NEW ORDER 1 981-1984

NEW ORDER
FACTORY RECORDS
FACTORY BENELUX
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 76

NEW ORDER-1 1981-1984
ニューオーダーのレコードは90年のDJ Copyでの12インチ"World in Motion..."まですべて聴いているが、正直なところ'85年のアルバム"Low Life"から'89年の"Technique"までは資料としてレコードやシングルを買い聴いていた程度で、初期のように思い入れたっぷりに感情移入していたわけではない。ボクにとってのニューオーダーはやはり'84年で終わってしまった。
NEW ORDER/POWER CORRUPTION AND LIES(FACT 75)
だから、80年代後半から90年代初頭にかけてニューオーダーがボクが思っていた以上にニッポンでは人気があったことも知らない。そういえば90年代中期にボクが経営していた"cafe blue"で、当時の20代のDJやテクノ・フリークスたちがクラブイヴェントの"オマンチェ・ナイト"をオーガナイズし、ハシエンドのマッドチェスター・ムーブメントを再現していたことがある。
イアン・カーティスの死後、ギターのバーナード・サムナー(Bernard Sumner)がヴォーカル、ギター、キーボードを担当し、ピーター・フック(Peter Hook) のベース、ドラム、スティーヴン・モリス(Stephen Morris) のドラムとキーボード、そして新メンバーにジリアン・ギルバート(Gillian Gilbert) のキーボードとギターを加えニュー・オーダーは活動を始動する。ギターとエレクトロニクスを融合させた83年のダンス・ヒット"ブルー・マ
ンデー"のようなニューウェイヴ・ダンス・ミュージックへのアプローチを試みはしたが、'85年に"パーフェクト・キス(The Perfect Kiss)がヒットするまでの'84年頃までは、やはりジョイ・ディヴィジョンの影を重く引き摺っていた。ファーストシングル"セレモニー"が発表された直後の'81年3月22日にニューオーダーのライヴを観て無名のライターは次のように書いていた。"わたしはこのコンサートで来るべき未来の不気味な光景を目撃した。誰も踊らず、どの足もタップを踏まず、誰も叫ばない。聴衆は氷のように青いスポットに照らされて、凍ったように立ち尽くしている。そのグループはニューオーダーである。彼らの言葉は、あたかもジョ−ジ・オーウェルの小説のごとくである。その音楽はエーテルのようなエレクトロニックであり、陰鬱なものである。その音楽はなにかを失った80年代の若者達がまさに求めているものなのだ。ただ見て聴くだけの”。ニューオーダーの音楽と人気が確立され高まるのと比例して、不思議なことに年を追うごとにジョイ・ディヴィジョンの人気が高まっていたのも、この頃である。実質上ニューオーダーが過去の暗いイメージを払拭したのは、'83年の"ブルーマンデー"とセカンドアルバム"Power Corruption & Lies"でだった。それは80年代後期のEカルチャーと、90年代のテクノハウスの始まりを意味するものだったし、それに加えあのピーター・サヴィルによるアンリ・ファンタン・ラツールの薔薇のイメージ(静物油画)とカラーコードが配置されたカヴァーアートワークが新しいエレクトロニック・ダンスの時代の象徴として強烈な印象を人々に与えたからだろう。

NEW ORDER/CEREMONY(FAC.33)
A:Ceremony
B:In A Lonely Place
written by Joy Division
produced by Martin Hannett
FACTORY RECORDS 1981/1/22
ニューオーダーの最初の12インチシングル。2種類の異なったジャケットが使われ、収録曲ヴァージョンも一方はジリアン・ギルバート加入以前のジョイ・ディヴィジョンによるCeremonyと、以後のSeremonyが収録されている。Bサイドの"In A Lonly Place"は2枚のシングルとも同じヴァージョン。ピーター・サヴィルによる犬が赤い植物を銜えているマークや、クラシック・グリーンのジャケットデザインは、1937年のBerthold WolpeのAlbertus type specimenがベースになったもの。

NEW ORDER/CEREMONY(FAC 33)
A:Ceremony
B:In A Lonly Place
written bu Joy Division
produced by Martin Hannett
FACTORY RECORDS 1981

NO/OFF THE WALL,S.O.36 BERIN MAY '81(Ref.NO 53)
A:1.ICB 2.Dreams Never End 3.Chosen Time 4.The Him
B:1.Everything's Gone Green 2.Seuses
フランスで発売された海賊盤。'81年の5月のベルリンでのライヴが6曲録音されたもの。
REF 1981

NEW ORDER/EVERYTHING'S GONE GREEN(FAC.53)
A:Everything's Gone Green
B:Processin
A Factory Communications Products
FCL Stereo
45 rpm
Publishing Bemusic
Production Martin Hannett
Manufactured Factory
FACTORY RECORDS 1981
ニューオーダーの7インチ・セカンドシングル。9種類の異なったカラーによって印刷されている。1927年のFortunato Deperoの発電機にインスパイアーされたピーター・サヴィルによるアートワーク。

NEW ORDER/EVERYTHING'S GONE GREEN(FBNL8)
side A:1.Evrything's Gone Green
side B:1.Cries And Whispers 2.Mesh
written by New Order
produced by Martin Hannett
recorded in UK
made in BNL
FACTORY BENELUX 1981
ベルギーのファクトリー・ベネルクスからの12インチシングル。

NEW ORDER/1981-FACTUS 8-1982(FACTUS 8)
side 1:1.Everything's Gone Green 2.Procession 3.Mesh
side 2:1.Temptation 2.Hurt
cover painting by Martha J. Ladly; design by Peter Saville-spa10.
FACTORY RECORDS 1982
上記のシングルの曲に5曲追加されリリースされた12インチシングル。

NEW ORDER/MOVEMENT(FACT.50)
side A:1.Dreams Never End 2.Truth 3.Senses 4.Chosen Time
side B:1.I.C.B. 2.The Him 3.Doubts Even Here 4.Denial
produced by Martin Hannett
engineered by Chris Nagle
assisted by John and Flood
published by B Music
designed by Peter Saville and Grafica Industria
printed by Garrod and Lofthouse Limited
FACTORY RECORDS 1981
バウハウスやロシア構成主義を思わせるジャケット・デザイン。それも赤と黒ではなく、貧血気味の当時のニューオーダーを象徴したスカイブルーと紺の。"我々の音楽はカー・クラッシュのように、いつも無計画で予期できないものだ"というバーナード・サムナーの発言は、良く言えばまさに資本主義制度を批判し、生産体制を含めて状況を構築しようとした状況に合わせてカメレオンのように変態するシチュエーショニズムの運動のようでもあり、なにごとに関しても、もともと深く考えていない楽観主義者ともとれる。既にイアン・カーティスの自殺という物語りを音楽のなかに抱えたニューオーダーは、新たにムーヴメント(運動)というカードを切り、フィジカル・ダンス・ミュージックを選択した。

NEW ORDER/TEMPTATION(FAC63)
side A:Temptation
side B:Hurt
written and produced by New order
engineer:Pete Woolliscroft
Artwork by Peter Saville.
April 1982
published by bemusic
a factory communications product.
FACTORY RECORDS 1982

NEW ORDER/BLUE MONDAY(FAC 73)
side A:Blue Monday
side B:The Beach
produced by New Order
engineered by Michael Johnson
assisted by Barry Sage + Mark Boyne
published by B Music 1983
古い5.25"のフロッピー・ディスクから発想されたピーター・サヴィルによるジャケット・ワーク。プレス加工された穴の空いたジャケットにかかった経費は大変なものだったらしい。

NEW ORDER/POWER CORRUPTION AND LIES(FACT 75)
(ジャケットは最上段の3枚の写真参照)
side A:1.Age of Consent 2.We All Stand 3.The Village 4.5 8 6
side B:1.Your Silent Face 2.Ultraviolence 3.Ecstasy 4.Leave Me Alone
Produced by New Order
Engineered: Michael Johnson assisted by Barry Sage and Mark Boyne.
cover-Roses:Henri Fantin-Latour (1936-1904) Canvas,0.489×0.603m
reproduced by Courtesy Of The Trustees,the National Gallery,London
A Factory Record
Published by Bemusic 1983
Pete Wooliscroft
FACTORY RECORDS 1983
ニューオーダーのセカンドアルバム。この頃になるとシーケンサーにも慣れたのか、エレクトロニクスによるリズム感もよりきめ細かくなり、彼らの前に立ちはだかっていたイアン・カーティスの死とロックの古い過去の文脈からやっと抜け出したかのようなピーター・フックのベースラインを核にした事実上のニューオーダー誕生を意味する作品となっている。ピーター・サヴィルによるアンリ・ファンタン・ラツールの薔薇のイメージ(静物油画)とカラーコードが配置されたカヴァーアートワークは、最もニューオーダーの音楽を象徴していたものかも知れない。このカラーコードは、12インチシングル"Blue Monday"、"Congusion"にも使用され当時の彼らの運動としての音楽の連続性がみてとれる。ピーター・サヴィルはロンドンで同時に開催されたピ−ター・サヴィル・ショーにもこのカラーコードを使用していた。

NEW ORDER/CONFUSION(FAC 93)
Side 1:1.Confusion and 2 Confused Beats
written by New Order and Arthur Baker
produced by Arthur Baker and New Order for ABI and FCL
published by Shakin' Baker Music (BMI) and Bemusic
recorded at Unique Studios, New York.
engineers:F. Heller and C. Lord
mixed by Arthur Baker and John "Jelly Bean" Benitez at Ears, New Jersey. mix engineer:John Robie
A Factory Record - Of Factory 9. (P) 1983.
side 2:1.Confusion Instrumental and 2 Confusion Rough Mix.
written by New Order and Arthur Baker
produced by Arthur Baker and New Order for ABI and FCL
published by Shakin' Baker Music (BMI) and Bemusic
recorded at Unique Studios, New York
mixed by Arthur Baker and John "Jelly Bean" Benitez at Ears, New Jersey and Unique Studios, New York
mix engineers:John Robie at Ears, F. Heller and C. Lord at Unique
A Factory Record - Of Factory New York made the arrangements. (P) 1983.
FACTORY RECORDS 1983
ピーター・サヴィルによるアートワークは、4色の浮き彫りにされたNEW ORDERとCONFUSIONのタイポグラフィが重なり合わせてある。ヒントはdot matrix lettersから得たものらしい。またこのシングルは後にニューヨークの90年代を代表するエレクトロハウスDJアーサー・ベイカー(Arthur Baker)によってヘヴィーなグルーヴにリミックスされている。98年に公開された映画"ブレイド"のサウンドトラックにも"コンフュージョン"が使われていて、それは90年代初頭のイギリスのライジングハイ・レーベルで聴かれたトランステクノ・リミックスだった。

NEW ORDER/BLUE MONDAY 1988(FAC 7312)
side A:Blue Monday 1988
written and produced by New Order
production supervisor on remix:Quincy Jones.
additional production and remix:John Potoker for Direct Eject Inc.Los Angeles.
mix engineer:Tokes.
publ.by Bemusic/Warner Bros Music
A Factory Records
side B:Beach Buggy
written and produced by New Order
remixed by Michael Johnson.
published by Bemusic/Warner Bros Music
A Factory Records
FACTORY 1988
米国市場に対して発売されたクインシー・ジョーンズのリミックスによる"Blue Monday"88年版12インチシングル。80年代後半にはシカゴやデトロイトを拠点にクラブカルチャー(ダンスカルチャー)が台頭してきて、音楽のメインストリームとして一気に世界に波及していき、ロックカルチャーは廃れ跡形も無くなってしまった。

NEW ORDER/THIEVES LIKE US(FAC 103)
side A;Thieves Like Us
side B:Lonesome Tonight
written by New Order/Arthur Baker
Produced by New Order
Engineered by Mike Johnson
Recorded and mixed at Britannia Row Studios
Published by Be Music / Warner Bros Music / Shakin' Baker Music (BMI). Design Key / PSA.
FACTORY RECORDS 1984
アーサー・ベイカーとのセカンド・コラボレーション。ディスコ・クラシックのような美しいリミックスが施されている。ジョイ・ディヴィジョンやPILの音楽であっても84年にもなればスノッブな若者は当時のニューウェイヴ・ディスコでこうした曲に合わせて踊っていたんだよ。それはまったく正しい判断だった。

NEW ORDER/MURDER(FBN 22)
side A:Murder
written by New Order
produced by New Order
engineerd by Mike Johnson
recorded and mixed at Britania Row Studios
side B:Thieves Like Us instrumental
written by New Order/Arther Baker
oroduced by New Order
engineered by Mike Johnson
recorded and mixed at Britania Row Studios
published by Be Music/Warner Bros. Music/Shakin' Baker Music(BMI)
design Key/PSA
FACTORY BENELUX 1984
クレプスキュールからリリースされた"Thieves Like Us"のアーサー・ベーカー・シリーズの別ヴァージョン。以前から形而上学の断片的なアプローチをしたかったピーター・サヴィルとフィル・ペーニントンは、カヴァーに18世紀のボードゲームとジョルジョ・キリコの'The Evil Genius of a King'を引用。人々がニューオーダーの音楽に不可解で不吉なメッセージを読み取るための仕掛けだ。

NEW ORDER/DREAMS NEVER END(GOTH 1)
3枚組の海賊盤。21曲が何のクレジットも無くホワイトラベルで発売されている。恐らく'81年のニューヨークかベルリンでのライヴが収録されたものだろう。イアンの死直後の緊張感溢れるプレイが聴こえてくる。海賊盤にしてはよく出来ていて、時代の暗い空気までも録音されていた。

New Order: Dreams Never End @ NYC 1981
http://www.youtube.com/watch?v=GXuRe0GkXyA

(後半の'85年から'90年までのNEW ORDER-2に続く)。

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