BIRTH OF THE Y MOUTH / THE PROMENADERS / DISCONNECTION / Y RECORDS

BIRTH OF THE Y
MOUTH / THE PROMENADERS / DISCONNECTION
Y RECORDS
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 65


THE PROMENADERS/THE PROMENADERS(Y 31)
プロムネーダースのこのアルバムは、イギリスの伝統的な社交界"ミュージック・ホール"で演奏されるダンスミュージックの数々がDavid Toop, Lol Coxhill, Max Eastley, Paul Burwell, Peter Cusack, Steve Beresford, Terry Dayなどによって再現されている。ロンドンではミュージック・ホールと呼ば
れる場所が19世紀に繁栄し、コンサート・ホールとパブの中間のような存在がミュージック・ホールで、音楽だけでなくお笑いや芝居など、多彩な芸能を見せる場所として、19-20世紀にかけてイギリスにおける娯楽文化の中心となったところだ。いまではミュージックホールといえば、まるで老人ホームの娯楽室のような感じだろうが、当時そこは社会にとってはアンダーグラウンドな場所であり、大衆文化の発信地としての役割を担っていた。"ムーンリヴァー"から"ハッピートーク"、"お爺さんの古時計"まで43曲がメドレーで収録されている。

side A:1.Nellie The Elephant 2.Medley (Louie Louie/The Promenader's Shuffle/Whistle While You Work/Calling All Workers /The Dambusters March/Do Re Mi/Eine Kleine Nachtmusik/American Patrol/South Of The Border/Let's Twist Again) 3 .Medley (My Grandfather's Clock/Al Capone/Ghosts/The James Bond Theme/Holy Family/Walkin' The Dog/Prommin' The Bass/Oklahoma/Parade Of The Penguins/I Could Have Danced All Night) 4.Chicago 5.Moon River
side B:1.Medley (Rock Around The Clock / Tin Roof Blues / Philly Dog / Promenaders Jazz It Up / Saturday Jump) 2.Medley (Stranger On The Shore/Rondeaux Makes It Up) 3.Medley (Happy Talk/The Hokey Cokey/Knees Up, Mother Brown) 4 ."A", You're Adorable 4a.Medley (There's A Long, Long Road A-Winding/Do Re Mi/My Favourite Things/You'd Be So Nice To Come Home To/Chim Chim Cheree) 5.Medley ((Won't You Play A) Simple Melody/Tibetan Promenade/Nellie The Elephant)
THE PROMENADERS:Loxhawn Rondeaux(soprano saxphone and vocals) Stuart Barefoot(euphonium and vocals) Steve Toop and Mike Simple(one string violins) Derek Nyte(cello and percussion) "Andre"(guitar) Paulo "Sticks" Birrelli(drums) with guest chanteue,Violet Nightingale
recorded live by Dirk Pitt on Brighton Beach,with free bonus tracks from their performance in an Exclusive Brighton Discotheque
artwork by Clark Youngblood
Y RECORDS 1982

MOUTH/TAKE YOUR COAT OFF(Y 10"-Y20)
ポップ・グループ、ピッグバッグのサイモン・アンダーウッドと、ピッグバッグのエンジニアーを担当していたデイヴ・ハントがテクニシャン(エンジニア)としてサポートしたマウスの、このYレコードから発売された10インチシングルではラテン・パーカシッヴなジャズグルーヴと太いベースラインによるON Uサウンドと言っていいダブを展開している。これ以外にも'81年にRecreationalから7インチシングル「Ooh, Ah, Yeah!」、'82年にこれと同じジャケットで7インチ盤「WHO'S HOT?」を同時に発表している。メンバーは後のブリストルサウンドの雄"The Wild Bunch"のNellee Hooper、"Massive Attack"やReprazentのRob Merril(ドラムス)、Andy Guy(トランペット/ギター)。当時こうした実験的に制作されたものからだけ、時代に色褪せることのない音楽が聴こえてくるのだ。

side F:Take Your Coat Off side X:Yahoo! A6C8AB
concocted at Berry St.Lab
Robin Marril/Paul Hooper/Andy Guy
technicians:Dave Hunt/Simon Underwood Andie Vining(beds photo) Neil Whiting(driving)
Y RECORDS 1982


VA/BIRTH OF THE Y(Y33 1/3)
「Birth Of The Y」にコンパイルされているものは、一曲目に収録されているディスコネクションの"バリハイ"はバリ島のガムランミュージックのディスコ・ヴァージョンだが、トロピカルでチルアウトなグルーヴを持ち現在のクラブフロアでも充分通用するアーシーな音楽だ。
Tymon Doggの'82年のアルバム「Battle of Wills」から抜粋された「Low Down Dirty Weakness」、彼は作詞作曲家、ヴァイオリニスト、詩人の肩書きを持つ多才なシンガーでミック・ジョーンズやクラッシュ、ポール・マッカートニーなどとも仕事している。ディマンダ・ギャラスは女性ヴォイス・パ
フォーマーだが、声だけを使った倍音唱法が取り入れられた透き通った幻想的ヴォイスから、ここでのノイズチックでヒステリックなカオス世界まで、コンテンポラリー・ミュージック・シーンでは特異な存在である。R.A.P.P. Feat. Archie PooleはLKJ直系ダブ・ポエット。Palsallamaは、女性ばかりで結成されたファンカラティーナの前身のパーカッション集団でアフロ・グルーヴが渦巻きスリッツよりもクラブ向けだ。マキシマム・ジョイはポップ・グループが解散した後、ギターのJohn Waddingtonが結成したテクノ・ポップ/ニューウェイヴの香りのするダンス・バンド。他にはGang Og FourやXTCのメンバーからなるSheriekbackのアヴァンポップ、Sun Ra、Promenaders、Chris Reevesなど全12曲収録されている。

side one:1.DISCONNECTION/Bali Ha'i 2.PIGBAG/Six Of One ... 3.TYMON DOGG/Low Down Dirty Weakness 4.DIAMANDA GALAS/Excerpt From The Litanies Of Satan 5.MOUTH/Voyage To The Bottom Of The Sea 6.R.A.P.P. feat ARCHIE POOLE/Guns, Bombs, Handgrenades
side two:1. PULSALLAMA/Ungawa pt.2 2.MAXIMUM JOY/Searching For A Feeling 3.SUN RA/Excerpt From Strange Celestial Road 4.PROMENADERS/Stranger On The Shore 5.CHRIS REEVES/After The Romance 6.SHRIEKBACK - Despite Dense Weed
cover painting by Vince Donlin
design by Martyn Lambert
Y RECORDS 1982

CHRISTOPHER REEVES/DINING AT DZERHINSKY'S(12" Y23)
'Yレコードから12インチ・シングルで82年に発表。キーボードを弾いているのは、恐らくヴァーティゴからリリースされていたCresidaの"Asylum"でクレジットされているPeter Jenningsだと思うが、サイドAは、シンセサイザーのオーケストレーションを多用したアラベスクなオペラ風のディスコ・ミュージックが収録されている。「寒い国から帰ってきたスパイ」などで有名なイギリスのスパイ小説の大家、ジョン・ル・カレにインスパイアされたPeter JenningsのDzerzhinskydでのフロアショーにコンセプトを持つもの。こうしたお遊びこそが80年代音楽の特徴ともいえるだろう。

front cover:Miriam Mills song inspired by John Le Carre thanks to Marcel(who smuggled out the pictures)
produced by Bob Heatlie
Christopher Reeves(vocals) Peter Jennings(keyboards)
Y RECORDS 1982

※レコード資料室の山積にされ無造作に詰め込まれたレコードが入った段ボールに腰を下ろして、80年以後のインディペンデント・レーベルでの音楽の情報量の多さにこの調子では何年かかるんだろうと、少なからずうんざりし、ロックから一日も早く離れ90年代のクラブシーンのアーカイヴに着手したいな、そうしようかなどと考えながら80年代に思いを馳せていると、結局は当時も今も発売されたレコードをリアルタイムに聴いている音楽ファンはそんなにいないんだということが解った。キミが若い音楽ファンなら、音楽はやはりリアルタイムに発売された旬のものを聴くべきだ。21世紀になったいまでも聴くに耐えうるレコードは、思っていたほどは多くなく、それこそこうした過去のレコードに針を落とすと目の前にリアルに音楽が再生されるが、すべては過ぎ去った過去の時間が記録されたものである(Yレコードを設立したディック・オディールもこの3月に他界している。時間とはそれほど残酷なものなんだよ)。ボクのこのOblique Strategiesだってひとつの教科書のようなテキストとして読んでいるんだろうな・・・。ボクにとっては必死に生きた証なんだけどもな。

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