ROBERT WYATT

ジャズを好きになると世界中の人と繋がった気がする
(ロバート・ワイアット)
カンタベリーの風景 +言葉の調べ(韻律)+ジャズ
ROBERT WYATT
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 6

ロバート・ワイアット(Robert Wyatt, 1945.1.28生)の音楽ルーツはジャズ、ラテン、ボサノヴァなどで、シンプルな音楽ではあるのだが奥深い、言葉の調べ(韻律)と「季語」と「切れ」によって、短い詩でありながら心のなかの場景(心象)を大きくひろげることができる特徴を持っている「俳句」のような世界がワイアットの歌や音楽の本質、根源だろうと思っている。彼がもっとも敬愛するアーティストはマイルス・デイヴィスで「ジャズを好きになると世界中の人と繋がった気がする」という最近の発言や、ヴァージンからの75年のアルバム「RUSH IS STRANGER THAN RICHARD」では、叙情的な楽曲に政治的なテーマを扱い人間に対する深い愛に根ざしているといわれたジャズ・ベース奏者チャーリー・ヘイデンの「Liberation Music Orchestra」('69)から“Song For Che”、82年のラフトレイドからのアルバム「NOTHING CAN STOP US」では、ビリー・ホリデイの“Strange Fruit”などをカヴァーしていることから、ロバート・ワイアットの音楽をカンタベリー一言では片付けられないジャズのもっと奥深いところから湧き出る音楽として最解釈する必要がある。1960年代にソフト・マシーンの中心メンバーだった彼が、バンド脱退後のパーティの席上で酔ったまま5階から転落してしまい下半身不随という重傷を負いドラマーとしての生命は絶たれることになったが、その後も様々なミュージシャンとの交流を重ねながら、現在まで10数枚のソロアルバムを発表し、ソフトマシーン、カンタベリー系などで彼が関わったレコードは50数枚を超えている。

ROBERT WYATT/RUTH IS STRANGER THAN RICHARD
(VIRGIN V2034)
ワイアットのソロアルバムのなかで最も好きだった作品が75年に発表された3枚目だ。このアルバムでは、ゲストに「クリス・マクレガー」のメンバーだったテナーサックス・プレイヤーのゲイリー・ウィンド、「バタード・オーナメンツ」のメンバーだったテナーサックス・プレイヤーのジョージ・カーン、「デリヴァリー」のメンバーだったドラムスのローリー・アランなど3人の英国ジャズ・ミュージシャンたちが参加していることが何よりも重要なことで、当時は多くのリスナーが、ビル・マコーミックやブライアン・イーノ、フレッド・フリスなど、カンタベリー系のミュージシャンが参加していることの方に視点がいってしまいがちだったが、アルバム全体を支配しているのは、バリトンサックス、テナー、ソプラノサックス、トランペット、ベースクラリネットによる管楽器によって生まれるハードバビッシュなジャズグルーヴだ。ジャズをイニシエーションした耳で聴いても、このアルバムは充分過ぎるほど現在の「ジャズ的なるもの」の時代に通用する。若かったあの頃はなにも分からず、ただ感覚だけで音楽に接していたけれど、いい時代の最高の音楽を聴いていたんだなと、このブリティッシュ・ロックへの回顧「CASACADES」のために再び自分の手許に引き寄せて最考察してたら、そう再認識し確信したよ。

ROBERT WYATT/RUTH IS STRANGER THAN RICHARD
SIDE RICHARD:♪"Maddy Mouse(a)(Frith/Wyatt)" 00.50
Fred Frith(piano) Robert Wyatt(mouth)
♪"Solar Flares(Wyatt) "5.35
Bill MacCormik(bass) Gary Windo(bass clarinet) Robert Wyatt(mouth,drums,key)
♪"Moddy Mouse(b)(frith/wyatt)" 00.50
Fred Frith(piano) Robert Wyatt(mouth)
♪"5 Black Notes and I White Note(Offenbach/wyatt)" 4.58
Laurie Allan(drums) Brian Eno(guitar,synthesiser) Nisar Ahmad Khan(tenor sax) Bill McCormik(bass) Gary Windo(tenor sax,alto sax) Robert Wyatt(imitation electric piano)
♪"Muddy Mouse(c) which i turn leads to Muddy Mouth(Frith/Wyatt)" 6.11
Fred Frith(piano) Robert Wyatt(mouth)
SIDE RUTH:♪"Soup Song(Hopper/wyatt)" 5.00
Laurie Allan(drums) Nisar Ahmad Khan(baritone sax) Bill MacCormick(bass)
♪"Sonia(Feza)" 4.12
Mongezi Feza(trumpet) John Greaves(bass) Gary Windo(bass clarinet,alto sax) Robert Wyatt(drums,piano)
♪"Team Spirit(MacCormik/Wyatt/Manzanera)"8.26
Laurie Allan(drums) Brian Eno(direct inject anti-jazz ray gun) Nisar Ahmad 'george' Khan(tenor sax) Bill MacCormik(bass) Gary Windo(tenor sax) Robert Wyatt(mouth,piano)
♪"Song For Cha(Heden) "3.36
Laurie Allan(drums) Nisar Ahmad Khan(tenor sax,soprano sax) Robert Wyatt(piano)
cover by Alfreda Benge
1975 VIRGIN RECORDS

ROBERT WYATT/ROCK BOTTOM
(VIRGIN V2017)
74年ヴァージンから発表。カンタベリー・ミュージックを代表するヒュー・ホッパー(ソフト・マシーン)、リチャード・シンクレア(キャラヴァン)、ローリー・アラン(ゴング)、第2期マッチング・モールに参加予定だったギャリー・ウインド、そしてマイク・オールドフィールド、それに加えワイアットがファンだったというアフロジャズのアサガイのトランペッター、モンゲジ・フェザなどによるドメスティックでアットホームな手作り感あるスタジオ・セッッションによるトラディショナルで叙情的なアルバム。ワイアットのスキャットも聴けるヴォーカルやキーボードを中心に構成されたこのアルバムでの、全体を通して聴こえる不安定さがより彼の暖かいヒューマニティを表現していて◎。このアルバムのプロデューサーはニック・メイソン(ピンク・フロイド)が手掛けている。

ROBERT WYATT/ROCK BOTTOM
A:Sea Song- Richard Sinclair(bass) Robert Wyatt(voice,key,james's drum)
A Last Straw - Laurie Allan(drums) Hugh Hopper(bass) Robert Wyatt(voice,key,guitar,delfina's wineglass)
Little Red Riding Hood Hit the Road- Ivor Cutler(voice) Mongezi Feza(trumpet) Richard Sinclair(bass) Robert Wyatt(voice,key,james's drum,delifina's tray and a small battery)
B:Alifib- Hugh Hopper(bass) Robert Wyatt(voice,key)
Alifie- Alfred Hopper(bass) High Hopper(bass) Gary Windo(bass clarinet,tenor) Robert Wyatt(voice,key,james' drum)
Little Red Robin Hood Hit the Road-Laurie Allan(drums) Ivor Cutler(voice,baritone concertina) Fred Frith(viola) Mike Oldfield(guitar) Robert Wyatt(voice,key)
Produced by Nick Mason
Drones and songs by Robert Wyatt
engineered by Steve Cox at the Manor and on Delifina's farm with the Manor Mobile and by Dick Palmer,assisted by Toby Bird at CBS studios London
cover by Alfreda Benge
1974 VIRGIN RECORDS

Comment ( 2 )

東山 聡 :

「ジャズを好きになると世界中の人と繋がった気がする」素敵な言葉ですね。当時、プログレッブロックからロックにどっぷりはまっていく人と、ジャズに流れていく人と二通りあったと思います。
実際に学生時代の先輩で、カンタベリー系からジャズへ移行した人がいました。
ロバートワイアットやヘンリーカウの音楽は聞く人の感性でどちらの方向にも行く事ができる、懐の深さを感じます。

ロックを聴いてきた人、ジャズを聴いてきた人それぞれ巡ってnu jazzに辿りつければいいのに、と思います。

阿木 譲 :

ほんとにその通りだと、ボクも思います。できるならジャズを聴いて欲しいね。だけど未だにロックはレッド・ツェッペリンやヘビメタやハードロックのイメージしかないというのも残念だね。当時ロックはジャズとは密接な関係にあったというのを少しでも知って頂けたら幸いです。

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