FAUST

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどにもみられる
1960年代後半のカウンターカルチャーに影響された
自然主義者のドラッギーなバロキスム(Baroque-ism)・ポップ
FAUST
「ジャズ的なるもの」からブリティッシュ・ロックへの回顧
CASCADES 9


1971年に発表された美しいスケルトンのレコードと、透明のヴィニール・ジャケットに印刷されたレントゲン撮影された拳のファーストアルバム「Faust」を聴いてからもう37年もの時が流れている。ストーンズの「サティスファクション」、ビートルズの「愛こそすべて」がコラージュされたWhy Don't You Eat Carrotsから始まるあのアルバムでの印象は、パレードや稲妻などのエフェクトやサウンドコラージュが散りばめられ、装飾的で形のいびつなグロテスク趣味のバロック(Baroque-ism)世界が描かれていた。(このあたりの当時ドイツから発表された作品群はいつかジャーマン・プログレッシヴ、ジャーマン・エクスペリメンタルを最考察するときに詳しく取り上げます。)

FAUST/IV(VIRGIN V2004)
そしてこの73年にヴァージンから発表された4th 「FAUST IV」。FAUSTと言えば北ドイツの片田舎ヴェンメで廃校を改造したスタジオでのコミュニティが音楽活動の始まりの契機になったもので、彼らの音楽には、1960年代後半に主にアメリカの若者の間で生まれた自然と愛と平和と芸術と自由を愛するヒッピームーブメントの影響が少なからず残っている。カウンターカルチャー、ナチュラリズム、エコロジー、オルタナティブ、ニューエイジ、ドラック、神秘主義、瞑想、ヨーガ、トランスパーソナル心理学、サイケデリック、ビート・ジェネレーションなどすべての発祥源が当時のヒッピームーブメントだった。FAUSTの音楽にはこうした60年代ヒッピーカルチャーの記号が至る所から聴こえてくる。最近のFAUSTの音楽を聴いていないので現在どういう音楽変容をみせているのか、まるで無知だが、多くのクラウトロック・ファンが、初期FAUSTの音楽を"フリージャズ、フォークなどの要素を含みながらテープコラージュやエフェクト処理を用いたアヴァンギャルドな世界"と思っているが、それもちょっと違う。72年のFAUSTのアルバム「ソー・ファー」のなかの"イッツ・ア・レイニー・デイ、サンシャイン・ガール”に象徴的な、'67年にアンディ・ウォーホルがプロデュースした「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ」 や、'68年に発表されたセカンド・アルバム「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」でのヴェルヴェット・アンダーグラウンド、それと同じくVUに影響されたカンの73年発表の「FUTURE DAYS」と共通した"自然主義者のドラッギーでバロックなポップ世界”で、彼らの音楽は大変ヒューマニスティックで、人々がイメージするほど過激なバンドではない。ニッポンで言えば70年代の裸のラリーズのサウンドか。こうした音楽のことを、アルバム「FAUST IV」の1曲目「KRAUTROCK」から採用され現在ではクラウトロックと形容されているが、これは植物的な彼らの世界をストレートに表わしていて正解だ。なお'71年当時のオリジナル・メンバーはリヒャルト・ザッピ・ ヴェルナー・ディーアマイアー(ドラムス)、ハンス・ヨアヒム・イルムラー(キーボード)、ジャン・エルベ・プロン(ベース)、ルドルフ・ゾスナ(ギター) ギュンター・ヴュストホフ(サックス、キーボード)、アルノルフ・マイフェルト(ドラムス)。
http://www.faust-pages.com/

side one:1.KRAUTROCK 2.THE SAD SKINHEAD 3.JENNIFER
side two:4.JUST A SECOND 5.PICNIC ON A FROZEN RIVER,DEUXIEME TABLEAU 6.GIGGY SMILE 7.LAUFT...HEISST DAS ES LAUFT ODER ES KOMMT BALD...LAUFT 8.IT'S A BIT OF PAIN
all titles written & performed by FAUST
special equipment & sound engineering by KURT GRAUPNER
recorded at The Monor,Oxfordshire,ENGLAND,June 73
cover by UWE NETTELBECK & GUNTHER WOSTHOFF
published by Golden Records Music/Virgin Music
It's A Bit Of Pain Published by Intersong
produced by UWE NETTELBECK
1973 VERGIN RECORDS

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