STEVE BERESFORD / TRISTAN HONSINGER / Y RECORDS / PIANO RECORDS

STEVE BERESFORD
TRISTAN HONSINGER
Y RECORDS
PIANO RECORDS
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 60

STEVE BERESFORD,TRISTAN HONSINGER/DOUBLE INDEMINITY(Y RECORDS Y9)
セシル・テイラーやデレク・ベイリーなどともコラボレーションしていたチェロプレーヤーのTristan Honsingerが、スティーヴ・ベレスフォードと'81年にYレコードからリリースしたフリー・インプロヴィゼーション。トリスタンは'49年バーモントで生まれ、母親は彼の兄弟と共に室内楽オーケストラを設立する望みを持っていたという。12歳の頃からほとんど毎週のペースでコンサートを催していたというから音楽スキルは相当なものだ。'69年、ボストンの名門ニューイングランド・コンサヴァトリーで古典的なチェロを学び、その後、モントリオールに滞在していた時にインプロヴィゼーション・ミュージックに興味を持ち始める。'78年にはヨーロッパに移住し、現在までオランダのアムステルダムを拠点にして活動している。熊のプーさんが好きなお茶目な人柄を持ったアーティストである。'79年にこのアルバムを契機にポップグループとも活動している。ベレスフォードのピアノとフリューゲルフォーンと、トリスタンのチェロがクラシカルなテイストをも醸しながら、覚めた意識のなかで自由に戯れているかのような"ジャズ的なる"インプロヴァイズド・ミュージックが収録されている。

TRISTAN HONSINGER, STEVE BERESFORD, TOSHINORI KONDO, DAVID TOOP/IMITATION OF LIFE(Y RECORDS Y13)
'82年にYレコードからリリースされたトリスタン、コンドウ、トゥープ、ベレスフォードによるフリー・インプロヴィゼーション。トランペッター、近藤等則の存在を知ったのは'81年にトゥープとロンドンで会ったときで、このアルバムが発売されて彼の音楽を初めて確認した。去年の10月にnu thingsで二度目のイヴェントを催しているが、彼もまた現在はクラブ系のアブストラクト・ジャズを展開している。スティーヴ・ベレスフォードは'50年イングランド中西部のシュロップシャー州、ウェリントン生まれ。ピアノ、トランペット、ヴォイス、ロウ・グレード・エレクトロニクス、ベース・ギター、作曲家、編曲家で、7歳の頃ピアノを弾き始め、15歳の頃にすでにイントゥルメンタルなクラシカル・レパートリーと管弦楽の楽譜を読めるようになっている。ハモンドオルガンを弾き始めた最大の要因は、オーティス・レディングのカヴァーを演奏するソウル・グループで演奏していた頃に、サム・アンド・デイヴとモータウンのヒット曲に熱中し多いに影響されていたからだという。後にデレク・ベイリーとハン・ベニンクの音楽を聴くまでは、ヨーク大学で音楽を勉強するなどとは思いもよらなかったらしく、'74年にロンドンに移ってからベレスフォードは、ポップからジャズ、レゲエ、フィルム・ミュージック、ダンスなどの100を超える音楽プロジェクトに関わっている。そのなかでもインプロヴァイズド・ミュージックに関わるのは、"私の音楽への理解を育む最も重要な要素で、インプロヴァイズド・ミュージックの従来の規則を無視することによる自由と解放の力と、ミュージック・テクニックの定式化への蓄積だった"と語っている。彼の音楽活動のなかでも、'77年から''86年まで続いた、Peter Cusackのギター、 David Toopのフルート、Terry Dayのドラム、パーカッションによって結成されたALTERATIONでの活動が、最も有名だろう。このユニットでも鳥の鳴き声のテープからあらゆる器材を駆使、あらゆるスタイルを引用し音楽におけるタブーも恐れない、言葉とおり自由なインプロヴィゼーションを展開している。

STEVE BERESFORD/THE BATH OF SURPRISE(PIANO 003)
'81年6月25日にロンドンでデヴィッド・トゥープに、彼の自宅でインタヴューした時、"この5、6年の間にジャズ、即興音楽、ロック、ポップス、あるいはブラック・ミュージックなど少しずつ異なった音楽が寄せてくる現象というものに大変興味をおぼえます。スティーヴ・ベレスフォードはいまスリッツと仕事することが多く、世界を舞台にしてあちことで多くの観衆を相手に演奏しています"、"ところで、即興演奏に手を染めるようになってから、人々はこの即興演奏というものは、エリートの音楽だという固定観念を持ってしまい、それに縛られた私たちは身動きできなくなってしまったのです"と語っていた。スティーヴ・ベレスフォードのビーズ、ピアノ、チューチュー・トレインや、このYレコードでのすべての先端音楽を自由に軽やかに横断していく態度と姿勢は、そのまま彼の音楽にも表われていて、当時のイギリスのインプロヴァイズド、フリー系のミュージシャンのなかで、ボクは最も信頼し注目していたひとりだ。こうした即興音楽はしかめっ面して聴くものじゃなく、もっと遊び心をもって対応すべきものなんだ。もしキミがインプロヴィゼーションの音楽に興味を持ったり、レコードを選び買うときに、偽物と本物を簡単に見破る方法がある。それは、そのミュージシャンのキャリアや音楽的バックボーンに、クラシックや現代音楽、ジャズ・シーンでの活動を持ったことがあるかないかで判断できる。あるならホンモノで、それ以外の例えばロックあがりのミュージシャンはすべてニセモノだということを覚えておかれるといいだろう。'80年にデヴィッド・カニンガムのピアノ・レコードからリリースされた「The Bath Of Surprise」は、パーカッシヴな"Punctuation"から、珍しく歌を唄っている"Those Oldies But Goodies Remind Me Of You"など、フライング・リザードのアヴァンポップからフリー、トイ・ピアノからユーフォニアム、シンセサイザー、トランペット、フルーゲルフォーン、パーカッションまでも駆使し、貪欲に新しいものなら何でも吸収する折衷主義者ベレスフォードの真骨頂を発揮した名盤の1枚だ。

DOUBLE INDEMNITY
Triston Honsinger(cello,voice) Steve Beresford(piano,flugelhorn)
short side:1.Say Hello to The Cello 2.Pre-Echo 3.I Don't Have A Bottle Names Wady 4.Stolen Time
long side:1.Double Indemnity
recorded I.C.A 1980
edited by Dave Hunt
Y RECORDS 1980

IMITATION OF LIFE
Tristan Honsinger(voice,whistling,violin) Toshinori Kondo(trumpet,voice,mutes,rattles,small instruments) David Toop(electric guitar,bass,flute,alto flute,wooden flutes,small instruments) Steve Beresford(euphonium,flugel horn,siren,metal violin,winfield organ,toy electric guitar,bass guitar,automatic instruments,small instruments)
recorded by Dick Odell 'room at the TOP' London May 22 1981.
Y RECORDS 1982

THE BATH OF SURPRISE
side one:1.Punctuation acme,london,1977 Acoustic Guitar With Microphone And Battery Amplifier;Assorted Percussion recorded by D.C.on stereo Uher reel to reel. 2.Lieutenant Dub Notre Dame,London 1980. Piano, Toy Synthesizer, Euphonium, Performer,Whirled Bee, Whirled Tube, Clarinet Mouthpiece 3.Cat Picture S.B's Home,London 1980 Trumpet。recorded Aiwa Cassette Recprder. 4.What Is A Thing Toy Piano, Drums 5.The Bath Of Surprise S.B's old flat. London 1977. Bath Water, Nailbrush, Body, Tubes, Reeds, Balloons, Whistling 6.Concealed Entrance Bass, Piano, Trumpet, Synthesizer [Toy], Performer [Footclickers, Blechtrommel, Giggle Stick, Musicbox. recorded by D.C.on JVC cassette recorder. 7.My Old Piano SB's old flat London 1977.Toy Piano, Cymbal, Drums, Ukulele 8.Burning Problems Action Space,London,1977.Cowbox,Toy Piano,Musical Toothbrush, Trumpet, Mini amp and mic,cassette of previous pergormance, Cowbox, Duck Call, Cymbal, Tape 9.Schlussakord Piano, Electronic Bird, Squeaky Chops, Chicken Box, Toy Record Player, Plastic Horn 10.Those Oldies But Goodies Remind Me Of You London 1977.Voice, Piano
side two:1.A Cup Of Tea And A Bun J.Marshall's previous residence,1979.
Piano With Toy Piano Inside. recorded by D.C.on Revox. 2.Mr & Mrs. Wu DC's room in London 1980. Bass, Euphonium, Percussion, Flugelhorn, Talking Telephone, Astro-phaser. Recorded by D.C.on 8-track tape recorder. 3.Spring Clips J.Marshalls previous residence,1979. Piano With Toy Piano Inside. 4.A Continuous Supply Of History SB's place,1980.Flugelhorn recorded bu S.B.on Faulty cassette recorder.
all tracks composed by S.Beresford,except 1/10 which waswritten by John Stewart.
produced by David Cunningham.
PIANO 1980

Steve Beresford
http://www.scaruffi.com/oldavant/beresfor.html

※付加
日本のフリー・インプロヴィゼーションと言われているもので、ギタリストのミュージシャンなど存在しない。彼らの音楽はすべてがロックミュージックのなれの果ての、ノイズか、スカム、それともギターを引っ掻いて発てるハードロックやパンクの延長線上にあるものだ。ノン・イディオムなフリー・インプロヴィゼーションとは現代音楽やジャズの文脈にある音楽理論やテクニックを学び習得したミュージシャンだけが、そこに逃走し逸脱できるもので、そうしたもともと確固たる文脈も持っていないロックあがりのミュージシャンがフリーだといっても、"それは違うだろ"と言わざるをえない。似て非なるものだが、正面きってイミテーション、フェイクだと言い切るならまだしも・・。(執拗に付け加えるなら、こうした日本のノイズミュージシャンがプレイする大きな理由は、自身の持つ精神的病を音楽療法としてプレイすることによって、一種のカタルシスを得、浄化しているに過ぎない。フリーや間章や阿部薫の名を借りて彼らは病をまき散らしているのだ。またそうしたオーディエンスは他人の"悲劇をみることで自分の心が浄化"されるごとく、その音楽に"おそれとあわれみに似たシンパシー"を感じ、これもまた自分が冒されている病を療法しているに過ぎないのだ。酷い話だ。) 日本のインプロヴァイズド・ミュージックと海外でのそれとは、決して相容れない。

Comment ( 1 )

平野隼也 :

インプロ(という名のノイズ)のライブを観に行っていた時は明らかに病んでいました。演奏者の音を聴いてストレスを発散できていると思っていたのですが、今にして思うと逆にストレスを溜めていただけでした。
受動的で無目的がもたらすストレスを発散したつもりになるにはノイズは最適だった故に最悪でした。

その病から少し遠ざかることができると、病的な音楽に対し「なんでこんなもん好き好んで聴いてたんやろう?」と思いますね。

曲間にあるインプロは右脳「直感」で聴いて、全編インプロの曲は左脳の働きである「論理(のようなもの。≒妄想)」のフィルターを通した上で聴いているのかなと思います。

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