されたもの。サイド2の28分の"AN INDEX OF METALS"は、曲が進行するほどにサウンドの歪みが増すことを生かしたもの。前作の「NO PUSSYFOOTING」よりも、数倍も綿密に繊細に構築したアンビエント・ミュージックが聴こえてくる。カヴァーの絵はピーター・シュミッツによるもの。
side one:1.Wind on Water recorded live at The Olympia,Paris and at Olympic Studios,London. 2.Evening Star recorded at Island and Air Studios. 3.Evensong recorded at Olympic Studios. 4.Wind on Wind recorded at Eno's Studio.
side two:An Index Of Metals recorded at Eno's Studio.
Robert Fripp-guitar Brian Eno-loop and synthesizer
engineered by Denny Bridges,Phil Chapman and Rhett Davis.
produced by Eno and Fripp for E.G.Records
ISLAND 1975
FRIPP & ENO VIDEOS
http://www.youtube.com/results?search_query=FRIPP+%26+ENO&search_type=
CLUSTER & ENO/CLUSTER & ENO(SKY 010)
FRIPP & ENOの音楽や、このクラスターの音楽をいつから"drone"と呼ぶようになったのか知らないが、ドローンとは『(ミツバチの)雄バチ 《いつも巣にいて働かない》、 のらくらもの; いそうろう、 のらくら暮らす[過ごす] 、(ハチなどの)ブンブンいう音、【楽】持続低音(管)、〈…を〉ものうげに話す[言う]』という意味があるが、まあこの持続低音の意味合いで使われているのだろうが、ボクは"un・du・la・tion(波動,うねり、波動[起伏]するもの、波動,振動; 音波; 光波)のほうが相応しいと思っていて、"Undulation Music"と名付けたい。スウェーデンのあるミュージシャンが"ドローン"という言葉は、
"ノイズ"と同様に、英語では一般的にネガティヴな意味を持つ言葉で、音楽の世界以外では"ドローン"というのは退屈であるとか、変化がないことやさらには苛立たせるようなサウンドのことを言い、おしゃべりが過ぎる人のこともたまに"ドローン"と言ったりする、とてもネガティヴな言葉なんだ。英語の"ドローン"にはもうひとつ意味があって、それは働き蜂のことで、音楽で言う"ドローン"という言葉は、おそらく働き蜂の羽の持続音から来ていて、働き蜂は考えることなく機械的に仕事を継続せねばならないことからそのように形容されたんじゃないかと思う。多くのクラシックとなっているドイツの"クラウトロック"のアルバムは本質的には"ドローン"で、Klaus Schultz、Tangerine Dream、Popul Vuh II、Faust IVの最初の作品も"ドローン"と言えるでしょう"と語っている。催眠的でサイケデリックという記号が"ドローン"ミュージックの本質というのなら、いかにも西洋人ならではの虫の音を機械音や雑音と同様に右脳=音楽脳で処理する発想と言わざるを得ないが、'77年にドイツのスカイ・レーベルからリリースされたコニー・プランクがプロデュースした「CLUSTER & ENO」は、クラスターのHans-Joachim Roedeliusとブライアン・イーノのコラボレーションで、7月にコニー・プランク・スタジオで録音されている。ここでの音楽はエレクトロニクスの冷たい無機質なサウンドではなく、ロマン主義と自然主義が融合したかのような世界観が描かれていて、これこそドローン・ミュージックと呼ぶに相応しいものだろう。
side one:1.Ho Renomo 2.Schöne Hände 3.Steinsame 4.Für Luise
side two:1.Mit Simaen 2.Selange 3.Die Bunge 4.One 5.Wermut — 3:20
Dieter Moebius(keyboards) Hans-Joachim Roedelius(keyboards) Brian Eno(keyboards) Holger Czukay(bass) Okko Bekker/Asmus Tietchens(sitar, percussion)
produktion:Cluster/K.Plank
SKY 1977
CLUSTER & ENO VIDEOS
http://www.youtube.com/results?search_query=CLUSTER+%26+ENO&search_type=
JUNE 1.1974/KEVIN AYERS-JOHN CALE-ENO-NICO(ISLAND ILPS.9291)
'74年6月1日に、レインボーでケヴィン・アイアーズの「コンフェッション・オブ・ドクター・ドリーム」の発売記念とプロモーションの為に企画されたコンサートでのライブアルバム「June 1.1974」は、いまにして思えば、当時ボクが聴いてきた60-70年代のドアーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドから始まった、シド・バレット、カンタベリ・ジャズロックのソフト・マシーン、イーノなどを変遷したすべてのリアルなロックミュージックの真のイディオムの終焉を意味する作品だったのかも知れない。誰ひとり気付かなかったが、70年代後期のパティ・スミス、テレヴィジョンなどのニューヨーク・パンク、80年代にATVなどのオルタナティヴ・ミュージックが表出する以前に、ロックはもう既に'74年に仮死状態にあり終息していたのかも知れない。
side A:1.Driving Me Backwards 2.Baby's On Fire 3.Heartbreak Hotel 4.The End
side B:5.May I? 6.Shouting In A Bucket Blues 7.Stranger In Blue Suede Shoes 8.Everybody's Sometime And Some People's All Time Blues 9.Two Goes Into Four
Kevin Ayers, John Cale, Nico, Brian Eno,Robert Wyatt,Mike Oldfield,Archie Leggatt,Ollie Halsall,Robbit,Eddie Sparrow,Doreen Chanter,Irene Chanter,Liza Strike.
Recorded at the Rainbow Theatre, 232 Seven Sisters Road, London N4, London, 1974-06-01 on the Island Mobile
Mixed at Sound Techniques, 46A Old Church Street, London SW3, 1974-06-00
Producer: Richard Williams. Engineer: John Wood
Recording Assistants: Phil Ault & Ray Doyle
ISLAND 1974